第461回 番組審議会議事録

1.開催年月日
平成17年04月08日(金)
2.開催場所 読売テレビ本社
3.委員の出席 委員総数 10名
出席委員数 7名
出席委員の氏名 熊谷信昭、金剛育子、林 千代、野村明雄
阪口祐康、老川祥一、川島康生
欠席委員の氏名 秋山喜久、馬淵かの子、佐古和枝
会社側出席者 髙田孝治 (代表取締役副社長)以下11名
4.審議の概要 番組視聴
「星野仙一が託された使命~アイク生原からのメッセージ~」
放送日時 2005年3月27日(日) 深夜0時55分~1時55分
放送エリア 関西ローカル
 4月度の番組審議会は4月8日(金)読売テレビ本社で行われ、スポーツドキュメント「星野仙一が託された使命~アイク生原からのメッセージ~」について審議した。
委員からは「日米の野球の世界にこのような隠れた功労者がいたことを初めて知った。このような人を記録にとどめて紹介することは大変意義のあることだ」「人の歴史や人物像にスポットをあてたこのような番組は、ぜひシリーズ化すると良いのではないか」など番組を高く評価する意見が出された。一方、「番組テーマの中には現在の野球経営の課題を探るということもあったと思うが、アイク生原の人物像を追う中で、少し焦点が散漫になってしまってのではないか」「アイク生原が伝えたかったことをもう少し描き出してほしかった」といった指摘も受けた。
この後、3月に寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。

【審議内容】
社側
それでは4月度の番組審議会を始めさせていただきます。
本日は、会社側、土井会長兼社長が所用のため欠席いたしております。従いまして高田副社長以下、委員の方々のご意見を聞かせていただきます。よろしくお願いいたします。本日ご意見をいただきますのは、スポーツ制作部がつくりましたスポーツドキュメント『星野仙一が託された使命~アイク生原からのメッセージ~』です。この番組は、現在、阪神タイガースのシニアディレクターであります星野仙一さんが、混迷する日本プロ野球界の活路を探してアメリカの大リーグを訪れるというものであります。それでは制作にあたりました伊藤プロデューサーから、番組の概要、狙いなどについて説明をさせていただきます。

社側
おはようございます。よろしくお願いいたします。
星野仙一シニアディレクターとは昨年3月に読売テレビの方で、野球の楽しさを伝えるという視点で、アメリカのメジャーリーグを取材する番組をつくりました。今回の番組は、その第2弾と言うことになります。日本のプロ野球界は昨年3月から今年の3月までの間に、球界再編という大きな動きがありました。そういった時期にあわせて、今回の番組では、混迷する日本のプロ野球に対して何かメッセージを伝えたい、それから日本のプロ野球だけでなくアメリカのメジャーリーグの中でも抱える問題点などを掘り下げ、日本プロ野球の活路を探りたいという思いで番組を制作しました。
取材は、メジャーリーグの中でも、ロサンゼルス・ドジャースという非常に日本と関係のつながりの大きい球団を選びました。星野さんは中日時代、ドジャースのキャンプ地で一緒に合同練習を行ったりしています。また巨人軍でも、特に長嶋さんはドジャースと深い関係をお持ちなんですが、実は、日本の球界を代表する星野さんや長嶋さんとドジャーズを結び付けたのが、アイク生原さんという日本人の方なんです。アイク生原さんは、残念ながらすでに亡くなっていらっしゃるんですが、この方の生き様を今回は縦軸にして番組をつくりました。

社側
それではVTRをご覧いただきます。番組は60分ですが、本日は20分に短縮したダイジェスト版です。先にお送りしております60分の本編を思い出しながらご意見をいただければと思います。

<VTR視聴開始>

社側
ご視聴ありがとうございました。この『星野仙一が託された使命~アイク生原からのメッセージ~』は、深夜の放送にもかかわらず3.1%の視聴率を獲得しております。それでは熊谷委員長、ご審議の方よろしくお願いいたします。

委員長
大変ユニークな番組だったと思いますね。野球の世界に、あんな人物がおられて、日米の野球に大きな役割を果たしておられたということも、今回この番組で初めて知りました。今では人にすら知られていないような、あるいは忘れられているような陰の功労者といった方は、実はいろんな分野におられるんです。そういう方の功績やご苦労を、今回の番組のように記録にとどめて、のちに伝えるというのはとても意義のあることだと思います。
この種の番組は、あまり一般受けするような番組ではないんじゃないかと思っていましたが、視聴率も今伺うとかなり高かったということですか。

社側
放送された深夜の時間帯では高いですね。

委員長
皆さん、いろいろご感想がおありと思いますが、いかがでございましょうか。

委員
人の歴史、人物についての物語というのは非常に面白いですね。視聴率が高かったのは、おそらく星野仙一さんという名前が出ていたからだろうとは思いますが、私もこの番組、非常に楽しく見させていただきました。
番組的には日米の野球の問題、日本のプロ野球の問題点などをアメリカへ行って、いろいろお調べになって比較してみようということが発端ではないかと思うんですが、最初に意図されたのとは変わって結果的には、このアイクさんという方の人物ストーリーになっておりましたね。私は、それで十分だと思うんです。委員長がおっしゃったように、こういう人達を、いろんなところから発掘して番組していただけると、素晴らしいシリーズ番組になるという気がいたしました。
アメリカの野球選手との契約に「社会貢献をせよ」ということが書いてあるというのは私も知りませんでしたが、非常にいいことですね。こういったことは日本の野球でどんどん取り入れられればいいなと思いました。あんまり、きょうは申し上げることがありません。いい番組だったと、おそらく私が見させていただいた中での1、2を争う番組ではないかなという気がいたしました。

委員
最近の松井ですとか、イチローとかのアメリカでの大活躍は本当に目を見張るものがあります。私のように今まで野球にあまり縁のなかった者でも、海外で活躍されている日本人を見ると非常に励まされる思いがします。そういう意味でも、今の時代を築く前に、アイク生原さんという礎になられるパイオニア的な方がいらっしゃったということを、この番組を通して初めて知りました。どんな世界でも大きく発展するためには、こういう方の地道な貢献というのがあるんだなということを知らされまして、非常に感動いたしました。
社会貢献というお話でいうと、最近はプロ野球でも被災地等へどんどん選手達が慰問したりとか、大分変わってきたなと思いますが、今の日本のプロ野球が抱える問題点は他にもいろいろあると思います。アイク生原さんの人生を通した貢献もすばらしかったのですが、日米のプロ野球界の具体的な問題点とかを、もうすこし掘り下げてもらうと、もう一つ見ごたえがあったのではないかなというふうに感じました。

委員長
大変ユニークな作品だと思いますが、正直申しまして私は欲求不満を感じました。
その理由は、この番組には二つ大きなテーマがあって、その両方が、ちょっと中途半端に出ていたような気がしたからです。
その一つは、星野さんを中心にしたプロ野球70年、現場と経営の関係と、それからアメリカと日本のプロ野球が、どのように融合して行くべきかということです。選手が一流になってくればくるほど、これは有力な商品、グローバルに通用する商品にもなってきますし、同時に一種の資本の往来だと思うんです。
そうなってきたときに、大リーグから学ぶべきものが何で、学んではいけないものが何かということを少し開陳していただいた方がよかったのではないかと思いました。星野さんが番組に登場した大きな一つの理由、アメリカの現状を通して、これから日本のプロ野球はどうなっていくのかということを踏み込んで示していただきたかったなと思いました。
もう一つは、アイク生原という人を、これだけで一つの人間像、人物像として取り上げたら大変面白いテーマになり得たのではないかと思ったことです。これはアイク生原さんを縦軸にして、星野さんという大スターが出て、部分的にではありますけれども、オマリーさんだとか、あるいはメジャーで活躍する選手達が出てきた番組になっているんですが、ちょっと先ほどのテーマとの間で気持ちがちらついて集中できなかったという感じがいたしました。要するに星野さんが求めているものは何かと、人間アイク生原はどんな人であったかと、その両方が、ちょっと中途半端に出ていたような気がしますね。結果的には一定の欲求不満を感じたというのが実情です。

委員
有名であれ、無名であれ、やはり人物についての物語というのは、生き方というものを、そこから学ばせていただけることにおいては、とてもいい番組だと思いました。それともう一つ、やたら盛り上げて泣かせるという方に持っていかなかったのは非常にありがたかった。
野球に一喜一憂するというのは、大半の日本人の娯楽の主流にもなっていると思うんです。その中で、実は日米の野球の陰の功労者として、こういう人がいて、今現在、イチローであり、松井秀喜、あと中村さん、あと松井稼頭央さん、そういう人たちが見られるようになったということで取り上げていただいたのは、非常にいろいろ勉強させていただきました。でも、その本命であるアイクさんに関していえば、ちょっと物足りなかった、ちょっと描ききれてなかったんじゃないかと思いました。もうちょっと現在のイチローであれ、松井秀喜であれ、そういう人たちのコメントも入れていただいたりしたらよかったのではないかと思いました。
さらに、今回番組を撮るにあたって、どうして星野さんがドジャーズを訪ねるのか、アイク生原さんを取り上げたのか、去年、日本でいろいろな野球の問題が出ましたけれども、どっちが、つまり星野さんが提案されたのか、読売テレビが、そういう事実を知って取り上げたのかというような裏話も、番組の中に入れていただいたら、興味がもうちょっと深まったんじゃないかと思いました。でも非常に感銘を受けました。

委員
皆さんがおっしゃっている感想は、ほとんど私も同じで、一言でいえばいい番組だったと思います。
特にアイク生原という、あまり知られてない人を登場させて、しかも彼の、ああいう生き様は、一人のアメリカで生活した日本人の物語として見た場合に、非常に感銘を受けます。最近の若い世代の風潮としては、日本の大学はちょっと面倒臭いからアメリカの大学でも行ってみようかとか、あるいは、アメリカへ行けば何か面白いかなというように割と気軽に行って、すぐ挫折して戻ってくる。こういう社会風潮の中で、彼のような、努力をして、志を持って行って、そしてアメリカで信頼を勝ち得るということは、非常に大切なことだと思います。野球という問題を離れてみても、いい話だったと思います。
それからほかの委員もおっしゃったけども、アメリカの野球人は社会貢献に大変力を入れています。これは野球に限らず、ゴルフのPGAでもそうですが、アメリカのプロスポーツ選手はみんな立派な社会人ですね。日本は何かスポーツ選手がタレント化していて、いわゆる一般社会に貢献するという意識があまりない。何かワイワイ、ガヤガヤ、あるいは人気を博す、そっちの方が大事なような印象が強いんですが、そういう意味で、番組の中でアメリカの野球人の職業に対する責任感を、しつこくなくサラッとした形で紹介してくれていたのは、本来あるべき姿を示す意味でも、かえってよかったなと思いました。
ただ、ちょっと見ていて、もどかしい思いをしたのは、ほかの委員もおっしゃっていましたが、野球のありようについての話とアイク生原という人のストーリーと、話が2本立てになっていて、どっちつかずになっちゃっているという感じを私も受けました。
野球のあり方でいいますと、星野ファンの委員には申しわけないですが、私は、彼が考えている野球論、プロ野球界のあり方論について、かなり疑問を持っています。例えば彼がいう、選手のレンタルの話なんかも簡単な話じゃないですからね。選手にそんなことを強制できるのかというと難しいですね。オマリーは、さすがに野球の経営者として「それは一つのアイデアだけれども、そう簡単にはいかんよ」といって、日本野球の伝統のよさ、これも尊重しなければいかんといっていましたが、私は、むしろそれを実践してほしいと思っているんです。それからプロ野球のスト、これも悲劇であって、プロ野球界自体に問題があるから改革するというのは、そのとおりであるとしても、その手段としてストライキをすべきではないということを、オマリーはきちんといっていました。
一方、アイクのメッセージとは何だったのかなといいますと、星野さんもいっていたけど、アメリカの野球にもいい面もあるけど悪い面もあるんだよと、日本にもいい面もあるけど悪い面もあるんだと、それをしっかり見極めていくことが必要だということでしたね。たしかにそのとおりだと思うんですが、具体的なメッセージというのがあまりなかったような気がしました。こういう点を日本は、もっとやったらいいんじゃないかとか、こういう点は学ばない方がいいぞというようなことが、何かイメージできるようなことがあればもっとよかったと思います。
タイトルの『星野仙一に託されたメッセージ』、そのメッセージとは何だったんだろうかと思っているうちに終わっちゃって、ちょっとはぐらかされたような気がしたのは残念でした。

委員
私もほとんど感想的には同じです。昨年はストがあったり、本当に有名選手がアメリカ・メジャーの方に行くようになったりして、その中で今後のプロ野球はどうあるべきかというのは大きな問題になっています。その問題をアイク生原という世間的には知られてない人物を取り上げながら掘り下げていくというのは、企画の意図としては私は素晴らしいものだと思って興味深く見させていただきました。
私も2本立てというか、前半と後半とで番組の雰囲気が、ちょっと変わっていたところにすこし違和感がありました。多分、制作側は、アイク生原がアメリカでさまざまな苦労をして、いろんなものを見ていく中で、アメリカの野球は日本にはないこんないいところがあるんだとか、あるいは、こんな点は日本の方がずっといいじゃないかとか、アイク生原の生き様を通して自然とメッセージを出していきたいというのが意図だったのかなと思うんですが、ただ、そこに星野さんが入ってきた関係で、いろんな、その軸がちょっと2本立てみたいになってしまったのではないかというのが私の印象です。

委員
ありがとうございました。NHKに『プロジェクトX』という番組がございますね。あれは非常に面白い番組だと思いますけども、特に自分が全然知らない分野、知らない世界の番組の場合には、「なるほど」と思って面白いと思うんですが、自分がよく知っている分野についての番組の場合には、「あの人が全く出てこないというのはおかしいじゃないか」と思うこともよくあります。そういう表に出なかった人がいて、しかし、その人の貢献がなかったら、うまくいかなかった、もっとずっと遅れていただろうというようなことが、いくらもあると思うんです。
その人達に光をあてるということは非常に教育的でもありますし、そういうことを調べて発掘して、映像とともに記録にして皆さんに知らせていただくというのは、いろんな意味で意義のあることだと思います。ぜひ、隠れた功労者とか、功績のあった人を発掘して、番組をつくっていただくということも検討されたらどうだろうかと思います。会社側から特に、今の番組で何かコメントか何かおありですか。

社側
今、日本のプロ野球で16人がメジャーへ行っています。星野さんはタイガースへ来られたときから、日本のプロ野球を心配されていました。やはり空洞化しちゃうわけです。そこでレンタルの話が出てきたんですけれども、彼の意見はレンタルというよりも、むしろ期限つきトレードですね。そうしないと、もうトップ選手がみんなメジャーに行ってしまうと心配しています。韓国もそうなんです。韓国のプロ野球も、せっかく誕生したんですが、トップ選手が30人から40人、アメリカや日本へ全部出て行ってしまう。こんな状況で何か考えなければというときに、星野さんが、随分昔からアイク生原と親交があり、キャンプにドジャーズの野球を取り入れたり、彼に架け橋になっていただいたということで、プロ野球を考えるにあたっては、ここは一つ星野さんという仲介者を通して、取り上げるべき人物ではないだろうかということから番組になったんです。
これからは、メジャーリーグを視野に置いて日本のプロ野球というものを考えていくべきではないかというようなことが、もうすこし番組の中に出せたらよかったかもしれません。

委員
いろいろ意見が出たんですが、制作者の方から何かコメントに対してのご意見はございませんか。

社側
日本のプロ野球は、どうしたらいいのかという答えは、ドジャーズのピーター・オマリーさんであったり、いろんな方々にお話はさせてもらって、番組の中で出せた部分、出せなかった部分というのもありましたが、実は、そんなに簡単に見つかりませんでした。メジャー・リーグも今、アメリカの中でいうと安泰なわけではございませんで、バスケット、それからアメリカンフットボールという人気スポーツの中でも、今は州によったら3位に野球が落ちている地域があったりするんで、変な話、日本のことなんかかまっておれないというのが正直なところだと思います。
なので、いろいろ自問してみると、やっぱり日本人として日本のプロ野球を、どうしたいというのは、メディアの我々も含め自分たちで答えを出していかないといけないのかなと思いました。
アイクさんが、もし今生きておられたら、何らかの答えを僕らに投げかけてくれたかもしれませんが、特効薬は残念ながらないと思いました。

社側
どうも、番組に対する貴重なご意見ありがとうございました。
続きまして、視聴者センター部長から3月に寄せられた視聴者の声をご報告させていただきます。

社側
ご報告いたします。3月も意見・要望・苦情・抗議が合わせまして約2,000件と非常に多い月でした。そんな中で最近増えている番組が、日曜日の午後に放送しております『たかじんのそこまで言って委員会』に意見・苦情が増えております。
3月6日には、「南京大虐殺はあったと思いますか」というテーマを取り上げたんですが、そこでは「賛否両論はあると思いますが、これまで討論すること自体がタブー視されていた問題を放送したことは、大変勇気ある素晴らしいことだと思います」というご意見。また「南京大虐殺はなかったを前提に話をしていたが、偏った放送に思えた。パネリストには、あったとする人も呼ぶべきだ」と、こういうご意見もございました。
あと『ザ・ワイド』には、やはりライブドアによりますニッポン放送株の取得についてのご意見、こういったものが3月は多く寄せられております。以上でございます。

社側
では、次回は年度初めの審議会になります。この1年間、どうもご審議のほうありがとうございました。委員の方々には次年度もまた引き続き、よろしくお願いしたいと 思います。本日の審議は以上でございます。ありがとうございました。

終わり
  • 平成16年度読売テレビ番組審議会委員
  • 委員長    熊谷信昭   兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
  • 副委員長    馬淵かの子   兵庫県水泳連盟   顧問   元オリンピック日本代表
  • 副委員長    川島康生   国立循環器病研究センター   名誉総長
  • 委員    秋山喜久   関西電力株式会社  顧問
  • 委員    金剛育子   能楽「金剛流」宗家夫人
  • 委員    林  千代   脚本家
  • 委員    阪口祐康   弁護士
  • 委員    佐古和枝   関西外国語大学教授
  • 委員    北前雅人   大阪ガス株式会社   代表取締役副社長執行役員
  • 委員    谷  高志   読売新聞大阪本社   専務取締役編集担当