第450回 番組審議会議事録
1.開催年月日 |
平成16年3月12日 | |
2.開催場所 | 読売テレビ本社 | |
3.委員の出席 | 委員総数 | 10名 |
出席委員数 | 8名 | |
出席委員の氏名 | 秋山喜久、林 千代、馬淵かの子、野村明雄、 阪口祐康、佐古和枝、老川祥一、川島康生 |
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欠席委員の氏名 | 熊谷信昭、金剛育子 | |
会社側出席者 | 土井共成 (代表取締役会長兼社長) 以下12名 | |
4.審議の概要 | 1.「読売テレビ放送基準」改正案を諮問 2.「こども番組審議会」など、読売テレビのメディア・リテラシー向上のための活動についておよび自社検証番組「声~あなたとよみうりテレビ~」視聴 |
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テーマ及び視聴合評対象番組 | ||
視聴合評番組 | 「声~あなたとよみうりテレビ~」 | |
放送日時 | 2003年12月13日 午前5時10分~5時40分 2004年 2月14日 午前5時25分~5時40分 |
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司会 | 道浦俊彦(読売テレビアナウンサー) 横須賀ゆきの(読売テレビアナウンサー) |
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放送エリア | 関西ローカル | |
3月の番組審議会は3月12日(金)読売テレビ本社で行われ、「読売テレビ放送基準」の改正について、諮問のとおり答申したほか(詳細別掲)、読売テレビが行っているメディア・リテラシー向上のための活動について意見を交わした。 委員からは「こども番審でのこども達の意見を聞き、内容が健全なので安心した。プライバシーに関わる問題などは、作る側の考えとは別に視聴者は不快感を持っていることを理解すべきだ」「こども達がテレビをとても冷静に見ていることを改めて知った。しかし、そのこども達に大人の理屈を説明しても納得してなかったのではないか」など、こども番組審議会での意見交換について様々な声が上がった。 一方、「こども達が実際に番組を作ることで、テレビからの情報を判断する能力が高まる。番組づくり講座の取り組みは、非常に意味があるのではないか」「これからの日本人は、反省しながら考える癖をつけていかなければ、国際的に通用しない。こどもの時代から"リテラシー・シンキング"を身につけることが必要だ」など、テレビ局がメディア・リテラシー向上のために活動することを評価する意見も出された。 この後、2月に寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。 |
【議事録】
●本日は、「読売テレビ放送基準」改正案が、この審議会に諮問されております。最初に、諮問を受けました改定案の内容につきまして、審査室長からご説明をいただきたいと思います。
●(社側)読売テレビでは、現在の放送基準を改正しまして、この4月から新しい基準を施行したいと考えていますので、委員の皆さんに改正案についてお諮りさせていただきます。
放送基準というのは、いうまでもなく番組制作上の指針となるもので、どの放送局も必ず作成して公表しなければいけないということが放送法で定められています。今回の基準改正は、先般、民放連の放送基準が5年ぶりに改正されまして、それに伴うものでございます。民放連のこれまでの放送基準は全部で18の章、条項でいいますと144の条項があったのですけれど、今回は、その6分の1に当たる24の条項で見直しが図られ、8つの条項が新たに加えられました。ほとんどの放送局が、民放連に準じた基準を制定しておりまして、読売テレビの今回の基準改正も民放連の基準の改正に準じて、考えてまいりたいと思っております。
そこで、お配りさせていただいた改正案の資料ですが、これは見直しを図ろうとする点、新たに加えようという点だけに絞ったもので、この資料に沿って改正のポイント、5点について説明をさせていただきます。
まず、6章「報道の責任」のところですが、ここでは報道の目的の明確化を図ろうと考え、32条に「市民の知る権利へ奉仕するものであり」という文言を加えたいと考えております。条文としては、「ニュースは市民の知る権利へ奉仕するものであり、事実に基づいて報道し、公正でなければならない」というのが改正案でございます。
前回、大幅に改正されたのは99年なのですが、それ以降、いわゆるメディア規制の動きというものも出てきました。そうした中で、報道の第一義的な目的が「市民の知る権利の奉仕」にあるのだということを明確にしようということで、この文言を入れようという提案となりました。
関連ですが、33条についても、プライバシーへの配慮を一言、明確に言葉を入れるべきだということで「個人の自由を侵したり」とあった部分を「個人のプライバシーや自由を不当に侵したり」という文章に改め、見直しを図らせていただいております。以上が、6章の「報道の責任」についての部分でございます。
それから二つ目としましては、第8章「表現上の配慮」です。ご存じのように健康志向の高まりで、健康に関連した番組やショッピング番組が増えています。その取り扱いの適正化を図るために留意すべき事項をきちんと整理しておきたいというのが、ここの部分の趣旨でございます。まず57条には「医療および薬品の知識に関しては」となっていましたところに「医療や薬品の知識および健康情報に関しては」と改め、「健康情報」という文言を加えたいと思います。
それから59条のショッピング番組についての条項ですが、118条の「広告の取り扱い」ともダブるのですが、「いわゆるショッピング番組は、関係法令を遵守するとともに、事実に基づく表示を平易かつ明瞭に行い、視聴者の利益を損なうものであってはならない」と、視聴者の利益の保護を明確にうたった新しい条項を加えたいと考えております。
三つ目は、11章の「性表現」です。暴力的表現とともに、性表現が青少年の非行に結びつくという指摘がございます。まず75条ですけれど、「極度に」という言葉を「過度に」という言葉に変えて「過度に官能的刺激を与えないように注意する」とし、許容限度をより厳格にするなど青少年に一層配慮しました。
また、77条ですが「性的少数者を取り上げる場合は、その人権に十分配慮する」という条項を新たに加えたいというものです。これは性同一性障害者などを念頭に、性的少数者の人権にも、きちんと配慮していこうということです。
それから12章、「視聴者の参加と懸賞・景品の取り扱い」という章に関係するところです。昨年、個人情報保護法が成立し、来年春からは、本格的に施行されるという流れになっており、視聴者の個人情報の厳格な管理がより強く求められることになります。88条では「懸賞に応募あるいは賞品を贈与した視聴者の個人情報を、当該目的以外で利用してはならず、厳重な管理が求められる」という条項を新設し、「厳格な管理」を明確にしています。
それから最後になりますが17章「金融・不動産の広告」の部分の138条ですが、ここに消費者金融分野に対する個別規定を新設したいというのが提案でございます。
138条は、「消費者金融のCMは、安易な借り入れを助長する表現であってはならない。特に、青少年への影響を十分考慮しなければならない」という文言になっております。消費者金融CMについては、一昨年から民放連の特別プロジェクト等で対応を検討してきまして、去年、何回かにわたって「民放連放送基準審議会見解」というのも出されました。
この条文にある「安易な借り入れを助長する表現であってはならない」というのは、その見解のうちの一つでございます。それを放送基準の条文に入れて、きちんとした姿勢を示していこうということです。
以上が、主な改正点ということになります。
放送基準は時代を写す鏡ともいわれていますけれども、前回の 1999年の大幅な改正以来、この5年間の社会環境の変化には大きなものがありました。先ほども申しました放送に対する公的な規制の動きとか、メディアに対する視聴者の厳しい見方の高まりを受けまして、一層自律した形で、条文の整備をきちんとやっていこうということで、このような改正を図らせていただきたいというのが、今回の趣旨でございます。
●ただ今、ご説明のありましたとおりの「読売テレビ放送基準」の改正案でございます。こういう内容の諮問を受けておるわけでございます。ご意見等ございましたら、どなた様からでも結構でございますのでお願いいたします。
●改正は妥当なものだと思いますけれども、こういった基準をつくるときに、表現上、抽象的にならざるを得ないところがあると思います。例えば33条には「不当に」とか、あるいは2ページの75条には「過度に」という表現があります。この「過度に」とか「不当に」というのは社会的通念で、ある程度、基準が動いてくると思うのですけれど、これは社内で議論して、ある程度の共通の認識を持つ必要があると思います。この辺がもめるところだと思います。
こちらが妥当だと思っても、社会は不当だと思う。あるいは人権を侵害された方は「これは不当だ」と思うということで、この辺は社内的に、ある程度、議論して「ここまでいいだろう」ということをお決めになっているのかどうか、それによってかなり対応が変わってきます。
こういう「基準」ですから、表現上はどうしても、こういったやや曖昧な体でなければいけないと思いますけれども、もめるのはおそらく、その辺になってくると思うのです。この辺はどういうふうにして決めていらっしゃいますか?
●(社側)ここから先が過度であるとか、そういう取り決めは、正直いってなされておりません。ケース・バイ・ケースの対応になると思いますけれども、審査室を中心に、考査責任者や現場の担当者とも十分意見を交換して、その都度判断していくということになると思います。具体的に「ここから先がどうだ」というようなことには、申し上げることは難しいと思います。
●それは、具体的に、個々に決めることは難しいということですが、こうした基準をおつくりになる方は、その辺をある程度意識してつくらないと、自分は妥当だと思っても「不当だ」と思われるかもしれませんし、これは過度じゃないと思っても「過度だ」と思われるかもしれません。その辺を、どういうふうにするかは、つくる方の意識の問題だと思いますけれども、社内でも、ある程度、常に注意を喚起しておいていただかないと問題にはなると思います。また、社会通念も、どんどんと変わってくると思います。
●(社側)今回、これをお認めいただければ新しい放送基準を周知させるために、事例などを多く紹介した「読売テレビ放送基準ハンドブック 2004」をつくる準備を進めています。それから、既に設けています読売テレビの「報道・番組制作ガイドライン」や「放送用語ガイドライン」などに照らし合わせて判断していくことになります。
●(社側)先ほどのご意見ですが、放送基準が改正されますとそれに基づいて「読売テレビ放送基準ハンドブック」という部厚い手引書をつくります。その中に、条項に沿って具体的な例をたくさん掲載します。こういう例があって「こういうことはいけませんよ」というような事例を含めた厚いものをつくりまして、それを全社員はじめ、関連のスタッフ一人ひとりに配ります。
その「ガイドライン」が出来上がりましたら、次の番組審議会で皆さんにも、お配りします。
●いかがでございましょうか、よろしゅうございますか。 それでは、この改正案につきまして、読売テレビ番組審議会として、このまま改正していただくということで、諮問のとおり答申をさせていただきたいと思います。
(「異議なし」の声あり)
●(社側)どうもありがとうございました。原案どおりの答申をいただきましたので、本日付(3月12日)で、この読売テレビ放送基準を改正、4月1日から施行いたしたいと思います。
続きまして読売テレビが青少年を主な対象として行っておりますメディア・リテラシー、「メディアを批判的に読み解く力」と翻訳されることが多い言葉ですが、このメディア・リテラシー向上のための活動につきまして、委員の皆さまのご意見を伺いたいと考えております。私から簡単に説明をさせていただきます。
読売テレビでは1999年、ちょうど5年前に『こども番組審議会』を全国の放送局に先がけてスタートさせました。その後、翌年には「番組づくり体験講座」というものもスタートさせました。「番組づくり体験講座」ですが、これはテレビのプロが、こども達に番組のつくり方を教え、家庭用のビデオカメラなどを使って、実際にこども達と一緒に番組をつくろうというもので、そうしたプロセスを経ることによって、テレビへの理解を深めてもらおうという試みです。
それ以後は、この二つの試みを軸に、テキスト「チャレンジ!テレビ番組づくり」を出版したり、教師を対象とした特別の講座を開くなど発展をさせてまいりました。こうした活動は自社検証番組の『声~あなたとよみうりテレビ~』という番組で視聴者にも紹介をしております。きょうは、そのVTRをご覧になっていただくのですが、この番組は、この番組審議会の内容の報告も毎回放送しておりますので、その部分も含めてご覧いただきたいと思います。
<VTR視聴>
●(社側)このように「こども番組審議会」を始め、メディア・リテラシーの向上のための活動をいろいろやっております。
なお、ただ今の「声」という番組ですけども、こういう番組ですから視聴率は極めて低いだろうとお考えの方が多いと思いますが、2月14日放送の分ですが、この回の視聴率は4.3%、占拠率が40%と、この時間テレビを見ている世帯の4割がこの番組を見ていたということです。
●どうもありがとうございました。面白い番組を見せていただきましたが、それではご意見を承りたいと思います。
●「番組づくり体験講座」の方から、話をさせていただきたいと思います。こういうふうにこども達がテレビ番組を自分でつくる体験をすること自体、非常に大切なことだと思います。と同時に、それもいいことだけれども、さらに私がよかったと思うのは、その体験、取材の現場として、幼稚園だとか、あるいは高齢者の老人ホーム、そういうところに行って中学生が交流するということ。これは、その人たちの先々の人生において非常に大きな意味を持ったのではないかなと思います。
そういう二重の意味で、いい企画だなと思います。それから「こども番組審議会」ですが、彼らの意見を聞いていて、まずは、何はともあれ「こどもは健全だな」という安心感を持ちました。我々がかねて問題だなと思うことと同じことを、やはりこども達自身が考えているのだなという印象を持ちました。
つくる側は、得てしてこどもだから、これをきっと面白がっているだろうと思ってつくったりしている面も、あるいはあるかもしれないけれども、こども達にとっては、それは非常に不快感を与えているということなのだと思いました。特に、これはこどもだけでなく我々も感じることなのですが、番組の中でアナウンサーの方が説明していたように、「やらせ」それから「プライバシー」に関することに非常に敏感に嫌悪感を持っているということで、これは番組づくりにあたって十分に注意していただきたいことだなと思うわけです。
局側のご説明もありましたけれども、おそらくそれで納得した人はほとんどいないのではないかという感じがします。つまり、プライバシーに関することでも、放映するにあたっては当然、その当事者の了解を取るなり、当事者と納得ずくの上で、そういうものを映像として見せているはずなのだけれども、見る側からすると、そうは思えない。おそらくつくる側としては、見る側に納得ずくであるとしてしまったのでは面白味がなくなってしまうから、わざとそうしているのでしょうが、そういう手法は、あまりよくない。タレントさんなどは「そんなのは自分は嫌だ」と言ったのでは、自分の商売にかかわってしまうわけですから、なかなか拒否できないだろうと思います。
そういうことも考えると、やはり見る側にどう映るかというところを十分ご配慮いただければありがたいなと思うわけです。せっかくこういういい試みをされているので、そういうこども達の意見を十分作品に反映されるようにお願いしたいなというふうに思います。
●「こども番組審議会」については、今言われましたとおり、私自身も意外とこどもは健全にテレビに接しているなということを感じました。こうした催しに選ばれた特別なこども達だという部分もあるのかもわかりませんけれども、「やらせ」とか、「プライバシーの侵害」とか、そういうことが、こどもが学校の中でいじめなどに発展していく可能性もあるので、少なくとも今回参加したこども達に対しては、これからつくる番組の制作姿勢を変えていかないと、近い将来、こども達がテレビ離れしていくのではないかと思います。
それと今回のテーマについて、トータルで意見を言わせていただきますと、3月からテレビをいろいろ見ておりましたのですけれども、午後3時、4時、5時の主婦を対象にしているワイド番組に関しましては、グルメなどのいろいろな情報があったり、ニュースがあったり、非常に情報量が多くて健全で、いい番組だと思ったのです。けれども、小学生、中学生のこどもたちが帰ってきまして、どういう番組を見るかということになると、こどもが純粋に見る番組が非常に少ないということに気が付いたのです。不特定多数の人たちを対象にした番組ではなくて、こどもを対象にした番組が、全く皆無といっていいほど、どの局にもなかったのです。
今回紹介があった、「番組づくり体験講座」の中で、中学生がビデオで映像を撮って、いろいろな「番組」をつくっていました。それから老人ホームへ行ったり、幼稚園を訪ねたりというように、縦の社会の体験をしたということです。そうした実例を踏まえて提案させていただくと、「こども番組審議会」でこどもが「夕方にサスペンスの番組がいらない」と言っていたように、あの時間帯には「体験講座」から生まれる番組をつくられたらどうかなと思いました。
それと、以前は番組全体を通じまして、各局のディレクターやプロデューサーなどに、それぞれの局の番組をつくっている誇りみたいなものがあったように思うのですけれども、最近は、そういう誇りというものが、あまり番組から感じられないようになってきたと思うのです。それはなぜかというと、タレントが主導権を持っている番組が非常に多くなったから、というような気がするのです。
それを考えますと、先ほどの放送基準にありました79条ですけれども「出演者の言葉・動作・姿勢・衣装などによって、卑わいな感じを与えないように注意する」という項目で、「注意する」のがプロデューサーなのか、ディレクターなのか、またタレント自身なのかということがよく分からないのです。
番組を見ておりますと、タレントさんが発した言葉の中に、効果音を入れて声を消している部分があるのですけれども、これが最近多いのです。そのことを見過ごさないで、「適切でない言葉を言ってはいけない」「卑わいな感じを与えない」ということを、局自身、プロデューサーやディレクターが、もっと注意しなければいけないのではないかと思います。つまり言葉・動作・姿勢・衣装などに注意するのは局で、主導権が局でないといけないのではないかということです。
ということから考えて、もう少しテレビ局につくる側の誇りというものを、しっかりと持っていただけたらありがたいなと思いました。
●意見を申し上げる前に一つ、「リテラシー」とは「批判的に読み書きする」ということですが、「リテラシー」という言葉には、そういう批判的という意味が、本来含まれているのでしょうか。
●(社側)「"クリティカル"に読み解く」という言葉を、よく説明に使います。批判的とか、批評的という意味を含んでいるようです。
●そうですか。そうすると、これはメディア・リテラシーという言葉は、もうインターナショナルに、そういう意味に使われているということですか。
●(社側)研究者や教育関係者の間では、そういう翻訳がされて、そのような理解が一般的です。
●辞書を引くと、そうは書いてないのですけれどもね。ただ「読み書きする能力」と書いてありますけども、そういう意味があるのですか。
●クリティカルというのは「批判」、攻撃的な意味というよりは、批評に近い意味ですね。そういうニュアンスではないかと私は思うのです。
●ちょっと、そのあたりがよく分からなかったものですから…
今までと一風変わった番組を見せていただいて楽しませていただきました。特に、皆さんもおっしゃったように、こども達は「よく見ているな」という気がいたしました。これを見ておりまして感じたのは、いっそ中・高生を対象にした審議会をおやりになったら、もっと面白いのではないかな、もっと教育的効果もあるのではないかな、という気がいたしました。
私も常々、こどものための番組というのはないのではないかという気がいたしております。それは、こどもにはテレビをあまり見せない方がいいという教育的見地から、そういうものをつくられないのかもしれませんけれども、やはり結果として、こどももテレビを見るのであれば、本当にこどもに見せたいという番組をつくって「これを見なさい」と言った方がいいのではないかなという気もいたします。
それと一つ思ったのは、あの中学校は常々そういう施設などを訪問している中学校なのですか。
●(社側)毎年、ああいう活動をやっているそうです。今回は、初めて記録班というのを編成して、ビデオで活動の記録をつくったということです。
●それは非常に結構だと思いましたけれども、ただ気になったのはビデオで番組をつくるということが主たる目的になってくると、取材対象となる施設においでになる方たちにちょっと失礼でないかなという気がしたのですけれども、常からおやりになっているのであれば、これは非常にいい学校ですね。
●(社側)「総合的な学習」というのは準備期間も含めて3年ぐらい前から始まっていまして、この学校ではスタートの時点から、こうした活動をやっています。今回の取材については、我々からも「被写体となられる方にも了解を得るように」ということをちゃんと教えまして、事前に了解を取って取材をしたと聞いています。
●そうすると、むしろ総合学習という時間ができて、何をしていいか分からなくて困っているような学校がたくさんあるわけですから、こういう「いい総合学習をやっている学校がありますよ」という格好で紹介されてもいいのではないかという気がいたしました。
●私も、この資料が来たときに、「リテラシー」という言葉のスペルが出てこなくて、意味が分からなく、「ここへ来たら分かるわ」という感じでこの番組審議会に来たのです。きょう、改めて画面を見ますと、アナウンサーも3回使っていましたね。ああいう番組で、パーッと言われたので、これはこども達も正確な意味は分からないし、どうして、こんな難しい言葉を使って、それをテーマにしてしまったのかなということが、ここへ来る前から気になっていました。
また、それとは別に読売テレビの放送基準のことに関して気になったことがあります。消費者金融のCMを、より慎重に扱うという説明がありましたが、あれは結構たくさん入っていますよね。いつも私は、このようなものはあまり宣伝しない方がいいのにねと、思っていますが、それでも減らないし、「借りすぎないようにしましょう」とか、そういうことで軽く逃げてしまっているのが、すごく気になっています。
もう一つ、保険会社のCMなのですが、ものすごく目に付くのですね。私のスクールの中で、「こんなうまいことが、あるんかいな?これ絶対怪しいで」と、よく言っているのです。あのコマーシャルを見て、みんな言うのです。現に自分の父親が保険会社に勤めている子弟がいるのですけれども、「この会社、怪しいで」とか「見ていてもおかしいで。何十万円も当たって」とか「あの会社は本当に大丈夫なんですかね」とかいう声をよく聞くのです。あんなに毎日々々、朝から晩まで長い時間、いっぱいスポットを各局に入れてやっている。コマーシャル代だけでも大変なのに、「そんなにいい話があるんかい?」という疑問があります。もうちょっとスポンサーの会社を調べていただきたいなと思っているのです。
きょうのこどもの番組ついては、とても良い番組だったので私は何も言うことはないのですけれど、「リテラシー」という言葉にちょっとこだわりを感じたことと、消費者金融だとか、保険会社のしつこい、宝くじに当たるようなおいしい話ばかりのコマーシャルが気になりました。
●この番組自身、非常に面白かったし、非常にいい試みだなというのが全体的な感想です。
リテラシーという言葉については、ヨーロッパとかアメリカでは、一般の人は十分理解していると思うのですけれども、我々の理解としては、いわゆるヒューマニティーズ(人文科学)で言っているように、クリティカル・シンキングということだと思います。クリティカルを批判的と訳してしまうと、誤解を招くと思うのですけれども、要するに物事が、これが本当なのか、本当ではないのかということを常に考える、あるいは自分が言っていることが、この言い方でいいのか悪いのかということを常に、繰り返し、繰り返し考えるというのがクリティカル・シンキングです。
つまり、「世の中、真実というのは一つではないのだ。相手に納得してもらったことが真実なのだ」という発想で、相手に納得してもらうために自分の考え方を、どういうふうにプレゼンテーションし、ライティングをすればいいのかということを一生懸命考えて、身に付けていくことなのです。
そのためには自分の経験だけでは不足するので、歴史だとか、文学だとか、いろいろなものを勉強して、教養を身につけて、そういった教養の中から、適切な表現を見つけ出します。あるいは相手の考え方についてもよく勉強して、その結果、相手にこういうものの言い方をすれば納得してくれるのではないかということを考えてやっていく、いわゆる説得力的な意味も含めて、リテラシーという言葉が使われているので、そういう意味で、この番組を見せていただきました。
ここでちょっと気になることは、「メディア・リテラシー」と「こどものリテラシー」とでは、意味が自ずと違ってくるのですが、この番組の中では両方一緒に使っていらっしゃいました。けれども、当然メディアの方はリテラシーを持って、「やらせ」はともかくとして、ちゃんと相手が見てくれるような番組を放送して、それで相手が見てくれて理解し、納得して、例えばコマーシャルであるならば、それを買うという行動に移してくれるようなものを、どういうふうにしてつくっていくかということがメディア・リテラシーだと思います。
そうなると先ほどお話に出ましたように、やはり対象別に、ある程度絞っていかないと、全部の層の人に納得してもらう、あるいは全部の人が「いいよ」と言ってくれるような番組をつくるのは、価値観が多様化してきますと、だんだん難しくなってくるのではないかなと思います。
そうなるとモアチャンネルの時代かどうかは別として、一般地上波放送も、そういった対象によって、ある問題について非常に詳しくて関心がある人に対してしゃべるのと、全く関心がなくて情報もない人に対してしゃべるのとでは、表現を変えていく必要が出てくると思います。関心はあるけれども情報がない人とか、あるいは大人、こども、男女など、いろいろジャンル別にしないと、理解が違ってくると思います。
どういったものを見たいのかという、見る側のニーズをうまくつかみながら、それに向かって、どういう放送をしていくのだということが、これから問われてくるのではないかなと思います。もちろん「やらせ」だとか、そういうものはやめておくというのは当然のことだと思いますけども…
もう一つは、こどものリテラシーということですが、「もう信用できない」というのは非常にいいことだと思うのです。「信用できない」と言い切ってしまうと、ちょっと行き過ぎだろうけれども、ニュースでも、一つの見方が正しいというのではなくて、いろいろな見方があるのだな、ということをこどもに勉強してもらうということも必要なのではないかなということです。そういう意味では、テレビで言っていること、新聞に書いてあることはすべて正しいのだということだとクリティカル・シンキングにならないので、「本当にそれでいいのかな」という批判精神を、批判といいますか、自分で自分を反省しながら、いつも頭の中で考えて物事を見ていくというふうな癖を日本人がつけていかないと、国際的なグローバルリテラシーがなくなってくるのではないかなという心配があります。
大人になると言いたいことが言えなくなってくるというのが日本人の悪い癖ですが、「みんなで渡れば怖くない」という国民性では、国際的な競争力はなくなってくると思うのです。こども時代から常に、そういったクリティカル・シンキングをやって、「これでいいのか、これでいいのか」「自分の言い方はいいのか、悪いのか」「相手はこれで納得してくれるのか、してくれないのか」ということを考えていくようなこどもを育てていくことが必要ではないかと思います。
●まず「番組づくり体験講座」ですけれども、最近は、私たち大学の人間も、多分企業の方々も、専門知識とか、専門技術をどうやって社会に還元するかということが非常に強く求められていると思うのです。そういうことからすれば、とてもいい企画をなさっておられるなと思いました。ビデオは家庭でも、学校教育でも随分浸透していると思いますし、うちの学校でも、よくキャンパスの中でビデオカメラを持った学生たちが、いろいろ撮影したりしているので、そういう指導をしていただけるということは、テレビ局ならではの仕事だなと思いました。
それから「こども番組審議会」の方は、私などより、よほどしっかりした意見を、みんなが言っていました。こども達は、テレビをとても冷静に見ているのだな、ということを改めて知りました。
当然、番組をつくっておられるときには、こども達も番組を見るのだということを念頭に置かれて、こういう「放送基準」などもおつくりになっていると思うのですけれども、それ以上に、こども達が番組をよく見ているのだということを、しっかりと受け止めなければいけないのだなと思いました。局の側がこどもの疑問に対していろいろ説明しておられて、私たちは納得するのですけれども、きっとこども達にとっては大人の理屈でしかないのだろうなという気がしました。
実は、これは私も経験があって、遺跡の整理をしていたところにこども達を連れて行ったら、こども達からブーイングが出て「何でこんなことするんだ」と言うのです。だから大人の理屈で「これがいいだろう」ということをやって「どうしてこうしたのか」という説明はできるのですけれども、それとは別のところで、こども達は違うことを求めていたのだなということを体験しました。
こども達の希望に沿うのは、今の技術では無理なのですけれども、でも、やはり私たちの方から、こどもがちゃんと感動してくれるような方向性を探す努力をしていかなければいけないなと思いました。私たちが、こどもの疑問に対して、近づいていく努力をしなければいけないと思ったことがありましたから、テレビ番組に関しても多分、大人の理屈で説明して、それでよしとするのではなく、そういう素朴な疑問をこども達が抱いたという現実に向き合って、それを受け止めていただけたらなと思います。
●「こども番組審議会」も「番組づくり体験講座」も、非常に素晴らしい試みだと私は思います。と言いますのは、皆さんがお話になったことを、法律的な話としてさせていただくことになるのですが、現代社会をめぐる表現の自由の一番の問題は何かということで言われているのは、「送り手」と「受け手」が完全に分離している点だということです。つまり、送り手はマスメディアであって、その他の国民は受け取るだけと、この状況が一番の問題だと私どもの世界では言われております。
だから、送り手の側は、受け手の知る権利に資するように放送、あるいは情報を提供しなければならないということなのですが、では、それを検証、フィードバックする制度が十分に整えられているでしょうか。一つは視聴率があるのかもしれません。あるいは多分、番組なり、いろいろな企画をつくるときにリサーチの会社なども使って、そこから吸い上げるということもあるかもしれませんが、それはいずれも間接的なものです。
直接的なものとしては、この後、ご報告されるような視聴者センターへのご意見もありますが、ご存じかもわかりませんが、あそこへ意見を寄せるのは、ある種、固定客のようなところがあって、それをもって全体の意見という形で評価するのも、これまた誤りがあるだろうと思います。
そうすると例えば、「こども番組審議会」のような形で、参加者をピックアップして年齢層などは、ある程度、幅が狭められているとしても、そういう形で受け手が送り手を、どう評価しているのかというのを直接知る機会をつくっていくということは、まさに送り手が本当に知る権利に資する情報を提供しているのかどうかを自ら検証する意味で、非常に大きな意義があるだろうと私は思っております。
それともう一つ、番組づくりの体験ということの意義ですけれども、特にメディアの中でテレビのデメリット、つまり怖い点とは、イメージが強烈に残ってしまうことです。だから、イメージだけで判断してしまって、論理的な思考が飛んでしまうというところに怖さがあるのだろうと思います。
例えば自分で番組をつくるなりすれば、どういう形で撮影するか、あるいは、その撮影したものをどう編集するかということを知ることが出来、つくり手の意図というのが、こういう形で入ってくるのかということを自ら体験できる。それが要するに、送り手が出してくる情報を判断する能力を高めていくことになるだろうと思うのです。
その意味で「番組づくり体験講座」というのは非常に意義があると私は思いまして、この種の活動はもっと充実させていただいた方が、マスメディアとしての責務を果たすことになるのではないかと思っております。
●この番組は、大変、大切な番組といいますか、大切にすべき番組ではないかと思います。読売テレビの局の姿勢が現れていると思います。今、お話があったように、テレビ局のPRにもなるのではないかなと、そういうふうに考えました。従いまして、放映の時刻でありますとか、あるいは長さでありますとか、そういった点を、もう少し大事にされてもいいのではないかと思います。
今一つは、こども番組審議会でのこども達の意見には、局側にとっては、制作者の独りよがりへの警鐘が、いろいろなところに出ていたのではないかと、そういうふうに感じました。
●(社側)それでは続きまして、2月に寄せられた視聴者の声を報告いたします。2月の特徴は、意見、苦情を合わせまして20%でした。普通の月は大体25%以上あるのですが、意見、そして苦情が非常に少ない月でした。
主な意見・苦情のところをご覧いただきましても、一番多いものでも71件ということで、特定の番組やコーナーに集中するということがほとんどありませんでした。毎月こういう月ですとありがたいのですけれども、先月は非常に苦情の少ない月でした。
●(社側)それでは次回の読売テレビ番組審議会の開催予定を確認させていただきます。次回は4月9日金曜日、午前11時から読売テレビ本社の役員会議室、この場所での開催を予定しております。本日は誠にありがとうございました。
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- 平成15年度読売テレビ番組審議会委員
- 委員長 熊谷信昭 兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
- 副委員長 馬淵かの子 兵庫県水泳連盟 顧問 元オリンピック日本代表
- 副委員長 川島康生 国立循環器病研究センター 名誉総長
- 委員 秋山喜久 関西電力株式会社 顧問
- 委員 金剛育子 能楽「金剛流」宗家夫人
- 委員 林 千代 脚本家
- 委員 阪口祐康 弁護士
- 委員 佐古和枝 関西外国語大学教授
- 委員 北前雅人 大阪ガス株式会社 代表取締役副社長執行役員
- 委員 谷 高志 読売新聞大阪本社 専務取締役編集担当