番組審議会報告とはProgram council report

「番組審議会」とは、放送法という法律で定められた審議機関のこと。
テレビ局が放送する番組の充実・向上と適正をめざして審議するために設置されています。
讀賣テレビ放送番組審議会 委員は、さまざまな分野の有識者10名で構成されており、
原則として審議会を月1回開催しています。
あなたが知っている番組について話し合っていることもありますので、
ぜひ一度読んでみてください。
いつもとは違った視点でテレビを見るようになれるかもしれません。

※読売テレビの番組は、放送基準にもとづいて製作しています

第620回2021.3.12

3月の番組審議会は、12日(金)に開催されました。

今回の対象番組は、
2月14日(日) 15時00分~16時25分 放送の
『ニッポンのレジェンド発掘SP「さいしょの人はスゴかった‼」』です。

また2月に視聴者の皆さまから寄せられた声なども
委員に報告されました。


□出席委員
勝田泰久 馬淵かの子 北前雅人 佐古和枝 藤野可織
小林順二郎 梶山寿子 島尾恵理 白羽弥仁(書面参加) 松尾徳彦

『ニッポンのレジェンド発掘SP「さいしょの人はスゴかった‼」』について
委員の皆様から寄せられた主なご意見は以下の通りです。

「カメラ付き携帯、点字ブロック、羽根つき餃子など
身近なものの誕生秘話を初めて知った。
笑いあり涙ありのバラエティー色たっぷりの内容だったが、
一方で、日本の産業界の浮沈やバリアフリー化、 中国残留孤児問題といった日本が抱えた社会問題が浮かび上がっていた」
「華のあるMCのふたりが番組をひっぱっており、楽しく見られた。
不必要なトークゲストがなかった点にも好感が抱けた」

このように、MCの番組進行にも高い評価をいただきました。

「羽根つき餃子誕生に至るエピソードが感動的だった。
ドラマ仕立てが成功していた。
発明者自身もさることながら、
資金を提供した支援者の存在に特に感銘を受けた」

様々なものを生み出した人たちや周囲の人たちの人間ドラマに
大きな感銘を受けた、という声が多く聞かれました。

一方で、それぞれのエピソードの描き方やネタの選択について、
厳しい声もあがりました。

「プリクラの誕生について、開発の経過が描かれていなかった点が残念。
キリンを初めて輸入した人にも、放送しなかった面白いエピソードがまだまだあったのではないか。
また3Dプリンターについては、
開発秘話とともに特許を取得しなかった等『失敗』について、
もっと深く掘り下げてほしかった」
「各エピソードを細かく見ていくと中途半端さを感じるが、
随所で面白く見せようという工夫、演出が感じられる。
あまり難しく考えずにボーッと見て楽しめる番組だった。
ただ芸能界ネタは、この番組のコンセプトからすると不要だった」

また、放送での言葉の誤用について、このようなご意見も寄せられました。

「この番組についてではないが、他局も含め、
言葉の誤用や文字の誤りが最近目につく。
放送中に間違いである旨が明確になっていれば視聴者として納得するが、
放置された場合、誤りが今後、社会に通用してしまうのではないかという
危惧をいだく。留意してほしい」
『ニッポンのレジェンド発掘SP「さいしょの人はスゴかった‼」』、
また一般的な問題として言葉の誤用について、
委員からの主なご意見をご紹介しました。

第619回2021.2.11

2月の番組審議会は、11日(金)に開催されました。

今回の対象番組は、1月10日(日)に放送された
『ダイワハウススペシャル プロ野球NO.1 決定戦 バトルスタジアム』
です。

また、昨年12月と今年1月に視聴者の皆さまから寄せられた声の概要なども報告されました。


□出席委員
勝田泰久 馬淵かの子 北前雅人 佐古和枝 藤野可織
小林順二郎 梶山寿子 島尾恵理 白羽弥仁 松尾徳彦

『ダイワハウススペシャル プロ野球NO.1 決定戦 バトルスタジアム』について
委員の皆様から寄せられた主なご意見は以下の通りです。

「選手が野球ではなく様々な競技に真剣に取り組むという従来の形式から、
今回はAI対決などコアな野球ファン向けの内容になっている。
野球にあまり親しみのない視聴者にとっては、
従来の運動会形式のほうが楽しめたのではないか」

今回で36回目になる恒例の番組。
コロナ禍のもと、今回は新しい形での番組となりました。
そのため、従来の形式のほうが親しみやすかったというご意見をいただきました。
この点について、番組担当者は以下のようにお答えしました。

「おととしまでは大阪城ホールで、観客を8000人ほどを招いて、
ファン感謝の意味も込めたイベントもやりながらの番組だったのですけれども、
今回はコロナ禍により、大阪城ホールを離れて京セラドームを中心に、
全く違う番組として、一から試行して制作してまいりました」

「最も力を入れた点が、AIとバッターが対決するというコーナーです。
一番やりたかったコーナーです。
打者の頭の中を視覚化する、駆け引き自体を視覚化したいという思いで、
このコーナーや番組を制作しました」

番組担当者が力を入れたAI対決コーナーはおおむね好評でした。

「打者を打ち取るための配球データをインプットしたAIと
実際の選手との対決は非常に面白かった。
往年の名投手のデータをいれての対決なども見たいと思わされた」

ただ、AIコーナーについては、

「実際の配球は試合の局面ごとに違うはずだが、
今回のデータはどんな状況での配球だったのか、説明が欲しかった」

というご指摘も。
これについて番組側は、

「今回は
『1回の表、1打席目、ランナーなし、アウトもゼロカウント』という設定で、
これに基づいてAIが配球を導き出しております。
その辺も含めて、もう少しご説明できる部分もあったかもしれません」

また、コアな野球ファンというわけではない委員の方からは、

「野球ファンでなくても番組中のトークを通して選手の人柄がよくわかった。
あとは野球ファンを増やすために、
プロ野球の見方・楽しみ方の解説などの工夫があればよかった」

という声が寄せられました。

さらに野球界の現状に関するご指摘もありました。

「番組で使われていた高額なピッチングマシンは、
予算の潤沢な高校野球の強豪でも使われているという。
経済力がチーム力の差になっているという
現在の野球をめぐる状況が浮き彫りになったかのようだ」
「ジャイアンツ原監督のインタビューは、示唆に富んで内容が濃かった。
DH制に関する提言だけではなく、
『女子野球の振興』や『野球用具をもっと安く』という主張は、
野球界の現状への危機感からだろう」

最後に番組全体に対しては、こんなご意見もありました。

「過去映像で喫煙シーンがあったが、配慮が必要ではなかったか」

これらの点について、番組側は以下のようにお答えしています。

「ご指摘いただいたたばこのシーンに関しては、
非常に苦慮したところです。
やはり今と違って昔の、喫煙を社会が受け入れるところがあったという
時代性を表現するために、ああした場面をチョイスしました」

「当然ながら議論の余地はあるかと思いますが、
そういう時代を経ながらスポーツもやっぱり変わっていっている、
というようなことを表現したく思っていました。
ご意見は真摯に受け止めたいと思います」

『ダイワハウススペシャル プロ野球NO.1 決定戦 バトルスタジアム』について、
主なご意見等をご紹介しました。

第618回2020.12.11

12月の番組審議会は、11日(金)に開催されました。

今回の対象番組は、
10月4日・11日(日) 7時00分~7時30分 放送の
『遠くへ行きたい50周年スペシャル! 懐かしきニッポン再発見!』です。

11月に視聴者の皆さまから寄せられた声なども
委員に報告されました。


□出席委員
勝田泰久 馬淵かの子 北前雅人 佐古和枝 藤野可織
小林順二郎 梶山寿子 島尾恵理 白羽弥仁 松尾徳彦

『遠くへ行きたい50周年スペシャル! 懐かしきニッポン再発見!』について
委員の皆様から寄せられた主なご意見は以下の通りです。

「旅番組の原型を作ったといえる番組。
テーマソングを聞いただけで「この番組だ」とわかる。
過去に放送された中からピックアップされたなつかしい出演者の姿や
日本各地の習俗・風景がふんだんに盛り込まれた贅沢な番組だった。
時代の記録としても貴重だ」

50周年を迎えた番組。
なつかしい出演者や昔の日本の姿を見ることができたという評価を
多くいただきました。

『旅番組の原型』といわれますが、
時代の移り変わりによって番組のテイストも変化しています。

「今は、出演者が視聴者の代表として
旅を疑似体験する形になっているのに対し、
以前は大スターたちを旅人としたドキュメンタリー的な番組だった。
それだけに、旅人となった出演者の人間味が
番組により色濃く反映していたと思う」

また、かつては当たり前のように放送されていても、
現在の視聴者には受けいれられないといった事柄もあります。

「混浴や喫煙マナーなど、
当時としては許されていたが今では眉をひそめられる部分については
今回の放送に際しては配慮が必要だっただろう」

「遠くへ行きたい」という番組の、50年にわたる歴史・蓄積の見せ方について、
ご意見もいただきました。

「過去に取材した場所を地図ですべて示すなど
50周年番組らしい工夫も欲しかった」
「過去の映像を楽しむときには時代背景が大事な要素だ。
今回の番組も、各エピソードを時系列順に並べてほしかった。
また往年の大スターたちの名前も
もっと頻繁に表示したほうが親切だっただろう」

長年親しまれてきた旅番組『遠くへ行きたい』に対して、
これから期待される点についてのご意見もいただきました。

「旅番組とはいっても大事なのは何といっても「人」。
『旅の達人』の顔をもつ出演者たちが並んでいた頃に比べると、
今は総体に地味になっているのではないか」
「タレントだけではなく文化人的な出演者なども配してほしい」
「『旅』の意味するところは過去と現在とでは異なっているだろう。
また『遠く』という言葉のイメージも過去と現在では違うはずだ。
こうした点を再考して、
現代のテレビ番組としてのさらなる工夫を加えて
番組を続けていってほしい」
『遠くへ行きたい50周年スペシャル! 懐かしきニッポン再発見!』について、
委員からの主なご意見をご紹介しました。

第617回2020.11.13

11月の番組審議会は、13日(金)に開催されました。

今回の対象番組は、
9月17日・24日(木) 23時59分~24時54分 放送の
『~両親ラブストーリー~オヤコイ』です。

このほか、2020年上半期の番組種別や
10月に視聴者の皆さまから寄せられた声なども
委員に報告されました。


□出席委員
勝田泰久 馬淵かの子 北前雅人 藤野可織
小林順二郎 梶山寿子 島尾恵理 白羽弥仁 松尾徳彦

『~両親ラブストーリー~オヤコイ』について
委員の皆様から寄せられた主なご意見は以下の通りです。

「スタジオのタレントに両親の恋愛物語をドラマで見せる、という
ありそうでなかった企画。
それぞれのドラマのテイストも異なり、気軽に見ることができた」
「ドラマに登場する黒電話などの小道具や、
彼女の家に電話したら父親が出てきた、など、
昭和の恋愛風景が懐かしくのめりこんで見られた。
当時のテイストを色濃く感じさせ、 演出家が楽しんでドラマを作っているのだろうと想像させられた」

さらに、

「タレントの両親は一般人なので、
恋愛エピソードというプライベートな部分のリサーチには
細心の注意が必要だっただろう。
制作陣との信頼関係を築けてこその番組だと感じた」

といった意見や、

「嫁姑バトルのエピソードは、
『オヤコイ』というコンセプトからは外れるのではないか。
ただ、姑に朗らかに言い返すお嫁さんの姿は爽快だった」

といった声が寄せられました。

また一方で、辛口の意見も。

「二週にわたるエピソードについては、
ドラマ部分の重複感が大きかった。
もっとコンパクトなダイジェストでつないだほうがよかったのではないか」

あるいは、

「両親から聞き取った事実をドラマ化したという点は理解できるが、
嫁姑のエピソードなど当時の女性像・家族像を無批判に描いた結果、
『女性は忍従を強いられて当然』という
社会の暗黙のプレッシャーが見え隠れした結果になったところが
非常に気になった」

という、現代日本の社会に潜む問題点を番組から読み取る意見も寄せられました。

『~両親ラブストーリー~オヤコイ』について、
委員からの主なご意見と番組担当者の声をご紹介しました。

第616回2020.10

10月の番組審議会は、9日(金)に開催されました。

今回の対象番組は、9月26日(土) 13時30分~14時55分 放送の
『Iwataniスペシャル 鳥人間コンテスト2020特別編 新たな挑戦』です。

このほか、9月に視聴者の皆さまから寄せられた声も
書面にて委員に報告しました。


□出席委員
勝田泰久 馬淵かの子 北前雅人 佐古和枝 藤野可織
小林順二郎 梶山寿子 島尾恵理 白羽弥仁 松尾徳彦

『Iwataniスペシャル 鳥人間コンテスト2020特別編 新たな挑戦』について
委員の皆様から寄せられた主なご意見は以下の通りです。

「高いところから飛び立つスリルと記録への期待、
パイロットや応援する人たちの姿や琵琶湖の美しい風景。
多くのカメラを駆使して制作された素晴らしい番組だと思う。
天候との兼ね合いなど難しい要素を抱えつつ、
出場者やスタッフの安全・健康を確保しながら
毎年の大会を実施し放送する苦労がよくわかった」

さらに具体的には、

「空を飛びたいという素朴な夢を実現するために、
出場者が知力と体力を駆使する姿は感動的だった」

また、

「最初期の大会のイメージしかない者にとっては、
現在の参加者たちのレベルの高さに驚かされた」

というように、近年の鳥人間のレベルの高さに目を奪われたという声が
多く寄せられました。

「記録を目指すために遊びが進化し、技術が追求され、
高度化していったという流れが見てとれた。
長年続いたこの大会からは様々な人材が輩出されている。
技術を追求した機体作りの姿勢は、
日本のモノ作りというところにもつながると思えた」

今回の放送では、記録保持者や過去の出場者の現在の姿を紹介されています。
これについては、

「過去の参加者たちが空への情熱を持ち続け、
現在でも空に関わる様々な職業についている姿に感銘を受けた。
ただ、女性の参加者で現在も活躍している人もいるはず。
女性の姿もきちんと紹介してほしかった」
「大記録を打ち立てレジェンドとなった人たちの姿や言葉には重みがある。
レジェンドたちの声をもっと聞きたかった」

という声も寄せらました。

担当者は、

「レジェンドの方々も、収録のときはやっぱり緊張されていました。
打ち合わせのときには普通に僕らとしゃべれるのですが、
やっぱりプロのMCの方たちを目の前にして、カメラが何台もあると……
何とかしたかったなという反省点のひとつです」
「委員の皆さんのご意見をうかがいながら、
『ああ、あの人もいたな』というふうに、
何人かの女性の参加者を思い浮かべることができました。
なぜそちらの側に突っ込めなかったのかなというところは、
大きな反省です」

と話しています。

『Iwataniスペシャル 鳥人間コンテスト2020特別編 新たな挑戦』について、
委員からの主なご意見と番組担当者の声をご紹介しました。

第615回2020.9

9月の番組審議会は、委員から審議対象番組に対する意見等を
書面にて寄せていただく形で開催しました。

今回の対象番組は、
7月31日(金)深夜に放送されたytvドキュメント
『COVID-19の設計図~未知のウイルスとの闘い 次の一手は~』です。

このほか、7月と8月に視聴者の皆さまから寄せられた声も
書面にて委員に報告しました。


□出席委員
勝田泰久 馬淵かの子 北前雅人 佐古和枝 藤野可織
小林順二郎 梶山寿子 島尾恵理 白羽弥仁 松尾徳彦

ytvドキュメント
『COVID-19の設計図~未知のウイルスとの闘い 次の一手は~』について
委員の皆様から寄せられた主なご意見は以下の通りです。

「未知のウイルスに対する計り知れない不安と恐怖が続いている中、
時宜を得た番組だった。
救急医療に取り組む経験豊かな医師の行動と落ち着いた物言いに
安心感と信頼感を抱けた。
またワクチン開発に挑む研究者の取り組みを知ることができ、
大きな期待感を抱けた」
「待機用ホテルでのスタッフの活動、要配慮者や妊婦・乳児への対応等、
あまり表立って話題にならない部分もきめ細かく取材している。
『大切なのは備え。忘れないように常に意識しておく』という
医師の言葉は重い」

番組制作のプロセスについて、担当者は、

「この番組は、2名の記者がディレクターとして制作しました。
ひとりは京都第一赤十字病院の高階医師を取材。
ワクチン開発のほうは、『かんさい情報ネット ten.』の取材を通して
大阪大学の微生物病研究所の松浦教授と出会い、
その研究開発のプロセスをカメラに収めることができたものです」

と話しています。

委員からは、いくつかの質問も寄せられました。

「ホテルでの隔離の実際も関心のあることだったが、
陰性となり帰宅した後までフォローして取材をする必要があったかは
疑問だ」

これについて、担当者は、

「取材対象となった女性には、番組の意図とあわせて
『感染を広げない』という当社の報道現場ルールをご理解を頂き、
療養先のホテルの生活の様子はご自身でスマホ撮影していただきました。
ホテル療養中はスマホ越しの撮影・取材しかできなかったのですが、
社会復帰されたことをきちんと示したい、
またコロナによる後遺症についても社会に伝えるべきだと考え、
退院後、ご帰宅後の様子も番組内で紹介させていただきました」

また、ワクチン開発取材について、委員から、

「ワクチン開発の手法はいろいろあり、
阪大では3つの手法で開発が進んでいると聞いている。
今回はそのうちのひとつVLPを取り上げていたが、
既に臨床実験が始まっているDNAワクチンではなく、
なぜVLPに着目したのか。
阪大ではなぜ3つが同時進行なのか、3つの手法の違いは何かなど、
地元大阪で進んでいる注目のプロジェクトなので、今後の取材に期待する」

といった質問と意見が寄せられました。

これについて担当者は、

「取材はもちろん、3つの開発それぞれに及んでおりますが、
すべてを番組で紹介しようとすると
難解な医学番組のようになるのでは、というおそれがありました。
結果、今回は、取材が一番進んでいたVLPを
紹介させていただくという形を選択しました」

としています。

「多角的な取材が総花的に展開された結果、
タイトルにある『次の一手』が何なのかがぼやけてしまったのではないか」
「あふれるコロナ報道を見てきたものにとっては
目新しさや鋭い主張に欠ける。
もっと尖ったドキュメンタリー番組を期待する」

といった厳しい声も委員から寄せられました。

これらを含め担当者は、

「番組タイトルでうたった『次の一手』が具体的に見えにくい、
といったご意見がありました。
この点は、取材やまとめ方に工夫が足りないというご指摘であると
真摯に受け止め、次に生かしたいと考えております。
また、『内容が総花的だ』というご意見もありました。
番組のポイントを医療現場とワクチン開発というふたつにしたことで
全体の内容を薄めてしまったところが原因だと考えられます。
医療・研究者など『その道のプロ』が
非常事態に向き合う際の『冷静さ』を多角的に伝えたいという意図から
今回のような形をとりました」
「我々報道機関にとって、新型コロナは経験したことのない事態で、
向き合い方や報じ方については日々試行錯誤が続いております。
報道の切り口としては、雇用、経済、病気、暮らし、行政、教育等、
様々な観点があります。
長期化は避けられない今回のウイルス禍が社会にもたらしたものについて、
長期的な視点に立って、追いかけていきたいと考えております」
ytvドキュメント
『COVID-19の設計図~未知のウイルスとの闘い 次の一手は~』
について、
委員からの主なご意見と番組担当者の声をご紹介しました。

第614回2020.7

7月の番組審議会は、10日(金)に読売テレビ本社にて開催されました。
今回は、5月29日(金)深夜に放送されたytvドキュメント
『私の夫は無精子症 日本を揺るがす男性不妊』についてご意見を伺ったほか、
6月に視聴者の皆様から寄せられた声の概要報告が行われました。


□出席委員
勝田泰久 馬淵かの子 北前雅人 佐古和枝 藤野可織
小林順二郎 梶山寿子 島尾恵理 白羽弥仁 松尾徳彦(新任)

ytvドキュメント
『私の夫は無精子症 日本を揺るがす男性不妊』について
委員の皆様から寄せられた主なご意見は以下の通りです。

「かつて女性にのみ原因があるとされてきた『夫婦の不妊』だが、
男性側にも問題がある場合が存在するという事実を啓発する
骨太のドキュメンタリーだった」
「シリアスな夫婦の会話や実際の治療の場面にもカメラが入り、
説得力のある映像が続いた。
取材対象者との信頼関係の厚さが伝わってきた」
「様々な論点はあるだろうが、
夫婦の望みがかなったラストには救われる思いがした」

一方で、『男性不妊』という問題が含む多岐にわたる論点が
十分にとらえられていなかったのではないかというご意見もありました。

「様々なケースを長期にわたって取材した網羅的な内容だったが、
一方で男性が原因の不妊はかなり以前から知られている問題でもある。
男性不妊の原因となる流行性耳下腺炎への対応や法整備の遅れをはじめ、
タイトルにある『日本を揺るがす』について、
より深く掘り下げた情報が欲しかった」
「不妊治療についてのリスクや問題点、
あるいは治療が功を奏しない人たちにとって
救いとなるような情報や考え方の提示もあったほうがよかった」

また、日本の社会に根づく問題点にまで踏み込んでほしかった、
というご意見もありました。

「これまで不妊がもっぱら女性の側の問題とされてきたのはなぜか、
あるいは不妊を『男らしさの欠如』ととらえてしまう意識が
なぜ変わらないのかといった視点での考察が必要だった。
社会的なプレッシャーに挑戦するメッセージがあればよかった」

ytvドキュメント
『私の夫は無精子症 日本を揺るがす男性不妊』について
出席委員からの主なご意見をご紹介しました。

第613回2020.6

6月の番組審議会は、5日(金)に読売テレビ本社にて開催されました。
今回は、新型コロナウイルス問題発生以来のテレビ放送全般について広くご意見をうかがったほか、
5月に視聴者の皆様から寄せられた声の概要報告が行われました。


□出席委員
勝田泰久 馬淵かの子 北前雅人 佐古和枝 藤野可織
足達新 小林順二郎 梶山寿子 島尾恵理 白羽弥仁

新型コロナウイルス問題発生以来のテレビ放送全般について
委員の皆様から寄せられた主なご意見は以下の通りです。

「在宅時間が増えテレビを見る時間も増えた。
テレビの力と影響力を改めて感じさせられた」

ほとんどの委員がこのような感想をお持ちでした。
そのうえで、新型コロナ関連の報道や情報、
さらにはテレビ放送全般について、様々なご意見が寄せられました。

「『密状態になっている場所がある』や『パチンコ店たたき』など、
あらかじめ作ったストーリーに合わせたような内容が目についた点は残念」
「国の対応が遅れるなか、
地方の対応を早く正確に伝えることは、テレビの大きな役割だろう。
結果、発信力のある首長の存在が目立っているが、
一方でテレビは自治体の広報機関ではないはず。
権力の監視というメディアの大きな役割は果たしていってほしい」

また、責任あるメディアとしてのありかたに関しては、

「ウイルス感染に関するデマや真偽不明情報が、
差別や人権侵害に結び付くという現状がある。
限られたマンパワーの中だとは思うが、
このような事項については真偽の確認は怠ってはならない」
「番組の内容もコロナ一色となり、
飽きるほど報道されているという指摘もある。
しかし一般の視聴者のコロナに関する知識や
専門家に対する見方が深まっているのも事実。
飽きるほど報道することによって
視聴者がコロナに関する情報の質を選別する目を
持つようになった側面はある」
「新型コロナ問題は、大都市への人口集中の問題でもあるのではないか。
そうした視点から、今こそ一極集中の打破を訴えるなど、
将来の日本の姿を見据えた報道が必要だ」

という指摘もありました。

レギュラー番組にもご意見をお寄せいただきました。

「『かんさい情報ネット ten.』では、
中小企業の資金繰りの苦しさをリポートしていた。
新型コロナに関連して、これからも企業の倒産なども増えるだろう。
このようなすぐれたリポートを大いに期待する」

また、新型コロナ情報以外の内容にも評価をいただきました。

「同じく『ten』では、新型ウイルス問題一辺倒ではなく、
レギュラーコーナーの日替わり企画をOAしている。
『アナタの味方! お役に立ちます!』や『街かどトレジャー』など
従来からの良質なコンテンツを生かした良い番組作りだと思う」

番組制作や日々の放送で、様々な工夫をこらす毎日です。

「リモートによる番組制作の工夫や再放送ものの権利処理など、
今回の事態から新たなアイディアが生まれ、
また問題点も浮き彫りになっただろう。
テレビの未来が、今、試されているのだと思う」
新型コロナウイルス問題発生以来のテレビ放送全般について、
出席委員からの主な意見をご紹介しました。

なお今回をもって、足立新委員はご退任されました。

第612回2020.5

5月の番組審議会は、
委員から審議対象番組に対する意見等を書面にてお寄せいただく形で開催しました。
今回の対象番組は、4月26日(日)深夜放送 NNNドキュメント`20
『兄ちゃんのために ―JR脱線事故15年 鉄路の安全を求めてー』です。
ほかに、4月に視聴者の皆様から寄せられた声の概要と2019年下期の番組種別を
書面にてご報告しました。


□出席委員
勝田泰久 馬淵かの子 北前雅人 佐古和枝 藤野可織
足達新 小林順二郎 梶山寿子 島尾恵理 白羽弥仁

NNNドキュメント`20
『兄ちゃんのために ―JR脱線事故15年 鉄路の安全を求めてー』に対して
委員の皆さまから寄せられた主なご意見は以下のとおりです。

「電車が急カーブを曲がり事故の現場を通る低いアングルのショットを見て、
事故の衝撃を思い出した。非常に効果的な映像だった」
「重大事故や事件を「〇周年」といった節目に報道し、
人々に忘れさせないことはメディアの役目だと思う」

衝撃的な事故から15年。
番組ではまず、一組の遺族の姿を追っています。

「ある遺族に焦点を当て、
一見、普通の日常生活が送られているようでありながら、
実は深い悲しみは癒されていないという事実を
淡々と静かに描いた良い番組だった」
「遺族をはじめ当事者の方々にとって、事故は過去ではなく、
現在進行形の問題なのだと改めて気付かされた」

遺族の方々にも、
事故の伝え方や企業との向き合い方について、さまざまな考えがあります。
今回の番組では一組の遺族の姿しか伝えられなかったことについて、
このような意見もありました。

「物事の捉え方、感じ方は人それぞれです。
一口に遺族・被害者といっても、
その思いはおそらく一様ではないだろうと思います。
事故が風化しないよう声を上げ続ける方もあれば、
そっとしておいてほしい、
忘れてしまいたいと思われている方もおられるだろうと推測します。
事故のことについて触れられたくないと考えておられる遺族の方に
取材することはできないでしょうが、
個人的には、遺族の方々の様々な思いが知りたいと思いました」

番組では遺族の姿とともに、事故を起こした企業の現状も取材しています。

「例えば『計画運休』についても、
顧客サービスと安全確保のバランスが取れていたのかという点への
突っ込んだ考察が足りない。
ヒヤリハット事例の件数など安全レベルを測る指標はいろいろある。
安全が向上しているかどうかについては、もっと数量的な把握が必要だ」
「利益を追求しない民営企業は無い。
体質や風土といった情緒的なことに原因や予防策を主張するのでなく、
企業内の委員会やインシデント報告システム、
あるいは安全に対する講習会や外部監査などが
いかに行われるようになっているかを掘り下げて欲しかった」
「事故を起こした企業の現状と
遺族の癒えない痛みの両方を描こうとした結果、
焦点がぼやけてしまったのではないか」
「天災も人災も、たとえ大災害であっても、時間が経つと人は忘れる。
そして同じことが繰り返される。
20年、25年と、再びこのような番組を作り報道することが、
テレビ局に求められていると思う。
企画・制作にあたるスタッフの今後に期待する」

こうした意見に対する制作者のコメントです。

「番組について、多岐にわたる観点からのご意見・ご指摘、
また貴重なご助言も頂きありがとうございます。
今後のドキュメンタリー制作に大いに生かしていきたいと思っております。
いくつかのご意見の中に共通する質問がありましたので、
以下、回答させていただきます。

取材対象者のご遺族について、他の方の意見も知りたいという点。
ご指摘はごもっともで、106人の犠牲者がいれば、その家族の人数も含め106以上の多岐にわたる考え方が存在します。これは脱線事故のみならず犯罪、不慮の事故や病気、自死などにおいても同様です。
今回のドキュメンタリーのディレクターは、
執念ともいえる父親としての現場保存への想いを形にすることで、
事故の風化を防ぐメッセージに変えたいと考えました。
事故から4年目と10年目には、
別なディレクターによるドキュメンタリーで、
別なご遺族の闘いを番組にまとめ、
番組審議会でも議論していただいております。
そのご遺族の場合は、安全を企業に約束させるために
『加害者と被害者という立場を乗り越え、ともに議論する』
という道を選択されました。
同じ事故でも、取材対象者により伝え方は異なります。
一方で、報道として伝えるべき使命、「再発防止」という視点は、
揺るぎのないものであると確信しております。

企業に対する取材をもっと掘り下げるべきではというご指摘ですが、
まさしく我々制作陣も頭を抱えた点です。
まずご指摘にもありましたが、30分という限られた時間枠の中で、
遺族の心情も企業側の検証も盛り込もうとした結果、
中途半端になってしまったかもしれません。
もちろん、カメラを回さない状態での取材、
いわゆる「ペンによる取材」については鋭意進めましたが、結果として、
番組内での事故の客観的事実表現が少なくなったことは否めません。
これらのポイントは、ドキュメンタリー制作現場においては
常に付きまとう難所ですが、
視聴者のためにより説得力をもって伝えられるよう、
今後も取材力をつけていきたいと思っております。
数々のご指摘ありがとうございました」
NNNドキュメント`20
『兄ちゃんのために ―JR脱線事故15年 鉄路の安全を求めてー』ついて、
出席委員からの主な意見とともに、制作者からのコメントをご紹介しました。

第611回2020.4

4月の番組審議会は、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発令されたことを受け、
通常の開催を中止。
委員から審議対象番組に対する意見等を書面にてお寄せいただく形で開催しました。
今回の対象番組は、2月23日放送の『ますおか引越センター』です。

今年度から新たに梶山寿子(ノンフィクション作家)、島尾恵理(弁護士)、白羽弥仁(映画監督)の3氏が委員として加わりました。
また委員長には勝田泰久委員、副委員長には馬淵かの子委員と北前雅人委員が就任しました。

ほかに、3月に視聴者の皆様から寄せられた声を委員に書面にて報告しています。


□出席委員
勝田泰久 馬淵かの子 北前雅人 佐古和枝 藤野可織
足達新 小林順二郎 梶山寿子 島尾恵理 白羽弥仁

『ますおか引越センター』に対して
委員の皆さまから寄せられた主なご意見は以下のとおりです。

「引越しという共通するイベントを取り上げつつ、離島への移住エピソードでは今後交流することになる地元の人たちに、ゴミ屋敷エピソードでは10年の歳月をかけて累積されてきたゴミを取捨選択して搬出するプロセスの中で浮かび上がる生活や心身への影響に、アイドルへの転身エピソードでは家族、特に母との関係に、と異なる側面に光が当てられており、飽きさせない構成になっていた」
「目の付け所の良い面白い企画だった。
3件の引越のそれぞれにドラマがあり、最後まで飽きさせなかった」

番組のコンセプトは、委員からは好評でした。

「企画は大変面白いと思います。『えー!』とか『本当!』と思うような事例を良く取材していると感心しました」

番組で紹介した3件の引越についてのご意見です。

「離島専門の引越し屋さんがいることにまず驚いた。
西表島での取材は、旅行バラエティー番組以上の贅沢さ。
美しい風景も楽しめ、ご夫婦のゆったりとした幸福感が感じられるエピソードだった」
「10年に渡ってゴミ屋敷を築き上げた方が、自分を立て直されたことに感動した。できればゴミの片付けの様子をもっと詳細に見せてもらいたかったが、番組全体のゆるいのんびりした雰囲気のつくりからすると、これはこれでリラックスできていいのではないかとも思えた」
「アイドル志望の女性のチャレンジ精神には脱帽。ただわざわざ母親への手紙を読ませたりするところは演出過剰と感じた。引越は不安と期待が交錯する人生の節目。涙の別れあり、新たな出会いあり……そんな悲喜こもごもの人間ドラマを、おかださんの人柄と話術で自然に引き出したほうが、しみじみとした感動を呼んだように思う」

一方で、番組に成り立ちに関する疑問も寄せられました。

「取材対象の選択の仕方(応募方法、審査基準など)や、依頼者が引越をしようと決意した動機やきっかけについて、また引越しの費用はだれが払ったかなど、もう少しきちんと説明が欲しかった」
「取材対象者の選択方法や引越費用についてなどをきちんと番組内で表現することが必要だったのではないか。引越しの密着取材という視点は面白いので、こうした点を解消して、是非、続編を作ってほしい」

こうした意見に対する制作者のコメントです。

「貴重なご意見の数々を、ありがとうございました。
この番組は、企画立案から放送まで8か月をかけ、スタッフのみならず出演者とも大いにディスカッションしながら作り上げました。
増田さんがお持ちの、一般の方々の人情を引き出す取材力と
岡田さんがお持ちの、明るく実は繊細なキャラクターによる番組展開で、
引越される方のみならず、これから新たなスタートラインに立つであろう視聴者の方々をも応援したい、という思いを込めています。
今回引越された取材対象者が直面するドラマとともに、
引越にまつわる未知なる世界を楽しんでいただけたならば嬉しく思います。
取材対象者に友人として接するような密着取材を常に心掛け、
視聴者に共感してもらえるよう注意を払って制作してはおりましたものの、
ご指摘の点につきましては、改めて我々の至らなかった側面に気づかせていただけたと深く受け止めると同時に感謝いたしております。
制作方針としましては、引越に密着させていただける方のリサーチから始まり、その後ご本人様とのご相談、そして引越に同行させていただく了承をいただけた方の中から今回の3人の方の取材を行いました。
引越に密着させていただくという趣旨のお願いでしたので、引越費用は番組負担ではありません。あくまで、ますだおかだのお二人が引越を手伝う、というコンセプトでの密着であることのご理解をいただいて取材収録を行いました。
誤解を与える展開であったのであれば、今後の反省材料として生かしたいと思います。
また、取材対象者の選考は、近々引越される方がいらっしゃるかを
スタッフの友人関係から紹介してもらったり、多くの引越業者への聞き込みであったり、個人SNSで発信されている情報から得たものであったりと、多岐にわたるリサーチによって得られた候補者情報の中から
ご協力いただける方々を探し出した次第です。
並大抵の数ではありませんでした。
我々も初めて制作する番組でしたので、その方向性を見出すまで
リサーチから広範囲の活動を続けておりました。
次回につながる企画として作り上げた1本ですので
今後を楽しみにしていただけるとの温かいご意見を活力として胸に秘め
新たな取材対象者との出会いに向け頑張ってまいります。
今回の審議、誠に有難うございました」
『ますおか引越センター』について、
出席委員からの主な意見とともに、制作者からのコメントをご紹介しました。
  • 2020年度讀賣テレビ放送番組審議会 委員
  • 委員長  勝田泰久   大阪経済大学前理事長
  • 副委員  長馬淵かの子   兵庫県水泳連盟   顧問   元オリンピック日本代表
  • 副委員  長北前雅人   大阪ガス株式会社   顧問
  • 委員  佐古和枝   関西外国語大学教授
  • 委員  藤野可織   小説家
  • 委員  小林順二郎   国立循環器病研究センター 名誉院長
  • 委員  梶山寿子   ノンフィクション作家
  • 委員  島尾恵理  弁護士
  • 委員  白羽弥仁   映画監督
  • 委員  松尾徳彦   読売新聞大阪本社 執行役員編集局長