第443回 番組審議会議事録

1.開催年月日
平成15年6月13日
2.開催場所 読売テレビ本社
3.委員の出席 委員総数 10名
出席委員数 6名
出席委員の氏名 熊谷信昭、林 千代、馬淵かの子、 野村明雄、
阪口祐康、老川祥一
欠席委員の氏名 秋山喜久、金剛育子、佐古和枝、川島康生
会社側出席者 土井共成 (代表取締役会長) 以下13名
4.審議の概要 テーマ及び視聴合評対象番組
視聴合評番組 「トミーズ小枝の素敵なダーリン」
放送日時 毎週日曜 午前17時00分~17時30分(30分)
出演 トミーズ、桂小枝 ほか
放送エリア 関西ローカル
 番組審議会では、バラエティ番組「トミーズ小枝の素敵なダーリン」について意見を交換した。
 委員からは「妻の目から見た夫の姿が面白く語られているが、その底に夫や家族への愛情が感じられた」「のぞきの要素もあるが、誰も傷つかない良識的な範囲に押さえられており、楽しめた」など、円満な夫婦や家族を紹介することに共感を覚えるという意見が相次いだ。
 一方「番組の中で状況を説明するために"ニセ番組"という字幕が出たが、誤解を招くのではないか」と、細心の注意を払うことを求める声も上がった。
 また、「台本もなくアドリブでとても面白いやり取りが出来るのは、関西人の特質ではないか」「ある分析で、関西は関東に比べて妻が夫をリードする傾向が強いとされていたが、そのケーススタディとして関西の典型的な夫婦の姿が良く描かれていた」など、関西の風土に根ざした番組だと指摘する意見も出された。
 この後、国会で可決・成立した「個人情報保護法」について報告し、続いて5月に寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。

【議事録】
(社側)本日、ご審議いただきますのは、毎週日曜日の午後5時から30分の枠で放送しておりますバラエティ番組の『トミーズ小枝の素敵なダーリン』です。
読売テレビをはじめ在阪の各局では、土曜、日曜の午後の時間帯の多くを、自主制作番組を中心にローカル編成しておりまして、読売テレビでは伝統的に、この時間帯の視聴率が非常に好調でございます。土曜、日曜の正午から午後6時までの最近3か月間の平均視聴率を見てみますと9.6%と、2位の朝日放送に1.4%と、かなりの差をつけてトップを走っています。
この時間帯のことを、我々の間では「土日たて」という言い方をしていますけれども、この時間帯での勝ち負けが地域への密着度とか、独自の制作力の優劣を反映していると言われております。この番組も、その一角を支える人気番組でございます。番組の内容や狙いなどについて、ご説明申し上げます。

(社側)『トミーズ小枝の素敵なダーリン』は99年10月にスタートいたしました。スタートから、3年8か月が経っております。トミーズは大阪の吉本興業所属の漫才師です。読売テレビが中心に実施している『上方お笑い大賞』でも、二度、大賞を受賞している人気漫才コンビで、高校の同級生同士だったという2人は、ともに43歳です。このコンビは、大阪のお笑い界において、非常に安定した地位を築いています。
また、桂小枝さんは47歳の落語家です。桂文枝さんの弟子ですけれども、今は落語家というよりも、むしろTVタレントとして、この番組で演じているようなレポーターをやるなど非常に幅広く活動しています。彼も大変な人気者の一人です。
こういった男性3人が町へ出かけていきまして、我々の間では「アポなし」と言いますけれども、事前の約束なしに偶然出会った奥さんと、番組ではマダムと言っていますが、会話を始めます。そこでご主人との出会いや、結婚へのいきさつ等をお伺いして、最終的には、ご主人のもとに一緒に赴いて、改めてご夫婦に関してお話を伺うという形式を取っているロケ・バラエティー番組です。ご主人は、その場にはいないわけで、自宅や、あるときは職場に、奥さんとともに取材班が訪れてお話を聞くことにしています。
3年8か月の間の平均視聴率が11.1%、シェアは23%です。シェア23%ということは、視聴率的には好評を得ているのではないかなと思います。
この番組のつくり方の特色は、一般の方が突然テレビの取材を受けるということで、取材を受ける側にとっては大きなハプニングだと思うのですが、その中からほのぼのとした夫婦愛が垣間見えてきます。そうした姿を描き出すことが、この番組のテーマだと思って制作をしております。

<VTR視聴>
(社側)ご覧いただいた回の視聴率は8.8%でございました。それではご審議をお願いいたします。

私は、この番組を見ようと思ってテレビをつけているわけではないのですが、割とよく見るのです。愚痴であったり、ぼやきであったり、のろけであったり、いろいろあるのですけれども、奥さんの目から見た旦那さん像というのが垣間見えて、そこに旦那さんに対する愛情というのか、関心というのか、それらがものすごくよく出ていて、それをテレビのつくり手が温かい目でとらえているという印象を受けます。
そういう夫婦の姿を茶化そうというのではなく、温かい目で見ているというところが、私がこの番組を好きな最大の理由ではないかと思います。
もう一ついいのは、夫婦の間の話を聞くのですが、私が見ている限りでは、下ネタがほとんどなかったように思います。夫婦のことを聞く番組の中には、たまにそういうところへ行く番組もあるのですが、それがないのが、この番組を見やすくしている理由の一つだと思います。
そういう意味で、この番組は夕方の5時という時間帯にふさわしい良い番組だ、というのが私の認識です。

私は、あまりこういう番組は好きではないので、誉めるつもりはないのです。ただ、たわいもないというか、バカバカしい思いはするし、一種の"のぞき"ではあるけれども、見ている人にいやらしさとか、不快感を与えないという意味では、上手にこなしているという印象を受けました。トミーズをはじめ、出演者の話題のつくり方も、悪趣味にならないように工夫している感じがします。
従って、喜んで見るわけではないけれども、何となくつり込まれて見てしまった、という思いがあります。
それから番組そのものの評価とはちょっと離れるのですが、この番組でのやりとりを聞いていて非常に面白く、社会風土のケーススタディとして誠によく現れているなと思ったことがあります。それは、結婚に対して女性と男性の受け止め方に、関西と関東で差がある点です。
私どもの新聞社で東西の文化の比較をやっていまして、つい先日も似たような話題が掲載されたのですが、関西の男女関係というのは、女性の方が結婚に積極的だというのです。男はなかなか言い出さないで、女性の方から「どうするの」と「結婚してもいいのよ」と持ち掛け、男性側が「ほんならそうしようか」となるケースが非常に多い、ということを面白く、かつ、まじめに分析した記事を読んだのです。
この番組で紹介されたご夫婦の場合、まさにそういう感じですね。そういう意味で、この番組だけを見ていると、単に「この人たちはこうだったんだな」と、感じるだけですが、東西の比較というような観点で見ると、関西風というのは、こういうことなのかなということを改めて感じたという意味では面白かったと思います。

ビデオテープを送っていただいて家で見たのですけれど、何回見てもおかしいですね。今も見ておかしかったです。
一つ一つの会話が、台本どおりに漫才みたいな感じに進んで、合いの手が上手に入るし、くすくす笑ってしまう面白さがあります。この番組は何回も見ているのですけれど、いつも関西の人しかできないのではないかなというおかしさがあります。
東京の局がつくっている番組で、いきなり台所へ入ったりして素人の人に話を聞く番組をやっていますが、ちょっとぎこちないところがあるのです。関西の人は、何か自然なのですよね。
この番組に出てきた特に阪神ファンの旦那さんは、「ようこんなけったいな人がいるわ」と思いました。こういう人は、関西だからいるのですし、それもまた面白いなとみんなが温かく受け入れています。奥さんも、あきれているけれども、もうあきらめている感じで、本当の関西のノリで、見ていても誰も傷つかないで、「あの夫婦が楽しんでいたらいいわ」というような感じです。
そうした夫婦の様子をのぞいているものは、非常に面白くて、私はこの番組を見たのは2回目でしたけれど、また笑ってしまったのです。子どもの名前を大雅(タイガ)とつけるとか、もう信じられないですよね。
こういう人が関西にはいるのだなと実感しました。本当にネアカの人が関西には多いということを改めて感じて、これから時間があれば、またこの番組を見ようと思っています。楽しくて、楽しくて、本当に愉快に見せていただきました。ありがとうございました。

私も、この番組は初期のころから、よく見ているのですけれども、最初から番組のコンセプト、つまり夫婦愛というものを描こうという意図は、視聴率にかかわらず、終始一貫変わっていないと思うのです。
この番組に関して言えば、司会者が誰をつかまえるかによって番組の流れが違ってくると思うのです。悪のりするような人をつかまえてくると、変にはしゃいで、見ている人が不快感をもよおすかもしれません。この番組は、ある意味では全国区になっている大阪人の嫌な面が出るのではなくて、ある程度、良識のある大阪人をつかまえてきたことで、3年間同じような感じで続けてこられたのではないでしょうか。
それと、夫婦から何を聞き出すかというところで、あまり深く入っていかないで、良識の範囲内で話を引き出していて、その中から、どう視聴者の笑いを呼ぶか工夫されています。夫婦の話から浮かび上がる夫婦愛や、その背後に隠れている家族愛が、日曜の夕方という時間帯に合っています。
あの時間帯は、ほとんどの家はテレビをつけっぱなしにしています。この番組は、テレビの前で子供が見ても、誰が見ても、家族で健康的な笑いを楽しめると思います。
放送コードというものはあっても、バラエティー番組の場合には無きに等しいというような状態です。かなりきわどい言葉とか、卑猥な言葉とかがよく出てきます。何時何分にこういう言葉があったというようにビデオを精査してみますと、結構バラエティー番組にきわどい言葉が多く出てきます。
この番組を見ている限りでは、ほかの番組とは違って、そういうことは無いように思います。何がこの番組から生まれるかと言うと、この番組に出てくる楽しい家庭、健康な家庭、普通の30代、40代の人の家庭が多いと思うのですけれど、その姿を見て、「うちも一緒やな」「同じような家庭やな」と、安心できて、子どもともいっしょに見ることが出来る番組で非常にいいのではないかと思います。
ただ一つ、気になりましたのは、小枝さんがうるさいことです。非常に耳障りで、ボリュームを落とそうかなと思うほどでした。小枝さんを、この番組から外すと、番組の内容や雰囲気が違ってくるので必要だと思うのですけれど、非常にうるさく、もう少しトーンを落としていただけないかと思います。
それから、もう一つは、話の内容がよく聞こえているのに、なぜテロップというのですか、字幕を入れるのですか。これが非常にうるさい感じなのです。話の内容と同じような言葉を、全部文字にして入れるというのはどうしてなのですか。

(社側)本来、必要のないものだと思います。いつごろからでしょう、10年ほど前から、しゃべった言葉の字幕を入れるのが、我々の世界では、定着をしてしまいました。もちろん生放送ではあり得ないわけですけれども、字幕のない番組がないほどです。
なぜ字幕を入れるのかというと、のんびりとテレビを見ていただいているときに、改めて文字を出すと非常に印象度が強くなるという効果を期待するからなのです。一生懸命見ていただいているときには必要のないものだと思うのですが、テレビというのはそれ程一生懸命見ないことが多いと思うのです。そうした視聴者の方の心を何らかの方法でつかもうという、ちょっと強引ではあるのですが、我々の制作者側の視聴者をひきつけるための手法のひとつなのです。
「こんなことを言っているんですよ」と、画面に注目してほしい思いを、言っている言葉を文字にすることで表しているのです。こうした手法が定着しており、あまり乱用していない方だとは思うのですが、この番組でも時々使わせていただいているというのが現状です。

一生懸命聞いていなくても結構耳に入ってきて、笑いを誘われたりするので、字幕はあまり必要ないと私は思いました。でも、この番組は、いい意味での大阪人が出ている大阪ならではの番組で、時間のある限り、この3年間ずっと見させていただきましたし、楽しませていただいておりました。

字幕は、耳が遠くなった年寄りへの配慮かと思っていました。

(社側)もちろん、そういう趣旨もございます。聴覚障害者の方のために入れるということも、もちろんあります。

この番組は、関西ローカルの放送で、それこそ関西らしい吉本新喜劇調の典型ではないかと思うのですね。私も大変苦手です。この番組は、おそらく全国に発信できないですね。
それと、もう一つ言いますと、面白いリラックスできる番組だし、それから多少とも個人の生活というか、プライバシーをのぞくところがあって、それが興味を引っ張っているところがあると思うのです。これは私の驚きなのですが、いきなり、どこかで声をかけられて、全く打ち合わせなしに、画面であれだけのやりとりができるというのは、関西人は、おしなべて相当なタレンテッドな人々が多いということですね。面白く、何も考えずに「あはは」と済ませてしまえることかもしれませんが、我々の感覚や我々の年齢で、ものを考えること自体がちょっとずれているのかもしれませんが、驚きました。
さらに言えば、あれだけのことを打ち合わせなしにやれる人を選ぶ手続きというか、努力、労力、制作する側は大変だろうなと思いますね。
日曜日の夕刻で、時間も30分ですし、視聴者もあまり深刻に考えずにテレビをつけているのですから、この番組が「あかん」とか、何も頭かきむしって深刻に考えるようなテーマばっかりでやれとは全く思っておりませんけれども、しかし一定の限界があるのではないかなと、そういう印象です。

私は日曜日の、この時間帯にテレビを見ることはめったにないのですけれども、私は、この番組を視聴させていただいて面白かったですね。小枝というのが何となく好きなのですよ。どういう理由か分かりませんが、小枝がいなかったら全然面白くないと思うのです。
きょう視聴させていただいたような、変わったカップルですと本当に面白いのですが、たまたま真っ当なカップルだと面白くない上に、先ほど委員から指摘がありましたが、下手をするといやらしい番組になりますね。こういう面白いカップルに当たるまでには、声をかけた人の中でボツにする人や、あるいは「これは駄目だ」という人が出てくると思うのです。例えば、ご主人が出張中とか、単身赴任でいないとか、そういう奥さんもいるはずなのですが、そういうときはどうされるのですか。あるいは、面白い番組に仕上げられない率は、どれぐらいなのですか。

(社側)まず、街で主婦の方に声を掛けさせていただくのですが、タレントのスケジュールもありますので、その日のうちにロケを済まさなければいけないという時間的な制約もあります。おっしゃるように、ご主人がその日、出張に行ってらっしゃる場合や、とてもとてもテレビの取材など受けられる状況にない場合など、いろいろなケースがあります。
声を掛けさせていただいて、奥さまはOKなのだけれども、ご主人が不可能というのは7割、8割です。なかなか、簡単にお仕事中、取材に応じていただけるものではありません。
こういう演出なものですから、お仕事中の場合は、我々は、ご本人にはこの番組のための取材だとは言わずに、会社に取材の許可を求めます。となると、会社の中で、この時間に取材に来られてOKかどうかという会社としての判断が働きます。そこでしばしばNGになることがあります。
そういうようなことで最終的にOKになるのは、その段階でも2割から3割です。
それで、ご主人のところまで行きまして出会えたとなりますと、これはほとんどがOKになります。当初は、その段階でご主人が、奥さんがOKでも、「テレビの取材はやっぱり勘弁してくれ」というケースがあるだろうなと予想していたのですけれども、これが思いのほか少なくて、今までの3年以上の中で1、2ケースあっただけです。
当然奥さん自身が、「うちの主人は、こういうものを受け入れられるかどうか」ということを判断しており、そこで大きなフィルターがかかっているわけで、だめな場合はもうその段階で「うちの旦那は、そんなん駄目ですから」とNGになるわけで、奥さまがOKであれば、99%OKという確率で取材出来てきました。

そうすると最後まで取材できる率というのは2割前後ですか。その中でも、全然面白くないというのもあるでしょう。旦那がまともすぎたり、照れてしまったり…そういう場合でも、最後まで取材したものは必ず放映するのですか。

(社側)はい、いたします。

面白くなくても、放送するのですか。

(社側)きょう見ていただいたのは、ご本人自体のキャラクターとして、大変楽しい方でしたが、中には非常におとなしい方、おしゃべりが苦手な方も、たくさんいらっしゃいます。大阪人とは言え、3割ぐらいの確率で、思うほどは盛り上がらないということもあります。でも、それも全部放送させていただきます。
盛り上がらないと言いましても、それはおしゃべりが苦手ということで、5年なり、10年なり、20年なり、連れ添われたご夫婦の歴史というのは必ずあるものだと思うのです。その歴史をトミーズと小枝というプロのしゃべり手が、引き出すのです。素人のご夫婦のお話自体がトークとしては面白くなくても、歴史としては絶対に何かあるはずなので、そこをプロが引き出していきます。
そうしますと、そんなにおしゃべりが得意でなかった3割のパターンでも、結果として、番組としてはちゃんと見られるものに仕上がります。プロのしゃべり手の力によって「楽しかったな」「こういうご夫婦がいらっしゃるんだな」というように、楽しめる番組に持ってくることが出来ているのではないかと思っているのです。

長い経験を持つカップルというのは、いろいろあるでしょうけれど、きょう見た回に登場した夫婦などは、結婚して8年目ですね。
若い人を狙うのですか。それとも結婚生活が長そうな主婦を探すのですか。若いなりに面白さもあるでしょうし、どうなのですか。

(社側)幅広く選んでいます。あえて幅広くさせていだいているのです。20代のご夫婦に出演していただくこともありますし、50代、60代の方にお願いすることもあります。バラエティー番組として、幅の広さを持たそうと意識して、出演していただく方を選んでいます。

全体的に見ると、若いカップルと年寄りと、どちらが面白いですか。

(社側)やはり長く連れ添われた方の方が、歴史がありますから面白いです。

それからもう一つ、先ほど字幕の話がありましたが、番組の中で「ニセ番組『阪神ファンを探せ!!』」というのが出ていたのですけれど、「ニセ番組」と書いてあったのはどういう意味なのですか。

(社側)この回では、ご主人のところへ行く最初の段階は、桂小枝だけが行ったのですけれども、そのときに『素敵なダーリン』という番組名を出してしまうと、ご主人が番組を知っていらっしゃって身構えてしまう可能性がありました。
そこで、桂小枝という顔の知られたタレントとテレビカメラが共に来ても、「『素敵なダーリン』という番組ではなくて、『阪神ファンを探せ!!』という番組の取材に来たんですよ」というふうにご主人に対して、そこだけ嘘をつかせていただいて、自然なリアクションを引き出そうとしたのです。
画面に「ニセ番組」と字幕を出したのは、「ニセの設定ですよ」ということを、視聴者に分かりやすくするためだったのです。

そういう意味ですか。それならばもうちょっと、何か工夫なさるかしないと、あの番組そのものがニセ番組だと、誤解されるのではないでしょうか。「ニセ番組」と書いてあるから、あの部分は「やらせ番組」「ニセ番組」なんだというふうに受け取りました。

(社側)「ニセ番組」という言葉を、もうちょっと工夫せよという意味でしょうか。

「ニセ番組『阪神ファンを探せ!!』」という、あんな字幕はいらないのではないかと思うのです。この番組の全体のことかなと、誤解を招くことになります。意味が分からないから、あの場面だけのこととは思えませんでした。あの番組全体が、そういうニセ番組で、阪神タイガースが、たまたま話題になっているときだし、やらせの番組なのかなと思ったりもしたのです。

(社側)そうですね。そこのポイントだけを見ると、そういう誤解を招く可能性があったかもしれませんね。

いらないのではないですか。あまり神経質に正直すぎるのではないですかね。

(社側)なるほど、そうかもしれませんね。もちろん毎回あのような手法を使っているわけでは、ないのです。「ニセ番組」というようなテロップを入れるケースは非常に少ないのですが、おっしゃられることは非常によく分かりますので、今後は注意します。

僕は、トミーズなり小枝さんが、『阪神ファンを探せ!!』と、こういうふれこみで、ご主人のところへ行きましたと、言葉で言った方がよかったなという気がするのです。
あの旦那さんに不意打ち食らわせたわけですね。まあ言ってみれば「ドッキリカメラ」の要素を番組に取り入れたわけでしょう。今回は笑える形になっているけれども、かなり悪趣味な面もあるので、やはり、「こういうふうな演出でやっていますよ」ということを見ている人に分からせた方が、見ている方は安心できると思います。
この回はたわいもなく進んでいるからいいけれども、ご主人は嘘つかれているわけで、ご夫婦が変な誤解をするなど、何かあった場合、取り返しがつかなくなりますからね。

確かにそうですね。
この番組よく見ている人だと、あのメンバーで行けば「『素敵なダーリン』の取材だな」と思ってしまいますからね。だから、「あの番組ではないんです」ということを言わないと、面白味がなくなる可能性があるので、そういうことをしているのでしょうけれど、それは、結果としては相手に嘘をついていることになりますね。
「ニセ番組」という表現では、その辺の事情をうまく表してないですね。ちょっと検討と工夫をなさったらいかがですかね。

ほかのご夫婦のときは、カメラを持っていく時に、旦那さんにどういう説明をしているのですか。

(社側)いろいろなパターンがあります。例えば、旦那さんの会社に行く場合でしたら、その会社の取材をさせていただくというような形をとることもありますし、いきなり普通に行くこともあるのです。
3人のタレントのうち1人だけが行くパターンだけではなくて、「せーの」で3人揃って行ってしまうパターンもあります。いきなりピンポンとインターホンを押して「お邪魔します。実は奥さんと先ほど出会いまして…」ということもあるのです。

たまたまタイガースが話題になっているときに放映されたというのは運もよかったですね。ほかに何かご意見ございませんか。あるいは最近の読売テレビさんの番組一般について、これはちょっと言っておきたいということがございませんか、よろしゅうございますか。

(社側)どうもありがとうございました。
続きまして昨年来、その動きをご報告してまいりました個人情報保護法が、先日国会で可決、成立いたしまして、近く施行される運びとなっております。メディアの活動を規制するのではないかと反対の声も強かった法律なのですけれども、成立のいきさつや修正の内容、また危惧される点などにつきまして説明いたします。

(社側)今、話がありましたように個人情報保護法は、今開かれている国会で、5月23日に成立いたしました。この法律をめぐりましては1年少々前になりますが、この番組審議会でも、委員の皆さまにご審議をいただきまして、考え方を公表させていただいた経緯もございます。その節はどうもありがとうございました。
では、成立した法律と民放連の対応について簡単に触れさせていただきます。ご記憶と思いますが、去年秋から冬にかけて審議されました法案の方は、メディア規制の側面が強過ぎるということで幅広い反対がございまして、政府も年末に廃案としました。
今回成立しましたのは、修正された上で、この3月に新たに提案されていたものでして、お手元の資料(資料①「個人情報保護法の成立について」)を見ていただきますと、上の方に①から④まで記してありますが、民放連や新聞協会などの主張が一定程度受け入れられまして、このような改善がなされたものになっております。メディア規制そのものだということで評判の悪かった、例えば「透明性の確保」とか「利用目的による制限」とかの基本5原則というものがすべて削除されております。また②③の辺ですが、フリージャーナリストや著述業の方も法的義務の適用除外とされるなど、改善点が幾つか見られます。
では問題が全くなくなっているかというと、そういうわけではありませんで、まだ多くの問題がいろいろな方面から指摘されております。例えば、法律の中で「報道」というものを規定しているのですが、本来多様であるべきものを、「客観的事実を事実として不特定多数に知らせること」というように、狭く規定していたり、出版社が義務規定の適用除外に入れられていないことなどが、問題ではないかと指摘されております。
民放連では個人情報保護の重要性を理解した上で法案作成に当たって「表現の自由」「報道の自由」が制約されることがないようにという主張を、これまでもしてまいりました。今回の法律の成立を受けまして、民放連・氏家報道委員長は、「これからは法律の実際の運用において『表現の自由』『報道の自由』が侵害されないように監視を続ける」(資料②)というコメントを発表しております。
これから先ですが、去年、参議院で審議され、その後中断しております人権擁護法案ですが、これがまた出てきそうです。今週月曜日に修正審議が再開されたという情報も聞きました。
また司法制度改革に関連しまして、裁判員制度の骨格案というのも最近示され新聞記事にもなっておりますが、「アマチュアの裁判員に予断、偏見を持たせないために配慮せよ」、つまり事件報道とか、裁判報道の規制につながるのでは、と懸念されるような内容も含まれているという状況です。
これから先もメディアを取り巻く厳しい状況は続きそうなのですが、私どもとしましては「表現の自由」「報道の自由」を守るために、最大限の努力を続けていきます。審議会の委員の皆さまのお力、お知恵をこれからも拝借するようなケースが出てくるかと思いますので、その節はひとつよろしくお願いいたします。


<資  料>
(資料1)

個人情報保護法の成立について

 すでにご承知のとおり、5月23日に「個人情報の保護に関する法律」が参議院で可決・成立し、近く施行の運びとなりました。この法案に関しては、昨年5月度の読売テレビ番組審議会でもご審議いただき、「議事のまとめ」として読売テレビ番組審議会の考え方をまとめ、公表していただきました。
 こうした動きを受けて、個人情報保護法案は昨年12月に政府案が一旦廃案となり、本年3月に修正された新法案が政府から国会に提出されました。新法案は、旧法案に比べて

(1)取材活動を制限しかねない、「基本原則」が削除された
(2)個人のジャーナリストが義務規定の適用除外となることが明確にされた
(3)新たに著述活動が義務規定の適用除外とされた
(4)報道機関等への情報提供者に主務大臣が権限を行使してはならないこととされた

 など、各放送局や民放連、また多くのメディアの主張が一定程度受け入れられたものになりました。
 新法案について民放連は、部分的な問題はあるものの、適正な法の運用がなされれば、「表現の自由」「報道の自由」が侵害されるおそれは少ないと判断して、国会の審議を注視してきました。法律の成立にあたっては、「政府に対し適正な法の運用を行うよう求めるとともに、表現の自由、報道の自由が侵されることのないよう監視を続ける」(全文別紙)との氏家報道委員長のコメントを発表しました。
 また、いわゆる「メディア規制3法」といわれた法案のうち「人権擁護法案」は、継続審議となっているものの、今通常国会では本格的な審議は行われておらず、「青少年有害社会環境対策基本法案」は、これまでのところ目立った動きはありません。
 しかし、有事関連法のなかの「武力攻撃事態法案」では、指定公共機関に民間放送が含まれる可能性が完全には払拭されていないほか、裁判員制度の導入に関して報道の規制が検討されるなど、表現の自由や報道の自由を制限しかねない動きが次々に起こっています。
 読売テレビでは、引き続き自らを律して、公正で質の高い番組を制作・放送することで、国民・視聴者の信頼を得、その支持を背景に表現・報道の自由を守っていかなければならないと考えています。

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(資料2)

2003年5月23日
(社)日本民間放送連盟


個人情報保護法の成立に当たっての
氏家齊一郎・民放連報道委員長のコメント


 本日、個人情報の保護に関する法律が参議院で可決・成立したが、法律の実際の運用において、民間放送が直接かかわらない分野も含め、「表現の自由」「報道の自由」が侵害されないようにわれわれは監視を続ける。
 民放連は1999年に個人情報保護の法制化に関する議論が始まったときから一貫して、個人情報の保護の重要性は理解するが、この法律によって国民の知る権利に応えるための「報道の自由」や「表現の自由」が制約されることがないように主張し、働きかけてきた。
 われわれの主張を受け入れるかたちで、「表現の自由」に配慮して相当の修正がなされたものの、この法律がその性質上、「表現の自由」と「個人情報の保護」との微妙なバランスのうえに立っている事実に変わりはない。このため、報道の定義や報道機関に自主的措置を求めている点などが国会において引き続き問題とされたが、政府には今後、法律に明記されたとおり、「表現の自由」を侵さないように法を運用する重大な責任があると考える。


以 上


<視聴者センター部報告>
(社側)続きまして、5月に寄せられました視聴者の声を報告いたします。総数は8,621件でした。ここ数か月は5,000件台と、かなり低い水準だったのですが、5月は8,600件と4月に比べまして1,800件増えております。
内訳は、問い合わせが1,300件増えています。それから抗議・苦情が1,061件と先月に比べて240件増えました。1,000件台というのは、この1年で最高の数字です。といいますのは、プロ野球中継に対する苦情が約600件来まして、これが全体の数字を押し上げました。内容の一部を紹介しますと、5月17日の阪神-巨人戦で、阪神の星野監督のインタビューが途中で終わったことに対しての苦情や、5月22日、二元中継を行いましたが、この二元中継に対しての苦情が多く寄せられました。
また、CMに対する苦情が最近増えております。
以下、『ザ・ワイド』で白装束集団を取り上げたことに対する苦情などもありました。

(社側)最後に、次回の読売テレビ審議会の開催予定を確認させていただきます。次回は、7月11日金曜日の午前11時から読売テレビ本社の、この場所で開催を予定しています。お忙しいとは存じますけども、ひとつよろしくお願いいたします。本日は、ご審議、ありがとうございました。

  • 平成15年度読売テレビ番組審議会委員
  • 委員長    熊谷信昭   兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
  • 副委員長    馬淵かの子   兵庫県水泳連盟   顧問   元オリンピック日本代表
  • 副委員長    川島康生   国立循環器病研究センター   名誉総長
  • 委員    秋山喜久   関西電力株式会社  顧問
  • 委員    金剛育子   能楽「金剛流」宗家夫人
  • 委員    林  千代   脚本家
  • 委員    阪口祐康   弁護士
  • 委員    佐古和枝   関西外国語大学教授
  • 委員    北前雅人   大阪ガス株式会社   代表取締役副社長執行役員
  • 委員    谷  高志   読売新聞大阪本社   専務取締役編集担当