第439回 番組審議会議事録
1.開催年月日 |
平成15年2月14日 | |
2.開催場所 | 読売テレビ本社 | |
3.委員の出席 | 委員総数 | 10名 |
出席委員数 | 9名 | |
出席委員の氏名 | 熊谷信昭、金剛育子、林 千代、馬淵かの子、野村明雄、 阪口祐康、佐古和枝、老川祥一、川島康生 |
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欠席委員の氏名 | 秋山喜久 | |
会社側出席者 | 土井共成 (代表取締役会長) 以下13名 | |
4.審議の概要 | テーマ及び視聴合評対象番組 | |
視聴合評番組 | 報道番組「関西!警察激録24時!歳末大捜査スペシャル!! ~カメラが撮った決定的瞬間~」 | |
放送日時 | 12月28日(土)午後4時10分~6時00分 放送 | |
放送エリア | 関西ローカル | |
番組審議会では、報道番組「関西!警察激録24時!歳末大捜査スペシャル!!~カメラが撮った決定的瞬間~」について意見を交換した。 委員からは「なかなか表に現れない一線の警察官の苦労がよく描かれていた」「安全や治安は現在、関心の高いテーマだ。それが如何に保たれているかがよく分かる番組だった」「警察は民主主義の国において基本的なインフラだ。その実態を伝えるのはマスメディアの重要な役割だ。この番組はその役割を果たしている」など、市民生活と密着した部分で活動する警察官の姿を、的確な映像によって伝えていることが評価された。 一方、「表面に出ている事実の裏に、実際には大きな悪が潜んでいる。その深い部分への言及が無かったのが残念だった」「番組で紹介されたエピソードの一部には、やや興味本意的なものもあった。もっと、テーマを絞るべきではなかったか」など、さらに質の高い番組にするための工夫を求める意見も出された。 この後、昨年12月と1月に寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。 |
【議事録】
●(社側)本日ご審議いただきますのは「関西!警察激録24時!~歳末大捜査スペシャル!!~カメラが撮った決定的瞬間!~」です。この番組は昨年の年末特別番組としまして、12月28日午後4時10分から1時間50分の枠、関西ローカルで放送いたしました。関西の四つの府県警の最前線で活動している警察官の姿を追ったもので、日ごろニュースの取材で事件や事故の現場に飛び出していく報道局の記者やディレクターが取材いたしました。
まず、制作に当たりました報道局のチーフプロデューサーから番組の内容やねらいにつきまして説明いたします。
●(社側)お手元の資料にございますように、この番組は、報道番組としてはちょっと異色のスタイルとなっておりますが、編成部から、新しいタイプの番組づくりに挑戦してみないかという話がありまして制作したものです。日常の取材活動、報道活動を通じて得たものを違うフィールドで、違うアプローチで表現してみたいと考え、報道部全体でも議論して、新しいタイプの番組にチャレンジをしようということで、この番組づくりに取り組みました。
地域のテレビ局が、地域の人たちに向け、地域に根ざしたものをつくりたいという思いで取り組みました。見終わった後に、良い読後感のようなものを感じてもらえるようなものを目指して制作しました。
<VTR視聴>
●(社側)この番組の視聴率は11.1%、占拠率は26.8%でした。同じ時間帯に放送された他局の娯楽番組を上回り、横並びではトップでした。それではご審議をよろしくお願いいたします。
●警察は、民主主義国家というか、自由主義国家の基本的なインフラの一つであって、それがどういう活動をしているのか、良いところも悪いところも含めて、そのあり方を見ていくことは、マスメディアにとって重要な課題であることは間違いがないことだと思います。
そういう意味で、この番組は、警察に利用されないという限度の中で、現場に中心を置いて警察の活動を伝えており、重要な意義があるだろうと私は思います。
ただ、きょう紹介されたVTRで取り上げられた三つのエピソードのうち二つ、和歌山のカレーのものと池田小学校のものは、他局の番組に、こういう取り上げ方はなかったと思います。しかし、1時間50分の番組全体を見たときに、そのほかの部分には、今までの警察密着型の番組と同じような取り上げ方をしているものが、かなりあったように思いました。
せっかく報道局の方が中心となって制作しているのですから、バラエティーに富むのではなくて、一つ、二つ、三つぐらいに、もっと絞り込んで番組を構成した方が、報道局がつくったという特色がもっと出たのではないかと思います。そこが、ちょっと残念な点でした。
●頑張っても、なかなか個人名では表に出てこない人たちの、大変な苦労というのを見させていただきました。それから、報道局の制作ということで、現場をよくご存じの方にしかつくれない内容だな、と思いました。
確かにそこに感動もありましたし、ほかの局の似たような番組とは違うということでしたけれども、私は、このタイトルを見ただけでこういった番組は見ないですね。特に最近、テロとか、拉致とかで、ギスギスしたニュースばかり流れていて、テレビをつけるのも何か気が重いような状態が続いているので、目をそらしてはいけないのかもしれないですけれども、さらにまた、こういう犯罪現場の大変な場面を、あえて見ようとは思わない心境になっているのです。
でも、視聴率は高かったということですから、多くの皆さんが見ておられるのだろうし、感動は確かにありました。しかし、見た後、すごく重いものもくっついてきたな、というのが正直な感想でした。
●連日のように、残酷な事件ですとか、いろいろな事件や事故が報道される中で、こういった警察の活動の現場ですとか、救急医療の現場とかに密着した番組が、最近、割と多いのではないかなと思います。
この番組は、和歌山のカレー事件のエピソードのように、住民につくそうとする巡りさんの姿を、角度を違えて取り上げていて、そういう意味では、今までのほかの番組には、あまりなかったような切り口でとらえられたかな、とは思ったのです。
しかし、送っていただいたビデオが2時間近くもあり、長いのでなかなか全部拝見しきれない。ちょっと長すぎて、全部見たいとは思わなかったのです。そういう意味で、いろいろなケースが取り上げられていて、ちょっと間のびした感じがありました。
それよりは、むしろ一つか二つの事件をいろいろな角度から、掘り下げていただいた方が、より深みがあったのではないかな、と感じました。年末のこういう時間帯ですので、長い時間枠にされたのかなと思いますが、ちょっとこういう長い時間は見づらいのではないか、というふうに感じました。
●私は比較的素直に見ることができました。先ほどお話があったように大変長くて、全部見通すのには苦労がいりましたけれども、悪い印象はなかったです。
事実の重みといいますか、余計な脚色をしないで事実を淡々と伝えるだけで、感動があったり、いろいろな思いを見る人に与えるということが大事だと思うのです。また、意外に人は知らないと思うのですけれども、警察官の苦労というものがよく分かったのではないかと思います。
それから、取材をするのに、なかなかご苦労が多かったのではないかと思うのです。つまり、この種の発生ものというのは、あらかじめ予見できませんから、ずっと待機していて、事件や事故があったときに、きちっと対応をするということなのだろうと思うので、ご苦労だったなと思います。
ただ、欲を言えば、というか物足りない感じがしたのは、せっかくこういう事実を紹介するのであれば、もう少しバックデータといいますか、問題の所在、現状はこうなっている、あるいはなぜこうなっているのか、というようなことをコメントの部分で、解説してほしかったと思います。番組では、コメンテーターの方の単なる感想に終わっているので、そうした情報をフリップを使うなどして、示していただければもっとよかったのではないかと思います。
例えば、ピンクチラシを張る男を捕まえる事例では、あんなに苦労をして、しかも警察の目を逃れて、電話ボックスにベタベタとチラシを張って何で儲かるのか?あれが商売になるのはどうしてなのか?と、普通の人は疑問に思うのです。実は、ああいうものから、いわゆるぼったくりとか、場合によっては殺人にまでつながってしまう。そういう危険が潜んでいる仕組みの中で、一番表に出ている部分があそこだと思うのです。
映像としては、ただ電話ボックスにチラシを張ることが違法だから捕まえるのだ、としか表現できませんし、それ以上は無理だと思うのですが、そういう背景の部分をコメントのところで言っていただくと「ああ、そうなのか」ということが分かってくるのではないかと思います。
それから、一番最後の方に出てくる高速道路の事故多発地点、「88.3ポイント」の問題に関しても、あそこが極めて危険なカーブであるということは、よく分かるのですが、それではあそこを改善する方法はないのか。国土交通省とか、そういうところと何か相談しているのか、していないのか、そういうことも説明があると、より深みが出たと思います。
番組で、「あそこのカーブは危険だよ」ということだけで終わってしまうと、何かちょっと物足りないなという感じがするのです。せっかく報道局がおつくりになったのであれば、そういった事実関係といいますか、見ている人にとって参考になる情報を盛り込んで、「ああ、そうなんだな」と納得できるような内容になっていれば、もっとよかった思うわけです。
そこがないと、下手をすると迫真の場面だけを売り物にした番組と似たようなものになってしまいます。これは報道局の制作だというお話ですが、見ている人からすれば、報道局の制作なのか、何局の制作なのか、そんなことは関係ないのです。ただ、のぞき見的な番組になってしまうものも決して少なくないので、良質なものをつくっていくのであれば、やはりさっき申し上げたようなことも含めて表現すれば、さらにいい番組になったのではないかなという印象を受けました。
●いわゆる警察ものというのは、同工異曲のものが多いのですけれども、この番組は本当に異色で高く評価したい。高い視聴率も、偶然ではないと思います。
よかった点は大きく二つあると思います。一つは、いま、市民生活の安心、安全は、視聴者の大きな関心事であるわけです。それを支えている警察について取り上げているという、テーマの良さがあると思うのです。先ほど委員の方からご指摘のあったように、映像で伝えにくい内容ですから、ご苦労があったと思いますけれども、時間をかけて正攻法で取り組んでいる点が良いと思います。
同時に、番組の中で社会の治安とか、あるいは市民生活の安心、安全が、どのような努力で支えられているかということが個別の事例一つ一つで、よく分かったと思うのです。
それからもう一つは、そのテーマに対する取り上げ方です。権力に対するメディアのチェックというのは、理解できるのですが、この番組の良さは、治安を支えるという地道な活動をポジティブに伝えている点だと思います。もしも、警察、いわゆる権力に対するネガティブなメディアのチェックというスタンスでこれを取り上げたら誰も見ないですね。先ほど委員がおっしゃったように、現場の地道な警察活動、下積みの警察官の人々の警察活動に対して光が当たっていると思います。
警察官の仕事の実態は、大変厳しいわけです。処遇もそんなによくないし、警察官であるということで、ものすごく厳しい規律が求められ、精神主義が、まだ大変強いわけです。そういった中で、社会の治安とか、市民生活の安心、安全を支えるのは何か、ということが非常に分かりやすく伝えられていました。
読売新聞が「治安再生」という特集を最近組んでいましたが、あの記事の内容に対して、現場の警察官は「ええことを言うてくれた」「よう書いてくれた」と、みんなそう思っているのです。この番組に対してもそうだと思います。
先ほどお話にありましたが、強いて欲を言えば、この番組で主張すべき点というのをもうちょっと鮮明に出してほしかったです。それは、警察が市民の生活に非常に近いところにあるのだ、ということです。そういうことを画面で示すと同時に、例えばコメントとか、そういうものでストレートに、おっしゃっていただいたらよかったと思うのです。
そうしたメッセージによって、市民の協力が得られ、結局犯罪の発生を抑制することになるし、 同時に検挙率の向上につながるのではないかと思うのです。ですから「この番組は、そういうことを願っているんですよ」ということを、ナレーションなどで、もっとスパッと主張されたらよかったのではないかと、若干欲を言えばというところですが、そのように感じました。
●私は、この番組概要を書いた資料を見たときに、この番組のねらいは一体何かなと、思いました。決定的瞬間を興味本位に見る番組かなと思っていたのですけれども、実際に番組を見てみると、確かに、決定的瞬間もあるのですけれども、ちょっと詰め込み過ぎかなと思うほど様々な要素が含まれていました。
例えば、人間ドラマというのを描くときに、見ている側の共感を呼ぶような決定的瞬間をポンととらえている部分がある一方で、ちょっと間のびするような部分もあり、気持ちのバランスが取れなくて、ちょっと疲れるかなという感じがしました。この番組のなかで、毒入りカレー事件の丸山さんや池田小学校事件の北本さんのエピソード、それからミナミの交番の紹介などは、地域住民に密着しながら、安心できる生活を送ってもらうために、警察の人たちがこういう努力をされているということが、よく分かって感動的だったと思うのです。
反面、指名手配犯を追う姿とか、捜査一課の場合は、警察官の言葉や態度を見ると、悪いことをしたら、こんなに怖い目に合うのかと思い、柄が悪いというのか、警察の非常に怖いという部分が出ていたように感じました。ちょっと余談になりますけど、私自身、車を運転していて何も悪いことしていなくても、後ろにパトカーが来るとすごく緊張するのですね。免許証を持っているか、シートベルトをしているかとかが気になり、早く離れてほしいなと思うのです。
そういう警察に対する怖さはあるのですけれども、ある意味では、これは脅しであり、何も悪いことをしない市民にとれば、頼もしい味方であるという部分です。丸山さん、北本さん、ミナミの交番、何でもないような争いの中で仲裁に入るという場面もあって非常によかったと思うのです。
この番組では、悪に強いという部分と、普通の市民に対しては頼もしい味方であるという部分が非常にバランスよく描かれていて、特に何度も申し上げていますように、地域住民に密着しているお巡りさんの姿がよく描けていたと思うのです。
凶悪犯が増えているために、国が、警察官を増やすという話もあります。この番組を見た人が「自分もそういうような警察官になってみたい」と思ってくれれば、番組をつくった意図も生かされるのではないかと思います。
ひとつ希望を言うと、男のお巡りさんだけではなく、婦人警官も描いてほしかったなと思います。要は、この番組では、警察の権威ではなくて、それぞれの警察官が市民を守るために頑張っている姿が描かれており、共感を持ち感動もしました。
●これまで何本かのビデオを見させていただいておりますけれども、この番組は、後でコメントをしなければならないことを忘れて見させていただいた初めてのビデオでございました。それだけ迫力があったのだろうと思います。
先ほど委員がおっしゃいましたように、確かに二つのものがこの中に入っていました。題名のごとく、「決定的瞬間」という部門と、それから2人の警察官のフォローをしたストーリー、これはやはり2部作ではないかなというような気がいたしました。
決定的瞬間を撮影したものの方が、取材などに随分ご苦労されたのではないかと思うのですけれども、その決定的瞬間をもって「警察激録24時」というのは、およそ考えられないなと思うのです。その決定的な場面の部分でも、それなりの感動があってしかるべきなのですが、実は、あまり感動できませんでした。
それは何も読売テレビが悪いのではなくて、あの警察官の言葉の汚さに原因があるのです。いまだに警察官というのは、こんな言葉を使うのかなと思って驚きました。これは機会があれば、注文をつけていただいて良いのではないかと思いますが、あれでは市民の味方といわれても信頼されないのではないでしょうか。
何かの間違いで、ああいう言葉をかけられたら、警察に対する信頼というのは一挙に失われると思うので、あれは何とかしてもらいたいなという気がいたしました。それがなければ、おそらくもっと感動して見られたのではないかと思います。
決定的瞬間ということのために、それを言われるのかもしれませんが、「何時何分逮捕」というのが何遍か出てくるのです。あれは一体何かな?どんな意味があるのかな?と感じました。警察にとっては意味があるのかもしれませんけれども、視聴者にとっては、およそ意味のないことだと思いました。
それから、地域に密着した2人のお巡りさんの話は、それなりに良いお話であって、こういう形で警察官をフォローしていただくのは、良い番組であろうと思います。しかし、その二つのストーリーに何かタイトルをつけて番組にしたとしても、プログラムだけ見て誰も見ないかもしれませんから、やはり視聴者に見てもらうための、それなりの工夫がいるのではなかろうかな、という気がいたします。
それと、毒入りカレー事件の林真須美被告を逮捕した刑事が、事件現場近くの交番の警察官として、住民のフォローをしておられるというのは、良いお話なのですけれども、もう少し説明がなければ警察の組織を知らない人にはどういう意味なのか、まるで分からないのではないでしょうか。あの刑事が、交番勤務に転進したいという考えに至ったいきさつなど、もう少し説明があれば、もっと視聴者の皆さんも、話の内容に溶け込めたのではないかという気がいたしました。
池田小学校事件で事件直後に駆け付け、小学生をかたぐるまして勇気付けた警察官のお話は、これはもう素直に、みんなの共感を呼んだものと思います。とりわけ、あの小学校は私の卒業した小学校でもありますので、余計に嬉しい気持ちで見させていただきました。
●先ほど、警察官の言葉づかいの話が出ましたが、私は、柄の悪い連中を相手にするから柄が悪くなるのであろうと理解しているのです。例えば、ピンクチラシの摘発のときとか、黒バイ隊のときでしたか、犯人を逮捕するときは命がけでやっているから、そのような時には優しい言葉を使うと臨場感が出てこないと思いました。優しいときは優しくしてくださっているのだから、まあいいかなと思いました。
いずれにしても、見終わったときに「警察って大変ですね」「ああ、お巡りさんも苦労してはるわ」という感じがしまして、これはもうちょっと人数を増やしてあげたらいいのにな、と思いました。私の自宅の近くに交番があるのですが、何かのときに電話をかけても、前を通っても警察官がいないことが多いのです。デスクは一つあるのですが、お巡りさんが座っていることがほとんどないので、何でいつもあそこに一人座ってないのかなと、思うことがあるのです。
ミナミだとか、三宮の派出所であれば、大勢の警察官が座っていらっしゃるのですが、空いている交番を結構目にしますので、やはり人数が足りないのではないかなと思います。
でも悪質な警察官が変なことを起こすと、例えば交通取り締まりがやりにくくなるなど、現場でまじめにやっている警察官が随分迷惑すると警察の方が嘆いていました。警察も一生懸命に調べて、不祥事が起こらないように対応するのだけれど、時々変な人が出てきて変なことをすると非常に仕事がしにくくなるということをよく聞きます。
私はどちらかといえば警察官は好きなのです。番組にあった池田小学校の事件の時のお巡りさんのように悲惨な事件の直後に、脅えている子どもに優しいお巡りさんが警察官の帽子を被せてくれたりして勇気付けてくれると、この4人の子どもたちは、きっと警察官に愛情を持ってくれるのではないかと思います。そうしたことが積み重なって、我も我もと警察官を目指す良い人が出てきて、こういう事故や事件のときにきちんと対応できる、教養高い、質の高いお巡りさんが増えてほしいと思います。
取材も大変だったと思います。痴漢の逮捕の瞬間などは、どのようにして写したのでしょうね。大きなカメラだと具合が悪いでしょうし、そういう苦労があったことを、番組を見ながら感じました。
●私は、かねがね義務教育の先生とお役人と巡査さん、この三つの職業に従事する人々がちゃんとしておれば、その国は一応大丈夫だと思っているのです。逆に、義務教育の先生方とお役人と巡査さんがおかしくなってきたら、その国は危ないと思っていまして、そうならないようにするためには、そういう仕事に携わる人たちが誇りと自覚を持って仕事ができるような環境が必要だと考えています。いま、委員の方々がおっしゃったように、そういう仕事に憧れや意義を感じて、そういう仕事に就こうと思う人が大勢出てくるような、そういう社会でないといけないと思うのです。
この番組は現場の巡査さんたちのご苦労を、ドラマでなくて、実録で記録して放送をされたという意味で大変意義もあるし、内容も面白いというと何ですが、興味深く拝見いたしました。警察官が犯人を逮捕する瞬間のモノの言い方、言葉ですが、改めて画面で見たり聞いたりしますと、やはり「これは相当えげつないな」という気がするのです。
私などはいいのですが、一般の方がこれをご覧になって、巡査さんというのは、あんなにひどいモノの言い方や態度を取るものなのかと、巡査さんに対するネガティブな印象や効果を一般視聴者に与えなかっただろうかということが若干心配なのです。特にいま、名古屋の刑務所で囚人が暴行を受けて問題になっておりますが、そういう中で巡査さんの、あのモノの言い方は一般視聴者にどういう印象を与えたかということに興味があるのです。
これは質問でございますけれども、視聴者からの声で、それについての反応はございませんでしたか。
●(社側)この番組の放送時には無かったのですが、『ニューススクランブル』で、この番組と同じ映像を使ってピンクチラシの摘発の瞬間を放送した時に、視聴者から「あの言葉遣いは何とかならないか」という意見が寄せられました。
●ありがとうございました。全体として、私は大変興味深く拝見しましたし、良い番組だったと思うのですが、制作された側として、各委員の意見をお聞きになって何か、反論、釈明、その他ございますか。
●(社側)言葉づかいの点ですが、現場の警察官は、普段光の当たらない仕事に当たっている地道な人たちですので、報道の取材が来ているということで、若干張り切り過ぎたきらいがあったようです。最初に申しましたように、警察官の行き過ぎをチェックするのも我々の使命ですので、そういうことも含めて、やはり現場で行われていることは、ありのままに出していきたいという思いがありました。
スタジオのトーク部分で、データとか、背景とか、そういう情報が少なく深みに欠けたのではないかというご指摘ですが、まさにおっしゃるとおりで、私たちもその部分をきっちりと伝えて、犯罪の背景を含めて表現したかったのです。しかし、110分という枠の中で、そこまで至りませんでした。
というのは、先ほど委員の方のお話がありましたけれども、決定的瞬間をとらえようとするこの種の番組では、どこまで取材が成功するか、最後の瞬間まで分からないのです。例えば痴漢摘発の取材も1カ月以上密着して取材しましたが、実際に痴漢が捕まらなければ、このパートは番組から外さざるを得ないのです。ピンクチラシも実際にチラシを張りに来て逮捕に至らなければ、このパートは成立しなくなります。
そういう厳しい状況の中で番組制作を進めたのですが、今回は結構良いシーンが撮れ、取材として成功していったのです。その結果、映像的に訴える力のある部分が増え、データや背景を説明するトークの部分がどうしても小さくなってしまいました。そこのところは私どもも残念に思っております。
<視聴者センター部報告>
●(社側)続きまして視聴者センターから12月と1月の分を報告させていただきます。
昨年12月ですが総数で5,144件と非常に件数が少ない月でした。多い月は8,000件から9,000件もあるのですが、昨年の12月は5,144件でした。
その前の月に比べて北朝鮮関係のご意見がかなり減ったということもあります。そのような中で『ザ・ワイド』でノーベル賞の授賞式に関連して、晩餐会の厨房に女性リポーターが入ったり、何を食べたかを詳しく報告したことに対して、「ノーベル賞本来の意味を忘れているんじゃないか」というご意見がありました。
それから、ちょっと変わったところで『おもいッきりテレビ』で司会のみのもんたさんがホワイトボードにアドリブで「百草頭」という言葉を書きまして「非常にいい言葉だから辞書で調べなさい」という意味のことを言ったのですが「辞書に載ってない」「どういうことだ」と問い合わせも含めまして、かなりのお電話がありました。
宗教的な言葉だそうで「森羅万象」という意味だそうですが大混乱しました。
続いて1月です。1月も総数で5,525件と、非常に少ない件数でした。その中では『あさリラ』という番組の中で、北海道の名産品を紹介しまして電話で受け付けるという企画を放送したのですが、電話が殺到しまして「電話がつながらない」という声や「間違い電話がかかってきて迷惑だ」といった苦情がありました。また、年末年始の番組につきましては「どのテレビ局もバラエティーが多過ぎる」「こういう時期だから、じっくりと2時間ドラマとか、映画とか、そういうものを放送してほしい」といった声もございました。
●委員の方で、きょう視聴させていただいた番組以外のテレビ番組全体について、これだけは言いたいというご不満等ございませんか。
私は一つだけありまして、読売さんとは限らないのですが、NHKも含めて、あらゆるテレビ局が「松井選手が、いよいよこの飛行機に乗ります」とか、「松井選手が降りてきました」とか、「松井選手が今からトレーニングで走ります」…。よくあれだけ事細かに報じるものだと思っているのですが、あれは面白いと思って、みんなが見ると思って放送をしていらっしゃるのでしょうか。
一体どういう意味があるのか、あれを見ると大体むかついてきて甚だ気分が悪いのです。しかし、松井選手には責任はないのですが、あれはどういうつもりなのだと思っております。
●(社側)最後にスケジュールですが、次回は3月14日、金曜日の午前11時から読売テレビ本社のこの場所で開催を予定しています。よろしくお願いします。本日はご審議ありがとうございました。
- 平成14年度読売テレビ番組審議会委員
- 委員長 熊谷信昭 兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
- 副委員長 馬淵かの子 兵庫県水泳連盟 顧問 元オリンピック日本代表
- 副委員長 川島康生 国立循環器病研究センター 名誉総長
- 委員 秋山喜久 関西電力株式会社 顧問
- 委員 金剛育子 能楽「金剛流」宗家夫人
- 委員 林 千代 脚本家
- 委員 阪口祐康 弁護士
- 委員 佐古和枝 関西外国語大学教授
- 委員 北前雅人 大阪ガス株式会社 代表取締役副社長執行役員
- 委員 谷 高志 読売新聞大阪本社 専務取締役編集担当