第441回 番組審議会議事録

1.開催年月日
平成15年4月11日
2.開催場所 読売テレビ本社
3.委員の出席 委員総数 10名
出席委員数 9名
出席委員の氏名 熊谷信昭、秋山喜久、林 千代、馬淵かの子、野村明雄、
阪口祐康、佐古和枝、老川祥一、川島康生
欠席委員の氏名 金剛育子
会社側出席者 土井共成 (代表取締役会長) 以下15名
4.審議の概要 テーマ及び視聴合評対象番組
視聴合評番組 報道番組「ウェークアップ!」
放送日時 毎週土曜 午前8時00分~9時25分(85分)
放送エリア 全国ネット
 番組審議会では、報道番組「ウェークアップ!」について意見を交換した。
 委員からは「政治や経済などを論じる質の高い番組を、大阪から発信していることに喝采を送りたい」「論点が分かりやすく、テーマも的確に選ばれており、オピニオン・リーダーの役割を果たしている番組だ」「出演者が、激して論争するのではなく、落ち着いた雰囲気を保ちつつ、必要なことを伝えている」「まず問題の所在を分かりやすく提示して、その後にそれぞれの立場から議論するという枠組みが確立されており、ものごとを整理して理解できる番組だ」など、番組の演出や制作姿勢を評価する声が上がった。
 一方、「画面に出ていた字幕などの表現の一部に、事実を的確にとらえていないものがあった」「司会者のコメンテーターに対する態度に、一部不快な部分があった」「コメンテーターに外国人を加えるなど、グローバルな視点を更に補強することが必要ではないか」など、さらに工夫を重ねるよう求める意見も出された。
 この後、3月に寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。

【議事録】
(社側)本日、審議していただきますのは報道番組の『ウェークアップ!』です。この番組は毎週土曜日の午前8時から1時間25分の放送枠で大阪の読売テレビのスタジオから全国放送している生番組です。こうした生の報道番組を大阪の局から発信している例は、NHKを含めてもほかにはございません。既に13年目に入っておりまして、ユニークな番組として定着しています。

(社側)この番組の一番の特徴は、大阪も他の地方も含めて、唯一東京のキー局以外から全国ネットの報道番組を出しているということではないかと思います。これは視聴者の方はもちろん、出演していただいているコメンテーターの方も、実際来ていただけるまでは、大阪の読売テレビがつくっているということもご存じないことがありますし、読売テレビが東京のスタジオでつくっているのではないかと多くの人が思われているのですが、実は大阪のスタジオから毎週生で放送しております。
そこで、よく聞かれるのが、「ところで、なぜ大阪でつくる必要があるのか」ということなのです。実際、番組の中身につきましては、情報に関してはもちろん独自に取ることもありますが、東京からいただくことが多いですし、VTRの素材等もほとんど東京の日本テレビからいただいています。また、出演者の方々も一部を除きまして、ほとんど東京から来ていただいています。
大阪から発信する意味は、東京に何もかもが集中している中、東京の一元的なものの見方以外の見方が提示できるのではないかということがあります。大阪が東京から少し離れているという、地理的な要素もありますし、大阪人の気質といいますか、物事に対してほかの見方がないのだろうかと発想する気風のようなことも番組に生かしていけたらという狙いもあります。
週末には、他局も含めて1時間半から2時間の報道系のトーク番組がいくつかある中で、この番組が放送される時間は土曜日の朝ということで、最初の番組ですので、ある出来事が起こったときに、どういう見方で切るかというところが最初に問われることになります。その辺、ほかの番組に対する影響力もありますし、気をつけてつくっているところです。
お手元にお配りした番組概要にもありますように、番組が始まって13年になりますが、最初は制作局でつくっていたということもあり、今と比べますとバラエティーというか、生活情報も多く取り入れた、もう少し柔らかい番組でした。しかし、視聴者がニュースや情報を求めるという世の中の流れもあり、激動する社会の情勢に合わせてニュース色を強めてきまして、今は報道局でつくっている完全なニュース番組で、基本的には芸能とかスポーツは扱っていません。また、いわゆる社会ネタを扱うことも、あまりありません。
どちらかというと政治とか、経済とか、外交とか、最近は安全保障とか、国の行方を大きく左右するであろう出来事を中心に多角的に、一面的な見方ではなく、いろいろな見方や、背景の説明を大切にしてつくっております。

(社側)私は、92年4月に解説役としてこの番組に参加をさせていただきまして、その翌年に東京に参りました。現在まで東京の担当として金曜までは東京におり、週末に番組のために本社に戻ってくるという生活を続けております。
東京に行った理由は、この番組は、東京の一元的な情報だけではなく複眼的な見方をしたらどうだということで始まった番組ですが、政治の世界の情報などは、やはり東京にいないと把握できないものがございますので、10年前に東京に参りました。現在まで政治を中心とした取材を続けております。
番組がスタートして間がない頃は、認知度が低く、政治家に出演交渉をして「そうか、じゃあ土曜日ならスケジュール空いているから出ようか」ということになっても、「実は大阪のスタジオです」と言ったら「それは無理だな」と断られることがありました。
ところが、おかげさまで13年経って600回以上の回数を重ねてまいりまして、今は、こちらから『ウェークアップ!』という名前を出さなくても「土曜日、朝」と言ったら「『ウェークアップ!』だな」ということで「何とかスケジュールを調整して出ようか」というような時代になってまいりました。10年前と比較しますと隔世の感があるという気がいたします。
今後も、東京から伝えられている情報とは、ちょっと違った面といいますか、もう少しこういう面もあるのではないかということを多面的に伝える番組として、続けていきたいと思っております。
番組の中での私の立場ですが、新聞の論説とは違いまして「こういう見方がある」というのを提示できるような、スイーパー的というか、そうした立場で今後も存在していきたいなと、考えております。

<VTR視聴>
(社側)ただ今見ていただいた短縮版は、議論のエッセンスを非常にコンパクトにまとめてありましたけれども、実際の放送はお送りしたVTRにありましたように、複雑な事情が分かりやすく理解できるように、説明の部分にも時間を費やしております。この日(3月22日)の視聴率は、大阪が8.4%、東京が11.7%でした。それから2002年度の平均視聴率は、大阪が8.0%、東京が10.5%です。

(社側)今ご覧いただきました回は、イラク戦争の開戦直後でしたので、85分すべてをイラク戦争の話題に絞りましたので、通常とは大分違った形になっております。参考までに申し上げますと、通常は1週間の振り返りニュースを冒頭15分ぐらいやりまして、そのあと政治とか、経済とか、外交とか、二つぐらいのトピックスを20分ほど、VTRやフリップを交えて背景を説明した後に議論していただいています。
そして、最後のコーナーで30分ぐらいの時間をとって、特定のテーマについて独自の取材をして、特集という形で構成しています。特集については、政治もありますし、経済も社会問題もありますし、今年は特に地球環境に関して1年間にわたってシリーズを組んで、月に1回程度の頻度で放送していこうと思っています。
そのような特集もやっておりまして、VTRでご覧いただいた形は通常とはちょっと違う形だということを、お含みおいていただきたいと思います。

第一に、この番組に対して、心から喝采を送りたいと思います。いろいろ理由があるのですけれども、この番組が大阪発の番組であるということは、これは素晴らしいことで、我々関西の人間はこの番組を大事にしなければいけないと思います。
先ほどお話がありましたけれども、週末一番初めに情報発信する番組ということで、切り口といいますか、扱い方の設定に随分努力をしておられるのではないかと思いますし、オピニオンリーダー的な役割を果たしておられると思います。特に毎回の特集として、その時々の関心事を非常に分かりやすく取り上げられており、そのテーマが良いと思います。
二つ目が、番組として主張があると思います。それが、認知されているからこそ、長寿番組として一定の視聴率を保っておられるのではないかなと、そう思います。ですから、この番組は漫然とテレビをつけている方々だけではなくて、むしろ固定的な視聴者が、熱心に見ているのではないかと感じております。番組としての主張を感じるもう一つの点は、芸能、スポーツとか、あるいは社会的な話題を原則的に排除しているということで、これも素晴らしいと思うのです。
もっと言いますと、こういった番組に出演しているコメンテーターの中には、弾の飛んでこないところで戦争批判を無原則にするような人が多いと思うのです。しかし、この番組では、「人間の盾」を報道しないという形で、その偽善性を追及しておられるという点が、私は素晴らしいと感じました。
それから全般的に論点が非常に分かりやすく摘示されています。これは司会の桂文珍さんの力もあるのかもしれません。例えば今回の話題で言いますと、国連幻想に対する否定があり、民主主義の究極に戦争という暴力があるのだということを、私などは改めて思い知らされたところです。従って、情緒的な戦争反対論のむなしさといったものがよく分かりました。
もう一つ、日本の防衛の課題について考えさせられました。これはコメンテーターの森本先生の素晴らしい主張ですけれども、私はこの番組を見て、日本はミサイルが飛んでくるときに撃ち落とすミサイルの軍備をしなければいけないと感じました。さらに言えば、日本に撃ち込んでくるミサイルを撃ち出すところを攻撃できるだけの軍備を、これは軍備といいますけれども防衛力ですが、その防衛力を強化する必要があるのではないかと、思いました。
特に今回の番組では、福島コメンテーターと、素晴らしい正論を主張した森本コメンテーターとの対比が非常によく分かりました。良い番組だったと思います。

私も送っていただいたビデオを見て、よく分かりました。今、委員のお話しにあったように、論点が非常に簡潔であったのと、たまたまそうなったのか、意図されたのかはちょっとよく分かりませんけれども、出演されている方が、中立の方、反対の方、それぞれの立場がはっきりしていたためだったと思います。「これは予防戦争である」とか「悪と悪の戦いだ」とか、そういうことをはっきりと主張されていて、見ている側に訴える力があったと思うのです。けれども、あまり意見を持たない人間にとっては、いちいち、「この方の言っていることもごもっとも」「この方もそうです」という側面もあったように思います。
それでも、同意できなかったのは福島さんの意見でした。イラクの戦争に関して、この番組を見ていて伝わってきたことは、戦争を肯定するわけではないのですけれども、「必要悪かな」ということです。小泉首相の言葉や、コメンテーターの意見を聞いていて納得できる部分がありました。
ファッションの様に「戦争反対」と言っている歌手とか、芸能関係の方に、ちょっと私自身は納得がいかなかったので、この番組を見て自分の考えも正しかったのかなと思いました。
日本は戦後60年近くを迎えておりますけれども、終戦のときはすごい痛手を受けましたが、長い目でこの60年を見てみますと平和な時代が続いてきました。イラク戦争についても、大きな意味で地球の平和を考えると、何年か先にその結果が出てくると思います。今回、この番組を見て、「悪と悪の戦い」あるいは「必要悪かな」という部分に、私自身の考え方が傾きました。そのことが良いか悪いかは別にして、非常によく分かったと感じましたし、一つの意見を持つことができたことは良かったのではないかと思います。
同じような考えを持った方も多いのではないでしょうか。オピニオンリーダーを揃えて、この番組を放送したことの意義は大きいのではないかと私は考えました。

確かサッチャーさんだったと思うのですけれども、「日本人はノーベル賞とオリンピックと国連とを重視し過ぎる」と言ったということです。全くそのとおりでありまして、国連憲章の中には、まだ敵国条項というのが残っているわけですから、日本が国連の予算の2割も払っているというのは、納得できません。我々としては「もう国連なんか脱退したらどうだ」と言いたいぐらいですので、この番組は国連というものに幻想を抱いていた日本人に「ちょっと目を覚ませ」という内容で、非常に良かったと思います。
2週間も経ったら戦況は随分変わるもので、2週間前に戦略あるいは戦術評論家の言われたことが、いかに当たってないかということがよく分かりました。これは仕方がないことだと思います。
番組についてですが、私も、この番組は非常に良い番組だと思っておりますし、私の好きな番組の一つでございます。その理由の一つは、桂文珍さんという人の見識によるものだと思います。非常に引き際がよいといいますか、あまりに一方に加担して攻めません。たくさんある、パネルディスカッションのような形式の番組の中には、司会者がふんぞり返って「パネリストよりも俺の方が偉い」という顔をしてしゃべっているような、見るに耐えないようなものもございます。それから、何か余韻を残して無責任なコメントをする司会者もいます。
そういったものの中で文珍さんの司会は非常に節度をわきまえた、良い司会であるという気がいたします。そういう点で、この番組が長続きしているのであろうと思います。私は、最初、この番組に文珍さんが出てきたときには、この人に司会ができるのかな、と思っていました。しかし、文珍さんという人は、ここで名を上げなくても、ちゃんと名が固まっているからか、中立的に話をしているだけで、文珍さんという人の評価が上がると考えておられるような気もいたします。
それから最後に、出演を依頼したコメンテーターが「なぜ大阪で、この番組を制作しているのか」と言ったということに関してひとこと。
この番組には、ぜひとも頑張っていただきたいと思います。私は、国立循環器病センターの総長時代、大臣が代わられたら、いつでもあいさつに行っていたのですが、以前、厚生大臣の中の一人が「循環器病センターは、どこにあるのですか」と聞くので「大阪にあります」と答えたところ、「なぜ大阪にあるのですか」と言うのです。厚生大臣が、こういうことを言うのは、私は実にけしからんと思ったのですけれども、それと同じような感じで今のお話を聞いておりました。
どうぞ大阪、頑張ってください。

私も今回の戦争はすごく気になっていまして、ここのところ、いろいろな大会で全国を走りまわっていたのですけれども、戦争のことばかり気にしておりました。もちろん普段は、この『ウェークアップ!』も見ていますし、日曜日も類似した番組があり、NHKから始まって順番に全部見ているのですけれども、今回は外国などにも行っていましたので、見る暇がなく、送っていただいたビデオも見ることができませんでした。
きょう、VTRでこの番組を見まして「本当によく分かったわ」と、感じました。私は素人で、外からポッと見ているだけで、自分の意見はあまりなかったのです。けれども、勉強しないで、この3週間走り回っていても、このダイジェストを見ただけで今度の戦争のことがよく分かりました。
コメンテーターの方も偏っていることもあまりなく、冷静で分かりやすい言葉で話してくださっているから、私程度の頭の人でもよく分かっただろうと思います。
『ウェークアップ!』も文珍さんも大好きですので、必ず土曜日はちょっと眠たいですけれども、早めにテレビの前に座って、しっかり見ていますので、これからも頑張ってください。

私も、この番組を、ちょくちょく見るのですけれども、土曜日の朝の情報番組として、かなり優れているなと思っています。理由は二つ挙げられます。
一つは、番組としての枠組みが、固まっているなという感じがします。まずナレーションの入ったVTRやフリップなどを使った説明があって、問題提起というか、ある程度のアウトラインを見せて、それを受けて文珍さんが、各コメンテーターに振るという枠組みができているから、その問題について、あまり情報がない人間でもスッと入っていけるようにできています。
番組をつくる過程で一番ご苦労されるのは、多分ナレーションの部分というか、局側として問題の枠組みを、どう固めていくのかというところではないかと思います。見ていると非常にうまくまとめてあって、聞いていて興味を持って「なるほど、問題の所在はその辺なんだな」というのが分かりやすく提示されてあり、そこが優れているところだなと思います。
二つ目は、論争番組という側面もあるのですが、やはり朝ということもあってか、かなり落ち着いたムードといいますか、過熱しないような形で論争をしているというところです。その点は、司会の文珍さんのキャラクターというところもあると思います。今回の番組でも、ちょっと過熱しかかったところがあっても、司会者がコメントを出して、それをフッと弱めています。
この2点の理由で、優れた番組だと思いますし、さすがに長寿番組らしいなというふうに思います。

私も、この種のトーク型の報道番組の中では唯一と言っていいぐらい良質な番組だというふうに思います。皆さん方がおっしゃっているように、司会の文珍さんは、こういうテーマに精通しているとは、とても思えない人だけれども、そういう立場で極めてまともな司会をしています。他のこの種の番組だと、バトルトーク的に喧々囂々のケンカをさせて、それを見て楽しむ形になっています。話の中身よりも、怒ったり、カッカしたりする姿を見せるということを主にしたような番組が多く、あるいは司会者が人の言うことを遮って、「そういう話を、もうちょっと聞きたいな」と思うところを、押さえ込んでしまうことがしばしば、あるのですが、この番組はそうではありません。
それぞれのコメントをちゃんと、ご当人が言いたい部分は必要最小限のことを言わせている。得てして番組で一人が長くしゃべると「だれる」とかと言って、「1分以内でしゃべれ」と言われることが多いのですが、この番組は、ちゃんとまともに自分が言いたいことを一通りはしゃべらせる。そういうことがあって、落ち着いて見ていられるなという感じがしました。
それから、文珍さんのお人柄も、もちろんあると思いますが、私は局側の姿勢も反映していると思います。というのは、つまり司会者に、ああいう司会の仕方を是として「それでやってくれ」ということをきっと言っているのではないかと思うのです。プロデューサーによっては「もっとケンカさせてもらわなきゃ困る」と、こういうようなことを言いがちではないかと思うのですが、そうではなくて非常に素直な司会をさせているというのが、局の姿勢としても評価できると思いました。
ただ欲を言えば「もう少し知りたい」と、あるいは「知らせてもいいのではないかな」と思うような部分を掘り下げてもらえばよかったかなと思います。例えば、コメンテーターのどなたかが「狙いは石油ですよ」というようなことをあっさり言いました。何となくみんな「そうかな」と思っているのですが、別に、あそこをアメリカが押さえたからといって、イラクの石油がアメリカのものになるわけではないのですね。石油は国際マーケットに売ってこそはじめて商品になるわけで、別に、そういう問題ではないというようなことについて、もう一歩踏み込んでほしかったです。
一方、評価できるのは、フランスのパリの特派員が「フランスの立場は、平和志向だとか、そういうことじゃないんだよ」ということをきちっとおっしゃっていました。これは非常に的確なコメントだと思うし、もう少し、ああいった部分を掘り下げて説明してもらうと、「ああ、そうなのか」と、理解できると思うのですね。知らない人は、何かフランスが、あたかも平和主義の国みたいな誤解をしているように思えます。
ついこの間も、全世界の反対を押し切って核実験やったのはフランスではないですか。そういう国であるということを、きちっと説明する必要があると思うのです。そこまで、ここで求めるのは無理だろうとは思うのですが、そのように、もう少し掘り下げて言っていただいてもよかったかなという部分もありました。
それから、もう一つ、ちょっと気になったのは、冒頭に出てきたこれまでの動きをまとめたVTRで「武力行使か、平和解決かと、米英と仏独露などの国が対立した挙げ句、武力行使に入ってしまった」と、こういう説明だったけれども、別に平和解決ということを言っていたわけではないのです。査察の継続をするのか、あるいは、もう打ち切るかと、こういう選択だったので、あの説明のように「武力か平和か」という位置づけではなかったと思いますね。それが一つ。
それから最後のところでテロップに「米追従のほかに道なしか」と、出ていましたけれども、その言葉は私から見るとちょっとおかしい。追従とか、そういうことではないのですね。日米同盟、日米関係を重視していくのか、それとも機能しない国連に期待をかけるのかと、いう選択であって、「米追従のほかなしか」という、これは局側がつくったテロップですが、ちょっと的確ではなかったなと思いました。
ああいう表現は、自然に目に入ってしまうものですから、今後はそういうところにも、気を付けていただくと、もっと良い番組になると思います。

大阪発で、これだけの素晴らしい内容の番組ができるということは、我々としても大変誇りに思えることです。さきほども話していたのですけれども、こういう番組を番組審議会にかけられると、あまり文句の言いようがないので、「番組審議委員泣かせだな、もうちょっと出来の悪いのをかけてもらえると非常にありがたいな」と思っています。
内容については、皆さんがおっしゃったので加えて言うことはあまりないのですが、どうしてもコメントしろ、ということですので、より良い番組にするためには何を考えればいいのかということについて二、三申し上げたいと思います。
先ほど、東京の一元的な見方ではなくて複眼的な見方で、というお話がございましたけれども、これからは政治、経済、外交、安全保障というような問題について考えるためには、国際的に日本が、どれだけ説明能力を持つかというグローバルリテラシーといいますか、国際的な説明能力を、どう身に付けていくかが重要になってきます。それによって、日本人の主張なり日本人の行動というものが、問われてくるのではないかと思います。
従って、こういう番組でも、日本人のコメンテーターだけではなくて、もっと外国の方の、この番組ではチベットの方が一人いらっしゃいましたけれども、仏教国ではないキリスト教国なり、イスラム教国の人々のものの考え方はどうなのか、というふうな外国人の見方も加える必要があると思います。また、相手の考え方を聞くだけではなく、逆に日本人の主張が外国人の人に認めてもらえるのかどうかということも試されていると思いますので、日本人同士が納得し合うということだけではなく、外国人のものの考え方を学び、外国人の方に日本人の主張を、どう認めてもらい、納得してもらうかということが、これから問われてくると思います。
ですから、そういう外国人のコメンテーターの方を出演させるとか、あるいは、一つの問題について外国の研究所などの見方を紹介して、日本人が考えているような考え方ではなくて、もっと多様なものがあるよということも、番組に取り入れていったら、もっと良くなると思います。
それから、もう一つ加えてほしいのは、歴史的なものの見方です。宗教というと非常に平和主義だと思いますが、宗教ほど暴力的な歴史を繰り返してきたものはありません。それから、フランスもサラエボでは、国連決議を経ずに独断で攻撃をしているわけです。そういった意味で近代史においては、各国とも国益を主張して、そのために国連が機能しないという面も、あるのです。
それが良いか悪いかは別として、歴史的にいろいろものを見ていくと、その中で何が正しいか正しくないか、あるいは過去、どうであったかということを確認することで、これからどうすれば良いかということを判断する一つの反省点になってくるのではないかと思います。
また、先ほど委員がおっしゃったように、いろいろな点についてエビデンスといいますか、歴史的というだけではなしに客観的に見ての、根拠を示してほしいと思います。例えば、アメリカがイラクから輸入している石油の量は1.6%で非常に量が少ない、ということもありますし、イラクの石油の利権を持っているのは、ほとんどロシアであり、フランスであるという、エビデンス的なものも、番組のどこかで解説があったら、より幅広い面から判断できるのではないかなと思います。
それから、もう一つは、放送してしまってから2週間が経ち、今、VTRであの番組を見ると、解説の一部にちょっと矛盾を感じるような個所がありましたが、過去に放送したもので、解説者の話が、八っつぁんと熊さんの落語のやかんの解説ではないけれども、かなり取って付けたものだなと感じるものもあります。このような反省も、どこかでやってみる必要があるのではないでしょうか。これは別に放送する必要はないのですけれども、後になってみると、落語のように的外れな解説がかなりあるのではないかと思いますので、より客観的で、より良いコメントをしていくために、そういった反省を、本当は本人がしなければならないのでしょうが、制作側でもやっていただきたいと思います。
いずれにしても、あまり文句がつけられないので困っているのですが…以上です。

この番組を見て、私も大変勉強をさせていただきました。今、ある問題点を、それぞれの方が明確にお話をして下さったので、とても分かりやすかったと思います。今の状況の分析も、もちろん聞きたいのですけれども、先ほど話に出ましたが、もう一つは歴史的な流れを知りたいと思います。イラク戦争に関しては、話題になるのは湾岸戦争あたりから以後のことですが、もうちょっと溯って中東と、西洋、アメリカ、イギリスとの関係などを、じっくりと歴史を探って見てみたいなという気がしています。
それと、この番組に関していえば、ちゃんと最初から最後まで拝見したのは今度のビデオが初めてだったもので、雰囲気がよく分かっていないのかもしれませんけれども、ちょっと気になったのは、コメンテーターが発言しておられる最中に司会者が笑う、あるいは、その発言に対して笑って、うやむやにしてしまうところがあったことです。笑われるような発言をする方に問題があるのかもしれないけれども、見ていて決して良い感じはしませんでした。それなら違う人をパネリストに入れるとか、すべきだと思います。
何か笑いというのが、場をなごませるための笑いというよりも、ちょっと発言者をバカにしたようなように受け止められたので、それが気になりました。

ありがとうございました。私も委員の皆さんがおっしゃったことには、すべて同感でございますので付け加えることは何もなくなりました。制作担当者のお二人にちょっと申し上げたいのですけれども、この番組審議会では、かなりの辛口の意見が出るのが通常でございまして、きょうのように全員が賛辞だけをしているのは希有のことでございますので、そのことをちょっとお伝えしたいと思います。
ですから、私も感想しかございませんが、この番組概要に書いてあるだけでコメンテーターが20人以上おられるのですが、大阪でつくられている番組であるにもかかわらず、私が存じ上げている関西におられるコメンテーターは中西教授と大嶽教授ぐらいしか見当たらない、ほんの2、3人、1割ぐらいです。やはり結果として、こういうことになるのは、関西にいる人間として、ちょっと問題だなと思いました。
それから興味深い番組なので、眠い目をこすって見ているというお話がありましたが、時間帯は、土曜日の朝というのは非常にいい時間を結果としては選んでいらっしゃると思うのです。日曜日ですとNHKの日曜討論がありますし、終わるとすぐ田原総一朗の出ている番組があって、あれを見る人も多いので、これはいい時間帯だと思うのですが、8時からというのを、もうちょっと遅い時間に出来ないでしょうか。これは人それぞれの生活習慣というか、生活パターンがあるので、全く個人的なことですけれども、何も予定がなくて家にいることのできる週末だと、朝はのんびりしたいと思うのです。もうちょっと、1時間ぐらい遅くして、午前9時ぐらいから始まるか、あるいは夜にでも再放送をしていただくと、もっと見る機会が増えるのではないかと思います。これは個人的な勝手なことなので、あまり気にしていただかなくて結構ですが…。

(社側)イラク戦争の取材は、もちろん日本テレビが主体になって行っているのですが、読売テレビも特派員を派遣するなどサポートしています。報道局長から、この戦争の取材体制などについて報告いたします。

(社側)イラク戦争の体制ですが、我々はNNN、日本ニュースネットワークという系列を持っておりまして、その枠の中で取材を進めています。YTVも参加をしておりますが、3月7日の査察報告を期しまして、いわゆる取材の方も臨戦体制に入りました。バグダッドからは3月20日の攻撃開始の前、査察団等が退避する際に相前後して外に出ました。
バグダッドには契約をいたしましたフリーのジャーナリスト二人を残して、生中継をするとともに、日本テレビのパリ特派員の女性記者が、米軍に従軍して取材するという形をとりました。
読売テレビからはロンドン支局の女性特派員とパリ支局のカメラマンの二人が現地に行っております。現地といいますのは、バグダッドが陥落しましたので、従軍記者も昨日バグダッドへ入りましたから、今後はカタール、ヨルダン、それから戦後処理の問題でバグダッドに次々と入って行くことになろうかと思います。取材団の総勢は大体20人前後の規模です。
記者の安全を最優先しようということが一つの方針でもございますし、情報が偏らないように、出来る限りの取材をして放送しようということを基本方針にしています。ただ、開戦から陥落までの間バグダッドには記者はおりませんで、フリーランサーの方だけを残したことについては、「戦争取材とは何か」ということに関しての論議、つまり記者が現場にいなくていいのかという論議を、我々内部で続けております。

<視聴者センター部報告>
(社側)視聴者センターからの報告です。3月に寄せられました視聴者の声は総数で5,798件です。特徴としては、やはりイラク戦争が起きまして、戦争に関するご意見や、番組作りに対する苦情が合わせて、180件あり、前の月よりも増えております。
また、プロ野球ですが、昨年も同じ時期に開幕して178件の苦情、ご意見があったのですが、今年は、4分の1以下に減りました。これは視聴者センターとしては喜んで良いかと思いますけれども、プロ野球に対する関心が低くなっている反映かなと懸念もしております。

(社側)次に、スケジュールの確認をさせていただきます。次回は5月9日の金曜日、午前11時から「クラブ関西」での開催を予定しております。大変お忙しいとは存じますが、よろしくお願いします。
本日の審議会は今年度の年度末ということになります。委員の皆さまに、お礼とお願いをさせていただきます。

(社側)きょうは平成14年度の締めの審議会でありまして、その審議で非常なお褒めの言葉いただきましてありがとうございます。これを支えにして、さらに良い番組をつくっていきたいと思っております。
皆さま方の毎回の熱心なご討議で、14年度も無事に良い放送をすることができ感謝いたしております。視聴率の方も7年連続の年度三冠王を達成することができ、私どもも喜んでおります。これもひとえに審議会の委員の皆さまのお陰と思っております。ありがとうございます。
読売テレビ番組審議会の委員の任期は1年でありますけれども、新年度も引き続き、皆さまにお引き受けをお願いしたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。
新年度は難しい年になりそうです。特に私どものテレビ業界は12月から地上波のデジタル放送という未知の領域に進んでまいります。また、テレビをめぐる世間の目も依然厳しいものがあります。こういう時代でありますので、一層、委員の皆さま方のご意見、ご指導を支えにして私たちは自らを律し、良い放送ができるように心掛けていきたいと思っています。
  • 平成14年度読売テレビ番組審議会委員
  • 委員長    熊谷信昭   兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
  • 副委員長    馬淵かの子   兵庫県水泳連盟   顧問   元オリンピック日本代表
  • 副委員長    川島康生   国立循環器病研究センター   名誉総長
  • 委員    秋山喜久   関西電力株式会社  顧問
  • 委員    金剛育子   能楽「金剛流」宗家夫人
  • 委員    林  千代   脚本家
  • 委員    阪口祐康   弁護士
  • 委員    佐古和枝   関西外国語大学教授
  • 委員    北前雅人   大阪ガス株式会社   代表取締役副社長執行役員
  • 委員    谷  高志   読売新聞大阪本社   専務取締役編集担当