第471回 番組審議会議事録
1.開催年月日 |
平成18年4月14日(金) | |
2.開催場所 | 読売テレビ 役員会議室 | |
3.委員の出席 | 委員総数 | 10名 |
出席委員数 | 8名 | |
出席委員の氏名 | 熊谷信昭、秋山喜久、金剛育子、林 千代、馬淵かの子、阪口祐康、佐古和枝、吉岡征四郎 | |
欠席委員の氏名 | 老川祥一 、川島康生 | |
会社側出席者 |
土井共成 (代表取締役会長) 髙田孝治 (代表取締役社長) 丸山和男 (代表取締役専務) 編成・制作スポーツ・東京制作・事業担当 越智常雄 (専務取締役) 総務・労務・報道担当 久保哲郎 (執行役員審査室長) 森岡啓人 (執行役員報道局長) 位寄雅雄 (編成局長) 村上博保 (制作スポーツ局長) 若山 睦 (報道局チーフプロデューサー) 松下泰紀 (審査室視聴者センター部長) |
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事務局 |
新谷 弘 (審査室次長兼番組審議会事務局長) 菱田千佳 (審査室番組審議会事務局) 前田義信 (審査室考査著作権部) |
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4.審議の概要 | 番組視聴 | |
番組視聴「NNNドキュメント'06 暴走した威信 誰が裁判所長を襲ったのか」 | ||
放送日時 | 平成18年4月2日(日) 深夜0時55分~1時25分 (野球延長により30分押し) |
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放送エリア | 全国ネット | |
4月度の番組審議会は4月14日(金)読売テレビで行われ、毎週日曜日の深夜0時25分から放送している、NNNドキュメント'06のうち4月2日に放送した「暴走した威信 誰が裁判長を襲ったのか」を視聴して合評が行われた。 委員からは「埋もれてしまう事実を掘り起こし社会の健全性を維持するというジャーナリズムの役割を発揮した番組だ」、「非常に共感した、同時進行の迫力あるドキュメンタリーだった。こうした番組を放送した社としての決断・勇気を評価したい」などの声が相次いだ。 一方では「なぜ罪を着せられた五人が逮捕されるに至ったのか、その経過が判らない、もっと突っ込んでほしかった」といった指摘もあった。 この後、3月に寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。 出席は、熊谷信昭、秋山喜久、林 千代、馬淵かの子、阪口祐康、佐古和枝、金剛育子、吉岡征四郎の各委員と読売テレビからは土井共成会長、髙田社長以下12名。 |
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5.審議内容 | 別掲の通り | |
6.審議会の意見に対して取った措置 特記事項なし(議事録は関係部署に配布) |
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7.審議会の答申・意見の公表
●4月27日(木)付け読売新聞朝刊に議事の概要を掲載。 ●5月13日(土)午前5時14分から放送の「声~あなたとよみうりテレビ~」の中で議事の内容を放送。 ●本社審査室に閲覧用として議事録を備え置く。 ●インターネット読売テレビホームページ「テレビの門・話し合ったもん」で議事録を公表。(http://www.ytv.co.jp) ●社内LANにて全ユーザー(全社員および関連スタッフ)に議事録を配信。 |
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8.配布資料 | ●視聴番組 概要 ●2006年3月に寄せられた視聴者からの意見・苦情 |
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9.送付資料 | ●民放連機関誌「月刊民放」 ●民放連機関紙「民間放送」 |
【審議内容】
●社側
おはようございます。皆さま、お揃いですので4月の番組審議会を始めさせていただきたいと思います。
まず、委員の方々の出席の状況ですけれども、きょうは老川委員と川島委員のお2人が欠席をされておりますのでご了承ください。それから読売テレビ側はレギュラーのメンバー全員出席しております。よろしくお願いいたします。
きょうは毎週日曜日の夜に放送しております『NNNドキュメント』という番組から1本選びまして、ご審議いただきたいと思います。
この番組は、ご承知のように、私どもの系列で年間50本のドキュメンタリーを各局、手分けをして制作をしておりまして、読売テレビは大体、年によってばらつきがあるんですけれども、10本前後の番組を制作しております。
きょうご覧いただくのは、この4月2日に放送いたしました『暴走した威信 誰が裁判所長を襲ったのか』という番組でございます。
この番組のプロデュースを担当しました報道局の若山から企画意図等について、はじめにご説明をさせていただきます。
●社側
おはようございます。報道局の若山でございます。よろしくお願いいたします。
お手元に資料がございますが、このたび放送させていただきました、この『暴走した威信』といいますのは、事件発生直後になりますから2年以上前になりますけれども、そのころから報道局で「この捜査は、ちょっとどこかおかしいんではないか」という目線を持って、我々独自に検証を加えて取材をしてまいったものでございます。
番組になりましたのは、先だっての4月でございますが、この2年間、およそ20数回にわたって、日々のニュースの中で「冤罪の疑いがあるのではないか」というふうな視点で報道を続けてまいりました。
ご承知のように、逮捕あるいは起訴をされている事件を報道するにあたって、我々の側が「どこかおかしい」、あるいは「冤罪の疑い」などというふうなことは、なかなかできないことでございまして、ところが、今回は取材に基づく事実関係を精査した結果、「この事実を読売テレビ報道の名において明らかにしなければ、報道機関としての使命が果たせない」というふうなところで、幸い、そういったところの事情を上司も理解をしてくれまして、警察あるいは検察及び公権力の側からの圧力というのは当然予想はされたわけですけれども、こうした中でも、報道機関としての名においてやっていこう、ということで続けてまいったものでございます。
いささか大げさになりますけれども、ややもすると我々の報道、ニュースというのは、情報を掠め取るというんですか、よくも悪くも政治家であり、公権力であり、そういったところからの情報をとってお伝えしているというふうなことが多いわけですけれども、今回のこの事件報道を通じて我々自身も、そういったもの、いわゆる発表ものによるのではなくて、我々自身が足で稼ぎ、疑問に思い、当然、それに伴う客観的な視点を伴いながら、視聴者に対して、より重要なことを伝えていくんだと、まして今回のように人権上の問題、いろんなものをはらんでおりますけれども、こうしたことを伝えていくことが我々の使命であろうというふうなことを再認識していますので、よろしくご視聴のほどお願いいたします。
●社側
それでは早速ですけれども、VTRをご覧いただきたいと思います。
<VTR視聴>
●社側
ちなみに、これは深夜の0時55分からの放送だったんですけれども、関西が視聴率6.2%、関東5.7%という数字で、この時間帯で、この種の番組としては非常に高い評価をいただいたというふうに思っております。
委員長、どうぞよろしくお願いいたします。
●委員長
番組の内容とか、報道の姿勢など、いろいろな視点からの課題があると思いますが、ひとつご自由に率直なご意見を承りたいと思います。どなたからでも結構なんですが、法律のご専門の委員、いかがでございますか。
●委員
テーマを見たときから私が一番ではないかなと思っておりました。非常に迫力のあるドキュメントでした。後から検証しているんじゃなくて、同時並行的に取材をしていく。そこから出てくる迫真性というのか、迫力、それが一番の原因であろうと思います。
私自身は、あまり刑事事件はやりませんけれども、その乏しい経験の中でも、「こういう場面よくあるな」というのは、お父さんが、あれ喫茶店ですか、無罪の署名を集めたときに、サインしてくれる人がいますけども、「わし関係ないわ」というような態度をとられている方もおられて、ああいう場面は私どもも経験するところですし、あるいは画面ではありませんでしたけれども、目撃者を探されたけど、自分たちの力では見つけられなかったと、これも私ども、いろんな形で目撃者探しをすることはありますけども、ほとんど情報は集まらないですね。
まあ言うたら「自分たちと関係ないことだ」という思いが前提にあって、まず集まらない。そのとき非常な無力感を感じるわけですけれども、そういうところが、後からの検証やなくて、その場で映像が残っている。それで訴えるというのは私どもは自分が経験しているだけに、まさにそのとおりだなというふうに思って非常に共感いたしました。
お父さんが、いつの時点か分かりませんけれども、「自分たちのできたことは、ほとんどない」と「せいぜいできたのは署名程度や」というのは、まさにそのとおりだろうなと思います。
そういう意味で御社のが、どの時点でおかしいと、どういう情報に基づいておかしいと思われたんか、それがほんまに一番知りたいところなんですけど、その点は差し置いても、後から考えると、あのビデオを見れば、あの捜査はおかしいというのは、これは、ほぼ皆さん、ご理解いただけるところだと思うんですが、あそこにたどり着くのが大変なんです。ビデオにたどり着くのがですね。
現場は多分何回も聞き込みというか、されたということやと思うんですけれども、たまたまビデオを見た。そこから、その所有者の方に当たって、そのビデオを見るのが、またこれ大変ですね。私どもも経験ありますけれども、普通「弁護士ですけど」というたら、正直申し上げて、まずは、ええ顔されません。
お父さんも言われていましたけども「警察やったら見せるけど、普通の人には」というのは通常の方の態度で、そこは御社がいろいろやったおかげで、あそこまで行けたのかなというふうに思って、それの努力もまた敬意を表するところです。
ただチーフプロデューサーの方が言われていましたけども、同時進行的であるがゆえの難しさも当然あったと思うんです。特に多分、社内でも協議されたと思いますけど、「利用されているんじゃないか」というところが多分一番の問題点やったと思うんです。そのリスク、もし、ほんまに利用されていたんやったら、これはえらいことですから、本当に大丈夫なのかというところは、多分検証に次ぐ検証を重ねて取材されて、事今日に至っているのかなと、その意味でも、社を挙げての踏み切った勇気に敬意を表したいと思います。
ただ、そういうことばっかりじゃなくて、委員としては何か言わなければならないということなんですけれども、あえて言うとすればですけれども、ちょっと番組の途中であったんですけれど、権力側のほうが威信で、要するに、どうしても大阪地裁の所長が襲われるというような事態なんで、何としても解決せないかんということで、無理な自白を取りに行ったという構造は番組の中で出ているんですけれども、私のような法曹界の人間から見ますと「検察庁は一体何をやっておったんや」ということになるんですね。
私どもが司法試験に通って、研修所あるいはインターンの時代に、検察庁からまず言われることは、「捜査の段階で、自白というのは、証拠の王ですよ」と「これをなくすということはできない」と、また「自白を得ることなしに事件の解明をすることはできない。これはもう、いつの世でも同じだ」と「これからも変わらんだろう」と。
ただ「自白の怖さというのを考えて捜査をせえ」と、これは何度も言われるんですね。「自白に頼るな」と「自白は本当に正しいのかということを、あらゆる角度から全部検証せよ」というのを研修所でも言われるし、インターンの時代にも言われるんですね。
そうすると検察庁が、あのビデオの存在を知っていたかどうか、私そこまでは、この番組から読み取れなかったんですけれども、もし気がついていれば、それを調べるというのは、初歩というか、当たり前というたら当たり前な基本的なこと。ビデオはあったけど、それについての検証をしなかったというのは、私どもから言うたら、ちょっと考えられないんです。
その原因が、検察庁の担当された起訴検事の方の経験不足から来るのか、それとも府警が威信をかけてやっているので、いろんな意味で止められなかったところから来るのか、あるいは検証はしたけれども、結果が違っていたけど握りつぶしたのか、これは正直、闇の中で分からないんですけれども、そこの視点が、もうちょっと、警察じゃなくて、もう一つの検察庁というのは警察を指揮命令するだけでなく、チェックするという機能があるんです。そこが、ある意味、チェック・アンド・バランスで有罪率99.9%というのは、そういうところにもあるわけで、そこをもうちょっとやっていただいたらもっと、これは私みたいな法曹界の人間やから思うだけなのかもわかりませんけれども、番組がもっと深まったのかなというふうに思います。以上です。
●委員長
ありがとうございました。お隣の委員はいかがですか。
●委員
いま委員がおっしゃるとおり、当初から疑問を感じながら、ずっと取材をしてこられたというところで、やはりとても迫力に満ちたといいますか、なかなかニュースだけでは表に出てこない、家族の皆さんの苦しさとか、取り調べ室の中のすごい恐怖感を与えるような状況みたいなことが出てきていて、本当に「権力て怖いな」と「国家って怖いな」ということを思い知らされたような気がいたします。
やっぱり与えられた発表に頼るのではなくて、主体的な視点で独自に取材をするということの大切さというか、マスコミの使命というのが本当に果たされてつくられた番組だなと思いました。
ただ、見終わった後で、ご本人も「これからや」とつぶやいておられたんですが、本当にこれからどうなるのかなということとか、あるいは、こういうことがあるということは、ほかにも何か、これと似たようなことが起きているんじゃないんだろうかとか、あるいは今ご指摘があったような検察庁、あるいは警察の責任というのはどうなるんだろう。
あれが間違いだったということであれば大変な迷惑とか、苦しみを与えたわけで、そのあたりはどうなんだろうとか、そこから先が知りたいなという部分もありました。
だから、あそこまでの番組だったら、個別の事件の紹介みたいな形で、あれだけだったら何を伝えたかったのか、もちろん、こういう間違いがあっちゃいけないとか、そういう警察の実態とかというのもあるんでしょうけども、この事件をきっかけにして、やっぱり伝えたいこと、これを切り口にして伝えたいことというのがおありになるんじゃないのかなと、そういうところまで、もう一歩踏み込んでいただけたら、もっと、これからの社会とか、あるいは私たちの認識についても、さらにメッセージを届けることができたのかなと思いました。
●委員
非常にコメントするのが難しい問題だと思うんですけど、ここで取り上げておられるのは冤罪、これはあってはならないという一方の問題があるし、もう一方では栃木県でしたか、民事不介入ということで、警察がなるべく民事に入らないということで、介入しないという問題。
日本の場合、だから非常に検挙率が低いんですわな。ということは極端に言えば犯罪者が野放しだということで、その検挙率を一方では上げていくために、もちろん科学的な捜査とか、人員が足りないとか、あるいは、そういった捜査能力の問題とか、いろいろあるかと思うんですけども、健全な国民を守るための、国民に愛される警察のあり方というのが、今問われているんじゃないかなということだと思います。
一方では冤罪があってはならないし、一方では野放しにしちゃいかんと、この辺をどうするのかということと。それから先進国で有罪率99.9%というのは異常ですわね。要するに、検挙されたら、もう大体有罪だというのは、これはなぜそうなるのかよく分からんですけども、確か普通の国だと50%から60%ぐらいしか有罪率はないと。国連でも「日本の有罪率は高過ぎる」ということは、強権力があり過ぎるんじゃないかと。
あるいは逆に言うと弁護士さんに、もうちょっと権限を与えて、捜査権付与して反証を上げられるようにしなきゃいかんのか、制度的な問題なのか、ちょっと分かりませんけども、その辺も修正していかなきゃいかんと。
こういうふうなことで、今ちょうど、こういったふうな問題をぶつけられたのと、一方では不介入で、いろいろストーカーの問題がありましたな、神奈川県でしたかな、ああいうふうに警察が何もしないということの両方の側から、国民に愛される警察のあり方論をどう考えていくのかということが問われているんじゃないかなというふうに思います。
だから、そういった意味で、これも冤罪を手まめに追っかけられてやっていかれた、この放送というのは非常に貴重だと思いますけども、取材する側の意識として、今度は逆の側もあるんだよということは、あんまり冤罪論を言い過ぎると、このケースの場合は警察が悪いと思うんですけど、警察が何もしないほうがいいんだという不作為の作為になってきても、ちょっと国の安全という問題をあれするんじゃないかなと。
それから社会が、もう起訴されたら犯人だと、こういうふうに決めちゃうのも非常に問題だと思うんですけどね。家族だけが理解してくれているというけども、有罪になるまでは犯人じゃないと、犯罪者じゃないんだという社会的な合意が必要なんじゃないかなというふうに思います。
いずれにしても、これはこれとして非常に問題を投げかけ、また非常に苦労されて取材されているということで、社会に一石を投じたという意味では非常に貴重だと思いますけど、社会全体についてどうするかというのも、一遍考えながら国民全体で、あるいは報道機関として考えていただくというのも重要じゃないのかなというふうに思います。
●委員
ちょっと重たいテーマで私は苦手なんですけれども、たまたま読売テレビさんが「おかしいぞ」と言って、自分たちでテープを何とか掘り起こしましたよね。そういうことを、たまたま読売テレビさんがついていたから、これがうまいこといって無罪になったんだと。
この家族は、それで読売テレビさんには感謝していると思うし、私も、この人たちは運がよかったんだなと、第一印象でそう思いました。
もっとたくさん、こんなケースはあるけど、手も足も出なくて、甘んじて監獄につながれていて、泣きの涙で有罪になっちゃっている人もいると思うんですけど、たまたまこのラッキーな人が、タイムリーに見つかって、いい番組ができたなと、ただ、それだけで済ましちゃっていいのかなと思いながら、私、家へ送られたビデオを見ていたんですけど。
それと「冤罪、冤罪」といいますけど、何というんか、警察の取調室、密室でやるいうのが、このごろちょっと問題になっていますね。すごく脅かしたり、何か、すごい落としの名人が、長時間グニャグニャにしてしまうまでやっちゃって、「もう面倒くさいわ」と白状する人が結構いるというのは聞いていますし、これから取り調べの様子をテープにちゃんと録って、もちろん誰にも公表しないような、特定の人が、きちっとそれを、「この取調官はおかしいぞ」とか「こういうことをやったらいかんぞ」という警察の上の方が、やっぱりチェックするとか、そういうことまで、私たちが声を上げないと、なかなか警察は動かないんでしょうけど、そういうことまで、やっていただけたらなと思いながら見たんです。以上です。
●委員
娯楽番組主流のテレビ界にあって、こういう重いテーマを取り扱われたのは非常に意義が深いと思います。見ていてサスペンスタッチのドラマを見ているような感じで引き込まれました。
状況証拠を積み上げられて「犯人ではない」という確信につなげられたという、その努力とか、信念には非常に敬意を払うんですけれども、でも、それだけで普通の視聴者とか、一個人であれば「もし本当に犯人なら」というリスクがあると思うんですけれども、それを放送されたということに関しての確信が、もっと別のところにあったのかなというようなことは、ちょっと感じて、それが、もしかしたら分かっていても出せなかったのかなと。
この事件は知っておりましたけれども、今回、ここまでのドキュメンタリーを見たときに、じゃあ13歳の少年が、あの時間に何をしていたかという、そのアリバイとか、そういうものは全然出てこなかったし、ましてや今回の主人公になっている人についても、実際に、その時間どこにいてたかというようなことは出てない。
また、その28歳の方が何をしていたか、仕事とか、そういうことも全然情報として出ていなかったし、当時13歳の少年が、27、8歳の大人と付き合っていた、その不自然さ、そういうものも全然感じられなかったので、その辺はどうなっているのか、ちょっと見ていて非常に知りたいところでした。
確かにタイトルにもありました「暴走する威信」というものの怖さも感じると同時に、善良な国民であれば、そういう警察があって我々が守ってもらっているということを考えます。
ちょっと夜、怪しいことがあって警察に電話をしたときに、まず最初に近くの警察の人がバイクで駆けつけてくれて、次にパトカーが来てくれるということがあったときには、非常に頼もしく感じたんです。すぐさま配備して、その辺に誰かいないかというようなことを調べてもらったときに、やっぱり信頼するという警察の力も、私自身は、今まで経験しておりますので、ちょっと私自身は現実に、犯人とされたその人のすべてを知っているわけではないので、これからどうなるのかということもそうですけれども、ちょっと何か偏り過ぎているかなという思いもありましたけれども、これから先どうなるのかということは、イコール真犯人が見つかるというところへつながるまで、やっぱりこの人たちは、実際、世間から犯人だという目で見られたことは拭い取ることはできないのかと、これから読売テレビのこの放送にかかわった人たちの努力とか、そういうものを、見守ると同時に、非常にテレビがこういうものを取り上げられたということに関しては、意義深いと思って見せていただきました。
●委員
私も、冤罪が氷山の一角だと、いろいろ聞かせていただいておりますけど、このたびの番組を見て、まず、率直な第一印象は、とにかく怖いもんだなという、私ども、こういう自分でも何か、ある日、突然にでっち上げられて連れて行かれたら、本当に成すすべがないなという、そういう、まず恐怖感みたいなのを率直に感じましたし、また、こういうものに対する怒りみたいな、いろんなことをすごく感じさせられる番組だと思いました。
この場合、先ほどお話にもありましたが、たまたま読売テレビの皆さんが、ちょっとおかしいと思われて、こういう取材をされてなかったら、これが表に出てこなかったことだとか、たまたま犯人と言われた人が、身長が180センチと、すごく大きな方だったからよかったですけど、ビデオの人物と同じぐらいの身長の方だったら、そのままになってしまっていたかもとか、いろんな疑問がわいてきました。
なにか何も信じられないような、それこそ真犯人というのもあるわけで、今ごろ、その人はどんなことをしているだろうか、真実は、どこに行ってしまうんだろうということが、それと、そういう取り調べのすごさ、真犯人を捕まえるという目的じゃなくて、とにかく、でっち上げでもいいから犯人を出したいという、そういう捜査のあり方そのものが、非常に問われる。それ自体がすごく問題ではないかなという、そういう警察の取り調べですとか、そういう人たちの罪は問われないのだろうかとか、そういうことまで踏み込んだものをしていただけないと、何か国民として納得できないなという、そういう感じをもちました。
そういう意味で今の北朝鮮の拉致問題も、テレビですごくしていますが、ああいうのも各メディアが取り上げて、国民の注意を喚起するということもありますし、非常に、そういう意味でテレビはじめメディアの役割が本当に大きく、こういう問題にもつながる。すごく大きな影響力があるということを改めて、感じましたんで、やっぱり、テレビ局の方の倫理観とか、そういうものか非常に大事になっている時代だなということも感じました。でも非常に意義深い番組だったと思います。
●委員
皆さんおっしゃっていますけど、非常に重たいテーマだと思いますけれども、ジャーナリズムの本領を発揮した報道番組ではないかというのが私の第一印象でございました。
日本の社会は先進国の中でも比較的、その何といいましょうか、法が行き渡っている、ルール・オブ・ローという考え方が行き渡った社会だというふうに私は思っていましたけれども、それでもやっぱり、こういう行き過ぎだとか、あるいは、間違いだとかいうのは、どうしても避けがたいという現実は、これはもう現実としてあるわけで、問題は、これをどうやって最小化するか、あるいは抑止するか、あるいは仮に間違ったやつを、どうやって自浄能力を出して社会の健全化を維持していくかということが非常に大きな問題だと思うんですけれども、そういう意味でいきますと、テレビの報道あるいは新聞といったジャーナリズムというのは、こういった社会全体の健全化とか、チェック機能、自浄力とかいったものの非常に有力な担い手であるというふうに思いますので、そういう意味で今回はまさに、そういう芽をこの番組ではっきり示されたといいますか、そういうふうな受け止めをいたしました。
こういった調査報道というのは、おそらく時間も労力もエネルギーも、普通のニュースと違って大変なものだと思いますし、大変ご苦労があったと思います。
それから、ご紹介がありましたように裁判と並行して疑惑を報道するというのは、相当重たい判断だと思いますので、ですけど、おそらくそれを可能にしたのは、事実、ファクトに対して徹底的にこだわって取材を重ねられて、そこの中で確信を持てたから、こういう判断ができたんだろうなというふうに思うわけです。
少し脱線するんですけど、私は昔、会社で広報部長をやったことがありまして、報道関係の方と、かなりいろいろと接触したわけですが、荒っぽく言いますと、大体二通りのタイプがありまして、一つは、事実、ファクトからずっと詰めて行くタイプと。それから、ある仮説、シナリオみたいなものがあって、それを検証しながら進めていくというタイプがあると、そんな印象を持ったことがあります。どっちがいいとか、どっちが悪いとかいうのはないと思うんですね。仮説があっても、きちっと事実で検証していけばいいわけですけれども、ただ、私の経験から言いますと、自分のシナリオに合わない事実は、なかなか認めていただけないというようなケースも全くゼロではなかったわけで、やはり事実に対する謙虚さというのは非常に重要だと思いますけど、その点、この番組は、そういう非常に姿勢のいい番組ではなかったかというふうに思います。良質の報道番組ではなかったかというふうに思います。
●委員長
若山さんにお伺いしたいんですが、起訴される前から事件に疑問を抱いて取材を開始したとおっしゃいましたが、具体的に、どういう疑問を抱かれて取材を開始されたんですか。
●社側
今回の場合、端緒になりましたのは弁護士さんが、逮捕後に被告本人に接見をされているというところで担当記者が、その弁護士に取材をしました。そこでの話が「ちょっとおかしいな、否認なのやけど、ほんまに、これ知らん言うているんやわ」というふうな情報だけだったんです。
私も、いわゆる裁判記者というか、それをやっておりましたが、一番事件記者をやっている時に注意しないといけないのは、その被告なり容疑者が、どういう言い分かというところなんですけれども、その最初の段階で「完全に否認をしている」というところだけなんです。きっかけは、それで、たまたま今回の記者というのは、それならちょっと、これ調べてみようかというところで、警察なりに取材をしたんですけれども、全くその時点で「ノー」、一切話すことはないと、通常、警察等々の広報窓口というんでしょうか、そういったものを通して情報は取って、それは良くも悪くも我々との、いわゆるクラブとの関係とかで情報を取れるんですが、これに関しては、ほとんど取れなかったんです。といったところがきっかけと理解していただければいいかと思います。
●委員長
なるほど。私は、これを拝見しまして、この番組の意図が出来るだけ真実を明らかにしたいと、真相に迫りたいという意図があっておつくりになった番組だとしたら、内容は極めて不出来であると思うんです。それは、この人らが、なぜ逮捕されたのかということが全く触れられていないからです。普段どんな生活していたのかと。そういう意味では、もし普段からの素行が良くなくて、いろんな前科もあったとか、よく分かりませんけど、何にも報道されてないからね。今まで、どういう生活をしていた人たちかということが分からない。
ですから、委員もおっしゃったように、その時、どこで何をしていたんかということも触れられてませんし、何よりも警察あるいは検察は、どういう根拠あるいは、どういう理由で、この5人を逮捕したのかがわからない。根拠もなく勝手に手当たり次第に逮捕するとは思えませんからね。委員もおっしゃいましたけれども、単に、こういう親が悲しむようなストーリーをつくるというんだったら話は別ですけれども、裁判とか、冤罪の可能性とか、そういうことを世に問うというんであれば、内容は極めて偏った不十分な出来だと私は思うんです。
その辺、これから続くわけで分かりませんけれども、万が一これ本当に、この人たちが真犯人だということになったら、読売テレビは、どういう責任を取るのかということにもなります。
そういう可能性はあるかないか知りませんけれども、それは別として、見ているものが聞きたいと、あるいは、知りたいと思うことについては、ほとんど答えてない番組だと私は思いました。
何か追加のご意見とかございませんか、よろしゅうございますか。
制作された側からのご意見なり反論なりあればどうぞ。
●社側
今のお言葉は非常に重く受け止めさせていただきます。若干補足をさせていただきますと、ご指摘のとおり、あまりすべては出せない部分がもちろんございましたので、言い訳ととっていただくのは、ちょっと不本意ではございますが、ご指摘のように、やっぱり逮捕された少年たち、大人たちというのは、いわゆる悪グループですね。そういったところから、途中一部ナレーションがありましたけれども、警察がそういったものをターゲットに調べていったときに、事実関係を申しますと、一人わりと重要なことを言う少年がいて、その少年の証言をもとに、まず最初に13歳の少年というのが捕まった経緯がございます。
そこの部分を本当に、もっと丁寧に説明をすることによって、今の疑問の一端でも解けたらなというのは今の時点では思っておりますが、一方で、これお答えになるかどうか分かりませんが、子どもたちにしてもそうですけれども、地元では不良といわれていた子どもたちが、その後のいろんな集会に出て「僕でよかったら、いろいろ話をします」というふうなことを言うようになってきました。
先ほどおっしゃった教育的見地ということでいうと、そういったことをもっとはっきり出せばよかったんでしょうが、今回の事件を通じて彼らなりに、あるいは、それを見た周辺の人なりには、何かを学んで、必ず更生する何かを得たんではないかというふうには思っております。
これは本件とは全く別のところですけれども、周辺から、そのように私は感じておりまして、ある種、真相に迫れていないということを重く受け止めた上で、それは今後の我々の仕事をもって視聴者に対して、ご理解いただけるようにするしかないんですけれども、その一方で、そうした見地を常々持ちながら、全く理解をせずに取材に当たったわけではないということのみご理解いただければ、それで十分でございます。
●委員長
ありがとうございました。まああれですよね、ごく周辺の人たちだけに何らかのいい効果があったにしても、テレビ番組というのは大勢の人が見る番組ですからね、ですから、やはりいろいろな側面からの配慮が必要だと思います。いろいろご苦労があったと思いますけれども、じゃこの辺で。
●社側
いろいろ貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。
それでは、先月、私どもに寄せられました視聴者の声についてご報告させていただきます。
●社側
3月に寄せられました視聴者からの声についてご報告させていただきます。
まず、総件数ですが6,428件ということで、1月、2月が、ちょっと5,000件台で少なかったんですけれども、通常のペースに戻ったかなという感じでございます。
それで主に意見・苦情が寄せられた番組としましては、『ウェークアップ!ぷらす』で「加速する格差社会」というテーマで大激論スペシャルを行いました。この中で「勝ち組に偏った討論が多かった。もっと負け組の立場を出してほしかった」、それからパネリストの方々も、やはり勝ち組であるというようなことで、やはり「ちゃんと両面からの検証を含めた意見を出してほしい」というような声が数多く寄せられました。
それから、WBC、ワールドベースボールクラシックで日本対キューバ戦、視聴率が40%といった番組なんですけれども、CMを入れるタイミングに関して多くの苦情が寄せられました。一つは試合開始前の冒頭で日本国歌演奏の時にCMが流れてしまったということ。それから、試合終了後、王監督がトロフィーを授与される、まさにその瞬間にCMが入ってしまったというようなことで、もちろん、CMを入れないといけないという民放のいろんな決まりがございますが、担当いたしました日本テレビでは、当然セレモニーは非常に重要なものだと考えていて、事前に打ち合わせをしていたんだけれども、予定どおりに残念ながら行われずにCMの間に「君が代」が流れてしまいましたと、これは非常に残念なことであり、視聴者におわび申し上げますというようなコメントを出しております。
それから、問い合わせの多かった番組は、やはり健康情報として『おもいッきりテレビ』に多く寄せられておりますのと、『なるトモ!』それから『ニューススクランブル』等に、やはりプレゼントであったり、出演者の問い合わせ、それから取材先の問い合わせ等が多く寄せられております。以上です。
●社側
あと事務的なご連絡ですが、この審議会は、ちょっと妙なずれがありまして、第1回が昭和35年6月に始まったというところから多分来ているんだと思いますが、年度が4月で終わりなんです。今回が年度の最後の審議会でございまして、来月5月が、このメンバーの新年度ということになりますので、委員の方々には引き続き来年もよろしくお願いしたいと思います。
次回は、そういうことで年度の始まりということになりますので、場所を「クラブ関西」に変えまして、5月12日の午前11時から開催をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、きょうの審議会は、これで終了させていただきます。ありがとうございました。
- 平成17年度読売テレビ番組審議会委員
- 委員長 熊谷信昭 兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
- 副委員長 馬淵かの子 兵庫県水泳連盟 顧問 元オリンピック日本代表
- 副委員長 川島康生 国立循環器病研究センター 名誉総長
- 委員 秋山喜久 関西電力株式会社 顧問
- 委員 金剛育子 能楽「金剛流」宗家夫人
- 委員 林 千代 脚本家
- 委員 阪口祐康 弁護士
- 委員 佐古和枝 関西外国語大学教授
- 委員 北前雅人 大阪ガス株式会社 代表取締役副社長執行役員
- 委員 谷 高志 読売新聞大阪本社 専務取締役編集担当