第447回 番組審議会議事録
1.開催年月日 |
平成15年11月14日 | |
2.開催場所 | 読売テレビ本社 | |
3.委員の出席 | 委員総数 | 10名 |
出席委員数 | 8名 |
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出席委員の氏名 | 熊谷信昭、林 千代、馬淵かの子、野村明雄、 阪口祐康、佐古和枝、老川祥一、川島康生 |
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欠席委員の氏名 | 秋山喜久、金剛育子 | |
会社側出席者 | 土井共成 (代表取締役会長兼社長) 以下14名 | |
4.審議の概要 | テーマ及び視聴合評対象番組 | |
テーマ | 「スポーツとテレビ番組」 | |
視聴合評番組 | 「週刊トラトラタイガース」 | |
放送日時 | 毎週日曜 深夜0時55分~1時25分 | |
放送エリア | 関西ローカル | |
11月度の番組審議会は11月14日(金)読売テレビ本社で行われ、社側から、アナログ地上波放送の再免許が交付されたことと、日本テレビのプロデューサーによる「視聴率操作問題」について報告した後、スポーツ情報番組「週刊トラトラタイガース」を視聴、スポーツとテレビをテーマに意見を交換した。 委員からは「阪神タイガースがリーグ優勝を決めた直後に放送された番組で、感動の余韻がよく伝わってきた」「選手たちが、普段は見せないリラックスした表情を見せており、20年間続いているというこの番組に、親しみを感じている様子が伺われた」など、タイガースを応援するという番組の意図が、表現に生かされているという声が相次いだ。 また、「スポーツで一番感動させられるのは、普通の人ができないスピードや技を見せられたときだ。もっとプレーのすばらしさに焦点を当ててほしかった」「タイガース優勝のバックグランドを、専門家の分析や独自の映像などをまじえて見せてほしかった」など、より密度の高い情報を求める意見も出された。 さらに、「感動をわかりやすく伝えるスポーツ番組は、教育的にも大きな役割を果たしている。経済的効果を評価する向きも多いが、教育的効果にも目を向けてほしい」など、スポーツ番組全般についても様々な意見が出された。 この後、10月に寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。 |
【議事録】
●(社側)本日は2件、ご報告がございます。1件目は読売テレビに再免許が交付されたこと。そして2件目は、先日大きく報道されました、日本テレビのプロデューサーによる視聴率操作問題でございます。
はじめに、現在放送しておりますアナログ放送の再免許についてご報告いたします。去る10月29日に再免許をいただきました。お手元に「平成15年放送局の再免許に当たっての要請」という資料をお配りしておりますが、これは再免許を交付するに当たって、麻生総務大臣から各局になされた要請でございます。書いてありますように、放送法、あるいは電波法に従って、言論報道機関としての社会的な役割をきっちりと果たしてもらいたいということを、7項目にまとめたものでございます。
従来から再免許に当たっては、こういった形の要請がありまして、内容的には、前回と大きく変わった点はございません。ただ今回は、いよいよ12月1日にデジタル放送が始まるということもありまして、「2011年までにデジタル放送へ完全移行するよう、放送のデジタル化に積極的に取り組むよう努めること」と、デジタル関係の項目がひとつ入っております。いずれの項目も、基本的には我々が常々、心していかなければいけないことが要請されております。
その中で3番目に「放送番組の充実向上を図るため、放送番組審議機関及び番組考査機構の機能の発揮に一層努めること」という形で番組審議会に関する内容が入っておりまして、国としても放送番組審議機関の役割に期待をしているということだと思います。我々も、その点を自覚いたしまして、今後の番組づくり、放送に努めてまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
12月1日にはデジタル放送の電波を発射します。そちらの方の本免許は今月11月25日に交付ということで進んでおります。再免許につきましては以上でございます。
次に、日本テレビで起こりました視聴率をめぐる不祥事についてご報告いたします。
この問題はある雑誌社の取材から判明したことなのですけれども、日本テレビが、それを受けて当事者に問いただしたところ、事実であることが確認されました。そして、10月24日に社長が記者会見を行いまして謝罪並びに事実関係について報告をしております。
また、同時に「視聴率操作調査委員会」を設置いたしました。これは委員長を江幡修三・元検事総長にお願いしまして、外部の方を中心にした調査委員会でございます。今、その調査委員会が調査を進めておりまして、日本テレビとしては現段階では、この調査委員会にすべての調べを一任するという形にしております。近々正式な調査委員会の報告がなされるかと思います。従いまして、24日に行われました社長の記者会見が、現段階での日本テレビの唯一の公式的なコメントでございますので、本日はそれに基づいて概略をご報告いたします。
いわゆる当事者でございますが、41歳の情報系の番組を担当しておりますプロデューサーでございます。それで、どういうことをやったのかと申しますと、視聴率調査対象の世帯は関東地区で600のサンプルがございますが、そのプロデューサーは興信所を使いまして、この視聴率調査対象世帯を割り出しました。そして、その割り出した世帯に対して、自分が担当している番組の視聴を依頼した、ということでございます。
興信所の調査で12ないし13の世帯が判明したということで、そのうち4世帯が視聴依頼を承諾したということでございます。この当事者は承諾した世帯については、1回当たり5,000円から1万円の金品を渡したということです。と同時に調査を依頼した興信所に、1世帯の判明につき、およそ10万円を支払ったということでございます。
このくらいの情報が、現在、公式的に発表されているものでございます。雑誌等々にはいろいろ書いてございますけれども、それ以上のことは、まだ確認が取れておりません。従って、はっきりした事実関係については調査委員会の結果を待つというのが今現在の状況でございます。
いずれにしましても調査結果が出た段階で、いろいろな問題が出てくると思いますけれども、テレビ業界全体としましても、大きな課題を抱えたと考えております。失った信頼をどのようにして回復していくのか、それから視聴率そのものに対する信頼性、そういったものも当然、議論の対象になると思います。
先ほど申し上げましたように、現在は600世帯というサンプル数で調査しておりますけれども、その数が妥当であるのかどうか、あるいは調査を行っているのが1社だけということも含めまして、今後の議論になっていくだろうと思います。
もう1点は、「視聴率至上主義」という批判がございますが、こうした声にどう応えていくのかということも、我々に突きつけられている問題だと考えております。視聴率というのは、社の力、あるいは信頼性を示す一つの指標であることは確かだと思いますので、視聴率を大事にしていきたいとは思います。
しかしながら、放送するにあたっては、一定の品位、節度、あるいは報道で言えば公正さ、正確さといったものが基本的に求められています。そういったものは、やはりしっかりと守っていくということを改めて確認して、これまで以上に心を引き締めてやっていきたいと思います。
毎回、この番組審議会で委員の方々からご指摘をいただいている点につきましては、きっちりと番組制作、放送に反映させていきたいと思いますので、今後とも、ご指導をよろしくお願いいたします。
以上、2件ご報告しました。
●(社側)それでは番組の視聴合評に移ります。本日のテーマはスポーツでございます。今年のプロ野球は阪神タイガースが大活躍いたしまして、特に関西では大いに盛り上がりました。この盛り上がりにはテレビの役割も大変大きいわけで、もちろん読売テレビでもゲームの中継を含めて阪神タイガースに係る多くの番組を放送いたしました。
本日は阪神タイガースがリーグ優勝を決めた週に放送いたしました『週刊トラトラタイガース』をご覧になっていただき、皆さまのご意見をお伺いしたいと思っております。また、岩渕スポーツ局長も参っておりますので、スポーツとテレビについて幅広く、お考えをお聞かせいただきたいと思っております。それでは、この番組の制作にあたっております大槻晋士プロデューサーから番組の概要や狙いにつきまして説明いたします。
●(社側)この番組は、名前が『週刊トラトラタイガース』という番組で、内容は、一口に言いますとタイガースの応援番組です。1週間のプロ野球の情報、スポーツの情報を総括したスポーツ情報番組です。出演者は、吉本興業の若手のタレントの陣内智則、読売テレビの野球解説者で阪神タイガースOBの川藤幸三さん、それから読売テレビのアナウンサーの山本純也、中元綾子という4人で番組の進行をしております。
番組の歴史といたしましては、阪神が18年前に優勝いたしました2年前の1983年にスタートして、今年で20周年を迎えたレギュラー番組であります。20年間放送してきたわけですが、一貫して阪神タイガースを応援してきました。その週に行われた試合やトピックスを紹介した上で、阪神ファンに、より選手に親しみを持ち、深くタイガースを知ってもらおうということで、特集コーナーを毎週やっております。特集で取り上げる対象は選手であったり、チームであったり、そして裏方さんであったりと様々ですが、奥深くタイガースの選手や、チームの内側を知っていただこうということで続けてまいりました。
以前は夕方や午前中でしたが、現在は放送時間が、深夜に移行しております。日曜日の夜ですので、巨人戦のプロ野球中継が延長されるなどして、なかなか固定したレギュラー枠で放送することができないのですが、視聴率は平均して5.0%、占拠率が27%ぐらいを確保しています。今年はタイガースの成績が好調なこともありまして、前年よりも平均で1.2%アップ、占拠率もかなりアップしております。
番組をつくっていく上で、一番苦労しますのは、阪神タイガースの好不調で申しますと、この18年間、下位に低迷していたわけですから、選手にインタビューをしても口が堅かったですし、チームの取材協力というものも、好調のときに比べて厳しい状況でした。それが今年は、こういう結果になりまして、選手の表情も明るいですし、毎週のようにヒーローが出てくるという形で、チームとの関係も良好に進み、いい番組づくりができたのではないかと思っております。
それからキーポイントになりますのが、阪神タイガースOBの川藤幸三さんなのですが、ご本人のポリシーが「現場で見ていないことは語らない」ということです。つまり、自分の目で野球を見た上で、選手、チームを語りたいと、年間140試合公式戦があるのですが、大体130試合を、現場で見ておられます。
私も現場に参りますが、130試合以上、現場で見ているOB、解説者というのはおられません。これは読売テレビの財産であると思っております。そういったことが背景にありますので、本人の口から、たまには厳しいコメントも出ますし、チームに対して苦言も呈します。ただチーム関係者は「現場で見ておられる人だからこそ許せる」ということで、阪神タイガースからも認知いただいていると考えております。
こういう形で番組も、ここまで続けさせていただいたと思っております。タイガースは9月15日にセ・リーグの優勝を決めたわけですが、ちょうど月曜日だったもので、今回、ご覧いただくのは、その週末の日曜日に放送した30分枠での番組になります。
<VTR視聴>
●それでは、ただ今視聴させていただいた番組を中心に、プロ野球とテレビ放送という視点から、さらにはもっと広く、スポーツとテレビ放送というような視点からも、ご意見があればお伺いしたいと思います。
●私は、阪神タイガースのファンとは違うのですが、家内はタイガースファンです。この番組、たまにしか見ないのですが、阪神ファンの心を本当にうまくとらえているなと思います。それは勝っているときも、負けているときもという意味で、うまくとらえてつくられていると感心しています。
今年は阪神が好調でしたので、番組をつくるという意味では、例年に比べれば苦労は少なかったと思うのですが、やはり阪神ファンといえば、勝った試合は何度でも見たいけれども、負けた試合は絶対見たくない、試合を見ていても途中で負けそうになったらパッとチャンネルを変えてしまうという傾向があるようです。
そのような中で20年続けてこられたというのは、阪神が負けても見てもらうための工夫があったからだと思うのです。その苦労たるや本当にすごいものがあったのだろうなと想像され、いつも感心して見させていただいております。
川藤さんのコメントが、ちょっと何を言っているのか分からないところがあるとか、いろいろ細かいことを言い出せばあるのですが、それも愛嬌のうちかなと思っております。
それから、この番組を離れて、プロ野球とテレビ、あるいはスポーツとテレビという視点から見ると、楽しみ方や切り口は、この番組のような切り口も当然ありますし、いろいろとあろうかと思います。ただ、プロ野球でもそうなのですが、やはりスポーツで一番感動を与えるのは、とてもじゃないが普通の人ではできないようなスピード感です。野球でいうと打球のスピード、ピッチャーの投げる球のスピード、あるいはランナーの走るスピードです。素直に真っ白な状況で見たときに、そこに一番感動するのでしょう。
特に、テレビは、映像を使ったメディアという特色を持っているのですから、もっともっとプレーの素晴らしさ、普通じゃできないようなプレーの素晴らしさに、焦点を当てた方が、より永続的にスポーツの良さを伝えることができるのではないかと思います。
短期的に良い結果が出るかどうかは別にしまして、長期的に見れば、そちらの方がいいと、最近スポーツ放送を見ていて、そのように思いました。
●番組自体に関して言えば、この番組は優勝直後の放映であったのでしょうし、番組の性格そのものが優勝の感動の余韻を伝える、一緒に楽しむということでしょうから、そういう意味ではファンではない人が見ても、屈託なく「よかったね」という気持ちで見られ、「まあいいんじゃないのかな」という感じがします。
ただ気になったのは、選手の発言のテロップが、真ん中に白い線が入っていて、ものすごく読みにくかったです。特に選手は白いシャツを着ていましたから余計に読みにくく、何であのように白い線を入れたのか、疑問に思いました。
それから、この番組も含めてなのですが、欲を言えばということなのですけれども、「優勝してよかった」というだけの話ではなくて、もう少し、プレーに関して感動の場面や決定的な場面とかが、あったのではないのかと思うのです。そういうところの分析、素人に気がつかないような「ここのところがこうだったから、こうなったんだ」というようなポイントの分析が聞きたかったですね。
専門家から言われると「そうなのか」と発見があるでしょうし、そういう個々のことだけではなく「阪神はなぜ優勝できたんだろうか」という総合的な見方も聞いてみたいと思います。「みんなよく頑張ったね」というだけでは、我々素人の印象と同じなので、そうではなくて、赤星と金本の組み合わせなど、選手同士の組み合わせや、優勝につながる好プレーを生んだバックグラウンドなど、専門的にいえば幾つかポイントがあると思うのですね。
あるいは、きょう映されたのは大半が誰もが見ていた場面でしたが、そうではなくて舞台裏といいますか、ほかの番組にはなかったところを皆さんが取材されていて、「このプレーの裏には、実はこういう場面があったんだ」というようなことを紹介するなど、ストーリーのようなものもあれば、もっと感動も深まるという気もします。通常のスポーツ番組に関しても、そのような感じを受けます。
●私はあまり野球を見ないのですけれど、今年は気になっていました。優勝直後のせいかもしれませんけれども、この番組を見ますと、選手の皆さんがすごくリラックスして話をしています。やはり、これだけ長く続いた番組とのおつきあいの歴史なのかな、そういう信頼関係があるのかな、というふうに拝見しました。
それにしても20年、よく辛抱して番組を続けてこられたなと思いますし、それだけちゃんと視聴率があったということですよね。それを思うと、阪神タイガースというのは面白い球団だなと改めて思いましたし、番組の担当の方も本当に今年の優勝を喜んでいらっしゃることだろう、よかったなと思いました。これからもタイガースを見捨てないで、つくり続けてほしいなと思います。
それから、今年は私みたいに、にわか野球ファンも多分、増えたことと思うのですけれども、選手の名前ぐらいはちらちらと頭に入るのですが、素顔はほとんど分からないもので、画面に出てこられても誰が誰なのか分からないのです。字幕などで、ちょっと名前を出していただけば、「ああ、これがあの人か」というふうに見られたかなと思いました。
●私も、タイガースの成績がすごく気になって、外国に行っていても、「まだトップにいますか」と電話をかけたり、メールを打ったりしていたぐらいで、優勝するまでを楽しませていただきました。いざ優勝して、「やっぱりすごいんだ」と改めて感じました。
この番組で、Tシャツを着た選手が素顔で出てきましたけれども、ユニホームを着て帽子をかぶっているのと、ラフな格好をしているのとでは、えらく感じが違うので驚きました。
水泳の選手もそうですけれども、オフになると非常にリラックスした顔になって、30歳になった人でもTシャツなどを着てしまうと本当に子供みたいになってしまうのですね。プールサイドへ出たときは裸ですからお腹も引き締めて、シャンとしているのですが、オフには、もうみんなデレーッとしてしまいます。
この番組を見て、選手の表情が本当によく似ていたので、やはりどのスポーツも共通しているな、スポーツの共通点はこの選手の無邪気な顔だなと確信しました。
それと、優勝を決めたときはどこのチームも同じですが、私も気になっていますし、うちの主人も怒ることがあります。それは、ビールかけとお酒かけで、主人は特に日本酒党で「もったいないことしやがって、ほんまに」と怒りまくるのですよ。それも毎年、いろいろなチームのお酒かけを見ているので、「またやりおった」と、今回も案の定また怒っていました。
本当にお酒が好きな人とか、ちょっとお金がなくてお酒も飲めないような人から見ると、本当に腹が立つのではないかなと思います。特に私の場合は、うらやましいというよりも怒りがこみ上げてくるのです。本当にもったいないと思います。
●私は大阪生まれの大阪育ちで標準的な阪神ファンですので、この番組は大変楽しく見せていただきました。この番組は20年も続いているということですが、私は20年間一遍も、この番組を見たことがなく、タイガースファンとしては申しわけなかったなという気がしております。放送時間が夜中というのは、やはり若干いじめられていたのかな、という気がしないこともありません。
しかし、読売テレビさんが、こういう番組をつくっておられるということは、その寛大さといいますか、公平さといいますか、辛抱強さといいますか、やはり素晴らしいことだと思います。「阪神ファン」、あるいは「大阪人」の、読売テレビに対する親しみをつくられたという点では、非常に功績が大きいのではないかという気がいたします。
番組そのものにつきましては、1、2のことを感じたのですけれども、何といいますか、やはり教育的効果が大きかったと思います。感動というのは人生にとって大変大事なことです。18年間も鍋底におったのが、2年間で浮上してきた。このことは10年以上、自分の仕事をいろいろやっても、ちっともうまくいかない、という人はたくさんいるわけですから、そういう人たちに力を与えたということも大きいだろうと思いますし、たくさんの人間が、一つに心を合わせてやると素晴らしい仕事ができるということを見せたという点で、子どもたちに対する教育的効果は非常に大きいと思います。
「阪神タイガースが優勝したら」といった経済効果ばかりが新聞に出てまいりまして「何百億円の効果」というふうなことが言われておりますけれども、「教育的効果たるやいかなるものか」と、これは大阪府の教育委員長にでもコメントをいただいたらよかったのではないかと思います。
感動、感動といいますけど、感動というのは本当に大事なことで、教育にとって非常に重要な要素の一つであると思います。そういうことを伝えたという点で、この番組は非常によかったのではないかと思います。
●私もタイガースファンですけれども、この番組は知りませんでした。『トラトラタイガース』というネーミングから、もしかしたら、サンテレビの番組かなと、思ったのです。違っているのかもしれませんが、はるか昔に何回か見た、遙洋子さんが出ていた番組ですか?そのころに見たような気がしますが、放送は夕方でしたね。
私がタイガースのファンであるが故に、子どもが生まれてからは、お弁当箱からタオルからパジャマから全部タイガースのもので揃え、子どもからは「どこのファンになるか選ぶ余地がなかった」と、よく言われるのです。また、「そのために18年間えらいしんどかった」「苦労した」「毎年がっかりした」とも言われ、その意味では今年は「よかったやろう、やっぱり18年間頑張ってきただけの感動があったね」ということで、阪神タイガースに関するいろいろな番組を見せていただきました。
この番組を冷静に見るにあたって、阪神タイガースを素材にしたトーク番組なのか、それとも阪神タイガースそのものを浮かび上がらせようとした番組なのかと考えました。新しい情報、試合内容、あるいは分析など、誰も見ていないようなシーンがなかったので、そういう意味から言えばトーク番組ということですが、進行役、ご意見番、リポーターがちょっとしゃべりすぎかな、と感じました。
やはりこういうスポーツ番組なら、いろいろなシーンを見せて、そうした映像表現自体を言葉として語らせるべきではないのかなと思いました。出ている人たち全部がしゃべり過ぎで、その内容が試合分析とか、優勝につながる分析ではなくて、いわゆる無駄口だったのではないかと感じました。
●この『週刊トラトラタイガース』という番組は、私どもの仲間では、「癒し番組」「ストレス番組」と、そういう言い方で呼んでいるのですが、これまではストレスの時代が長かったかもしれません。
何故かというと、週末に、すでに分かっている結果を、もう一度確認するようなことをやるわけですから、勝ち越しているときは癒し的要素が強いし、逆のときは、かえってストレスがたまるという、そういうことなのです。かなりの事情通でないと入っていけない部分もありますので、この放映時刻で5%を超えるような視聴率をとっているというのは、この番組を見ているのは若いタイガースファンの方々が多いのではないかと、思って見ていたわけなのです。
先ほど、ご指摘がありましたが、読売テレビの番組で解説役に川藤さんを起用してということは、すごいことだと思いますね。おそらく社内、社外から「何で、この番組を放送するのか」という声は、なきにしもあらずではないかと想像しますけれども、結果的に20年という歴史、この継続が力になっているなと感じました。
ただ単にスポーツの結果の報道ではなくて、悲喜こもごもも含めた人間模様というものが、川藤さん一流の語り口で、面白く描かれていると思います。そこが、この番組がスポーツ情報番組として生きているポイントなのだな、というふうに感じました。
大事なことは、この番組が今後どうなっていくかということですが、これからが正念場ではないかと感じております。監督が代わり、選手の意識も変わり、ファンもまた意識が変わってきています。従って、阪神タイガースの姿は少し変わるかもしれません。
この番組の長寿を願う者として、20年の歴史に対して敬意を表しながらも、将来のことをよく考えていただきたいなと、思っております。
●どういう訳だかは分かりませんが、タイガースを話題にすると常に何か滑稽さみたいなものがありまして、この番組審議会でも、きょうほど笑い声が多かった審議会は初めてだと思うのです。ほかの球団について、このような番組というのはございますか。
●(社側)例えば、広島であれば広島カープを応援している番組がありますし、中京エリアであればドラゴンズを応援している番組もあります。しかし、20年も続いている番組というのは読売テレビの、この番組だけですね。
●東京の方では、『週刊読売ジャイアンツ』というのはございませんか。
●ありません。
ただ、「読売」ということに関して申しますと、昔はカメラを持って取材に行きますと、「読売テレビ・週刊トラトラタイガース」というステッカーを張っていますので、負けると巨人ファンからも、阪神ファンからも、石を投げられたのです。巨人ファンにしてみたら「なぜ、お前ら読売テレビなのに阪神の番組やっているのか」という気持ちですし、阪神が負けたときには阪神ファンから「お前らが撮っているから負けるんだ」とやられた時代もありました。
先ほど委員長がおっしゃいましたけれど、タイガースを語るときに、やはり滑稽になってしまうのです。弱いのに、なぜそんなに応援するのだという、そこらも笑いですね。だから僕らが番組をつくるスタンスとして、コミック球団的に扱ってしまえば楽なのです。「弱いけれど可愛い」と親しみがもてるというところに終始してしまえば楽なのですが、それをすると何が駄目かというと、選手に失礼になるのです。
選手、監督は、やはり真剣勝負ですからね。命かけてやっているわけですから、そこを描かないと、これは失礼だということで、弱くてもいいところを探して、一生懸命汗を流している選手に迫ろうとしてきました。選手や監督に信頼されるかどうかは、とことんそこなのです。だから弱くても、そこを真摯に描こうとする姿勢がスタッフにあり、また、ああいう川藤さんの語り口にもなるのだと思っています。
●この番組は、年中放送しているのですか。オフシーズンはどうしているのですか。
●(社側)オフシーズンは、先日も夕方の放送枠で『20周年スペシャル』という特番をやらせていただきましたが、今年は節目々々で月1回ぐらい夕方の枠で、そういうスペシャル番組をやらせてもらいまして、視聴率の方も好調でよかったです。
●私は、このプロ野球には、ほとんど関心がないものですから、普段はどうでもいいのですけれども、今年はこのようなことでしたから、ここまで来ればタイガースが勝てばいいと思っていました。先ほど、教育的な面で効果があるというご意見がありましたが、実は昨日、たまたま、ナノテクノロジーという先端的な技術についての研究会がございまして、そこで講演された方が非常に面白いことを言われたのです。
ナノテクノロジーによって非常に小さな、夢のようなものがいろいろつくれるという話をされた中で、しかし、そういう小さなもの一つ一つを、どんなに優れたものに仕上げても、全体としての装置やデバイスや、さらには、それを使ったシステムがうまくいくとは限らないという話の例で「野球だってそうなんだ」とおっしゃるのです。
最高の4番バッターだけを集めてチームをつくっても野球にならないし、優秀なピッチャーばかりを集めても試合はできないので、チームとして、システムとしての組み合わせが非常に大事だということを言われました。そういう目で野球を考えてみますと、確かにそうだなと思ったのですが、そういう意味でこの番組は、いろいろな視聴者に、いろいろな受け取り方をされて、楽しんだり、感動したりしてもらえたのだろうと思います。
私も、この番組は、今回初めて拝見したのですけれども、ここまで来ているわけですから、さらなる長寿をお願いしておきます。
●これは読売テレビの全体の話になると思うのですけれど、やはり「読売」という冠がありながら阪神タイガースと付き合っていくのは、企業と企業という関係の上でも、壁のようなものが昔はあったのです。それが、こういうタイガースの応援番組を通じて一球団と向き合って、番組を20年続けているうちに、タイガースの中の人たちにも認知されて、選手からも「この人たちには本音をしゃべっても、きちんと扱ってくれるじゃないか」ということになってきています。例えば、アナウンサーが取材に行ったときに、ほかの局のアナウンサーには言ってもらえないようなことを教えてもらったり、それが中継の中で解説者と会話していく上でコメントとして生きてきたりと、相乗効果を生んでいます。この番組は、プロ野球中継など、スポーツ番組の質を上げていく上で僕たちのベースになっている番組だと思っております。
スポーツを通じた教育という観点もあると思うのですけれど、私も子どもがいるのですけれど、一生懸命やるということ、そして、それによって結果が生まれるということを伝えていきたいなというふうに思っています。
<視聴者センター部報告>
●(社側)続きまして、10月に寄せられました視聴者の声を報告いたします。9月からホームページ上でもご意見を承るようになりまして、10月は約1,000件、ホームページを通じて声が寄せられました。それ以外の従来の電話での件数は約6,000件と、少ない水準になっております。
主な意見・苦情ですが、9月で終わりました『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』という番組に対する意見・苦情が全体の意見・苦情のうちの4分の1、400件余り届いています。
以下、ご覧のような内容です。
●(社側)それでは最後に、次回の読売テレビ番組審議会の開催予定を確認させていただきます。次回は、12月12日金曜日午後6時から帝国ホテル大阪で開催させていただきます。年末のお忙しい時期になりますけれども、ひとつよろしくお願いいたします。
本日はご審議ありがとうございました。
- 平成15年度読売テレビ番組審議会委員
- 委員長 熊谷信昭 兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
- 副委員長 馬淵かの子 兵庫県水泳連盟 顧問 元オリンピック日本代表
- 副委員長 川島康生 国立循環器病研究センター 名誉総長
- 委員 秋山喜久 関西電力株式会社 顧問
- 委員 金剛育子 能楽「金剛流」宗家夫人
- 委員 林 千代 脚本家
- 委員 阪口祐康 弁護士
- 委員 佐古和枝 関西外国語大学教授
- 委員 北前雅人 大阪ガス株式会社 代表取締役副社長執行役員
- 委員 谷 高志 読売新聞大阪本社 専務取締役編集担当