第475回 番組審議会議事録

1.開催年月日
平成18年9月8日(金)
2.開催場所 読売テレビ役員会議室
3.委員の出席 委員総数 10名
出席委員数 9名
出席委員の氏名 熊谷信昭、秋山喜久、林 千代、馬淵かの子、
阪口祐康、佐古和枝、川島康生、吉岡征四郎、
河内鏡太郎
欠席委員の氏名 金剛育子
会社側出席者 髙田孝治 (代表取締役社長)
丸山和男 (代表取締役専務)
編成・コンテンツ・制作スポーツ・
東京制作・報道担当
越智常雄 (専務取締役)
内部統制・コンプライアンス・
総務・労務担当
吉野俊太郎(取締役報道局長)
久保哲郎 (執行役員コンプライアンス推進室長)
位寄雅雄 (執行役員編成局長)
村上博保 (執行役員制作スポーツ局長)
中川禎昭 (制作スポーツ局エグゼクテイブ
プロデューサー)
松下泰紀 (コンプライアンス推進室
視聴者センター部長)
事務局 新谷 弘 (コンプライアンス推進室次長兼番組審議会事務局長)
菱田千佳 (コンプライアンス推進室番組審議会
事務局)
森本泰輔 (コンプライアンス推進室考査著作権部
兼法務コンプライアンス部)
4.審議の概要 番組視聴
終戦記念番組「桜と蛍と富士」~日本兵が目にした祖国~
放送日時 平成18年8月13日(日) 午後3時~4時30分
放送エリア 関西ローカル
 9月度の番組審議会は9月8日(金)に、読売テレビ本社会議室で開催され、8月13日の午後3時から放送した終戦記念番組「桜と蛍と富士」~日本兵が目にした祖国~を視聴して合評が行われた。
委員からは、「重いテーマだが、淡々としたつくりで、戦没兵士への鎮魂の番組としていい番組だった」といった、番組を評価する意見が相次いだ。
しかし、一方で「戦争を知らない世代には内容の切実さが今ひとつ伝わらないのではないか」と言った指摘もあった。
この後、7月と8月の二ヶ月間に読売テレビに寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告しました。
出席は、熊谷信昭、川島康生、林 千代、馬淵かの子、河内鏡太郎、阪口祐康、秋山喜久、吉岡征四郎、佐古和枝の各委員と読売テレビからは、髙田社長以下
11名。
5.審議内容 別掲の通り
6.審議会の意見に対して取った措置
特記事項なし(議事録は関係部署に配布)
7.審議会の答申・意見の公表
●9月28日(木)付け読売新聞夕刊に議事の概要を掲載。
●10月14日(土)午前5時14分から放送の「声~あなたとよみうりテレビ~」の中で議事の内容を放送。
●本社審査室に閲覧用として議事録を備え置く。
●インターネット読売テレビホームページ「テレビの門・話し合ったもん」で議事録を公表。(http://www.ytv.co.jp)
●社内LANにて全ユーザー(全社員および関連スタッフ)に議事録を配信。
8.配布資料 ●視聴番組 概要
●2006年7月8月に寄せられた視聴者からの意見・苦情
9.送付資料 ●民放連機関誌「月刊民放」
●民放連機関紙「民間放送」

【審議内容】
社側
 おはようございます。それでは9月の番組審議会を始めさせていただきます。
 はじめに出欠のご報告をさせていただきます。委員の方は、きょうは金剛委員が所用のため欠席をされております。
 それから私ども会社側ですが、会長の土井が所用のために欠席をさせていただいております。ご了承いただきたいと思います。
 きょうは8月13日、終戦記念日の2日前の日曜日の午後3時から放送いたしましたドキュメンタリー番組『終戦記念番組「桜と蛍と富士」~日本兵が目にした祖国~』という番組についてご審議をいただきたいと思います。プロデュースを担当しました制作スポーツ局の中川でございます。中川のほうから企画意図等について、はじめにご説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

社側
 中川です。よろしくお願いします。では簡単に説明させていただきます。アジア・太平洋戦争で最前線で戦った日本の兵士たちが、敗戦の色濃い中で生き抜く支えとなったものは、どんなものだったんだろうかという視点から企画してみました。
 もちろん家族との再会ということが大きなものであったんだろうと思うんですけれども、それと同時に、もう一度、踏みしめたいと思う祖国、日本への思いも強かったろうと思います。
 その、もう一度見てみたいと思う祖国を戦場でしのばせてくれたものはどんなものだったのだろうかということを追ってみました。
 一つには、太平洋戦争の中でも最大の愚策の一つといわれるインパール作戦が中心となりましたビルマ戦線での桜、それから東部ニューギニア戦線での蛍、それから戦後の戦争である北千島の占守島の戦いでの富士山というものを追うことにしました。
 この三つの桜、蛍、富士というものを追いながら、その現場で、まだ残されている戦争の傷跡とともに、60年経っても癒えない元日本兵士の心の傷というものも描けたらと思って取材を続けました。以上です。

社側
 はじめに申し上げましたように、日曜日の午後3時からというたくさんの方に見ていただける時間で放送いたしました。視聴率も8.7%という非常に高い数字で、多くの方に見ていただくことができました。
 それでは早速ダイジェスト版の視聴をしていただきたいと思います。

<VTR視聴>

社側
 ありがとうございました。それでは委員長にお渡しいたします。よろしくお願いいたします。

委員長
 それでは、ご意見、ご感想を承りましょう。どなたからでも結構なんですが、いかがですか。

委員
 私も戦争にかかわる取材を随分したものですから、8月13日は、この番組を見させていただきました。花と生き物と山というのは、いずれも私自身が取材したこともありますし、それから途中で挫折したこともあります。その意味で言いますと、狙いもテーマも私の関心事でありましたので興味深く見ました。
 戦後61年の企画としては非常に優れたものではなかったかと思います。61年経ちますと、新しい素材をどう発掘するのか、その素材をどう組み合わせて新たな新規性を持った視点を打ち出すのかというようなところがメディアにとって非常に難しいところであるんですけども、そこに果敢に切り込んでやられたなというような気がいたします。
 ただ一つ言いますと、桜、蛍とも、その桜を、そこでカローで見た人、あるいは蛍を見た人という日本兵が、それぞれ出てこない。これは想像しますと、それを探し探して、結局探しきれなかったということではあるんでしょうけれども、その望郷とか、日本への思いというのは、やはりもう少し肉薄できなかったかという。
 それから加えて言いますと、できなかった場合には、おそらく周囲に、まだ健在でいらっしゃる人たちで、見た人たちが、国内にまだ現存されているんではないか、そこらあたりのアプローチがどうかなということを思いました。
 それと、これは我々のメディアの責任ではあるんですけれども、遺族がだんだん高齢化していくわけですけれども、それでも肉親が亡くなったところを訪ねてみたい、行ってみたいという思いは、ますます強くなると思います。
 そういう意味では、現地へ行かれるのは限られた人でありますので、「10年前にも押し花で持って帰った」という記述がありましたけれども、それと同じように、あの桜の押し花を今生きている人たち一人ひとりに配ってあげれば、どれだけ意味が深いかなと、これはもう我々も含めてでありますけれども、戦争報道ということの一つのあり方を指し示していただけたものだと思っております。以上です。

委員長
 ありがとうございました。中川さん、今の「実際に戦争中に現場で桜や蛍を見た人が出てない」というご意見ですが、探しても結局見つからなかったということなんでしょうか。

社側
 言われていることはよく分かるんですけど、探しはしましたし、おられることはおられるんです。ただ全部85歳とか、87歳の段階なんです。そうするとご家族の方が「もし何かあったらどうしてくれますか」というようなことが、やっぱりあるんです。
 それで行くところが、今委員も言われていたんですけども、例えばニューギニアの奥地に、あの土地は40度を超すんです。そこに85、6歳の人を延々と連れ回すということは、僕にはやっぱり忍びなかったし、それから行ってくれた人も、かなり説得して行っていただいたんです。「じゃあ行こう」と、やっぱり「俺の最期になるかもわからないけど行こう」ということで行ってくださったんです。
 もう少し若かったら行ってくださる方も多かったと思うんですけれども、そういうことです。

委員長
 現地に行くのも難しいんでしょうが、インタビューとか、実際にものを言うてもらう。

社側
 それはできると思います。

委員長
 それはできているんですか。

社側
 それはないです。だけども、それはできると思います。

委員長
 ありがとうございました。委員いかがでしょうか。

委員
 こういった「桜・蛍・富士」という日本を代表するものを戦場で、それに似たものを見て、非常に望郷の念に駆られたり、自分たちの心の癒しにしたと、こういうテーマを扱われたというのは非常にいいことだと思いますし、日本で、この3つが非常に、ある意味では無益な戦争であったという意味で、この3か所を取り上げたのは非常によかったというように思います。
 ただ、きょうこの20分もので見せていただくと非常にまとまっていて、今プロデューサーの方が狙っておられるような「桜・蛍・富士」で皆さんを癒したという点が非常に浮き彫りになってよかったと思うんでけども、1時間半番組、あれ全部を見せていただきますと、せっかくここまで行ったんなら、もうちょっと何か突っ込むというか、この戦争のむなしさとか、いろいろ訴えるものを浮き彫りにできたんじゃないかなというふうに、1時間半ものをずうっと見せていただくと感じたんですけれども、例えばインパール作戦でも、無益な決断をして、あそこへ行って、非常に悲惨な思いをして皆さん帰ってきていますわな。
 ただ、あのビルマ、ミャンマーは非常に今親日的なんです。ここは19万と書いてありますけども、向こうへ行くと「日本人23万の命のおかげで自分たちは独立できたんだ」と非常に親日的で、ちょっとこのダイジェスト版では出てきませんでしたけども、番組ではお墓が出てきますけども、あそこの墓守をしてくれているおばさんがいるんです。これはボランティアか何か知らないんですけど、そういったことで日本人の死というものを非常に悼んでくれているというビルマ、ミャンマーの人たちの心情もあるし、それに対して日本政府は今スーチーさんを拘束しているということと軍事政権だということで、あそこに対して一切援助を行ってないんですけどもね。
 向こうの人たちは非常に貧しい生活をしていて、今、月平均55ドルぐらいですか、これは民主主義といっても、投票に行くバス代もないところで民主主義というのも非常に大変だと思いますし、また22の部族があって、軍事政権を5回、民政移管しているんですけども、その都度、暴動が起こってうまくいかないんで軍事政権がずっと続いている。
 それがいいかどうかはべつなんですけど、これだけ迷惑をかけた国に対して、日本がもう少し援助すべきではないのかなというふうなことを訴えるか、あるいはインパール作戦というのは、ものすごく悲惨だったんで、そこがもうちょっと浮き彫りになってくる。一人の中将の決断で、これだけ悲惨なことが起こってきたということを浮き彫りにするか。
 あるいは占守島は、ちょっと出てきているけども、結局、両方とも終戦を知っていながら戦っているんですな。でも、こっちが300人以上も、向こうが3,000人以上死んで非常に無駄な戦いだった。それが、なぜ起こったのか、ちょっとここには出ていませんでしたけどインタビューで、向こうの方が「日本兵は、どうせ終戦だといっても20か月戦うだろう」というようなことを言っていて非常に不信感があったと、そういったお互いの不信感が、両方が、もう戦争は終わっているということを知っていながら戦っていたという、そういう心情がどこから出てきたのか、その隣の島では日本兵も戦ってないんですな。
 それは隊長の決断の問題なのか、あるいはお互いの連絡が悪かったためなのか。何か、そういう戦争というものが、いかにちょっとした行き違いから起こっているかということも、何となく暗示するとか、いろいろこれだけのテーマを使われたらできたんじゃないかなというふうに思いますので、非常にいい番組だと思いますけども、もうちょっと突っ込みがあったら、よりいい番組になったんじゃないかなというふうに思います。

委員
 桜も、蛍も、富士も、多分日本人だったら誰でも郷愁をそそられるという、この三つが、こういう厳しい戦地の中に、それぞれにエピソードがあるというのは、よくこういう切り口を見つけていらっしゃったなと思って、よく見かける戦争ドキュメンタリーとちょっと違う切り口になっていて、映像も美しかったし、現地の人たちの声も聞けたし、いろいろな意味でいい番組だったと思います。
 やっぱりミャンマーなんかで、現地の方々は「日本人を憎んではいない」なんて言われると、同じ日本人として、ちょっと救われる思いがしたりもしました。
 ただ、さっきもご指摘がありましたけども、1時間半の番組のわりには、証言している方が少ないなという気はしました。確かにミャンマーとか、ニューギニアとか、あっちのほうでは、あまり日本を憎んでいる人はいなくて歓迎してもらっているという話は聞いていて、私の友人も、ニューギニアのほうに調査に行ったときも、日の丸でみんな迎えてくれて「天皇陛下はお元気ですか」とか、すごく歓迎してもらっているというような話も聞いていたりはしているんですけども、でもやっぱり、あれだけの戦争、戦地になったんで、多分現地の方も、かなり被害者はおられるんじゃないのかなと、現地の方が「憎んでない」とおっしゃる場面だけじゃなくて、やっぱりそれとは別に、現地の方々がどれだけ被害を受けておられるかとか、やっぱり1時間半あれば、もうちょっと、そのあたりも見込んで紹介していただけたらなと。
 きょうは出てこなかったですけども、そのミャンマーのところで出てこられたのは通訳をなさっておられた方が、そうすると、どうしても日本寄りの発言になるのかなんて、ちょっとうがった気もしてしまったんで、そのあたり、もうちょっといろんな方の声を聞かせていただけたらなと思いました。
 それと、すごく素晴らしい番組だったと思うんですけども、ちょっとだけ心配なのは、何か今のこの日本の動きの中でこれを見ると、一部の方は何か「日本は悪くなかったんだ」みたいな、ちょっと美化するようなふうに受け止められる方もいるかなというのが少し気になりました。

委員
 私の世代というのは、はっきり言って、生まれたときから、もう戦争の影はほとんどない世代の人間でして、きょうのこれを見させていただいて、画像をもって、そのときの望郷といいますか、そのときのその場におられた方の気持ちとかを考えようと思っても、はっきり言って限界といいますか、「きっとこうだろうな」というぐらいは推測するにしても、はっきり言って全然、切迫感というか、現実感を持って感じることというのは無理な世代だと思うんです。少なくとも私ども以下はですね。
 これは世代によって違うのかもわからないんですが、私ども以下の世代には、もうちょっと何かプラスアルファがないと、なかなか入っていけないといいますか、おそらく中川さんが考えているところまで、ちょっとついていけないというところがあるように思うんです。
 最後の千島の方は、実際あそこに行かれて、また戦いもされてという場面で、まだ多少はあるんですが、蛍の場面とか見ていますと、これ多分、現地で全くの異国の地で、周りの戦友も死んでいって、ひょっとしたら骨のまま、そこで埋もれてしまうかもわからんという中で、それは自分の古里へ戻りたいという気持ちは強烈だっただろうなというのは分かるんですが、それが身をもって分からないと、そこをちょっとひとつ橋渡しがいただければなというのが私の感想です。

委員
 私は戦中生まれですけど、終戦のときは小学校1年生でしたから、自分の家も空襲で燃えたり、親戚も戦死したり、結構兵隊さんを「万歳」と見送ったり、何か子どもなりに、そういうのが何となく肌で感じて、B29が飛んできて神戸が焼け野原になるのを山の上から見ていたり、非常に怖い思いを持っています。
 ですから、こういうインパールやとか、ニューギニアとか、それからグアムですか、サイパンだとか、よく出てきましたから、今でも皆さんがグアムやサイパンやら硫黄島やとかと観光に行かれますよね。もうすごく嫌で、私は誘われても行ったことないんです。もう聞くだけで必ず大砲に、さっきもありました戦車の置き去りにしているものが出てきたりしているらしい。それをまた観光で見せるんですね。真珠湾もそうですけど、パールハーバーに、そういうことが残っているし、すごくそういうことを見ると「ああこわ」いうのがありまして、この番組も私ずっと見ましたけれども、最後の長いお手紙を読まれる武蔵さんとおっしゃる方、あの人が一生懸命読んでいらしたのを見ると、やっぱり涙が出てしまって、一緒にもらい泣きしたような世代ですので、やはり、いまだに何十万という人が土に還れなくて、あそこの朽ち果てた孤島に骨のまま埋もれているなんていうのは、もう耐えられないですね。その中には、うちの叔父貴も一人いるんかなとか、ニューギニアで死んだんですけれども、すごく身につまされましたよ。
 ですから、これ私が、そのギリギリぐらいの年齢じゃないかなと思います。戦前生まれの方で、きょうここにいらっしゃる私より年上の方、また感じ方が違うだろうし、この番組を見たときに、やっぱりさっき委員がおっしゃったけど、若い人はついて行きにくいなというのは、かなりあるんじゃないかなと。そういう人たちは、この番組、これを見ただけで「何や、こんなん見んとこう」と思っちゃったと思うし、私は一番に「ああ、これええ番組だそうだな」と思って、すぐに見たかった。
 これはオンタイムで見たかったんですけど、ちょっと忙しくて見れなかったので、たまたま、きょうの議題で送っていただけましたから、ゆっくり見せていただいたんですけれども、世代によって感じ方がすごく違うので、どの世代に訴えて、若い人にもっと戦争のむごたらしさを知ってもらいたいというんだったら、もうちょっと違う方面から入られたほうがよかったんじゃないかなと思いますけど、私の世代では非常に、またちょっと映像が美しすぎて、戦争のときだったら、もっと悲惨な血まみれだった土地だったと思うのが、きれいに覆われて草が生えていたり、あまりにも美しすぎて、何か絵画を見ているような、戦争絵画ですか、あんなん見ているような感じがちょっとしたんです。
 だから、もうちょっと、どの方に、どういう世代の方に訴えたらよかったかなというのがちょっとなかったんですが、私より上の方には非常に本当にいい番組だったと思います。私はそう感じました。

委員
 総評としてはいい番組だったと思います。「この番組でスポンサーがつくのかな」と思って、ちょっと心配にはなりましたけども、とてもいい番組だったと思います。
 非常に重たいテーマですね。この重たいテーマが、今おっしゃいましたように、淡々と進められて、何かエッセーを聞いているような感じで見させていただいた。それが、おつくりになった方の意図であるとするならば、それは非常にうまくいっているなという気がいたしました。
 非常にシリアスに見ようと思っても、語り口、あるいは出てくる風景などから見ると、やはり一つの物語であって、そんなに深刻な感じを受けなかった。それがもの足りないといえば、もの足りないんですけれども、それが意図されたところであるとすれば、私はそれでよかったんではないかなという気がいたします。
 やっぱり戦中派ですので、もうちょっと掘り下げてもらいたかったかなというところは確かに多々あります。そうすると、そんなことをしたら誰も見ないし、あんまり評判の番組にもならなかったんかなという気もいたします。
 とにかくインパール作戦であるとか、ラバウル航空隊なんというのは、あんまり知らない人が大部分ですから、その人たちに見てもらおうというためには、もう少しイントロダクションも要ったんではないかと思います。先程委員がおっしゃったように、なぜ、こんな無駄なことになってしまったかということを掘り下げるというのも、私一つであると思います。
 それをするのであれば、そもそも、どうしてあそこまで戦線を拡大しなければならなかったのかということですね。そこから説き起こすとなると、これはもう大プロジェクトになってしまって、とてもじゃないが終戦のときの番組としてではなしに、シリーズものか何かでやっていただかないといけないですね。
 それが実は私たちは本当に希望するところです。太平洋戦争の真実の姿というのを一度、本当にやっていただきたいなという気がします。
 「美しいところだけ」というふうに言われましたけれども、今の若い人たちというのは、戦争というのは、もう悪いことばっかり、もう日本軍というのは本当に悪いことばっかりしたというふうに受け止められますけども、世の中のこと、そんなもん100%悪いということばかりではないわけですから、そこのところは、もうそろそろ見直して、毅然と日本のやった、よいことというのも振り返って、そういった番組をつくっていただけたらなという気がいたします。
 最後の富士山に向かっての、祝詞のような、ああいうのも、もちろん感激的ですけども、私は、もう一つ、グッとつまされたのは、ニューギニアの人が『君が代』を歌っていましたね。
 あそこは本当にちょっと息をのみましたね。
 非常に散漫なコメントですけれども、それぐらいです。

委員
 非常にきれいな映像と、それからナレーション、柔らかなナレーションと音楽、とてもよかったと思うんですけれども、先ほどから委員の皆さんがおっしゃっているように、何か、あまりにもきれいすぎるような気がしました。
 それで、じゃあこれ、何でこんな戦争が起こったのか。それから日本が、どういう状態で西南太平洋一帯を、まず制圧して、その後、無謀に行ったかとか、国、それからこういう一般の人たちが、結局、最後は終戦であっても、まだ殺されていたとか、そういうことが、何か「桜・蛍・富士」という日本人の心にピタッと合いそうなキーワードで描かれていることに、やっぱり何か、今回これを終戦記念日で放送することにあたってのテーマというものが、ちょっと見えなかったような気がします。
 そういう「戦争は罪悪である」とか、そういうテーマを入れるんじゃなくて、今回は、そういうところに駆り出された日本兵の望郷の念、祖国だけを描くという形で制作されたのであれば、ちょっと終戦記念日にはふさわしくない意味のきれいさがあったような気がします。
 それで、ここに出てきた渡邊さんとか、ほかの人たちに関しても、お元気な方たちが出ていらっしゃいますけれども、現実、目の前で戦友を亡くされている。今でいうトラウマというようなものを、いかに克服されて、ここまでこられたとか、そういう部分が全然見えなくて、戦争というものを、桜とか、蛍とか、富士山というものの中で象徴している、ちょっと全然戦争を知らない人から見れば、怖さみたいなものが出てくるように思ったのですけれども、私自身、戦争の思い出というか、戦後、小学校に入ったときに、まずい脱脂粉乳とか、頭から何か、わけのわからん白い薬をかけられたとか、それから回虫駆除のすごい泥のようなものを飲まされたとか、そういうものだけで、実際に自分の教育の中で、戦争となるものを、例えば、この太平洋戦争、大東亜戦争ですか、こういうものを実際に学んだ記憶がありませんし、ましてや今の世代の子は全然知らないと。
 そういう中で、もう少し、しっかりとしたテーマの中で戦争を訴えていただけたらよかったのではないかと思いました。以上です。

委員
 この番組のテーマは「桜・蛍・富士」ということになっていますけども、私は、この番組は戦没した兵士への鎮魂の番組だというふうに受け止めました。去年も実は60周年で記念番組を拝見した覚えがありますけど、今回61年の番組も、そういう意味では戦没兵士への鎮魂の番組という意味では、非常にいい番組だったというふうに私は思いました。
 昭和31年に、経済白書が「もはや戦後ではない」という宣言をしたわけでありますが、それからもう既に大方50年経っておりまして、もう戦争を知らない人どころか、戦後も知らないという人が非常に増えているわけですけれども、先ほどの北千島の武蔵さんがおっしゃっていましたけれども、国のため、民族のために命を捧げた人、そういった人のことを、今我々はやっぱり、ずっと忘れるべきではないと思いますし、そういった人をしのぶといいますか、そういうことを意識してやるというのは非常に大事なことではないかというふうに思いますんで、その点で非常によかったというのが第1点です。
 それから、この番組の特徴といいますか、2点、私が感じた点がありますけど、一つは、そういった趣旨から当然かもしれませんけども、戦争というのは非常に複雑で巨大なテーマになりますから、どういうアプローチをしていくかというのは、なかなか判断があるわけですけれども、この番組にあたっては、第一線の将兵にスポットを当てていますから、いわゆる空から鳥が飛んで下を見下ろすような、そういう見方じゃなくて、もう地べたの虫が見ているというか、虫の目で戦争という現実をとらえているというのが一つの大きな特徴であったんではないかというふうに思います。
 ですから将軍も出てこないし、参謀も出てこない。出てきているのは、従軍看護婦だとか、現地の人だとか、対戦したソ連の兵士だとか、遺骨を収集している人だとか、そういった、まさに第一線の現場の人だけが出てきているというのが一つの特徴です。
 それから二つ目は、先ほど委員からもご指摘がありましたけども、非常に重いテーマですけれども、非常に落ち着いたといいますか、抑制されたトーンで、ずっと番組がつくられたというふうに感じました。これが、かえって見る人には余韻があって、インパクトがかえって、そのほうが強かったんではないかというのが私の印象です。
 背景の説明とか、かなり省略されていたわけです。今までも幾つかご指摘がありましたように、例えば北千島の戦闘というのは、スターリンが非常に強欲に無理やり、ヤルタ協定の自分の取るものを確実にしようと思って無理やり仕掛けた全く理不尽な戦闘なわけですけども、そういった説明も省かれた。これは、ある意味では多分意図的に、そういうのは一切省かれたんではないかと。
 やっぱり第一線の将兵が何を思って戦ったかというところにスポットを当てるということで省かれたのかなというふうに私は受け止めました。
 あと最後にもう1点だけ付け加えて言いますと、この番組に登場されている人、皆さん、もう80をはるかに超えた方ばっかり、一方では、先ほど申しましたように、戦争を直接知る人、あるいは、それを聞く人もだんだん減っていくわけです。
 そういう中で、今後、次の世代に何をどう伝えていくかというのは非常に難しくなってくる。これはメディアもそうでしょうけど、我々個人も、そういったことに、どういうふうに次世代に、このことを伝えていくべきなのかということも改めて考えさせられた。そういう番組だったというふうに思っています。以上です。

委員長
 ありがとうございました。私は戦前生まれでございまして、終戦のときには旧制中学の4年だったと思いますが、こういう戦中戦後のいろんな思い出なんかは、人それぞれに、あるいは、いろんな立場から、さまざまな視点での見方があると思うんですけれども、やはりいろいろな形で記録を残して後世に伝えるということは非常に大事なことだと思うんです。そういう意味では、こういうこの番組も非常に貴重な番組だと思います。
 何か皆さんの意見を聞かれて、中川さんのほうとして、何かコメントございますか。

社側
 一言だけちょっとあえて言わせてもらえれば、一つの戦争の原因論とか、各戦場での、もっと詳しいことをやる方法は、それはあると思います。
 ただ私としては、言いわけがましいですけど、やはり映像で示さなければならないというところがあります。証言とか、そういうのは取ってはおります。だけど、そうなってしまうと、ほとんどが証言になっていくんです。そうすると、それは映像の世界から離れていくんです。そこのところを僕は意識しすぎたのかもわかりませんけども。
 それから、もう一つ、若者に理解しがたいというご指摘があったんですけれども、僕はこの番組をやる前に、高校生や大学生に、北千島とか、ミャンマーとか、そういう戦いを知っているかということを、ある程度、聞いて回りました。だけど、ほとんど知らないんです。
 そうすると僕は戦争の一端でも、やっぱり今の若い人、8月15日が終戦記念日だということまで知らない高校生がおる時代なんです。そういう中で、もう一度、そのきっかけをつくるためには見せる努力をしなければ見てくれないだろうと。非常に格調の高い意見も、それは入れていったらいいでしょうけれども、それでは今までどおりのものになっちゃうから、若い人にちょっとでも関心を持ってもらうには、今は映像がすごく若者の心をとらえると思うので、それを機会に、もう一度、戦争というものをとらえ直してくれるきっかけになればなという意味で、映像を重視したストーリー展開をしたんです。それが本質から外れているというご指摘があれば、もう僕の失敗だと思うんですけども、何か例えば、ああいう蛍とか、富士山とかがきっかけで、もう一回見てみようという気持ちを、一回現場に行ってみようという気持ちが誰かに起こっていただければ、もっとあそこで戦場の傷痕を生の自分の肉眼で見ることができるだろうと、そういうきっかけになればなという願いを込めてつくったということです。

委員長
 ありがとうございました。委員のほうからも、幾つかの希望というか、そういうご意見もありましたけども、総じていい番組だったという意見だったと思います。では。

社側
 ありがとうございました。それでは、この7月と8月、2か月間に私どもに寄せられました視聴者の声をご紹介させていただきたいと思います。前回8月が審議会お休みでしたので、2か月分になりますが、よろしくお願いいたします。

社側
 7月と8月に視聴者から寄せられました意見・苦情についてご報告いたします。
 まず7月度の意見ですけれども、やはり5月、6月あたりから野球の視聴率というものが、かなり低迷しておりまして、その中で新聞・ラテ欄の表記に「延長の場合あり」というような表現が残っておりました。それに対して100件以上の苦情が寄せられました。「試合展開により延長」と書いてあったり「延長の場合あり」という形になっていたんですけれども、実質的には、ほとんど延長されてなかったというあたりで、この新聞表記に対する苦情が多く寄せられまして、現実面としては8月1日から、この「延長」という新聞表記をやめるようにいたしました。
 それから『匿名記者 あなたを狙う悪徳サギ マル秘手口』というような形でスペシャル番組で放送したんですけれども、「ここまで取材をしておいて、どうして警察に連絡して逮捕に至らないか不思議だ」というような抗議というか、意見が寄せられておりました。
 それに対して担当者的には「警察には取材の過程で通報しております」と「現実問題、今年、詐欺団が逮捕され、継続捜査中だと思われます」と「ただ、『直接取材をした当事者に関しては、これは出頭することを促す以上のことはちょっとできません』というあたりのことをご理解ください」というような形で『声』等の番組でご返事しております。
 それから『太田 光の私が総理大臣になったら…』というので、番組の一つの企画として、新しいマニフェストみたいなものを討議していくというコーナーなんですけれども、「お役所を民営化したらどうだ」というような形のテーマを取り上げました。
 それに対して「破綻している市でも高額のボーナスが支給されている」とか「民間より給料が高い」とか「3700種類もの手当が支給されている」など、ごく一部の公務員だけに認められているものを報道されていますけれども、現実そういうことではないので、誤解を招くような表現は注意してほしいというような意見が寄せられております。
 それから問い合わせが多かったものは、『おもいッきりテレビ』のいろんな健康情報、料理情報みたいなものに、やはり多く寄せられております。
 引き続きまして8月分の報告になります。8月に関しては、特に、ある特定の番組に多くの抗議、意見が寄せられたということはございませんでした。
 ただし8月15日の小泉首相の靖国参拝に関する報道、それから情報番組等の取り扱いにつきまして、「あまり靖国々々と言って連日報道して煽り立てないでほしい」というような意見が寄せられていたり、逆に「是非論をしっかり論ずるんであれば、ちゃんと賛成派、反対派の人数を揃えるようにしてやってほしい」「もっと積極的にやってほしい」というような意見も寄せられております。
 それからシュレッダーで子どもたちが怪我をしたということの報道が多くなされておりますけれども、『情報ライブ ミヤネ屋』という番組では、「番組並びに出演者は、メーカーの責任ばかりを指摘、糾弾していましたけれども、実際、そのような危険なものを子どもの近くに置くというのは親の不注意ではないか」というような、割と「自分たちも、もっと注意すべきではないか」というようなことで、「単にメーカーの責任だけではない」というような意見が多く寄せられております。
 それから8月に関しましては、26日から27日にかけて『24時間テレビ 29』というものが行われましたが、これに関しては、チャリティーマラソンで走っていた「アンガールズ頑張れ!」という激励の言葉から、『高校生ダンス甲子園』というのが、これが十何年ぶりだと思いますが再開されまして、それに対する放送時間の問い合わせ、それから深夜のコーナーが割と若手のお笑いを使ったコーナーが多く放送されましたので「番組の趣旨からかけ離れているんではないか」というような批判と、それからラテ欄の表現が放送の順番になっておりませんでしたので「不親切だ」というような意見が2日間で934件寄せられております。以上でございます。

社側
 ありがとうございました。では9月の番組審議会、これで終了させていただきます。
 次回は10月13日の金曜日、同じこの場所で開催をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

  • 平成18年度読売テレビ番組審議会委員
  • 委員長    熊谷信昭   兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
  • 副委員長    馬淵かの子   兵庫県水泳連盟   顧問   元オリンピック日本代表
  • 副委員長    川島康生   国立循環器病研究センター   名誉総長
  • 委員    秋山喜久   関西電力株式会社  顧問
  • 委員    金剛育子   能楽「金剛流」宗家夫人
  • 委員    林  千代   脚本家
  • 委員    阪口祐康   弁護士
  • 委員    佐古和枝   関西外国語大学教授
  • 委員    北前雅人   大阪ガス株式会社   代表取締役副社長執行役員
  • 委員    谷  高志   読売新聞大阪本社   専務取締役編集担当