第463回 番組審議会議事録
1.開催年月日 |
平成17年06月10日(金) | |
2.開催場所 | 読売テレビ 役員会議室 | |
3.委員の出席 | 委員総数 | 10名 |
出席委員数 | 8名 | |
出席委員の氏名 | 熊谷信昭、秋山喜久、林 千代、馬淵かの子、野村明雄、 阪口祐康、佐古和枝、川島康生 |
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欠席委員の氏名 | 金剛育子、老川祥一 | |
会社側出席者 | 土井共成 (代表取締役会長兼社長) 髙田孝治 (代表取締役副社長) 営業・事業・東京支社担当 丸山和男 (代表取締役専務) 総務・労務・報道担当 越智常雄 (常務取締役) 編成・コンテンツ・制作スポーツ担当 久保哲郎 (執行役員審査室長) 森岡啓人 (執行役員報道局長) 村上博保 (編成局長) 大西 敏 (制作スポーツ局長) 小城 敏 (視聴者センター部長) 十河美加 (報道局D) |
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事務局 | 田北和博 (審査室番組審議会事務局長) 菱田千佳 (審査室番組審議会事務局部次長職) 前田義信 (審査室考査部) |
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4.審議の概要 | 番組視聴 | |
NNNドキュメント'05 「赤ちゃんと語ろ/笑わない天使たちのSOS」 |
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放送日時 | 2005年5月29日(日) 深夜00時25分~01時20分 | |
放送エリア | 全国ネット | |
6月度の番組審議会は6月10日(金)読売テレビで行われ、赤ちゃんの視点で育児について考えた、報道局制作のNNNドキュメント'05「赤ちゃんと語ろ/笑わない天使たちのSOS」について審議した。 委員からは「育児について悩みを抱えているお母さん達にとって、赤ちゃんからの視点という新しい接し方がよいヒントになったのではないか」「ゼロ才から一才頃の子育てに一番苦しんでいる母親達に共感や励ましを与える意義ある番組だった」など番組を評価する意見が相次いだ。一方、番組で取り上げた育児をサポートする助産師の姿に対して「育児の難しさや問題点をうまく提供しているが、その解決策として助産師の活躍だけでは何か物足りない。国の将来にも関わる大きな問題として解決策を見つける第2弾を作ってほしい」といった要望も出された。また深夜の放送に対して「よい番組だけに、見てほしい人達の時間帯も考えてほしい」という意見も出された。 この後、5月に寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。 |
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5.審議内容 | 下記の通り | |
6.審議会の意見に対して取った措置 特記事項なし(議事録は関係部署に配布) |
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7.審議会の答申・意見の公表 ●6月23日(木)付け読売新聞夕刊に議事の概要を掲載。 ●7月 9日(土)午前5時25分から放送の「声~あなたとよみうりテレビ~」の中で議事の内容を放送。 ●本社審査室に閲覧用として議事録を備え置く。 ●インターネット読売テレビホームページ「テレビの門・話し合ったもん」で議事録を公表。(http://www.ytv.co.jp) ●社内LANにて全ユーザー(全社員および関連スタッフ)に議事録を配信。 |
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8.配布資料 | ●視聴番組 概要 ●5月に寄せられた視聴者からの意見・苦情 |
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9.送付資料 | ●民放連機関誌「月刊民放」 ●民放連機関紙「民間放送」 |
【審議内容】
●社側
最初にご報告をさせていただきます。2年前の視聴率不正操作問題を機に、民放連を中心に抜本的な対応策が検討されているところですが、その一つである番組の「報奨・顕彰制度の充実」が、「日本放送文化大賞」の制定という形で動き出しております。
この新しい番組顕彰制度につきまして、お手元の資料をもとに丸山専務から説明させていただきます。
●社側
それでは資料に基づきましてご説明させていただきます。制定の経緯につきましては、今事務局から話があったとおりでございます。
民放連としての顕彰制度は、従来からあります民放連盟賞と、今回新たに制定されました日本放送文化大賞、この2本立てで今後、顕彰をしていくことになります。この日本放送文化大賞は、民放の放送番組の中で最高の賞であるという位置づけになります。そして民放各社で質の高い番組が、より多く制作・放送されることを促進する目的で、視聴者、聴取者の期待に応え、ひいては放送文化の向上に寄与したと評価される番組を顕彰することになります。
選考はラジオ部門、テレビ部門、2部門につきまして、それぞれグランプリと準グランプリを選ぶという形です。
従来の放送連盟賞は、賞状、それから盾といった形で顕彰してまいりましたが、今回は報奨金という形で行います。テレビグランプリに関しては1,000万円、それからテレビの準グランプリは500万円を贈呈します。ラジオは、グランプリが300万円、それから準グランプリが150万円ということです。
番組ジャンルについては問わないということですので、放送されている、すべてのジャンルの番組が選考対象になります。これまでの民放連盟賞では、それぞれ部門別に技術部門、報道部門、教養部門等々、部門に分けて選定しておりましたが、今回はあらゆるジャンルの番組を評価して、その中から一つを選ぶということで、ある意味で大変な作業になるのではないかと思っております。そしてグランプリに選ばれた番組は、全国放送での再放送が義務づけられております。
審査の方法ですが、まず、全国7地区で地区審査を行いまして、各地区で1本の番組を選びます。その作品が中央審査に参りまして、最終的にグランプリ並びに準グランプリが選ばれることになります。
今年度のスケジュールは、もう間もなく地区審査が始まりまして、中央審査が9月から10月の上旬にかけて行われます。
そして発表と表彰は11月2日の民間放送全国大会において行われることになります。近畿地区に関しましては、地区の最終審査が8月3日午後3時から新阪急ホテルで行われることになっています。各地域で審査員を選ばせていただいておりますが、近畿地区におきましては、今回は近畿管内のテレビ、ラジオ10社の番組審議会委員の中からお一人ずつご足労をお願いするということになりました。読売テレビからは林委員にお願いをするということで、委員にはすでにご承諾をいただいておりますが、お忙しい中、よろしくお願いをしたいと思います。審査員を選ぶにあたって10社の番組審議会委員の方々の並びの中で、弊社からは、出来るだけ番組制作の現場に近い方を出していただきたいという話がございまして、林委員にお願いをするということになりました。そういう意味で、今回の選考につきましては、地区、それから中央も含めまして、番組審議会の委員の方が選考委員の重要なポジションを占めるところが、これまでの表彰と違った点かなと思っております。以上、簡単ですが、ご報告させていただきます。
●社側
日本放送文化大賞についての報告は以上でございます。
それでは審議に入ります。本日ご審議いただく番組は5月29日放送の「NNNドキュメント'05『赤ちゃんと語ろ/笑わない天使たちのSOS』」です。少子化、核家族、あるいは女性の社会進出など、育児をめぐるさまざまな課題は今、社会問題化しているところですが、実際、子育ての真っ最中であります報道局の女性ディレクターが、このテーマに挑戦をいたしました。
では番組の概要について担当の十河ディレクターに説明をしてもらいます。
●社側
報道局でドキュメント制作に携わっております十河と申します。よろしくお願いいたします。きょう審議していただく番組の一番のポイントは「赤ちゃんの強さと賢さ」という点でございます。赤ちゃんは「何も分かっていない、コミュニケーションのとりようのない存在である」ととらえられがちですが、実は周囲の環境を敏感に感じ取って、強いメッセージを発しています。そういったメッセージを「感じ取り、伝えたい」私自身そう思って制作いたしました。
そのように感じた理由は主に2点ございます。どちらも私が日々のさまざまな事件、事故の取材から感じたことでございます。1点目は、虐待とか、誘拐殺人とか、今、幼い命を脅かす事件が相次いでおります。そういう取材をするにあたって、その背景を考えたところ、その一つの要因に、大人たちの勝手な思い込みや偏見があるのではないかなということを、いろいろな面で感じました。「この子は、どうせ何も分かってないから放っておこう」「この子は自分の思いどおりになるはずだ」とかいった思い込みです。そんな現状がある中で、幼い子どもたちの生きる力とか、存在自体の素晴らしさ、そういったものを伝えることに大きな意義があるのではないかと感じて今回制作いたしました。
2点目は、一線を越えてしまう虐待だけでなく、虐待とまではいかずとも育児不安、私は「育児不満」という部分もあるのではないかと思うんですが、そういった「子育てが楽しくない」という現状が見受けられます。それは女性にとっていろいろな選択肢のある社会の中で、きのうまで自由に泳ぎ回っていたのに、出産を機に得体の知れない小さな動物と鉄の扉の中にいることになってしまう。そのギャップの中で、子育てに対して自己達成感、充実感が見いだせない。そんな中で、そういう得体の知れない小さな命への不安とか、不満といったものを母親は抱えているんです。それと同時に父親、おじいちゃん、おばあちゃんにしても、今は少子世代です。1人、2人の子育てしかしていない。そういった経験不足の現状をいろいろな取材の中から感じました。そのような要因を背景に、社会全体の中で、何となく大人と子どもが笑い合っていない。それが社会の閉塞感につながっているのではないかなという印象を、いろいろな取材の中で抱きました。
ですから、まだ言葉を発しない幼い子どもとのコミュニケーション、対話、赤ちゃんがどういうメッセージを発しているのかを感じ取るちょっとしたコツや心構えを伝えることができたら、社会全体の閉塞感を打破するための一つのきっかけになるのではないかなと考えました。
今回、神戸に住む助産師との出会いをきっかけに1年間取材をさせていただきました。私自身が考えたのは「親ではなく赤ちゃんに焦点を当てよう」「赤ちゃんを主役にしよう」という点です。育児不安ということになりますと、どうしても親、母親の苦悩ですとか、表情ですとか、言葉ですとか、そういったところに焦点を当てがちなんですが、いろいろ取材を重ねる中で、「赤ちゃんがどうして笑わないのか、どうして泣き続けるのか」そういった赤ちゃんに焦点を当てることで、より真実に近づける気がいたしました。またそうすることで、子育てを親だけではなく社会全体で受け止めていただけるような報道ができるのではないかなと考えました。
今回、撮影、編集など、私以外のスタッフは全員男性です。いろいろな年代の男性にかかわっていただいたんですが、彼ら自身が今子育て中であったり、離婚を経験したり、既婚、あるいはすでに子育ては終了した人であったりして、そういう男性陣との話し合いの中で、子育てや、赤ちゃんという題材を多角的、多面的にとらえることができました。その意味で彼らに果たしていただいた役割というのは非常に大きかったと考えております。
●社側
ではVTRを視聴していただきます。
深夜帯でしたが、関西で7.8%、関東で5.3%と高視聴率をいただいております。
<VTR視聴>
●委員長
いろいろと考えさせられる問題を含んだ番組だと思いましたが、女性のほうが、より身近な問題、切実な問題としてとらえられたのではないかという気がいたします。女性の立場から番組をご覧になっていかがでしたか。
●委員
私は子どもを生んだことがないので、分からないことばかりなんですが、それでも身近にいる友達の話を聞いていて、やっぱり同じような子育ての悩みをよく聞きます。これは普段あまり表に出てこない部分ですね。赤ちゃんは小っちゃいし、家の中でずうっと二人っきりですごして、本当につらい思いをしているお母さんたちがたくさんいるだろうと思います。多分この番組を見て、同じような悩みや思いを抱えている人がたくさんいるんだということがわかって、ちょっと気が楽になったり、励まされたりするところがあるんじゃないかなと思いました。それから赤ちゃんからの視点で、ずうっとおつくりになったというのはすごくよかったなと思いました。あれが、お母さんが主人公になったら、何かもう大変さばっかりグーッときそうな気がするんです。赤ちゃんの視点というところで、また新しい接し方ができるヒントをもらったお母さん達もいるんじゃないかなと思いました。番組の最後には、ちゃんと赤ちゃんも、お母さんも笑顔になっていて、辛い思いをしても頑張れば、あんなふうに笑える日がくるのかなという救いもあって、よかったんじゃないかと思います。
また敦賀さんという、とても素敵な助産婦さんの存在というのは、すごく大きいなと思いました。途中で出てきた女医さんの事務的な対応と比較して、もし、ああいう対応だけの中で一人頑張らなければいけないとなると、やっぱりつらいだろうなと思いましたし、反対に敦賀さんみたいな方が周りにいないお母さんたちってどうなのかな、大変だろうなと。たまたま、いい人に出会えて、あのお母さんたちはとても救われたんだけども、そういう個人の善意とか、頑張りとかじゃない部分で、社会的に子育てがどのようにサポートされているのかなという部分をちょっと知りたいなという気がしました。全体には、とってもいい番組だったと思います。
●委員
非常に素晴らしい番組だったと思います。人間というか、特に日本の社会における出発点である育児の問題について、これまであまり表に問題点が出てきてない。女性にだけ負担をかけながら過ごしてきた結果として、少子化というような社会的に大きな問題になってきたと思うんです。
さきほど委員がおっしゃったように、赤ちゃんという視点でものを見て、非常に大きな問題提起をされたという意味で素晴らしい番組だというふうに思います。
ただ、ソリューションとして、今委員が言われたように、敦賀さんという助産師がいたわけですが、一番の問題は、日本が核家族の二代目になってきたということだと思います。家族もなければコミュニティーもないという中で、今後この育児という問題をどうしていくかということが国の将来にもかかわる非常に大きな問題であるというふうに思うんです。今の母親というのは、核家族の二代目の母親なんですね。ですから自分も何も教わってない。そういった中で自分一人で苦労してやっていかないといけないとなると、日本社会は崩壊してしまうと思うんです。今の女性が子どもを生みたくないと思う気持ちはよく分かるんですが、それでは国は立ち行かなくなってしまう。この辺を、どういった点に焦点を当てて、どういうふうにしていけばいいのか。今回紹介された助産師の敦賀さんのようなアドバイザーというか、手助けをする人を大勢つくっていくというのも一つの方法だと思います。もうちょっと家族、親とか、おじいちゃん、おばあちゃんの助け合い、あるいはコミュニティーでの助け合いが必要かも知れません。日本社会として何をどういうふうにしていったら、日本の少子化対策になるのか、その辺を、もうちょっと第2弾としてつくっていただけるといいかなと思いました。このままでは女性は子どもを生みたくないとか、子どもは欲しいけども大変だからとても生めないといった社会が、どんどん進んでいっちゃうと思うんです。
その辺でプロブレムについては非常にいいプロブレムを提供していただいたと思うんですが、ソリューションが敦賀さんのケースだけだと、ちょっと一般論にはなりにくいかなと思いましたので、あえて意見を申し上げました。
●委員
この番組は、いろいろな見方があると思うんです。私の場合、まだ子どもが小さいもので、子どもの表情とか、それから母親が、どういう思いをして子供を育てているのかとか、どうしてもそのほうに目がいってしまいます。うちの家内の場合、子供ができてから、赤ちゃん番組や、子育て番組を、ものすごく見るようになったんです。それはなぜかというと、結局、共感を求めているんですね。みんなも苦労しているんやとか、そういう情報を非常に求めていて、インターネットなんかを使って、いろんな悩みを言い合うようなこともあるようです。それを見て、ほかの人は、こんな苦労をしているし、自分はまだ頑張れるんやないかとか、ノウハウをどうのこうのというよりも、どちらかというと励みにしようとしているようです。この番組も、そういう意味で、多分子育て中の特に1歳とか1歳未満、一番しんどい思いをされているお母さん達にとって、励みになる番組じゃないかと思いました。僕はそれだけでも非常に感銘を受けたし、意義のある番組だと思います。
もう一つ、私が言うのも変ですが、ストレスがたまって、もうノイローゼになりかけるというのは、子育てでは多分誰もが通るところなんじゃないかなと思うんです。結局、尽きるところ、救いは子どもの笑顔じゃないのかなと思うんです。この番組でも、ちょっとお名前は忘れてしまいましたが、子どももお母さんも笑わなくなって、いろいろ何か育児の本とか調べて四苦八苦するんですが、最後ちょっと体を動かすだけで、こうしたら笑うんやということがわかる。それだけでお母さんはものすごく救われていました。委員が言われたように、社会の問題や背景はあるとは思いますが、私は、子どもの笑顔とかに非常に興味を引かれて見させていただきました。
●委員
この番組を家で見させていただきまして、最初に感じたことは、これは敦賀さんという非常に立派な助産師さんの物語でもありますよね。それにしては、私はあんまり感動というのは湧いてきませんでした。なぜかなと思って考えてみると、やっぱりおばあちゃんがおらんという、その現実を表に出しただけであって、各家庭にみんなおばあちゃんがいたら、それで全部解決するんではないかと、なぜ仰々しく言わなければならんのかなという気がしたからです。
今日、もう一度ここで見させていただいて、最初、委員がおっしゃった、「今の人達は核家族二代目である」、おばあちゃんがおっても役に立たんおばあちゃんの時代になっているということが分かって、「なるほど、そうか」と思いました。
委員のおっしゃった、「こういう優れた助産師さんにめぐりあわなかった人は一体どうなっているのか」と心配になります。やはり、これは私は大問題だと思うんです。「プロブレムだけ出て、ソリューションはどうなるのか」という委員のお言葉でしたけども、私は、つくづく考えて、医学教育の中でソリューションはやっぱり見つけないといけないと思います。我々の知っている範囲で助産師、助産婦の仕事は、これまでお産の介助ということに絞られてきたわけです。生まれた赤ちゃんの母親の相談相手なんていう仕事は、助産師の仕事に本来含まれておらなかった。教育されてないんです。たまたま、この敦賀さんという、ちょっと変わった助産師さんが「これはやってあげたらいいんではないかな」と思って、ボランティアでやっている。ですから、もう核家族二代目になったわけですから、やはりシステムとして取り上げて、大学の助産師を養成するコースの中で、ちゃんとそういう講義を取り入れて、医療費体系の中にも、それを組み込むようにしていかなければいけないのではないかと感じました。敦賀さんという優れた立派なボランティアの助産師さんのケースレポートだけに終わってしまってはいかんなと思います。これは非常にいい番組で、プロブレムもはっきり提起されたわけですから、ソリューションは、これから本気で医学教育関係者が考えていかなければならん問題だなというふうに思いました。非常によかったと思います。
●委員
番組の締めくくりのあたりでかわいい赤ちゃんが何回も、いろんなかわいい表情が出てきましたね、あれで心が救われました。前半のほうで、お母さんが赤ちゃんをどう扱ってよいか分からずにノイローゼ気味だったり、あるいは焼き肉を食べて、お乳を飲ましているお母さんがいたりしましたが、ああいうのは、私たちは自分が子どもを生んだときに母親からよくアドバイスを受けていました。「アルコール飲んだらあかんよ」「たばこ吸うたら赤ちゃんの乳、味が変になるよ」とか、カレー食べたら、あくる日は、お乳が黄色くなったり、そういうことは母親からいろいろ聞いていたので、食べるものなんかは、やっぱり気をつけながら母乳を与えていました。それが、番組の中のお母さんは焼き肉を食べて、ニンニク臭いお乳を飲ませて「それでは赤ちゃんは飲まへんわな」と思いながら見ていたんです。そういう本当に基本的なことまでは助産婦さんも教えないんですね。今初めて分かりましたし、今の母親に私たちのおばあちゃん時代の人があんまり言うても「嫁は言うこと聞かない」となる。「今はいい粉ミルクがあるの」とかいって、全然母乳を与えようとしない。 本当は母乳を初乳から与えて、乳首も血が出るぐらい痛いですけど、それを我慢してこそ本当の母親で、子どもを生んだという実感と、かわいさが出てくるのに、それをしないんです。母乳も「飲まへんからいいわ」といって与えないでいると、赤ちゃんは泣きやまない。そうしたらたたきたくもなるし、もう虐待もしたくなるでしょう。
だから、一番大切なことは、しっかり抱きしめて赤ちゃんのお乳、初乳を飲ませてあげることだというのをもっと教育する人が必要なんだと思いました。先ほどおっしゃっていましたけど、そういう育児ボランティアみたいな人がいっぱい地域にいないと、初めて赤ちゃんを生んで家にこもっている人は大変だと思います。
時々、私らみたいに、おしゃべりなおばあちゃんがいて、赤ちゃんのあやし方を教えてあげるボランティアをやってあげる。初めての赤ちゃんは、お母さんがあやすコツを知らないから笑わないんです。でもコツをつかんで笑わせるとキャッキャッと笑って、それで非常に救われるわけですよね、あの笑顔で。
アドバイスと言う意味では、産婦人科へ行くと、ものすごく事務的なんだそうです。「体重増えたよ。やせなさいよ」というだけで「お産する前に太ると何で悪いのや」ということまで教えてくれないというんです。助産師さんは自分のところで取り上げたりした経験があるので、「太ると産道が狭くなって赤ちゃんが出にくくなって、赤ちゃんを生むのに時間がかかるよ」とか、そういうことを教えるわけです。
私が関わっているマタニティスイミングでお母さん達に「何でスイミングに来るの」と聞いたら、やっぱり「体重がいっぱい増えるのを予防するために運動しましょう」というんですね。そんなもの昔のお母さんだったら「プールなんか入ったら冷えるじゃないの」とか言われるんですけど、お産の方法も今では随分と進んでいるのも事実です。でもその半面、きょうの番組みたいに何か前時代的なことで悩んでいるお母さんがいたりすると、本当に私たちのような育児経験者なり、おばばの時代の人が、もっとボランティアできるんじゃないかなと、私自身は見ていてそう感じました。
「赤ちゃんの体重が増えない」とかいったら、経験豊かな助産師さんは、「そんなもん増えなくてもいいよ」とか「少々栄養失調だって大丈夫よ」とかとうまく言うんですよね。お母さんはニコニコして帰ります。たまたま、そういう機会のない人が多いとも思いますので、そういう場所を、どうやったら増やせるかなど、もうちょっと突っ込んで番組をつくっていただいてもよかったかなと思いました。
●委員
私、家内と一緒に、この番組を見まして、家内の言葉を主にお伝えしたいと思うんですが、うちは実は3人の子育てをやってきたんです。家内の意見は、大変感動しながら昔を思いだした、というもので、程度の差はあっても、どの家庭でも育児が母親の課題になっているのです。自分自身では、もう子ども本位と割り切っていたけれども、そのころと今と社会的な環境とか、先ほどご説明あったように、いろいろと変わってきているんです。いろいろ新しい課題も起こっているんだろうなと、ただ、親の自覚を促して大変いいアドバイスになるなと、そう言っておりました。
先ほどのご説明にもありましたけども、赤ちゃんの視点。これは委員もおっしゃったように、赤ちゃんの視点で、親の言葉でなくて、この番組が主として赤ちゃんの表情とか、泣き、笑いとか、それから敦賀さんのナレーションとか、そんなもので構成されているんですね。先ほどおっしゃった「心構えを伝えたい」と、そういう狙いはきちっとこの番組を通して、見聞きする人々に伝わっていると、そう思います。
それから画面が全体として非常に明るくて、それできれいに撮影されております。
もう一つは、不必要なBGMというか、不必要なバックの音楽、音響がなくて、解説、ナレーション、それからどっちかというと赤ちゃんの泣き声とか、親同士の会話とか、それぞれが非常に効果的になっておりましたので、割合課題の多い番組ですけれども、退屈せずに引き込まれたと、そういう印象であります。
これは委員もおっしゃっておられたことですけども、いわゆる大団円があって、見終わってほっとしたと、そういうことを言っておりました。
子どもを持つことに昨今、漠然とした不安があるとすれば、一定の範囲ではありますけれども、そういった不安を取り除いて安心できるよという、そういうメッセージを正しく送っているんじゃないかということです。
私のことを申しますと、当時は全く意識したことがなくて、恥じ入っております。以上でございます。
●委員
最後に、いろんな意見を聞いて、ちょっと違う部分もあるのであれなんですけれども、実際に放送された時間帯を見せていただいて、ちょっと疑問に思ったことが幾つかあったんですけれども、いい番組で、すごくいいんですけど、じゃあこの時間帯で、どういう方たちをターゲットにという、先ほどお聞きしたら7.8%もあったというので、本当は子育ての人たちに、実際、父親とか、家族とか、そういう人たちに一番見てほしい番組じゃなかったかと思うんですけれども、まさに子育ての人たちは、あの時間は疲れて寝ているし、そういう時間帯で父親も多分見られない。おじいちゃん、おばあちゃんも早寝の人が多いしという形で、ちょっとこの時間帯に、なぜ、この番組、ドキュメンタリーが放送されるのかというのは、ちょっと疑問であって、もっともっと見てほしい人たちに本当は放送すべきじゃないかということを考えました。
それと私自身、全体を通して感動というものは感じられなかったんですけれども、それはなぜかというと、やっぱり敦賀さんの話と、子どもさんを育てているという二本立てになっていたのと、その『笑わない天使たちのSOS』というのが、実際に最後、ポンと笑顔で終ってましたけれども、じゃあその解決法があったのかどうかということを考えたときに、この番組の中で、唯一それらしいものがあったのは、「自分は母親に抱きしめられて、愛情豊かに育った経験がないから」というメッセージだったと思うんですけれども、じゃあ、そういうような子ども時代を過ごした人たちは、全部そういうふうになるんじゃないかという不安を、もしかしたら煽り立てるようなメッセージではなかったのかと思うんです。私自身、5人兄弟で4番目の女の子で、実際、考えてみたら、もう珍しくも何にもない状態で生まれて、でも別にそれで親の愛情を不満に思ったことも何もないし、やっぱりかわいがられて育ったという部分もあるのと、それからやっぱり自分の娘に子どもが生まれたときに接している中で、つまり一番感じたことは情報過多なんですね。
私たちが子どもを育てているときには、マタニティブルーとか、そういう言葉はなかったのに、子どもはすぐ、そういう言葉で逃げてしまうんです。やっぱり情報過多ということよりも、自分の個性で人間本来の本能で、かわいいと思ったら、かわいいと思う形の中で抱きしめたらいいし、本に載っていることがどうのこうのとかいうんじゃなくて、自分の個性で子どもを育てることが一番大事じゃないか。
一番大変なのは、今も昔もそうですけれども、子どもは生まれて3か月、笑わないし、泣き叫ぶだけで全く反応がないんです。その3か月が済んだころから表情を見せたりして、かわいさが出てくる。その3か月を新しい母親が、どう乗り越えるかということが、多分私は問題じゃないかと思うんです。
その辺をうまく今回、つまり3時間ごとに起きる、それから寝る暇がない、もう本当に生まなかったらよかったというところも、私自身もそうですし、娘もそうです。これを乗り越えた時点で、子どものかわいさが出てくる。それをどう乗り越えていくかということを、もう少し強く訴えてもらったら、笑わない天使というんじゃなくて、子育てのSOSやと思うんです。
じっと見ていても笑わないけれども、天使の笑いというのは必ずあるんです。誰に向けるか分からないような笑みを持っている。あとは泣く、それから嫌なことがあったら足をバタつかせるという、その3か月をいかに乗り切るかが育児の基本じゃないかと思う。その辺を、もう少し、うまく子育てのお母さんたちにメッセージしていただいたらいいんじゃないか。
敦賀さんという方がいらしたんですけれども、この方の生きがいじゃなくて、どうその「赤ちゃんと語る」という部分と、それから、あとちょっとメッセージが甘く冗漫に流れていた部分がすごい気になりました。
こういう問題を取り上げるということに関しては非常によかったと思います。以上です。
●委員長
ありがとうございました。この番組は、うまくいった二つの例だけなんですね。ですが、新聞などでも、よく見るんですけれども、母親が、自分の生んだ子どもを殺すという事件が割に頻繁に起こってますね。そして、その記事を読んでいると、ほとんどに「言うことを聞かない」「泣いてばっかりでうるさい」ということが書いてあるんです。
ああいうのを見ますと、赤ちゃんが泣いてうるさいということ、それはどっちが悪いのか、あるいは生まれつきなのか、その辺が私はいつも分からなくて「何とかならないのかな」と思っていたんです。
それで、これ見ると初めて知りましたけれども、笑わない、寝ない、泣き続ける。笑わないのはね、笑わないやつは大人になってもおりますけれども、素質なのか、あるいは接する人との相互作用で、そういうことになるのかもちょっと分からないんですね。
それで委員がおっしゃったように、少子化に進む日本で、こういう子どもの問題ですね、親が子どもを殺すというようなことにまでなったんじゃ本当に大変なことなので、委員がおっしゃるように組織として、助産師さんじゃなくて保育士といいますか、そういうものをつくる必要があるし、それから、そういう人材を育てる教育制度もいるんじゃないかと思うんです。保育学といいますか。
そして、そういう分野の専門的なアドバイザーとか、カウンセラーの育成、そういうものを、やはり意識的に検討する必要があるんじゃないかなと思いました。
そういう保育学の中には、母乳と、それから人工ミルクというんですか、これだって母乳が、いつも必ず人工ミルクよりいいかどうか分からないですから、中身によりますね。人工ミルクのほうが母乳よりもいいケースもあるはずなんで、そういうものを、やはり客観的といいましょうか、合理的に判断しないといけないでしょうし、私も教育委員会の仕事をしていたときに、お弁当と給食ですね。親がつくってくれた弁当を持っていくのと、給食とどっちがいいんだというのと、ちょっと似ているんですよ。
そういう問題を感覚的にだけとらえて、我々は今のところ考えるよりほかないんですけれども、もう少し根拠のある、出来れば「母乳のほうがいいんだ」とか、給食と親がつくってくれた弁当だと、本来はどっちのほうがいいんだとかいうようなことを根拠のある、学問的といっては大袈裟ですけれども、専門的に検討した根拠のある一種の指針、そういうものがないものかなとかねがね思っているんです。
ですから、出来ればそういう問題意識を喚起していただくためにも、出来たら、この結果がハッピーエンドで終わった二例のみでなくて、これの姉妹編、続編でしょうか、そういうものを、またお考えいただけるといいんじゃないかなと思いました。
今いろんな意見が出ましたけども、何かそれに関してのご感想か、ご意見がありましたらどうぞ。
●社側
いろいろなご意見を賜りありがとうございました。確かに1時間という番組の中で、私の力不足の部分もございまして、なかなか伝えきれなかった。あるいは自分で取材したけれども、分かっているけれども表現ができなかったという部分もございますので、今おっしゃられましたソリューションですとか、あともっと社会全体で何ができるかということ。そういったものを続編という形で、日々の取材の中でも、そういったことを念頭に置きながら進めてまいりたいと思いますので、またご覧いただければと思います。どうもありがとうございました。
●社側
どうもありがとうございました。ご意見は、番組づくりの参考にさせていただきます。
ちょっと時間が押しているんですが、視聴者からの5月の声を、ちょっと報告をさせていただきます。
●社側
簡単にご報告いたします。プロ野球中継に対する意見です。「ジャイアンツ戦をもっと放送してほしい」という意見がありました。
それからJR福知山線関連、5月もご意見を多くいただいておりまして「単なるJR西日本たたきになっているんじゃないか」とか「記者会見での記者の暴言に怒りを覚えた」と、こういったご意見が寄せられております。
なお先ほどの赤ちゃんの番組については、再放送のご要望もたくさん頂戴しております。以上です。
●社側
本日は以上でございます。次回は7月8日でございますが、読売テレビも7月は新体制ということでございますので、そのご報告を、まず最初にさせていただいて、審議のほうを進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。どうもありがとうございました。
以上
- 平成17年度読売テレビ番組審議会委員
- 委員長 熊谷信昭 兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
- 副委員長 馬淵かの子 兵庫県水泳連盟 顧問 元オリンピック日本代表
- 副委員長 川島康生 国立循環器病研究センター 名誉総長
- 委員 秋山喜久 関西電力株式会社 顧問
- 委員 金剛育子 能楽「金剛流」宗家夫人
- 委員 林 千代 脚本家
- 委員 阪口祐康 弁護士
- 委員 佐古和枝 関西外国語大学教授
- 委員 北前雅人 大阪ガス株式会社 代表取締役副社長執行役員
- 委員 谷 高志 読売新聞大阪本社 専務取締役編集担当