第458回 番組審議会議事録

1.開催年月日
平成16年12月10日(金)
2.開催場所 帝国ホテル大阪
3.委員の出席 委員総数 10名
出席委員数 6名
出席委員の氏名 熊谷信昭、林 千代、馬淵かの子、野村明雄、阪口祐康、
川島康生
欠席委員の氏名 秋山喜久、金剛育子、佐古和枝、老川祥一
会社側出席者 土井共成 (代表取締役会長兼社長)以下12名
4.審議の概要 意見交換
「災害放送について」
 12月の番組審議会は12月10日(金)帝国ホテル大阪で行われ、地震や台風など数多くの災害に見舞われた今年を振り返りながら「災害放送」のあり方について委員の方々と広く意見を交換した。
 冒頭、局側から災害放送に対する姿勢や放送体制、情報発信に向けた今後の課題などが説明された。
 このあと議論に入り、委員からは速報性について「災害の規模を知らせる速報は、ライフラインを担う企業にとっても一番大切であり、新潟中越地震でのニュース速報のカットインは非常に素早かったと思う。これまでの経験が生かされたのではないか」「いかに全体像を早く伝えるかが大切だが、その意味では空撮は大変インパクトがある」など意見が相次いだ。
 一方、テレビで伝える安否情報については、「情報が累積していく中でなかなか個人に向けた情報はテレビでは伝わりにくいことがわかった」「違う媒体の活用が必要で、今後の携帯端末の開発や普及などに期待したい」という声も聞かれた。
 また、「被災者の心情を考慮して、テレビ局側が番組の内容に配慮することは非常に大切なことだ」といった意見もあり、会社側から番組差し替えの事例などを報告した。この後、11月に寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。

【議事録】
社側
 師走のお忙しい中、ご出席をいただきまして誠にありがとうございます。12月度の番組審議会を始めさせていただきます。
さて、本日の審議ですが、今年は平年の3倍の10個の台風が日本に上陸したり、新潟では大きな地震が発生するなど大規模な自然災害が多発した年でありました。
また、来年は阪神淡路大震災が発生して10年目を迎えます。読売テレビでも多くの番組企画を用意して放送する予定にしております。
そこで、今回は番組の合評ではなく、災害放送について委員の方々と意見を交換させていただき、幅広くご示唆をいただきたいというふうに考えております。
それでは、まず報道局の森岡局長から、お手元にお配りをしております「災害放送のあり方」というレジュメをもとに説明をさせていただきます。

社側
 災害放送の使命ということから始めますが、放送法の第6条の2に規定がありまして、我々は災害を予防し、また、この被害を軽減するための放送を義務づけられております。当社も非常災害マニュアルを持っております。阪神淡路大震災から、ちょうど1年経ちました96年1月に制定をいたしました。99年12月に改定し、今第2版という形になっております。その中にもテレビ局の公共的使命を果たさなければならないということで、災害放送の使命をうたっております。
災害放送の中でも、特に地震、これは規模が大きくなりますので、この地震報道のあり方について、少し詳しくご報告をさせていただきます。
地震報道には、大きく分けまして2種類の情報がございます。一つは、被災地の外に向けて発信する情報です。これは端的にいいますと被害情報ということになろうかと思います。放送するエリアは当然全国に向けてという形になります。
それから、もう一つの情報は被災地の中に向けて、被災者に向けて発信する情報でございます。これは防災ですとか、あるいは電気、ガス、水道等々のライフラインについての情報、あるいは生活情報です。この生活情報というのは、例えばお風呂屋さんがどうだとか、散髪屋さんがどうだとか、さらには仮設住宅の申し込みはどうするんだとか、あるいは公的な援助はどうやって受けられるんだとか、そういう情報がございます。このような情報を伝えるに際して、実は被災地の住民の方々から求められる情報というのは、時間の経過とともに一番知りたい情報というのが刻々変わってまいります。これは、その情報をもとにそれぞれの人たちが行動を考える、あるいは今後の生活設計を考えるというふうなことからですが、我々としては、そのニーズに合った情報の出し方を常に考えていかなければならないと思っております。
阪神淡路大震災のときの当社の対応ですが、当社はテレビ単一局でラジオがあるわけではございませんので、2種類の情報を両方とも出していかなければならないという非常に難しい状況に置かれました。
今、台風が発生したりすると「L字画面」というのがありまして、画面の左端と、それから下の部分を使って文字情報を流して、警報ですとか、あるいは、どこの道路が通行止めであるとか、いろんな情報をメインの画面放送とは別にどんどん流していくことができるようになりましたが、当時はまだございませんでした。
 従って、発生後2日間は、当社はCMなしの放送をやりました。東京の日本テレビの方はCMを流しておりまして、そのCMの枠を使ってローカル向けの情報をどんどん出していったという経緯がございます。それから発生1週間目の1月23日以降、生活関連震災情報番組を夕方の時間帯に定時枠で放送したような経緯がございます。
いずれにしても、その2種類の情報、求められる情報をどうやって出したらいいかということを考えて放送していかなければなりません。
次に、「速報スーパー・緊急編成」についてです。これは発生直後に素早く災害放送を開始できるようマニュアルで規定しております。大津波警報、津波警報、それから震度5強以上の地震が起きた場合、速報スーパーに関しては、CM中もCMの上に速報スーパーをかけるということになっています。これは近畿エリアで起ころうが、ほかの地域で起ころうが、CMの上にも速報スーパーをかぶせるということになっております。
それから放送中の番組を突然中断して緊急番組を流すカットインについては、近畿エリアで震度6弱以上の地震が発生した場合、速やかにカットインをするという規定になっています。また震度5強以下でも被害が極めて甚大な場合には速やかにカットインをするという規定を設けております。
ここで先般の新潟中越地震につきまして、現地の放送局で系列のテレビ新潟さんの放送をすこしご覧いただきます。

<VTR視聴開始>

VTRを見ながらの説明

地震発生を知らせる速報スーパーがコマーシャルの上にかかっている。

発生4分後には、通常の番組からカットイン。極めて早い判断。
(聞きますと、夕方ニュースの放送のために既にニューススタジオに電源が入っていて、放送のための準備ができていたということです。土日ですから当然、報道局の中にスタッフは少ないんですが、当日アナウンサーの採用試験を行っていたようで、報道部長がいたということも素早い判断になったと思われます。)

18時35分の表示。
(ローカルでカットインの放送を続けていましたが、ネットで特番を開始しており、途中からその特番の方に乗って、番組進行は日本テレビに移るような形になります。これが18時36分です。)

NTTの伝言ダイヤル操作説明。
(これは災害の伝言ダイヤルの使い方について説明をするもので、あらかじめNTTから提供されているVTRを流したものです。)

19時段階から枠を切り直してNNNの緊急特番が継続。現場の映像を放映。
(これは最初に入った地上の映像です。発生からやはり1時間40分ぐらい経っております。)


<VTR視聴終了>

社側
 新潟中越地震への系列の対応は、初動は非常によかったという評価をいただいております。
 ただ、L字画面については、とても手が回らなくて、実際にL字画面でローカル情報等々を出せるようになったのは1週間後だというふうに伺っています。
これに対して、読売テレビも概ね2週間にわたって毎日20人規模の応援を出しました。当時、豊岡の水害がまだ残っておりましたので、非常に苦しい状態ではあったんですが、目一杯のことをやらせていただきました。
 今後の課題ですが、一つは、情報発信の方法、どれがいい発信方法なのかという選別を考えていかなければいけないと思っています。
先ほどテレビ新潟さんのVTRの中でNTTの「災害用の伝言ダイヤル」の説明がございました。安否情報というのは被災地の外の方が、例えば「何々さん、心配しています。ご連絡をください」ということを流したり、あるいは被災地の中から「何々ですが大丈夫です。ご安心ください」という情報を反対に出したりするものです。実は阪神大震災のときに、NHKに対して放送要請が5万4,000件あったそうです。その量たるや膨大なもので、実際に放送できたのは3万件だと聞いております。おそらく教育テレビだけではなく、ラジオの方も使ったと思われますが、そういうメッセージを受け取ろうとすると、ずうっと画面を見続けないと、いつ放送が入るのか全く分かりません。そういう意味では「災害用伝言ダイヤル」は、メッセージを伝えたい相手の特定をできますし、受け取る方は気になる方からメッセージがあるかないか検索がすぐできるような形になっております。安否情報は我々の放送からはやっぱり除いて、災害用の伝言ダイヤル等々に任せるべきだと思います。
それからライフライン、生活情報等々、非常に細かな情報は全国に向けた放送では、なかなか放送するわけにはまいりません。先ほど申し上げましたL字画面ですとか、あるいは地上デジタルのデータ放送、さらには当社のホームページの中に、そういうライフライン、生活情報を載せてお知らせするなど、多様な伝達手段を考えていくべきではないかなというふうに思っております。
それから自治体ですとか、企業、団体等々でも、いろんな災害にまつわる情報を発信してます。しかし、これを全部放送の中で紹介するというのは難しいと思います。例えば、大阪ガスの地震対策というのは、ホームページの中にちゃんと載ってございますし、自治体でいいますと、大阪府の場合は危機管理室がやっぱりページを設けております。テレビ局側は、そのアドレスをお伝えするインデックス機能についても考えなければいけないなというふうに思っております。
またこれから重要だと我々が思っているのは、携帯電話に対する放送です。携帯で放送を受信できるという形になりますと、極めて伝達性が高いというふうに考えますので、携帯端末向けの放送に関しては、震災報道をやる上では、これから非常に大事になっていくと考えております。
あと当社として、機器、設備の整備も図っていかなければならないというふうに思っています。外に持ち出す衛星電話だけではなくて、本社の中に衛星電話を設置して、外の衛星電話とダイレクトに話ができるような形態を考える必要があると思っています。
 それから「非常災害マニュアル」、放送も形態も日々変わっておりますので、それを加味した上で改定をしていく必要があるというふうに思っています。また、毎年、NNNという系列の中で合同の訓練を行っておりますので、それについても連携をさらに強化していく必要があろうかというふうに思っております。
 最後でございますけれども、震災10年というところで、ちょっとカラー刷りのB4のものを配付させていただいております。来年1月8日から17日までの10日間、『震災10年 10DAYS~REMEMBER そして未来へ』ということで特別編成を考えております。非常に広範にわたる番組編成でございまして、震災の教訓を忘れないために、そしてそれを未来につなげていくためにも、この特別編成を考えているところでございます。おそらく他局よりも数段大規模な編成になると思います。
 

委員長
 瀬戸内寂聴さんも「今年は文字どおりの凶年、厄年であった」と書いておられるんですが、本当に災害の多い、暗い話題や悲しい出来事の多い年でした。特に災害に際しての報道というのは、いろんな意味で重要なことです。いろいろお話を伺いましたが、皆さま方のご意見、あるいはご質問、ご要望等ございましたら、ぜひ伺いたいと思います。


委員
 ライフラインを担う企業の立場からいいますと、この速報性というのが一番大事です。先ほどNTTさんのご紹介がありましたが、一定の規模の震災が私どものガスの供給区域で起こった場合には、放送局にあらかじめお届けしている案内テープを流していただくということで約束ができております。阪神淡路大震災のときも、それが非常に有効に機能いたしました。
そして、どこで、どの規模の地震が起こったのかについては本社の中央指令室が24時間、ずっとモニターしていて、それを見た瞬間に一定の条件を整えて対策本部をすぐ発令する仕組みになっております。
私どもの場合には、震度5強以上の地震が供給区域の中で発生した場合には、従業員は自分が今どこにいるかを報告し、そして自分が真っ先に駆けつけるべき場所はどこかというのをあらかじめ決めておりまして、家族等に被害のない場合には、その特定の事業所に出かけるルールができております。その判断材料となる情報をテレビで流していただくという点でいうと真っ先に大事なのはやはり速報性です。
ですから、どなたがどういう状況であるかとか、無事とか、心配していますとかいうのは、これはテレビという媒体で扱うのは不向きと思います。安否情報は累積していきますから24時間見ていないと伝わらない情報です。
この間の新潟中越地震のときも大変関心を持って見ておりましたが、非常にテレビの対応が素早かったという印象が強いです。早いカットインというのが、まさにそうだったんではないかと思います。

委員長
 今のカットインにも関連するんですが、阪神淡路大震災のときには、発生後2日間はCMなしの放送をなさったそうですが、こういう場合はスポンサーとの関係はどういうふうになるわけですか、スポンサーの了解をもらわずに一方的になさるのでしょうか。

社側
 10年前の阪神淡路大震災のときは、もう了解も何もなく、局の姿勢といたしましてやらせていただいたということです。むしろ、それよりも災害情報の方が大切だと。

社側
 非常に勇気のある判断でしたね。これだけの災害だから当然、情報量が圧倒的に増えますし。この情報を「今」伝えなければというときに、CMをいちいち待っているとできませんので、その辺の判断は、もうとっさですね。

委員長
 そういう場合のCMをはずすルールをあらかじめおつくりになっておくのがいいんじゃないですかね。やっぱりスポンサーはスポンサーとしての考え方もあるでしょうし。阪神淡路大震災のときには、スポンサーの方も異論はなかったと思いますが、あんまり関係のない地域では場合によってはスポンサーから不満も出る可能性もあるんじゃないかと思います。


委員
 阪神淡路大震災では予定していた番組がポンと飛んで、番組変更のスーパーが出て、もう地震のニュースばっかりになってきましたね。
私どもは、もともと、被災地にいたから「えらいこっちゃ」という感じで見てましたけど、大阪とか、京都とかはほとんど影響がなかった。そういう時、中には「いつもの番組を見たかったのに」とか、「どこ回しても全部地震や」っていう人もいたと聞きました。「NHKがやってくれているんだから、もういいんじゃないの」という人もいるんですね。ああいうときはNHKのニュースを見る人が多いと思いますが、民放のほうは番組は飛ぶわ、スポンサーもムッとするわ、コマーシャルはだせないわといったら、やりにくいんじゃないですかね。


社側
 しかし、被災地域にお住みの親戚の方等々が県外にいらっしゃることは十分想定できることですから、それについての配慮は当然で、報道としては私はやるべきであろうというふうに思います。
まして、そういうときに違和感を感じさせるような番組をやること自体が非常にはばかられる。逆に、そういうところで局の姿勢を問われるということがございます。現実問題、新潟中越地震の発生直後に、他系列でドラマを流したところがありましたが、系列のイメージとしては極めて悪かったようでございます。

委員長
 もう一つ、今後の課題の中で安否情報はテレビ放送でやるのは難しいというお話を伺って「なるほど」と思ったんです。
私なんかは、電話が通じなくなったときはとにかく「何々です。無事だからね」という一言を、テレビでみんな放送してもらえばいいんじゃないかと思っていたんですが、やっぱり現実を知らない素人考えだというのをよく分かりました。そんなこと言われたって、聞く側の人が、一瞬の放送を、たまたま見てないと何の意味もないんですね。

委員
 新潟の震災報道を見ていて神戸の地震で随分学習されたんだなということが、よく分かりました。
「今後のことを考えてスポンサーとの間で契約をしておかなければ」ということについては、私は、それはもう、すでに学習されて、おやりになっていたのかなと思います。誰も、そういうときには契約的にどうなっているからなんて言わないんじゃないでしょうかね。国民感情としては、そういう気がいたしました。

委員
 コマーシャルを出す側から申しますと、例えば、災害のときなんかに、内容にもよりますが従来のような同じコマーシャルを流すこと自体が、かえってマイナスイメージが強いんですね。このような時には、予定していたコマーシャルを、例えば、保安ですとか、サービスですとか、放送してもそんなに「なんだ、これは」と言われないようなコマーシャルに急遽差し替えるという、そういうことをお願いすることがあります。
それはやはり局の姿勢は、もちろんありますけれども、提供側の姿勢もありまして、マイナスイメージで受け取られたくないという気持ちが強うございます。


委員長
このごろ地震の情報をテレビで放送されるときに、局の中でガタガタ揺れている場面が出てきますね。あれは多分、阪神淡路大震災のときの学習かもわかりませんが、あれは大変臨場感があります。最近は、民放、NHK、すべて、しかも全国あらゆる局にあれはカメラが自動的に写るように、24時間全局やっていらっしゃるんですか。

社側
そうです。ほとんどの局がやっていると思います。当然、手元ですぐ映像を取り出せますので、屋外に出て取材をして帰ってくるということよりも前に、第1報の映像として、一番すぐ取り出しやすいということがございます。

委員
 私は阪神大震災の時には、たまたま研修で東京におりまして、最初、テレビを見たら、その時は、何かあまり大したことないみたいな報道があって、それで「まあそうなのかな」と思っていました。ところがだいぶ経った10時ぐらいの続報では大変なことになっていたんです。やはり被害の全体像を出来るだけ早く伝えられるかということが一番大切なことだと思います。
私の父親は、あの日、何か仕事の用事があって、うちの母親は、「これだけ大きい地震なんでやめたほうがいい」と言ったんですけど、「大丈夫や大丈夫や」と言って、母の車でまず甲陽園という最寄りの駅へ行ったら、不通になっている。それを見ても、うちの父親は、それなら「夙川の駅へ行け」と。こんどは夙川まで車で行ったら、どうも途中で車が全然動かない。渋滞になっているわけです。それでも、どうにか進んで行ったら阪急の高架が落ちていた。それであわてて、その日の仕事はキャンセルになったんです。大変なことに気がつくのが大体9時半ぐらいだったらしいんですね。しかし、地震発生が6時ちょっと前のことで、3時間ぐらい経っていました。たまたま、うまいこと無事に家に帰れたから、まだよかったとは思うんですが、外へ出て行って西、東とか言ってたら大変なことになっていた。そういうことを考えますと、いかに被害の全体像、これを早く伝えられるか、これは別にNHKも何も関係ないと思うんですね。そこが一番大事なポイントかなと思います。たとえば全体像を見せる意味では、空撮の効果はどうなんでしょうか。

社側
 まず、カメラマンをヘリコの待機場所に送り込めるかどうかがありますが、実際に被害の全体像が一目で分かったのは、やはり空撮です。
長田の火事より前に、阪神高速が倒壊していた映像が入ってきたときに、みんな全体像の一端を初めて垣間見たのではなかったでしょうか。地震の全体像の把握が遅れたのは発生当時、地震計が一部、本当に一番よく揺れたところが断線して、われわれ放送局側に情報が入ってこなかった。いわゆるドーナツみたいな周辺の地震情報が入ってきてしまったということもありますし、我々の放送も当初は、取材のしやすい大阪近辺ばかり行っていたようなこともあります。委員がおっしゃるように、やはりそれぞれの人が、どう動くべきかという判断材料となる災害の全体像についてはなるべく早く、どうやって知らせるかということは非常に大事なことだと思います。

委員
 大震災のときのすごいインパクトは、たしかに「あの高速道路が倒壊している」というところでした。あれを見てもう大変なことになったという印象を強く受けました。

委員長
 こういう大災害のときに、地震でも水害でもそうなんですが、今までの電気、ガス、水道、そういう基本的なライフラインに加えて、情報というのが非常に大事な要素になってきていますよね。それで電話が輻湊して繋がらなくなったり、それから電話の基地局のバッテリーが全部上がって使えなくなるというようなことになります。また停電するとテレビ自体も見られないでしょう。

社側
 その意味では携帯端末の話は非常に重要です。それから読売新聞さんは阪神淡路大震災のときに、移動支局といいますか、SNG車で、これはサテライト・ニュース・ギャザリングの略なんですが、現場にその車を持ち込みまして、現場で得たいろんな情報、被災者にとって必要な情報を、そこから、まず本社に衛星で送って、本社で編集したやつをまた現場に送り返して、そこで号外を被災者の方に配っていました。
活字メディアの場合には、非常に一覧性がありますので、自分が欲しい情報をパァッと入れるし、それから記録性もありますので、実はテレビだけではなくて活字メディアも、そういうことまでできるんだということが、非常に我々にとっても勉強になりましたね。

委員長
 もう直後の大混乱の状態のときに情報の手段がなくなるというのは、本当に最悪なんですよね。水害で大変なことになったときに、福井のほうでしたか、NTTの基地局の電源というのが早いところだと数時間で駄目ですし、もつところでも12時間、翌日になったら駄目でしょう。そういう時にNTTは、普通は車載局という大型のバスみたいなのに積み込んである臨時の基地局を、それごと持って行くわけです。しかし、道路がみんなつぶれていては駄目なんですね。そうなるともう打つ手を持ってないものですから大変問題なんです。
 それで先ほどおっしゃった携帯端末向けの1セグ放送、あまり簡単な話ではないと思うんですけれども、検討を是非していただきたいと思いますね。

社側
 これに関しましては、いつ1セグの放送というものが出来るかどうかというのは、今の我々放送事業者とNTTさんを含めてキャリアさん等と話をしております。
間もなくもろもろの条件を整えまして、それから端末をつくりはじめます。世に出てくるのは2006年の春前後かなということに、今スケジュール的にはなっております。「こういう時のための緊急の災害放送をやります」ということが免許の条件になっておりますので、間違いなくやります。そのための周波数というのは局側が持っております。

社側
 地上波はデジタル化するに当たって周波数を整理したんです。その中に、1セグ放送ができる周波数があって、既に確保されているんです。


委員
 阪神淡路大震災のときに友人が、結局、電気が通らなかったので、3日間ぐらいは孤立していたということを聞いたんですけれども、やっぱりそういうことを考えると非常に怖いなと思うんです。最近ちょっと大きな地震があったときにも、一番に飛びついたのはやっぱりテレビなんですね。
 そうするとテレビのチャンネル回しながら、どこが一番早く地震情報が出ているかということから見て、やっぱり、そこから安心を得ようと思ってしまいます。震源地はどこかとかテレビの情報いうのは非常に大切です。でも、もし電気がつかなかったらどうするのかということを考えたときに、何か停電でも今いわれているような携帯端末から情報が入ったらいいなと思います。
 それと、ちょっと過去に溯った阪神淡路大震災のときに、たまたま『部長刑事』という番組がありまして、そのときスポンサー側から6ヶ月間ぐらい、我々ライターに対して、「家族全員が食事しているシーンは絶対書かないように」それから「殺人も駄目。見ている人が心温まるような、そういう部長刑事、人間ドラマを書くように」というようなことを言われました。たしかに「実際に震災を体験している人の身になったときに、それぐらいの配慮は非常に大切なことだったんじゃないか」と今感じております。でも、なかなか、そのあたりは地震が起こった直後、1週間、2週間、1か月という形で、どういうふうにしてテレビ局が災害を乗り切って普通の番組に戻っていくかいうことは、当事者や一般視聴者を含め判断は難しいことかなと痛感しております。

社側
 私どもはアニメーションで、手塚治虫先生の『ブラック・ジャック』というのを放送していますが、新潟の地震が発生したとき、その週放送の『ブラック・ジャック』の中に地震を予見する犬のシーンがあったんです。若干、揺れるシーンがございまして、もう大変悩んだあげく放送を取りやめました。話の内容は、その犬が地震を予見して家族を救うというヒューマニティーのあふれる話題なんですけれども、やはり新潟の地震に配慮しようということで取りやめて、一話目を再放送したんです。ですから、これがまたブーイングですね。「なんだお前とこは、新しいアニメーションをやっておいてすでに放送した一話目をまた繰り返してやるのか」ということで。しかし地震の災害報道もさることながら、さまざまな番組で、もしそういった災害関連で非常に気掛かりなシーンがありましたら当然取りやめるというようなことも検討いたします。あらゆるソフトで、ドラマ、アニメ、いろんなところで、そういった配慮を常に考えております。

委員
 この災害放送の時に常々思っていることを一言申し上げたいんですけれども、外国の災害放送と比べまして、日本の災害放送は非常に違うと言われるんです。
どういうふうに違うかというと、日本では、被災した非常に気の毒な立場の人を報道して「かわいそうに、かわいそうに、みんな同情しましょう」というふうな画像をつくると。アメリカの放送は、それを免れてうまく助かった人を「よかったですね、よかったですね」と報道する。ここは国民性の違いなのかなという話を聞いたことがあるんですが、そういうふうに言われてみると、確かに違うなという気がして、どっちがいいのかなというふうに思うんですね。
私は心臓移植のことをずうっとやっておりましたから、やっと日本で心臓移植ができるようになって元気になった人、「こんな元気になった人、これを放送して、皆にPRしてもらったらいいんじゃないか」と言ったら、それを出すと、提供した人が「ああ、うちの息子の心臓で、あの人はあんなに元気になって、うちは …」と言われるから駄目だと。どっちがいいとは申しませんけれども、ちょっとお考えになっていただきたいなと思いますね。

社側
 どうも幅広いご指摘ありがとうございました。また、このような意見交換会というのも機会を見ましてやらしていただきたいと思います。
視聴者からの意見・苦情については、お手元の資料で報告に代えさせていただきます。最後に、今年最後の審議会ということですので、土井会長兼社長から委員の方々にごあいさつをさせていただきます。

社側
 どうも今年1年間ありがとうございました。皆さんお忙しいところを時間を繰り合わせてご出席いただき、貴重なご意見を伺いました。きょうも本当に活発なご意見を伺いました。この審議会に7月、「放送と青少年に関する委員会」の委員長である原寿雄先生をお招きしてお話していただきましたが、審議会の後で先生から、「予想していたのとだいぶ違って、非常に活発な、あれほど自由に意見を言っている番組審議会は珍しい。本当にレベルが高く感心した。」という高い評価をいただいております。毎回の熱のこもったご審議、本当にありがとうございました。来年も引き続きよろしくお願いいたします。
最初、委員長がおっしゃったように、今年は本当にいろいろありまして、番組視聴率から費用の問題、その使い方、それからプロ野球と、これは日本全体も災害列島ですけど、テレビにとっても非常に厳しい1年でありました。
皆様方のご支援で来年は本当にいい年にしたいと思います。どうもありがとうございました。

社側
 どうもありがとうございました。
 以上で番組審議会を終了させていただきます。今年もありがとうございました。 最後に資料に来年の審議会の予定を付けております。1月は休会でございます。
2月は第2金曜日が祝日のために2月の4日開催ということになっておりますので、よろしくお願いいたします。
 本日は、どうもありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

終わり

  • 平成16年度読売テレビ番組審議会委員
  • 委員長    熊谷信昭   兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
  • 副委員長    馬淵かの子   兵庫県水泳連盟   顧問   元オリンピック日本代表
  • 副委員長    川島康生   国立循環器病研究センター   名誉総長
  • 委員    秋山喜久   関西電力株式会社  顧問
  • 委員    金剛育子   能楽「金剛流」宗家夫人
  • 委員    林  千代   脚本家
  • 委員    阪口祐康   弁護士
  • 委員    佐古和枝   関西外国語大学教授
  • 委員    北前雅人   大阪ガス株式会社   代表取締役副社長執行役員
  • 委員    谷  高志   読売新聞大阪本社   専務取締役編集担当