第481回 番組審議会議事録

1.開催年月日
平成19年4月13日(金)
2.開催場所 読売テレビ役員会議室
3.委員の出席 委員総数 10名
出席委員数 9名
出席委員の氏名 熊谷信昭、秋山喜久、金剛育子、林 千代、馬淵かの子、阪口祐康、川島康生、吉岡征四郎、河内鏡太郎
欠席者の氏名 佐古和枝
会社側出席者 ・土井共成 (代表取締役会長)
・髙田孝治 (代表取締役社長)
・丸山和男 (代表取締役専務)
 編成・コンテンツ・制作スポーツ・東京制作・
 報道担当
・越智常雄 (専務取締役)
 内部統制・コンプライアンス・総務・労務・事業担当
・吉野俊太郎(取締役報道局長)
・久保哲郎 (執行役員コンプライアンス推進室長)
・位寄雅雄 (執行役員編成局長)
・村上博保 (執行役員制作スポーツ局長)
・下尾雅之 (報道局プロデューサー)
・松下泰紀 (コンプライアンス推進室視聴者センター部長)
事務局 新谷 弘 (コンプライアンス推進室次長兼番組審議会事務局長)
菱田千佳 (コンプライアンス推進室番組審議会事務局)
森本泰輔 (コンプライアンス推進室考査著作権部兼法務コンプライアンス部)
4.審議の概要
「ニッポン桜ものがたり~現代版花咲爺とゆく全国桜旅~」
放送日時 2007年3月24日(土) 午前10時30分~11時25分
放送エリア 関西ローカル
 4月度の番組審議会は4月13日(金)に、読売テレビ本社で開催された。
 審議会では、3月24日に放送したドキュメンタリー「ニッポン桜ものがたり~現代版花咲爺とゆく全国桜旅~」を視聴して合評が行われた。
 委員からは「全国の美しい桜が次々と紹介されていてすばらしい番組だった」、「取材が丁寧で、しっかりしていた」、「人間と自然との共生というテーマが素直に表現されていた」といった意見が相次いだ。
 一方で、「ナレーションが多すぎて、感動の押し付けになっている」といった指摘もあった。
 このあと、3月に読売テレビに寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。
 出席は、熊谷信昭、川島康生、秋山喜久、馬淵かの子、金剛育子、林千代、阪口祐康、吉岡征四郎、河内鏡太郎の各委員と読売テレビからは、土井会長、髙田社長以下13名。
5.審議内容 別掲の通り
6.審議会の意見に対して取った措置
特記事項なし(議事録は関係部署に配布)
7.審議会の答申・意見の公表
●4月26日(木)付け読売新聞夕刊に議事の概要を掲載。
●5月12日(土)午前5時14分から放送の「声~あなたと読売テレビ~」の中で議事の内容を放送。
●本社コンプライアンス推進室に閲覧用として議事録を備え置く。
●インターネット読売テレビホームページ「テレビの門・話し合ったもん」で議事録を公表。(http://www.ytv.co.jp)
●社内LANにて全ユーザー(全社員および関連スタッフ)に議事録を配信。
8.配布資料 ●番組概要
●2007年3月に寄せられた視聴者からの意見・苦情
9.送付資料 ●民放連機関誌「月刊民放」
●民放連機関紙「民間放送」

【審議内容】

社側
 おはようございます。ただ今より4月の番組審議会を始めさせていただきます。
 まず、委員の方々のご出欠の状況ですけれども、きょうは佐古委員が所用のため欠席をされております。あとは皆さま、ご出席でございます。それから読売テレビ側は、いつものメンバー全員揃っておりますので、よろしくお願いいたします。
 早速ですが、きょうは3月24日の土曜日に放送いたしました『ニッポン桜物語』というドキュメンタリーをご覧いただいて、ご批評いただきたいというふうに思います。
 関西ローカルで放送いたしましたけれども、たくさんの方々に見ていただくことができました。
 それでは、この番組のプロデューサーを担当しました報道局の下尾から制作意図等についてご説明をさせていただきます。

社側
 報道局の下尾雅之と申します。よろしくお願いいたします。それでは着席してご説明させていただきます。お手元の資料、番組概要というのが1枚ございますので、これをご覧になりながらお聞きください。
 この番組なんですけれども、報道局のいわゆるドキュメンタリーという範疇にあたります番組でございます。いわゆるドキュメンタリーと申しますと、私見ではございますが、社会の矛盾なりを鋭角的に取材、検証、問題提起するということで、我々マスメディア、ジャーナリズムに課せられた権力を監視するという機能を果たすというのが、一つであると思うんですが、それと同じように、もう一つの種類としては、魅力的な人間でありますとか、事象を、しっかり丁寧に取材することによって、人間が持っている根源的な力といいますか、それを写し取って、希望、勇気というものを視聴者に伝えるということもあると思います。
 今回の番組につきましては、今申し上げたうちの後者に属するものになるのかなというふうに思います。
 番組の内容、狙い等なんですけれども、一つはオンエアの時期が3月24日ということで、関西、ソメイヨシノが咲く直前でございます。桜の季節を前に、日本各地のいろいろな桜の圧倒的な美しさを、それぞれのエピソードを交えつつ、視聴者の方々に堪能していただきたいというのが一つ。
 二点目としては、このような桜が、毎年きれいに咲いてくれる裏には、「桜守」という仕事の存在があります。1970年ごろ水上 勉さんが『桜守』という小説をお書きになったと思うんですけれども、やはりまだ全体として桜守という仕事というのは、ご存じない方もありますので、その存在と仕事振りを知っていただこうというのが二点目です。
 それから三点目なんですけども、番組全体を通して、日本人と桜の本当に昔からの絆の深さ、それと大上段に振りかぶるわけではないんですが、自然と人間との共生みたいなメッセージを何となく番組が終わった段階で、それぞれの方に感じていただければなと思いまして制作いたしました。
 中身的には、出来るだけ情緒的なナレーションは抑えまして、量も必要最小限度ということに、補足説明に徹するということにいたしました。字幕も、やや控えめにいたしまして、テレビの持ちます根源的な絵の力と音の力を最大限に生かそうという気持ちで制作いたしました。以上でございます。

社側
 それでは早速ですが、ダイジェスト版をご覧いただきたいと思います。

<VTR視聴>

社側
 今ご覧いただいたのは3月24日土曜日の午前10時半から放送した分のダイジェストです。ご覧いただいたように桜の花がテーマになっているんですけれども、実は全く同じ素材で、今週の日曜日、今週というのは、つい先ほど終わった日曜日ですが、私どもが持っています日曜日深夜のドキュメントの枠で、全く違う編集で、これを放送しております。それは桜のほうに重きを置いたのではなくて、この人物のほうに重きを置いて、違うつくりにして全国放送をしております。だから同じ素材で、二つ番組がつくられています。
 それも見ていただきたかったんですが、この日曜日だったもんですからVTRの手配等々で時間が間に合わなかったので、こちらのバージョンだけ見ていただきました。
 それでは委員長、よろしくお願いいたします。

委員長
 前回の大変シリアスで悩ましいテーマから、今回は一転して、誠に楽しい優雅な番組を視聴させていただきました。委員の皆さま方も、この番組は、おそらく大変楽しまれたことと思いますが、私も昔から桜は大好きで、きょうも1時間以上、随分早く着いたものですから、昔なら新聞を読んで、コーヒーを飲みながら時間を過ごすところでございますけれども、数年前から強度の「アル中(あるちゅう)」、歩く中毒にはまり込んでおりまして、桜を見ると矢も盾もたまらなくなりまして、大阪城公園の桜をずっと見て参りました。
 先週末も2時間ぐらい大阪城公園の桜を見まして、一番美しい盛りでございましたが、歩いていますと、いろいろ今まで見えなかったものが見えてきたり、関心のなかったものに関心が向くようになりまして、樹木に対する関心も非常に高まってまいります。
 桜が植物分類学上、バラ科であるというようなことも、お恥ずかしい話ですが、最近になって知ったような次第でございまして、なぜ桜がバラ科に属するのかということも、一度まともに調べてみたいと思っております。
 先ほどの、この番組にも紹介された西行の歌も、非常に何ともいえない歌でございまして、りりしく、美しい若侍が29歳で突如出家をして西行と名乗って、先ほどの歌を含む、いろんな花の歌を詠んでおるということなども、桜の好きな者にとっては非常に面白い、興味のある話でございます。
 そういうような次第で、私自身は、この番組を大変楽しませていただきましたが、それでも、その「桜守」というような方がおられるということは、実は、この番組を拝見するまで全く存じませんでした。
 そういう意味で大変楽しく、また興味深い番組でございましたが、委員の皆さま方も、いろんな感想をお持ちになりながら楽しまれたことと思いますので、ご感想等、伺いたいと思います。
 私は、さらに、きょうは日本の各地の桜をご紹介いただきましたけど、世界の中で桜というのは、どういうことになっているんだろうかということも関心がわいてまいりましたので、もし、ご紹介いただける機会が将来あれば、大変楽しいだろうなと思いました。ありがとうございました。
 皆さん、いかがでしょうか。

委員
 今、委員長がすべて言われたので、もう、それに尽きると思うんですけども、最初プロデューサーの方が「人間の尊厳といいますか、人間の素晴らしさというものに焦点を当てたんだ」というお話で、この佐野さんの人生というのは、桜守として、また桜と人間との対話と共生ということで、非常に素晴らしいストーリーになっていると思います。
 また、自然を大事にしなければいかんという意味では、社会的問題の提起にもなっているんじゃないかなというふうに思えるんで、一言で言えば非常に素晴らしい番組だと。
 ただ誘導尋問みたいなもんで、「この番組は素晴らしい」というと、ほかの番組が、あんまりよくないんじゃないかというふうに取られても困ると思いますけども、ぜひ、こういった観点を持っておる一人の人間、あるいは自然と人間との共生という社会問題について掘り下げた番組を、これからもつくっていただきたいなというふうに思います。
 ただ、ちょっと気になりましたことは、あえてケチをつけるとすれば、きょうの番組にも出てきましたけど、「空調が悪さをするんだ」というふうな話で、ちょっと短絡したものの言い方ではないのかなと。
 それは炭を焚いたほうが、よっぽどCO2も出ますし、煙も出るんで、空調で、ヒートアイランドになるからというふうな問題もいろいろあるかと思いますけども、その辺と、ここには出てこなかったけど、「木に名札を打ちつけるのはかわいそうだ」ということですけど、管理するほうの側からいくと、針金を巻くわけにもいかんでしょうし、そうすると木の成長を止めちゃいますから、何か、その辺で、今いろいろ「テレビというものは真実を伝えるもんだ」と、みんな思っている中で、ちょっとしたコメントでも、若干反論するなら、あるいは、その辺を少し、どこかで補足するなりというふうな細心の注意もいるのかなというふうに思います。
 それから、ちょっとあれは15代、16代は出てきたけど、17代がいるのか、何か学校をやっているとかいうようなお話もあったんで、こういった桜守のあれをずっと続けていかないと、日本の桜も、なかなか成長しないといいますか、うまく生き残っていけないんじゃないかなと。
 特にソメイヨシノなんて、あれは接ぎ木するんで、次の代につなげない、種がとれないんですな、また接ぎ木でやっていかないかんというふうなことで、桜というのは非常に難しい木だと思います。
 そのほか桜だけじゃなくて、リンゴの木の再生だとか、梅の木の再生だとか、いろいろな人がおられますけど、代表的な桜をとらえて、人間がいかに木を大事にすれば、木が育っていくかということを示していただいたという意味では、非常にいい番組であったと思います。ほかが駄目だという意味ではございませんから、一言加えておきます。以上です。

委員
 実は、きのうまで外国の夫婦、アメリカ人とニュージーランド人の夫婦、ずうっと3日間、3泊、姫路と京都をご案内することになりまして、彼らは東京の飛び込みの試合に見えているんですけど、まず巽で見たんです。巽てすごいところがありまして、そこでみんな、もう、どんちゃん騒ぎして花見をやっているのを見て、もう彼らは本当にカルチャーショックを受けましてね。「何で日本は、こんなにそこら中に桜があるの」と、新幹線で来ているから、沿線でいっぱい咲いているんですよ。それで来るなり、もう姫路城へ行って、まずびっくりして、京都の2泊目は、もういわゆる桜の名所を全部お連れしたんです。
 そして、いろんな桜がありますね。枝垂れ、ベニシダレだとか、ソメイヨシノも、お寺によっては満開のところもあったし、もう驚いて驚いて、それでいろいろ質問されるんですよ。でも私、この番組を先に見ておりましたので、円山公園のシダレザクラなんかは、もう「これ78年よ」とか「実は桜のお守さんがおってね」とかいうのを話すと「ええ、桜をキープする人がいるの」と、まず、そんなことから彼らは興味を持ったら、質問攻めなんです。「これは種から取るのか」とか、「この苗木を持ってアメリカへ帰れるか」とか、ちょっと返事に困りましたけど、とりあえず「接ぎ木をするんです」ということを説明すると納得、「じゃあ種じゃないんだな」とかね。お陰様で随分、私、博学になりまして、威張ってお帰りいただいた、皆さん喜んで。
 ですけど、私この番組そのものは、この桜守の藤右衛門さんでしたか、おじいさんがしゃべっておられる言葉が非常に何か哲学的で、何か人生をよくよく見てはるなというので、あのお方の言葉の一つ一つを、もう1回帰って、かみしめて、もう1回見て、もう1回、あの桜を見てみたいなと、実物を見てしまったので余計に感慨深くて、とても参考になりましたし、美しい桜、こんなにたくさん種類があるということも知らなくて、ありがたかったと思っております。以上です。

委員
 やはり日本人として、この季節、それこそ沖縄から北海道まで桜を見て歩きたいなと、かねがね思っていたんですけれども、ちょっとそういう意味では、全部が映ってなかったように思ったんですけれども、とてもきれいな映像でよかったと思います。
 私自身、京都に移りまして、すぐそばに山科の疎水があって、友人から「まだか、つぼみはどうや」というので毎日見ていて、友人も来ました。その山科の疎水も、とてもきれいですけれども、本当に人が多くて、その何日間かは車を出すことができないほど細い道ですので、その山科から奥へ行きますと、読売テレビさんも来られたことのある毘沙門堂の枝垂れ桜があるんです。これも本当にきれいな桜です。ちょっと何代目かですけど。でも、そういう意味で本当に桜はとてもよかったです。
 ただ、ちょっとナレーションと、この佐野さんの言葉が、ひっきりなしに入っているので、もっと音楽と桜を描写してもらったほうがよかったかなと。
 それからナレーションと同じようなことを、佐野さんが言われて、ナレーションもそれにかぶっている部分の重複している部分があるので、この辺をもう少し整理していただいて、音楽だけで見せていただけたらよかったかなと。
 ちょっとナレーションとか、それから佐野さんの余分な言葉が非常に耳障りという意味から言えば、先ほど言われたように、魅力的な人間を描くという意味では、ちょっとしゃべらせ過ぎかなという部分があって、もっともっと魅力を出せる部分、パッと桜だけ見て、何か言いたりぬ、いろんな意味で、例えば「わざわざ来たのに待っていてくれたんか」とか言わないでも、パッと見るだけで感動があって、押しつける部分がすごくあったような気がするんです。
 何年か、もう20年ほど前に、やはり「桜のお医者さん」という方がいらして、これは薄墨桜をよみがえらせた方だと、もしかしたら間違っているかもわかりませんけれども、それをずっと以前に20数年前に見たときには、もっと枯れた方で、感動を覚えたんですけど、今回ちょっとしゃべらせ過ぎの部分と、ナレーションがしつこかったかなという部分では、もっともっと桜だけを映してもらって、一つポツンと、そのセリフを入れていただけたら、もっと押しつけがましさがなくなったかなと思ったんですけれども、でも映像も、とてもよかったと思います。
 それで先週の日曜日ですか、あれ12時40分からだったと思うんですけれども、あれもちょっと見せていただこうと思って、ベッドの横に置いて、「同じなのかな」と思って、ちょっと見なかったんですけれども、今きょうお聞きしたら「全然違う構成だ」ということで「あっ、惜しいことをしたな」と思いました。
 それと、もう一つ、次の世代を育てるという形で、この佐藤さんが若い方を一喝していたと、最近こういう形で「バカモン」とかいう形で怒鳴られる方は、あんまり多分、委員長か、この方ぐらいかなと、ある意味で感動しました。

委員
 まずは、南から北まで非常に家に居ながらきれいな桜を見させていただきまして、ありがとうございます。
 見させていただいて、やっぱり、見た後の感想は、やさしい気持ちになったというか、やっぱり優雅な気持ちになったというか、後味の良さというのが、まず最初に残りました。最初にお聞きした番組のねらいですか、日本のきれいな桜を見てもらうということと、桜守という裏方を知ってもらうと。三点目としては、日本人と桜のつながりとか、自然との共生、まさに、その三点がすっと見ているほうに入ってきて、特に二番目の裏方を知ってもらうというのが、私一番非常に印象に残って、特に出ておられる佐野さんという人の人間味あふれるしゃべり方であるとか、表情というのが見ているほうには非常に感じられて良かったと思います。
 実は、私の隣に住んでいるのが、私と同業なんですけれども、昔、うちの町内には自然の蛍がいたんですけれども、市が草を刈ったりとかしていなくなって、それを非常に惜しまれて、20年ぐらい前からですか、自分で蛍を養殖して、朝3時か4時ぐらいから起きて、ずうっと養殖して、放して、それが、ここ10年ぐらい、うまいこといって蛍が仰山出て来て、割りと市内でも蛍で、有名なところになった。
 やっぱり、そういう別に誰から何というわけでもなし、知られているかというたら、そう知られてない、裏方的になれば善意のことで、みんながやさしい気持ちになって、社会全体がうまいこといく。そういう人、あるいは、そういう事象に焦点を当ててやっていただいたら、もっともっと、いい社会になる。また、そう期待したいというのを感じさせてくれるいい番組だったと思います。

委員
 委員長のご感想と一緒で、本当に楽しく見させていただきました。静かなドキュメンタリーと言われましたけども、そのとおりであったと思います。
 ほのぼのとしたというか、春のうららという感じの作品だったと思うんですけども、数少ないクレームポイントを委員に指摘されたんで、もう私は何も言うことがないんですが、委員長が最後に「日本の桜だけではなしに」というふうなことを申し上げましたんで、最近ちょっと読んだ記事のことを少しご紹介いたします。
 宗教関係の雑誌に出ていた記事なんですけども、「台湾の花咲爺」という話が出てまして、その方は83歳ですが、戦時中、志願兵で沖縄戦に参加すべく待っておられたところが、輸送船が全部沈められてしまって行けなかったんで、それで、そのまま終戦を迎えたという、まあ日本びいきの人なんですね。
 今、住んでおられるのが、私もよく知りません。「ムシャ」という場所だというんですが、台湾のどの辺ですかね。そこから20キロぐらいの道に桜の木がたくさん植わっていたのが、道路拡張でみんな切られてしまったと、それを非常に悲しまれて、みんなに働きかけたけど、誰もやってくれんというので、結局は自分で、そこへ3200本の桜を植えられたということで、20年経った今になって、今までずっと植え続けておられたんですけれども、何か、その桜が役に立ったということで、最近になって表彰を受けておられるという、そういうお話なんですけど、その桜、やはりこれが日本の心であるということで、桜に惚れ込んで、そういう仕事をやっておられる方ということです。
 委員長の提案のように、第2作を作られる興味がありましたら、そこもひとつ訪ねていただいたらと思います。それ写真も出ていましたですけど、寒緋桜というんですか、最初に出てきた赤い桜、あんな桜です。やっぱり沖縄と同じ桜なんかもしれません。これでコメントに代えさせていただきます。

委員長
 いやいや、おもしろいお話をありがとうございました。委員いかがですか。

委員
 私も、皆さまで言い尽くされたと思うんですが、桜というのは、やっぱり日本人にとって、特別な花だということを、この番組で再認識させられました。
 今は京都も本当に桜一色で、どこを歩いても満開で本当に町全体が桜の花びらで一色という感じで、私も、いろいろちょっと見てまいりましたけども、これだけ多くの方が桜を見ていて楽しんでいるのを見ると、やはり桜というのは本当に日本人独特の花で、日本の桜、本当に花の命は短いですけど、パッと咲いて、散り際もさっといさぎよく散る。そういうところが何か日本人の死生観とか自然観とかに通じるのかなと思って、今回、番組できれいな映像を見せていただき、本当に楽しませていただきました。
 制作のほうで何か情緒的な表現はなるべく抑えて、佐野さんの話を中心にということでございましたけども、それがすごく効果的に出ていたと思います。佐野さんの一言々々が、先ほど哲学的なというお話がありましたけど、やっぱり人生の重みを感じさせる言葉ばかりで、あまり美しいとか、きれいとか、そういうことはなしで、それこそきれいな映像が本当にいい写真がバアッと出て、それがすべてよかったという感じで、非常に効果的に出ていたと思いますし、そういう意味で素晴らしかったなというふうに感じました。
 佐野さんは、ちょっと迎賓館の庭園もされています。迎賓館に携わった方のシンポジウムとか、いろいろな講演をされていまして、お話を伺っております。
 非常にいい番組だなと拝見させていただきました。ありがとうございました。

委員
 半年間で2500キロ、桜を追い求めているということで、随分、手間と時間と労力とお金もかけていることは想像がつきます。ある意味では非常に丹精された作品だなと思いました。
 特に今一部ご議論がありましたけれども、佐野さんの言葉というのが、やはり、このプロフェッショナルならではの相当含蓄のある言葉を幾つかいただけたなというふうに感じております。
 それと今年は桜の開花などをめぐりまして、随分、いつもの春とは違う様相を示しましたので、桜そのものの話題性が非常に高く、これは制作段階では意図したことではないでしょうけれども、そういう意味でもタイミングがよかったなというふうに思いました。
 それと、その制作の取材上の難しさで言いますと、大和の又兵衛桜というのを見に行くんですけれども、日が上がる時に白くなって、お日様が少し上がった時にピンクになって、午前中の11時ごろに赤く変化してます。それから午後になると白っぽくなったまま終わってしまいます。そういう意味では、取材のタイミングと時間が、それぞれの桜を撮るとき、随分難しかったのではないかと思います。
 それと、いずれにしましても、本当に平和な時代の桜シリーズだと思います。わずか60数年前には、この桜に送られて多くの若者が戦場に行ったり、特攻に乗る人たちの1機1機に女子生徒が一輪の桜を差して死地へ向かって行ったという時代が、本当に嘘のような気がします。平和のありがたさ、確かさみたいなものを私なりにかみしめました。
 それから、多くの皆さんがヒントとして言われましたんで私も、ワシントンのポトマック河畔の有名な桜がありますけれども、あれはもともと東京都(市)が1930年代ぐらいに尾崎愕堂市長の時に移して、東京都が原産地というんですけど、東京都からもらったのは根の部分だけで、接ぎ木は全部伊丹のものを接ぎ木して、あれは、ですから、ポトマックはご当地の桜であるということを以前、僕取材したことがありますので、資料もまだ残っておると思いますから、使われる時は、ぜひ …… 。

委員
 皆さんおっしゃいますように、よい番組であったというふうに思いました。特に私二つの点が印象的だったんですが、1点目は、先ほど制作意図のところでもおっしゃってましたけども、非常に、しっかり丁寧に取材することを心掛けたとおっしゃってましたけれども、特にエピソードのところ、人間の部分ですけども、非常に、まさにおっしゃるように、しっかり丁寧に取材されたなという印象を強く受けました。
 いろいろ沖縄とか、広島とか、下関とか、ご紹介がありましたけども、その辺については非常に興味深かったですし、取材が非常に丁寧だなという印象を受けました。それが1点目です。
 それから二つ目は、これも制作意図でおっしゃってまして、説明をあまり過剰にしないようにした。それから情緒的な説明をしないようにしたというようなことをおっしゃっていましたけど、それも全く、そのとおりだったというふうに思います。そのためにテレビの強みであります映像が、非常に生きてきたと思います。
 それから、これは非常に大事なことではないかと思いますが、視聴者が見て、自分でいろいろ反すうしたり、イマジネーションを働かしたりすると、そういう余韻といいますか、余裕というものがあったんじゃないかなというふうに思います。
 これちょっと誤解かもしれませんが、一般的にテレビはますます、おしゃべりになっていくような気がしておるわけでありまして、特にスポーツ番組なんか、昔は、もうちょっと静かだったと思うんですけども、最近は何かこう、機関銃みたいに、いろいろな説明や解説や情報がいっぱい出てくる。プレーとか、そのもの自体を楽しむのに、かえって邪魔になっているんじゃないかというような印象すら持っておるわけです。
 もともと活字に比べるとテレビというのは、どうしても情報の受け手が受動的になってしまう傾向があると思うんです。だからこそ余計逆に、もっと情報の受け手側が内容について反すうしたり、あるいはイマジネーションを働かせたりするような、そういう番組がもっとあってもいいんじゃないかなと私、常日ごろから思っております。この番組は、そういう面から言っても、まさに私は、そういうふうに思っておるのとぴったりはまるところがありまして、非常に感心をしたわけであります。

委員長
 追加のご意見等ございますか、委員の皆様。
 ございませんか。
 下尾さん、私どもの感想をお聞きになって、何かご感想などございましょうか。

社側
 実は、今回テーマに入っていなかったんですけど、やはり世界的にも、この佐野さんは活躍されてまして、パリとかロンドンとか、アメリカとか各地を。造園業でいらっしゃいますので、その設営に携わっておられますので、各地にも、外国人を含めて、日本人はもちろん、お弟子さんがいらっしゃいまして、今回も、ほかも訪ねたいところもかなりあったんですけれども、ここに絞らせいただきました。
 空調の話がありましたけど、なかなか難しいところで、佐野さん個人の考え方みたいなところで、例えば、先ほど「枝垂れ桜が揺れる」という話なんですけど、科学的にいうと、そんなことあるわけないだろうと思うんですけれども、ただ、それを「ああ、そういうことも、ひょっとしたらあるかもしれないな」と思わせられるかどうかというところが勝負だったような気がいたしまして、もし、そう思っていただけなかったとすると、それは演出家の失敗であるかなというふうには思います。
 先代、先々代の話なんですけど、17代は今、40代後半なんですけれども、実は当代の16代、ちょっと一線を置いておりまして、桜畑、あれはおやじの畑なんで、僕の畑とは違うと、ただ、ご自分なりに非常に勉強をされておられるようです。
 実は当代と先代の15代・16代の関係もそうでして、当代の16代も15代が一生懸命桜畑をつくって桜の写真集を出して、そのために山一つ売ってしまったとかいう話をお聞きしたんですけども、「なんで、そんなアホなことをするんやろう」というふうに、今の当代は先代の仕事を見て思っておられたんですが、だんだん、だんだん、やはり引き込まれてきたというようなことをおっしゃっておられました。
 それから、後継者についてなんですけれども、やはりちょっと、一般の方からの意見も、ちょっと後継者がいるのか心配になったというようなご意見をいただいていまして、先ほどご指摘いただいたように、初めのほうで庭園のところで一喝されるんです。そのようなところで、なんとなく分かるかなとは思ったんですけども、ちょっと説明が不足だったかなと思います。
 それにつきましては、あのとき「このどアホ」という言い方されているんですね、一喝される時に、「このどアホ」という言い方について、実は二人ぐらいから言われまして、あれは関西の文化圏では「どアホ」という言い方も、言い方によっては愛情表現であったりするんですけれども、関西以外の例えば、東京ご出身の人が、いきなり見た時に「どアホ」というのは、「この超バカ者」と言われたような感じがして、そのあたり、もうちょっと配慮しないと佐野さんの人柄というのが誤解されるかもしれないという逆の意見もいただいて「ああ、そういうものかな」というふうに、ちょっと反省したようなところがございます。お答えになってないかもしれませんが、以上でございます。

委員長
 ありがとうございました。それじゃ。

社側
 ありがとうございました。
 それでは、3月に私どもに寄せられました視聴者からの声についてご報告をさせていただたいと思います。

社側
 3月に視聴者の皆様から寄せられました声についてご報告申し上げます。
 まず、件数ですが6407件というふうになっておりまして、今月も特定の番組に集中するということはございませんでした。ただし、やはり関西テレビさんの『発掘!あるある大事典』の影響がございまして、健康情報ものは特に『午後は○○おもいッきりテレビ 』等放送しておりますので、そういったものとか、データ情報に対して視聴者の皆様から、どちらかというと疑いであったり、捏造疑惑をかけられたりしているような、ご批判というか、抗議の電話が数多くかかって来ております。
 それで具体的なものですが、『たかじんのそこまで言って委員会』なんですけれども、名古屋大学の先生が、日本においてエコ対策というのが意外と進んでいないんだよという、どちらかというと、進んでいるというイメージを持たれている通説を覆すような持論を展開されまして、ペットボトルの回収が本当に有効利用につながっているのかとか、ごみの分別は本当に必要なのかというようなことに対してのお話しがありまして、それに対して、どこまでが事実なのか、特にパネリストに専門家がいなかったので、どちらかというと、その大学の先生の話に振り回されていて、何を信じてよいのか分からないというような意見が、これはかなり多数寄せられました。ぜひ反対側の立場の意見も紹介してほしいというような意見がありました。
 それから、『世界一受けたい授業』に関しましては、何気ない体調不良から命にかかわる重病まで、さまざまな病気が歯の異常と密接にかかわっているということを教えていただいてありがとうございますというようなご意見も多く寄せられました。
 それから、3月10日ぐらいだったと思いますが、東京大学の合格にまつわる放送で「親子で号泣!家族で歩んだ東大への道」というような形で東大の特集をやっていたんですけれども、ちょっと実家まで押しかけて東大、東大といっているような部分が多くありましたので、なぜ東大ばかりなんだというふうな形でのご批判をいただきました。
 問い合わせの多かった番組に関しましては、やはり『午後は○○おもいッきりテレビ 』のグルメ情報、『ミヤネ屋』の医療情報というようなことで多くいただきました。以上でございます。

社側
 以上で4月の番組審議会を終了させていただきます。
 来月5月なんですが、ご承知のように、この審議会、ちょっと変則でして、5月が新年度の始まりということになります。場所を「クラブ関西」に移しまして、5月11日(金)に開催させていただきますので、よろしくお願いいたします。どうもお疲れさまでした。


以上

  • 平成18年度読売テレビ番組審議会委員
  • 委員長    熊谷信昭   兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
  • 副委員長    馬淵かの子   兵庫県水泳連盟   顧問   元オリンピック日本代表
  • 副委員長    川島康生   国立循環器病研究センター   名誉総長
  • 委員    秋山喜久   関西電力株式会社  顧問
  • 委員    金剛育子   能楽「金剛流」宗家夫人
  • 委員    林  千代   脚本家
  • 委員    阪口祐康   弁護士
  • 委員    佐古和枝   関西外国語大学教授
  • 委員    北前雅人   大阪ガス株式会社   代表取締役副社長執行役員
  • 委員    谷  高志   読売新聞大阪本社   専務取締役編集担当