第484回 番組審議会議事録
1.開催年月日 |
平成19年7月13日(金) | |
2.開催場所 | 読売テレビ役員会議室 | |
3.委員の出席 | 委員総数 | 10名 |
出席委員数 | 8名 | |
出席委員の氏名 | 熊谷信昭、秋山喜久、金剛育子、馬淵かの子、阪口祐康、佐古和枝、川島康生、吉岡征四郎 | |
欠席者の氏名 | 林 千代、菊池卓雄 | |
会社側出席者 | ・土井共成 (代表取締役会長) ・髙田孝治 (代表取締役社長) ・三山秀昭 (取締役 内部統制・コンプライアンス・コンテンツ・事業担当) ・森岡啓人 (執行役員コンプライアンス推進室長) ・位寄雅雄 (執行役員編成局長) ・村上博保 (執行役員制作スポーツ局長) ・堀川雅子 (報道局デイレクター) |
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事務局 | ・新谷 弘 (コンプライアンス推進室次長兼番組審議会 事務局長兼視聴者センター部長) ・菱田千佳 (コンプライアンス推進室番組審議会事務局 次長) ・森本泰輔 (コンプライアンス推進室考査・著作権部) |
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4.審議の概要 | 報告 「たかじんのそこまで言って委員会」謝罪の放送について | |
番組視聴・合評 | ||
「NNNドキュメント‘07神戸A事件 被害者と加害者の10年」 | ||
放送日時 | 2007年5月20日(日) 深夜0時50分~1時45分 | |
放送エリア | 全国ネット | |
7月度の番組審議会は7月13日(金)に、読売テレビ本社で開催された。 審議会では、5月20日に放送した「NNNドキュメント`07 神戸A事件 被害者と加害者の10年」を視聴して合評が行われた。番組は10年前に起きた神戸の連続児童殺傷事件のその後を追ったものだが、委員からは10年間にわたる取材について「節度ある充実した取材だった」と高い評価があった。 また、加害者に手厚く、被害者遺族に冷たい少年法の矛盾を指摘する意見が相次いだ。 こうした意見を踏まえて、番組の再放送を望む声や、少年法について再度突っ込んだ番組制作を求める意見もあった。 このあと、6月に読売テレビに寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。 出席は、熊谷信昭、川島康生、秋山喜久、馬淵かの子、金剛育子、阪口祐康、吉岡征四郎、佐古和枝の各委員と読売テレビからは、土井会長、髙田社長以下10名。 |
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5.審議内容 | 別掲の通り | |
6.審議会の意見に対して取った措置 特記事項なし(議事録は関係部署に配布) |
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7.審議会の答申・意見の公表 ●7月26日(木)付け読売新聞夕刊に議事の概要を掲載。 ●8月11日(土)午前5時14分から放送の「声~あなたと読売テレビ~」の中で議事の内容を放送。 ●本社コンプライアンス推進室に閲覧用として議事録を備え置く。 ●インターネット読売テレビホームページ「テレビの門・話し合ったもん」で議事録を公表。(http://www.ytv.co.jp) ●社内LANにて全ユーザー(全社員および関連スタッフ)に議事録を配信。 |
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8.配布資料 | ●視聴番組 概要 ●2007年6月に寄せられた視聴者からの意見・苦情 |
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9.送付資料 | ●民放連機関誌「月刊民放」 ●民放連機関紙「民間放送」 |
【審議内容】
●社側
おはようございます。きょうご出席のご予定の皆さま、お揃いですので、7月の番組審議会を始めさせていただきます。
はじめに出欠の状況ですが、きょうは林委員が所用のためにご欠席でいらっしゃいます。それから私ども読売テレビ側ですが、専務の越智と、それから新任の報道局長の本田が所用のため欠席をさせていただいております。誠に申しわけございません。
それで早速ではございますが、1件、読売テレビ側から審議に先立ちましてご報告をさせていただきたいことがございます。
お手元の文章に書いてありますとおり『たかじんのそこまで言って委員会』の謝罪の放送についてということで、コンプライアンス推進室長からご説明をさせていただきたいと思います。
●社側
それではご説明をさせていただきます。4月22日に放送いたしました『たかじんのそこまで言って委員会』の放送内容に関しまして、在日の中国人ジャーナリスト2人から、番組内での謝罪訂正などを求める通知書が、およそ1か月後でございますが5月29日に当社に届きました。
これを受けまして、当社では6月17日放送の番組の最後の部分で、当社の解説員の顔出しによる謝罪の放送を行い、先方の了承を得ております。
この抗議の内容なんですが、その4月22日の番組は、テーマの一つとして、自衛隊の機密情報流出問題を取り上げておりまして、この中で「テレビでよく見かける中国人ジャーナリストはスパイが多い」等の出演者の発言がございまして、当社では当該の2人イニシャルでスーパー処理をして放送いたしました。
これについて2人が、イニシャルで表示をされているけれども、本人を特定できる内容であり名誉を毀損されたとして、番組内での謝罪訂正を求める抗議をしてきたものです。
当社の対応、認識でございますが、番組での議論は、パネリストやゲストの発言に信頼を置いていることを前提になされております。ただし、内容が当事者に対し、取材をする等という方法で確認することが不可能な内容でございましたので、匿名という配慮をして放送をいたしました。
しかしながら極めて少数であるとはいえ、本人を特定し得た視聴者がいたことによって、本人から「名誉を傷つけられた」と、こういう申し出があった以上、名誉毀損について明確に否定することは、なかなか難しいと考えました。また結果的に視聴者に誤解を与えることになったことを大変遺憾に思っております。
当社としましては、今後、番組内容を、より注意深く点検して再発防止に努める所存でございます。ご報告は以上でございます。
●社側
それでは、きょうは事前のご案内のとおり、5月20日に放送させていただきました日曜深夜のドキュメントの枠の番組ですが、『神戸A事件 被害者と加害者の10年』、皆さまご承知のあの事件の10年後ということで放送しましたドキュメンタリーでございます。
ここに、この番組のディレクターを担当しました報道局の堀川がおりますので、はじめに制作意図等をご説明をさせていただきます。
●社側
報道局の堀川雅子と申します。よろしくお願いいたします。お手元にA4、1枚の紙にまとめた番組概要と意図というのがございますが、ここにも書いてありますが、この番組は10年という切り口で、事件の当事者である被害者と加害者が、それぞれ、どのような10年間をたどったのか、それを淡々と、その事実を並べていくということで、一つの事件で運命が狂ってしまった被害者と加害者がどうなっていくのか、そのことを問題提起したいなと思って制作した番組です。
もちろん10年目というのは、マスコミ側からの観点ということで、当事者にとっては一生終わることのない問題です。しかし、一度やはり事件が起こると、報道というのは、その瞬間、その事件直後というのは過熱報道をしたり、非常に積極的に取り上げるんですけれども、その後、継続的に、その事件を追いかけていくということが、体制的にも、それから、やはり世間と同じように風化していってしまうという点で非常に難しい、なかなか実現できないという現実もあると思います。
私は、事件から1年後に、この事件について遺族の方のドキュメンタリーを放送させていただきまして、この番組審議会でも取り上げていただきました。『一人の遺族の方の生きる力』という、そういったタイトルでの番組でした。
それから9年が経ちまして、自分がまさか10年後に、その報道に携わっているというふうには、その当時は思っていなかったんですけれども、やはり人間関係がずっと続いていた中で、被害者の方の心情、そういったものを学びながら、かつ、じゃあ相手の加害者はどうしているのか、その加害者の現状についても可能な範囲で取材をして報道したいと考えました。
もちろん加害者については、いろいろな制約もありますし、特に今回は少年事件だったということで、すべて知り得た情報を明らかにするということは、やはりしてはいけない、できないことだとは思いますが、やっぱり一人の人間として加害者がどうなっているのか、それは被害者も同じだと思うんですけれども、そのことを可能な範囲で調べて、そして一緒に社会で共有する情報は、どこまで伝えたらいいのか、そこについては、かなり苦心いたしました。
償いや謝罪といっても、なかなか結論の見えるテーマではありませんし、それは人それぞれ内面の問題ですし、ケースによっても違うと思いますけれども、私の中では、その償いと謝罪について、それは一生終わるものではないし、当事者の間で解決していくしかない。そういったことを一緒に視聴者の方に考えていただけたらなというふうに思って番組をつくりました。
それから一つ補足させていただきますと、少年事件ということで、報道には、さまざまな制約が伴うんですけれども、私たち報道局では、地元で起きた、この大きな大事件ということで、どういった報道を継続的にしていくかということを、随時、報道局内で話し合いをしました。
2004年3月に、この事件の当事者であるA少年は21歳になりまして、そして仮退院をしたんですけれども、その際に非常に各メディアが、このA少年の仮退院時の状況について、憶測も含めて、さまざまな報道をしていました。読売テレビの報道局では、デスクや、そして記者たち全員で集まって、こういった仮退院のときの報道をどうすべきかということを話し合いました。
当時、確かな情報というのは、私の取材の中では得られなかったので、読売テレビとしては、情報が非常に不確かな中で報道するということはやめようという判断になりました。
ただし、その後、事件のカギを握る人物もしくは彼のことを知る人物、そういった筋から確かな証言を得ることができたときに番組をしようという判断になりまして、今回は番組の中に出ている元院長、この院長が核心のコメントをしてくれましたので、それを重ねて、今回、番組にいたしました。以上です。
●社側
このドキュメンタリーは日ごろ30分番組なんですが、この回は枠を拡大して55分の番組で放送をいたしました。きょうは、それをちょっとダイジェストにしたものを用意しておりますので、改めてご覧いただきたいと思います。
<VTR視聴>
●社側
それでは、この後の進行を委員長にお任せいたします。よろしくお願いします。
●委員長
委員、いかがでございましょうか。
●委員
この番組を見させていただいて、一つ印象というか、キーワードで言うとしますと、節度というのを感じました。まず、取材の側の節度、この種の報道、特に加害者側が少年にかかわること、しかも殺人ということで、とりわけ、この種の人権がらみ、いろんな利益が錯綜することについては、殊のほか節度というのが報道には求められて、それを事実、あるいは被害者側の家族との信頼の上に立った、淡々とした取材に徹するということで、非常に節度が守られているなと。
もう一つは、被害者側の家族の節度ですね。ただ、こちらの節度は、ある意味、生き地獄の節度のようなところが感じられます。両方、山下さんも、あるいは土師さんのご両親、お父さん、いろんな思いをかみ殺して淡々と取材に応じている。その節度は、また違った意味で見る者に訴えかけるところがあるなと。
もう一つは、ちょっとここは堀川さんにご質問させていただきたいんですけれども、加害者本人に対しての取材というのは、いろいろ難しいのは分かるんですが、加害者側の家族に対する取材というのは、これはもう完全にやっぱり拒否ということだったんですかね。
●社側
10年にわたって依頼し続けておりますけれども拒否です。
●委員
やはり拒否ですか。本来であれば、加害者側からの家族の、ある意味、節度を持った何か取材ができれば非常によかったと思うんですが、その点は、もうしょうがないかなと。印象としては、まず、そういうように思います。
それと少年法の問題ですけれども、これは、いろんな立場の方が、いろんなことを言われて、それまた、それぞれが別に間違っているわけではなくて、正しいと思うんですが、私自身も確かに、ちょっと矛盾点を抱えている法律だなというのは、実際、法律の世界におっても感じるところです。
端的にいえば、確かに加害者側も少年なので保護されるべきというのは分かるんですが、被害者側に置かれている立場で考えると、ちょっとバランスを失しているところがあるなというのが正直なところで、きょうの放送では、わざと取り上げられなかったのかもわかりませんが、一部改正があって、被害者側のほうも、ある程度、意見が言えたり、あるいは記録を見られたりという改正が行われています。しかし、いずれにしても一番大きな欠陥は、加害者本人が更生の過程の中で被害者の家族に謝罪するプロセスが抜けているというところです。
これは、まあケース・バイ・ケースで、すべて全部認めるというのはいかないのは、これは常識として分かるんですけれども、あの加害者本人をアプローチした院長先生が「社会復帰は可能だ」と。可能なら、世の中へ出れば、いろんな嫌なことがあるわけですが、その一番、多分彼にとって嫌なことであろう家族の方に謝る。会って謝罪をするというのは、更生のアプローチのプロセスの一段階としてあってしかるべきではないのかなと。
その点は私自身も抜けているところだなと思います。その点は、多分、問題意識として持たれながらも、あくまでも事実に徹するというところでオミットされたのかなというふうに思いますけれども、そこのところは、いろいろ評価のあるところかなというふうに思っています。感想めいたことですが、以上です。
●委員長
法律家としての委員にお伺いするんですけども、少年法そのものにも、いろいろ意見がありますけども、こういう処置をして、元A少年が再び似たような事件を起こしたときに、誰が、どういう責任を取ることになるんですか、法的には、誰も取れないわけですね。
●委員
誰も取れないですね。
●委員長
誰も責任を取れないような処置をするということが、妥当なことなんでしょうか。「あとは知らん」ということですか。
●委員
「あとは知らん」とは誰も言いませんけれどもね。そういう社会復帰できると判断し、社会へ出したわけですから、結果的に見たら、その判断が合うていたんか、間違うていたんかということになるわけですけれどもね。
●委員長
ありがとうございました。委員、いかがでしょうか。
●委員
この番組を見て非常にやりきれない思いでいっぱいになりました。今のお話にありましたように、最近こういう少年の残虐な事件がものすごく多発しているわけで、こういう問題は、いろんな放送で取り上げられていますけども、結局、社会を映す鏡だなということを非常に感じまして、今ご質問がありましたように、少年のこういう犯した犯罪が統計的に再犯率がすごく高いということを聞いているんですけど、これは本当でしょうかね。
そういうことを聞きますと、例えば、この今の番組に取り上げられている少年にしても、今どこかで普通の人として隣に住んでいるかもわからない。そういう状況の中で、こういうふうに今は誰も監視がなくて野放しになっている。また起こしたときに誰も責任を取らない。非常に気分的にやりきれなさを感じます。
それで今回こういうテーマでしたので、こういう問題について、ちょっといろんな方の意見を聞いてみたんですが、みんなやっぱりすごく、そういうものに、矛盾を感じていて、とにかくおかしい、おかしいと、皆さん異口同音に同じことを言われるんで、やっぱりこれは法律としてきちんと考えてもらわないと同じことが繰り返されるので、何度こういうことが繰り返されたら終わるんだろうかというのが、みんなの気持ちなんです。
ですから、この番組を拝見していて非常に事実を淡々と述べられて、非常にそういう感じがしましたが、マスメディアの使命の一つとして、やっぱりこういう国民の総意というか、そういう声を取り上げて、やはりいい方向に向かうようにしていただくというのが一つの大きなマスコミの使命だと思いますので、ちょっとそういう視点で、また今後も、そういう問題を取り上げていただきたいなと思いました。
この問題は非常に、そういう深い問題というか、今後にかかわる問題でもありますので、そういう観点で、もうちょっと、突っ込んだ取材ですとか、それから本当に更生できたというんでしたら、もう今立派な社会人なわけですから、堂々とみんなの前に出て、自分がどうして、こういうことを犯したのかということを、むしろテレビで自分で説明するぐらいのことがないと一人前の人間になったとはいえないと思いますね。そういう厳しく追跡をしていただきたいというのが、みんなの一般の方の願いだと思います。ちょっとそんな感想を持ちました。
●委員長
ありがとうございました。委員いかがでしょうか。
●委員
10年にわたって被害者と加害者の事実関係を淡々と追っかけられ、しかも被害者側のほうの心の苦しみというものを浮き彫りにしたと、こういう意味で非常に優れた番組であるというふうに思います。
ただ時間帯が深夜1時ということなんで、もうちょっと考えさせる番組であってもよかったかなというふうに思いますけども、何を考えるかというと、一つは、少年がそういう犯罪を犯した心理的なバックですか、これは何か、その家庭教育にあったのか、お母さんが非常に厳しかったとか、コミュニケーションがいかなかったというのが一つの要因だということであれば、その辺を、ちょっと浮き彫りにする手がなかったのか。
あるいはテレビゲームなんかで殺人をしても、すぐに生き返るんですな、みんな。そういうふうなテレビゲームなんかの影響が非常に強いのか。あるいは、次の少年法の問題になりますけども、この事件じゃなかったと思いますけど、少年法で「少年は罰せられないんだ」と、こういうふうに言っているのに何で俺をつかまえるんだというふうに言っている。そういう意味では、少年法が逆に犯罪を促進、促進というのか、起こさせているという議論があるかもしれないんで、皆さん方が、今言われたように、次には少年法の矛盾というものを、出来れば、どこかで追求してもらいたいと。
日本では、どうも加害者の人権のほうを、被害者の人権よりも守っているという何か、ちょっと矛盾する行動が非常に多いように思いますんで、その辺で、そういった意味で少年法が、今度2007年の5月25日に改正になりましたけど、あれで十分なのかどうかということを、さらに、あと10年はいらっしゃらないかもしれませんけど、追求していただいて、世に問うというのは非常に大事なことだというふうに思います。
それから被害者のほうのご両親の精神的なケアですが、これは日本には宗教がないから非常に難しいと思うんですけど、何か、そういったものに対する示唆があれば、被害者のほうのご両親も、ちょっと救われるのかなと。
このテレビに出て発言されたということは一つの救いかもしれませんけども、そういった意味で、何か、そういったものの示唆が示せたらよかったかなと、欲張りかもしれません。
最後は、こちらの資料に書いてありますけど、マスコミによる2次被害、遺族がメディアスクラムによる2次的な被害と書いてありますけど、その辺で非常に加害者の人にとっても、被害者にとっても、加害者のほうは今の少年法で守られていると思いますけれども、被害者のほうはマスコミの方にいろいろな取材を受けるというのは非常に苦痛だと思いますので、代表取材的なものとか何か、その辺のマスコミの取材のあり方的なものですか、こういったものを、どういうふうにしていくか。
特に日本の場合はワーッと一つの問題が起こると、みんな集中して取材に行かれるんで、あれが非常に被害者の方にとっては苦痛のようですんで、その辺を浮き彫りにするか。いずれにしましても非常に素晴らしい番組だと思いますけど、この先を何か突っ込んでいただければ、さらにいいなと、こういうふうに思いました。
●委員長
委員、どうですか。
●委員
こういう事件を一過性で終わらせないということで、10年かけて取り組まれたというのは素晴らしいことだなと思います。本当に非常に重たい問題でありますので、いろんなことを考えさせられたという点でもいい番組だったと思うんです。
ただ見終わった後に、何か、どうしようもない救いのなさというのか、説明でもありましたように、謝罪と償いというのは、やっぱり個人のレベルの話であるし、結論もないし、ケース・バイ・ケースというところもあって、もちろん個人が、それぞれこの番組を見て、いろんなことを考えて認識を新たにしてということで、社会全体が変わっていくということもあるんでしょうけれども、それが原点ではあるとは思うんですが、この問題は個人レベルだけでは済まないだろうと、今までの委員の先生方がおっしゃったように、やっぱり少年法に問題があるんじゃないかとか、あるいは再犯の問題とか、あるいは何で彼が、あんなことをするまでに救ってあげられなかったのかということも、すごく大きな問題だと思うんです。
だから個人レベルではなくて、やっぱり私たちの社会が、もうちょっと社会全体として考えなきゃいけない点ということを、やはり問題提起していただくということも、やっぱりマスメディアの大きな使命ではないのかなと思いました。
だから、そういう社会性というか、コミュニティーの問題とか、次回は、そういう面での取り組みというものにスポットを当てていただいたら、そしたら何か、もっとみんなで共有できることもあるかなという気がしました。
●委員長
委員、いかがですか。
●委員
非常に重たいテーマでありましたけれども、共感をもって見させていただきました。幾つか印象に残る点があるんですけども、まず一つは、先ほどからも出てますが、人を殺すという、取り返しのつかないことをした人は、デモクラティックな法治国家である日本では、その人の人権はきちっと保護されている。それに対して、かけがえのない家族を失って非常に終わらない苦しみを受けている人に対して、あまり納得のいかない今の日本の刑法なり少年法なりの制度のもとでは、そういう取り扱いになっているんではないかと、こういう問題が一つはっきり提起されたわけですね。
それから、もう一つは、更生教育のあり方というんでしょうか、特に、さっきの院長のお話にも出てましたけども、一人前の社会人としてやっていけるようになったという言葉がありましたけれども、どうやって自分の犯した罪を、これから償っていくんだという、そっちのほうの教育というのが、更生教育の中で、どれだけされているのかといえば、まあ、されているかもしれないけども、あまりはっきり見えてこないというのが、もう一つの非常に印象に残った点でありまして、そこを、こういった問題を提起されておるというふうに思いました。
この2点目の問題については、たまたま、きのう新聞を見ておりましたら、実は、この事件が起こった数か月後に、昔、連続殺人事件を起こした永山則夫というのがいまして、これが処刑されているんですね、この事件の数か月後に。この事件がきっかけになったんではないかというふうに言われているようですけど、その永山則夫が、5人ほど連続殺人をやっていますけども、その前に、実は3回、家裁で審判を受けておるんです。
要は、その人が言っていますのは、その家裁の審判のときに、処理が徹底してなかったといいますか、対応が徹底してなかったから、場合によっては、ああいう殺人事件がなかったかもしれないということを言っているわけでして、やはり今の家裁の審判のあり方とか、あるいは、少年院の更生教育のあり方とか、そういったあたりは、非常に問題が多いなということを感じたわけです。
少年法が改正になったとか、あるいは、被害者等対策基本法でしたっけ、という法律が、その後、できているということですけども、やっぱり依然として、この問題は今後も、続けて追求すべき問題かなというふうにも思いますので、この10年間、取材を重ねて、こういう番組をおつくりになったというのは、非常に素晴らしいわけですけども、引き続き、このテーマに取り組んでいただきたいというふうに思いました。
●委員長
ありがとうございました。委員いかがでしょうか。
●委員
これ私も見終わって、やっぱり救い難いようがない、やりきれないなという感じが、ずうっとしてまして、何かこの少年の両親のコメントが出てこなかったんですけれども、ずうっと感じていたのは、子どもを14歳になるまでに、ちょっと異常なことをするいうのも、私たちも、まま聞いておりますけど、男の子を持つ親は怖いなあと思います。親御さんも多分、ちょっと普通の子と違うなという感覚は持たれていたんじゃないかなと思ってね、そういう感じの親御さんとお話しはできなかったんですか。
●社側
質問は、ずっと出していましたけれども。
●委員
できなかったんですか、そうでしょうね。
子どもの中の世界で。もうちょっとアンテナを張りめぐらして、こんな重大な犯行を起こすまでに親のほうが、もうちょっと誰か相談するとか、児童相談所に行くとか、カウンセリングを受けさせるとか、もうちょっと真剣にやってくれたら、これは防げたんじゃないかなと、すごく感じました。
被害者の立場だとか、加害者の立場だとかいうよりも、まず、子どもの教育をしっかりしたほうがいいんじゃないかなと、私は、そう思いまして、それ以外は、もうやりきれなくて、もう本当につらいです、こういうの。もうちょっと明るい話題を願っています。
●委員長
そうですね。委員いかがですか。
●委員
皆が、そろそろ忘れそうなころになって、こういうのをテレビで放映して警鐘を鳴らすというのは、私は大変大事なことであると思いますし、非常にいいことだと思いますので、暗い気持ちになるのは、確かに、そのとおりではありますけれども、やはり続けて、こういう番組を作っていただきたいと思います。非常に素晴らしい企画であったと思います。
こういった番組、当然のことでありますけれども、非常に落ち着いた雰囲気で冷静な取り扱いで、安心して見ておれたという番組だったと思います。
ほとんどのことは、皆さん、もう既におっしゃっていますので、あまり付け加えることもないんですけれども、私は、あの内容について言いますと、被害者のお父さんというのは、立派な人だなというふうに、つくづく思いました。
特に私が気づいたのは、最初のほうは、きょうは出てなかったかもしれませんが、更生というのは自分のしたことを正しく理解して、はじめて始まるんだというふうにおっしゃっていました。
もう一つは、自分が命を終えて息子のところへ行く時に恥ずかしくないような人間でありたいというふうにおっしゃっていました。これは悩みに悩んだ末の悟りのようなものではないかと思うんですけども、非常に頭が下がりました。
私は、皆さんがおっしゃったのとほぼ同じなんですけども、どうしても拭い切れない疑問があるんです。それは医者というのは、災害の時にトリアージというのをやるのは皆さんご存じだと思うんです。A、B、C、Dの札をけが人につけていって、これはもう、とても助からんから、これは放っておけと、助けられるところから助けていくという方法です。
これは限られた時間内で、限られたリソースのもとで最大の人を救うというためには、これが非常にいい方法なんで、大変残酷ではありますけれども、見捨てる患者は見捨てていくということです。そういう考えからいうと、この少年一人を救うために、どれぐらいのマンパワーと、あらゆる面のリソースを使っているのかと、それだけのことを使うんだったら、もっともっと、ほかにたくさん助けられる少年少女がいるんではないかなという気がするんです。
お父さんの話になりますけども、最後に、「どうしても今まで見たところでは、加害者が反省しているとは思えない」というふうにおっしゃっていました。直接私が話ししているわけでもありませんし、詳しいデータは分かりませんので、それはちょっと、どうか私には分かりませんけれども、ただ、その可能性は十分あると思うんです。
というのは、彼は少年院へ送られ、少年院は何のために送るかというと、番組でも出ていましたけれども、彼を更生さす。罰するためではないんですね。つまり少年院へ送るということは、「おまえは病気だから、こういうことをしたんで、病気が悪いんで、おまえは悪くない」と言っておるんです。世間が。これではお父さんの言われるように本人が反省することによって、更生が始まるということにも当たらないんですね。
もし言うならば、更生して、そういう施設を出て、大人になった時点から何年かでも、刑務所へ放り込んで、自分のやったことを十分認識させるというふうな、何か、そういう方法を講じないと、これは被害者家族、被害者にあまりにもきつくって、加害者に甘い、この制度を何とかして変えないといけないんじゃないかというのが、もう皆さんと全く同じ意見でございます。
●委員長
私も、皆さんがおっしゃったご意見、いろいろご意見おっしゃいましたが、すべて同感するようなご意見ばかりです。やっぱり、この事件は、もうみんながめいめい身近な事件として感じ取れる事件でしたから、みんなが深い関心をもっていましたし、また、みんなが深い悲しみを共有しているわけで、そういう意味では、この番組は番組としては、非常によい番組であると思います。
そういう意味では委員がおっしゃったように、夜中の1時ぐらいからの放送というのは、もったいない気がしまして、再放送にでもできたらと思います。
この中身については、いろんな意見や考え方があるでしょうから、番組審議会としては、内容についての問題を議論する場ではありませんので、それは申し上げる筋じゃないんですけども、今、委員がおっしゃったような感じを持ちますですね。普通の人間だったら持つと思うんですよ。
私なんかも、子どもさんたちを失った親御さんの態度ですね、考えられないぐらい抑制された紳士的態度でですね。私だったら、とてもああはいかないと思います。どんなにしてでも探し出して、ただじゃ済まさんと。
これは日本人が、あまりにも淡泊というか、外国では、こうはいかないんじゃないかと思うんで、お願いとしては、諸外国で少年法に相当するものとか、こういう犯罪について、どういうことになっているかとか、それから、やはり委員がおっしゃったように、こういう事件というのは、戦前、戦中には起こったという記憶がないんですが、なぜ今起こるのか、ゲームの影響なのか、教育の影響なのか、子どもたちが怖いものを知らなくなっているんではないかとか、やはり社会的に重要な問題なんで、なぜだということを、みんなが考えたり、解明する糸口を与えてもらえるような番組が作れないものかなと思うんです。
親バカ、くそガキ、だめ教師という言葉がありますが、親バカ、くそガキはいいんですけれど、だめ教師というか、私は、だめ社会ということになるんじゃないかと思うんですが、妙な事件が起こったり、世の中がおかしいということは、結局、社会がつくってますので、ですから、この問題が非常にいい番組であったというのは、皆さん同じご意見なんですが、さらに情報を提供していただけないかなという気持ちになりました。ありがとうございました。
この番組をお作りになった立場から、堀川さんのほうで追加のコメントがあれば、おっしゃっていただいて。
●社側
ありがとうございました。本当に出口の見えない番組ですので、私自身が制作の過程で、どういうふうに終着しようかということを非常に悩みました。皆さまがおっしゃって下さったように、やはり、もっとここを知りたいというところが多分にあったと思います。
今回、加害者と被害者について取り上げた。そのことによって、例えば、被害者のご遺族としたら、取材は10年してきたわけですから、もっともっと伝えてほしかった。もっと、このインタビューを使ってほしいというところも随分割愛しなければいけなかったですし、それから、じゃ加害者の情報も制約もありましたし、抱えきれていないというふうなところも反省です。
たくさんの視聴者の方から、70通ぐらいのメールが届いたんですけど、その中に、ぜひ11年目以降も取材してほしいというのがありまして、果たして、そういったことが私にできるのかという点もあるんですが、やはり、まだまだ追求しきれていない点は真摯に受け止めて、今後も継続していかなければいけないんだろうなと思っています。
委員の方のお話に、終わった後に、やはり何ともやりきれないというご意見がありまして、私自身も本当に取材をしていてやりきれない思いになることが多かったんですけども、最終的には被害者のご遺族の方が、結局、元に戻らないものを追い求めていくけれども、じゃ、どこで自分たちの心のよりどころを見つけていくかというところで、今回、ここでダイジェスト版でしたので、ありませんでしたけれども、被害者のお一人のお母さんが命の尊さを訴えていく、もう一人のお父さんは少年法について、自分と同じような悔しい思いをする人がいないように伝えていくというふうに、社会活動に自分たちの思い、悔しさというのを持っていかれているというところは非常に学ぶところが大きかったです。
しかし、そういうふうに被害者遺族の方が、そこまでしていかなければいけない社会というのは何なんだろうなとか、やっぱり切ないというか、やりきれない思いになりました。
そういった点も含めて、せめて、そういった気持ちを報道することで何か社会貢献が報道機関としてできるのならば、非常に重たいテーマですけれども、やっていくしかないのかなというふうに今お話をお聞きして思いました。
本当に切り口が多すぎて、少年法や倫理観や親子関係や心理的問題、さまざまな側面があるので、どれを取っても、まだまだ、これから取材しなければいけないことも多いなというふうには思いました。ありがとうございました。
●委員長
おっしゃるとおりですね。それじゃお返しします。
●社側
ありがとうございました。
次に、それでは6月に視聴者の皆さまからいただきました声について、簡単にご説明をいたします。
6月は6000件あまりでして、まあ平均的な数でした。ご承知のとおり、今年は野球の中継、特にジャイアンツの中継が非常に減っているものですから、これについては非常に多くの抗議をいただいております。おとといも中継がありませんでして、きのうもたくさんの抗議が来ていました。悩ましいところです。
それから初めにご説明をしました「たかじんのそこまで言って委員会」で、謝るというか、謝罪の放送をしたことについては、視聴者の反応は非常に少なかったです。もっと、いろんな反響があるのかと思っていましたけれども。
それからあと二つ、夕方のニュース番組について、いろんな考え方もあるんでしょうけれども、猫のことについては、動物愛護の方からのご意見を7件いただきました。
最後に書きましたことは、これは明らかに我々のほうのミスでございまして、これは本当に報道のほうに反省するように伝えてあります。やっぱり、たばこを未成年が吸っているようなところを見たら、いくら別の取材であろうと、止めるなりするのが当然でございます。これは気をつけていくように現場に申してあります。
6月、皆さまからいただきました声の内容は以上でございます。
次回ですが、8月は夏休みですのでお休みをいただきます。ですから次回は9月14日、金曜日に、この場所、この時間で開催をさせていただきたいと思います。
きょうは本当にありがとうございました。
- 平成19年度読売テレビ番組審議会委員
- 委員長 熊谷信昭 兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
- 副委員長 馬淵かの子 兵庫県水泳連盟 顧問 元オリンピック日本代表
- 副委員長 川島康生 国立循環器病研究センター 名誉総長
- 委員 秋山喜久 関西電力株式会社 顧問
- 委員 金剛育子 能楽「金剛流」宗家夫人
- 委員 林 千代 脚本家
- 委員 阪口祐康 弁護士
- 委員 佐古和枝 関西外国語大学教授
- 委員 北前雅人 大阪ガス株式会社 代表取締役副社長執行役員
- 委員 谷 高志 読売新聞大阪本社 専務取締役編集担当