第438回 番組審議会議事録
1.開催年月日 |
平成14年12月6日 | |
2.開催場所 | 帝国ホテル大阪 | |
3.委員の出席 | 委員総数 | 10名 |
出席委員数 | 8名 | |
出席委員の氏名 | 熊谷信昭、秋山喜久、金剛育子、馬淵かの子、 野村明雄、阪口祐康、佐古和枝、川島康生 |
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欠席委員の氏名 | 林 千代、老川祥一 | |
会社側出席者 | 土井共成 (代表取締役会長) 以下13名 | |
4.審議の概要 | ||
番組審議会では、テレビをめぐる当面の問題について意見を交換した。 会社側からは、メディア規制の動きや、行き過ぎを押さえるためにメディアが自主的に行っている取り組みなどについて説明、続いて2003年に開局する予定の、地上波のデジタル放送の未来の姿を紹介した。 委員からは「世論調査によると、情報を得る最大のメディアはテレビだが、もっとも信頼されているメディアは新聞だ。社としての主張を打ち出したり、事件・事故に偏らずに、経済の面での出来事もしっかり伝えるなどして、国民に信頼される道を築いてほしい」と、信頼を得るための方向を示唆する意見が出された。 また、デジタル化に関しては「産業育成の考え方は理解できるが、一般視聴者にとっていったいどのようなメリットがあるのか、説明不足だ」という声が上がった一方「時計などは、依然としてアナログ表示の人気が高いが、デジタルかアナログかというのは、個人の感性とは別に考えなければならないのではないか」「デジタル化によって様々な機器とのネットワークが可能になる。テレビ画面を使った電話など、将来は必ず国民の利益になる」など、デジタル化の方向に向かうのは時代の流れだとする意見が相次いだ。 この後、11月に寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。 |
【議事録】
●(社側)まず1年を締めくくるにあたりまして、泉巖夫社長から一言皆さまにお礼のごあいさつをさせていただきたいと思います。
●(社側)本年も熊谷委員長をはじめ、委員の皆さまには大変お世話になりまして、ありがとうございました。いつも貴重で適正なご意見をいただきまして、お陰さまで私どもの放送もフェアウエーを外すことなく、いい番組を提供することができました。その結果、視聴者の支持を得ることができまして、今年も、関西地区での年間視聴率、三冠王も、ほぼ確実になってきました。決まれば7年連続となります。本当にありがたいことだと思っております。
一方で、メディアに対する世間の目は依然厳しいものがあります。集団的過熱取材とか、青少年に対する影響などに対する指摘でありますが、5月には、この番組審議会でも「メディア規制3法」に対するご意見をまとめていただきまして本当にありがとうございました。そのご意見にのっとりまして、私どもも自主的な努力を重ねて、世間で指摘を受けるような取材や放送をしないように、さらに心がけていきたいと思っております。
それから来年の12月には地上波のデジタル放送が始まりまして、委員の皆さまには、そのデジタル放送についての審議もお願いいたしております。非常にお忙しいところ恐縮でございますが、またひとつよろしくお願いいたします。来年も、いい番組を提供していきたいと思いますので、さらにご指導を賜りますように、よろしくお願いいたします。
(社側)それでは審議を始めさせていただきたいと思いますが、12月の審議会では特定の番組に限ってご意見を伺うのではなくて、放送をめぐるさまざまな動きに対して皆さまの率直なお考えをお聞きしたいと考えております。
今、泉社長から話がありましたように、今年はメディアを規制する可能性があるといわれる法案に揺れた1年でもあったと同時に、来年から始まる地上波のデジタル化への準備が本格的に動き出した年でもありました。そこで本日の審議会は、まず久保哲郎審査室長から「放送活動をめぐるこの1年の動き」を説明させていただき、それに対して皆さまのご意見を聞いた後、丸山和男常務取締役から「デジタル化でテレビはどのように変わるのか」といったような説明をさせていただき、それに対しても皆さまのご意見をお聞かせ願おうと考えております。
それでは、まず久保室長から説明をさせていただきます。
●(社側)この1年を振り返りますと、まずはメディア規制法案を挙げなければいけません。11月以降になって動きが出てきましたので、最近の動向を簡単に説明させていただきます。
法案の一つ、「人権擁護法案」は11月初めになって審議が始まりました。そして修正提案も一部出されました。しかし、時を同じくして、名古屋刑務所の刑務官による受刑者への暴行事件が表面化しました。受刑者が人権救済を申し立てる事態になったのですが、いうまでもなく刑務所は法務省の管轄です。もともと大きな争点になっていたのですけれども、この事件で、法案の中にあるように、人権委員会が法務省の外局になっていることに対しての疑問が、改めて表面化しました。言ってみれば、人権を侵害し得る役所が人権を保護できるわけがないという声が高まったのです。
その結果、審議は1週間でストップし、そのままの状態になっているのが実情でございます。
それから、もう一つ「個人情報保護法案」ですが、一昨日、委員会で初めて審議され、きょう基本原則を削除するとか、行政機関の個人情報悪用に罰則を設けるなどの内容を盛り込んだ修正案が、おそらくちょうど今ごろだと思うのですけれども、国会で野党側に説明されているはずです。しかし政府は、これまでの案については、一旦廃案として、きょう説明している修正案をもとに、新たに法案をつくり直して来年提出するという方針を固めているようです。マスコミをはじめ市民団体など幅広い層の反対で、取りあえずこうした結果になったと思います。
ただ、来年になりますと、政府は司法制度改革に伴う報道規制、この話も加えまして、さらにメディアへの攻勢をかけてくると伝えられています。目が離せないところだと思います。
それから、こうした法案の動きに関連しまして、この1年、私たちにとって大きな課題となっていましたのは、ご存じのようにメディアスクラム批判への対応が挙げられます。テレビでは、主に新聞と協力して報道被害が生じないように、出来る限りの工夫をしてきました。取材を進める上での約束事、協定を結んだり、自主規制したり、代表取材を取り入れたりというようなことをしてきました。最近では、皆さんがどうお感じになっているか分かりませんが、例えば、北朝鮮の拉致被害者の関係での新潟や福井からの報道を見ても、かなり自制して整然と取材を進めているな、ということが、画面からも伝わってきているように私自身は感じております。メディア側の努力といいますか、対応が成果を上げているのは事実だと思います。
ただ一方で、新しい問題も指摘されるようになってきました。一言で言えば直接取材できない、間接取材の弊害というものであります。顔の表情やニュアンスがよく分からない、人づてになるため間に入る人の考え方とか主観で、伝わってくる内容が変わってしまったりしているという問題が起きてきています。
情報の正確性といいますか、そういうことが新たな問題としてクローズアップされてきた1年だったということがいえると思います。
次に、番組面について、簡単に触れさせていただきます。お手元に主な出来事一覧をつけさせていただきました。これは私の感覚でピックアップしたものですが、報道系では、北朝鮮問題と経済問題が今も大きく扱われていますが、去年のような同時多発テロ事件とか、池田小学校の乱入殺傷事件のような衝撃的な事件の発生はありませんでした。
そうした中で、今年の特色をあえて挙げますならば、1月の雪印食品、あるいは6月の日本食品、そして7月に日本ハムと、食料品関係の不祥事が相次いだことです。小さいところでは、賞味期限切れの春巻きを販売したマダム・リー事件まで、食品業界のモラルといいますか、食の安全性が問われる事件が相次いだというふうにいえると思います。また、こうした事件が内部告発によって明るみに出たというのも特徴だったということがいえると思います。
最後にドラマやバラエティーなど制作関係です。日本テレビが制作した深夜番組の内容に問題があり、読売テレビの審査室から関西エリアでの放送中止を求めたものが今年、2件ありました。6月と11月に審査室から放送中止をお願いしまして、編成サイドが中止を決断しました。
また最近でも、一部スポーツ紙を騒がせましたが、やらせ騒動もございました。ただ読売テレビが直接制作に関係した番組につきましては、幸い大きな問題はありませんでした。
審査室の考査担当と、報道や制作の現場、編成との連携で、未然に問題の芽をつみ取ることができたものと考えております。
●いかがでしょうか、今年の、いろいろな問題について整理をしていただきましたが、ご感想、ご質問、ご意見はございませんか。
●放送の中止を申し入れたのは、どういう番組なのですか。
●(社側)日本テレビが制作しまして、2週間遅れで関西でも放送している『ガキの使いやあらへんで』という番組なのですけれど、6月と11月の2回、放送を見合わせました。11月の番組は、30分の番組中、マンションの部屋の中で、最初から最後までパイをぶつけ合っているだけという、何ともコメントのしようのない、番組でした。これについては名古屋の中京テレビも放送を中止しました。
●世論調査によると、新聞、テレビ、雑誌などを並べて、ニュースを得る機会が最も多いものは何かと調べると、テレビが第1にあげられていました。これはよく分かります。
次に、最も信頼するものは何かというと、新聞だという結論になっていました。テレビとしては、影響力の大きさと信頼性とのギャップを、出来るだけ埋めていかなければいけないと思うのです。それを埋めるためには、ひとつは顔が見えない現状を変える必要があるのではないでしょうか。
新聞だと「あっ、これは読売さんだな」「これは朝日さんだな」と、主張が分かります。イージス艦の件を見ても二つの新聞は相反する意見です。テレビはどこをひねっても同じような番組が多いという印象を受けます。
それから、これは毎日のニュースですが、項目をざっと数えてみると20ぐらいあるうちで、経済関連のものは四つぐらいしかありません。ということは2割、ほとんどを社会部的な、事件・事故を伝えるものが放送の中心になっているのではないか、と思うのです。
もちろん、多くの人が見たいのは社会現象的なことだと思うのですけれども、それだけではないと思います。いきなり朝7時からの番組で、社会事件的なものだけをワッとやられますが、我々サラリーマンには、もうちょっと経済的なこともやってもらいたいなという意識もあると思うのです。これからのメディアの中心は、テレビになっていくと思いますけれども、それが国民に信頼されないということは寂しいことだと思うのです。
信頼への道を一歩一歩築いていってもらう、そのためには何をすればいいのか、名案はないのですけれども、ひとつは、その社としての主張が見えてくることが大事だということと、社会的な事件だけではなくて、もうちょっと経済的なもの、あるいは文化的なものを中心に伝えていくことが大事なのではないかと思います。
NHKのような行き方がいいかどうかは分かりませんけれども、その辺のことに努力していくのか?「売れればいいよ」ということでいくのか?来年度の課題だと思います。
●新聞の方が信頼されているのですか。
●読んでいる記事についての信頼は、はるかに高いということです。何によってニュースを知るのかというと、ほとんどがテレビとなるのですがね。
社会的に起こっている事件、あるいはニュースを知る媒体は、ほとんどがテレビで、テレビを見て、「これは本当かな」と思ったら今度は新聞を読んで、嘘だったとか、本当だったとかを判断している、ということではないでしょうか。それでも、メディアの中心はだんだんテレビになってくると思います。
●(社側)それでは、次に「デジタル放送の時代」についてご説明します。
いよいよ2003年の12月から、地上波でもデジタル放送を開始します。当社も今月の18日に近畿総合通信局へ正式に免許の申請を提出するという運びになっております。そういう状況の中で「デジタル放送の現状と今後」について、特に番組内容を中心にご説明させていただきます。既にご存じのことも多々あるかとは思いますが、一応基本的なところから、おさらいの意味も含めましてご説明申し上げます。
お配りしました「地上デジタルの現状報告」という資料に基づいて説明をいたします。冒頭にございますように「IT社会に参加していく上での基盤として重要な位置づけである」ということで、国のIT戦略会議あるいはe-Japan計画といった将来の情報の整備の中で、この地上波デジタルが非常に大きな位置を占めています。そういうことがテレビのニュースや新聞の記事等で、「地上波デジタルは国策である」と表現することに、つながっていると思います。
デジタル化されると、今のアナログ放送と比べてどういうことが変わるのかということを次に説明します。まず基本的にはデジタル化することによりまして、非常に多くの情報を送ることができるということです。その結果、画面の質は、今のアナログのテレビに比べて、より高精細な画質が実現します。
また、複数の番組の放送が可能になります。これはオモテのチャンネルで一つの番組を放送するのと同時に、そのウラで別の番組を放送することができるのです。最大で三つの番組まで、同じ時間帯で放送することが可能になります。それに加えて、画質と同時に音質についてもCD並みの良質の音質が実現する他、「サラウンド音声」と資料に書きましたが、これは、いくつかのスピーカーを置けば、スタジアムなどの現場にいるのと同じような、非常に臨場感のある音声を楽しむことができるということでございます。
さらに、データ放送があります。これは、すでにBS、衛星放送でデジタル放送が始まっており、それをご覧になっていただければお分かりになると思いますが、本編の番組に連動しまして、いろいろなデータを送ることができるのです。天気予報やニュースなどで、本編を補うような情報を付加することができます。さらに携帯電話あるいは自動車の中のモニターに、携帯向け放送として、放送を送ることもできるようになります。
EPGと申しますのは、今は、新聞に番組の案内が出ておりますけれども、そういったものがスイッチを入れると、テレビの画面の中で見ることができるというサービスのことです。こうした幾つかの付加価値が、デジタル化することによりまして実現いたします。
次にスケジュールですが、12月18日に当社も含めて、東京・名古屋・大阪の各局が同時に、免許の申請をいたします。その結果、順調に行きますと、来年の4月ごろに予備免許の交付がありまして、その後、試験電波の発射などの準備を重ね、来年12月1日から本放送を開始するという予定で進んでおります。
今回、総務省がデジタルの免許を認めるにあたって、我々放送局サイドに求めている条件は、1番目に「自ら行う地上アナログテレビジョン放送の大部分を含めて放送する」ことをあげています。これは、現在アナログで放送しているものの大部分を、デジタルでも放送しなさいということです。
2番目に「高精細度テレビジョン放送を含む放送を行う」こと、とされています。これはHDTVといわれる高画質のものを中心に、番組の編成をしなさいということです。
また、1日の放送の時間中、3分の2以上の時間で、現在我々がアナログで放送している番組と同じものを、デジタルでも放送しなければなりませんし、デジタル放送の中心になります高精細度テレビジョン放送を、1週間の放送の時間中50%以上実施しなければならないとされています。免許を与えるにあたって、総務省の方針でこうした比率についても示されています。
お手元に「免許申請書」とある資料を、お配りしました。これが今月18日に提出する免許申請書の一部です。特に放送内容のところを、抜粋してお配りしましたが、「週間放送番組の編集に関する事項」という項目があります。これは、どういう放送をするのかを書いて、免許申請のときに添付するものですが、開局するのは来年の12月の段階ですので、今はまだ番組表が決まっておりません。
従いまして、申請の段階では現在放送している1週間の番組表を添付した形にいたしました。その中に、それぞれ番組ごとに「サイマル放送」「HD放送」「字幕放送」あるいは「解説放送」…といったただし書きを書き加えてあります。これは今の番組と全く同じ形ですので、結論的に申し上げますと、来年12月に放送を開始した時点では、現在のアナログ放送とHD放送は100%同じ内容で放送することになります。
ただし、デジタル放送の方は、データ放送を加味したり、場合によっては2チャンネルを使った放送も、状況を見ながら実施をしてまいりたいと思っています。レギュラー番組としては、取りあえず放送開始時点では、デジタルもアナログと全く同じ番組でスタートをしていきたいという内容で、免許を申請します。
●ありがとうございました。これはもう、こういう流れになっていますので、ご意見というよりは、むしろご質問が主になるかと思いますが、この機会に何でもどうぞ。
●あらゆる面で規制緩和ということが、やかましく言われて、許認可制についてもいろいろ議論されています。こういう「免許方針」というのを、監督官庁が出してくるというのは、それを守ることが国民に利益になるからということだと思うのですけれども、この「免許方針」が守られないことで、一体我々にどのような不利益がもたらされるのでしょうか。なぜ、このようなことを決めなければいけないのか、何か不都合があるから、こういう条件を出すのだと思いますけれども、よく分かりません。
●(社側)サイマル放送の比率についてガイドラインを示している理由の一つは、アナログからデジタルへ移っていくのですけれども、当面はアナログもデジタルも同じ内容のものを放送する方が、視聴者のためにもいいであろうということではないかと思っています。また、HD、つまり高精細度の放送を要求している点については、デジタル放送の大きな特色となる部分ですから、これについては、「50%以上をやって下さいよ」というのは、国の考え方からすれば、当然そうなるだろうなという思いはしています。
そうした指導が、「視聴者の方々に、どういうメリットがあるのか」ということですが、我々の方からしますと、例えば、HDでの放送の比率のことで考えてみますと、「全く自由にやって下さい」ということになると、番組の制作費が従来のアナログに比べ何割かのアップになるわけですから、テレビ局側は、出来るだけ当面は少なくしていこうという思惑も当然出てくると思います。国としては、そうしたことを避け、出来るだけ早くデジタル放送を普及させていきたいということだと思います。
その結果、特色である高精細度放送を「最低でも50%やってください」という"指導"が出てきたのではないかと思います。見てくださる方々も、HDでの放送のパーセンテージが低くなりますと、デジタルの放送も、画質的にアナログ放送とほとんど変わらないということになってきますから、デジタル放送を国策として少しでも早く普及をさせていくという考え方からいきますと、出来るだけ早い段階でテレビ局としてはやってくださいという方針になると理解しております。
●さきほどのお話は、放送局をなぜ免許制にするかということだと思うのですけれども、これは限られた電波という公共材を使うので、国が管理をしなければならないと思います。さらに、地上波のテレビは社会的、経済的、思想的に非常に大きな影響を持つものなので、ある程度、その内容を規制していく必要があるのではないでしょうか。
そのことが、いいか悪いかは別といたしまして、今まではそうした考え方でやって来ています。公序良俗に反するような問題だとか、あるいは特定のプロパガンダをワッとやられたら困るのではないかという考えから、国が規制しようという方向です。一方で、「もっと自由にしよう」という考え方もあるかもしれませんが、今のところは、そういう建前でやってきているということが一つです。
それからデジタル化は、メリットがあるかないか、よく分からないのです。白黒がカラーになった時と違ってメリットが目に見えないのです。ただ何となく世界の流れとして、あるいは将来いろいろのことをやっていこうと思うと、デジタル化しておかないと駄目だということで、デジタル化の方向が打ち出されたのです。しかし、それについてのスケジュールがきちっと決まっていないのです。
メーカー側が安くていいものを早くつくってくれなければ困るとか、あるいは、放送局がデジタル化するためには2,000億とか、728億とか、いろいろ説があるのですけれども、膨大なお金がかかるということなので、ある程度スケジュールを立ててやっていこうということで、スケジュールなどを定めた法律はできているのですが、それには強制力はありません。
そういった中で受信者にしてみると、いきなりデジタル化されてしまうと、全部機械を買い替えなければいけないので、「それは困る」となります。それなら、ちょっと放送局側の負担にはなるけれども、サイマル放送と称して両方を一緒にやっておいて、なんとなく不自由がないようにしながら、どの辺でしっぽを切るかという議論はあるでしょうが、何年か後には全部デジタル化してしまおうという流れになっているのです。
それまでには、視聴者も徐々にテレビの機械を買い替えてくれるから、それほどの負担にならずに切り替えられるのではないかということで、今、歩きながら考えて、まずデジタルとアナログの両方を100%同じ内容にして、一緒に始めようとしているのです。
だから、今までのアナログのテレビしか持っていらっしゃらない方は、それで見ていただければいいし、ちゃんとデジタル放送が見られるテレビを持っていらっしゃる方は、そのテレビで見ていただこうということです。デジタルチューナーを内蔵しているテレビがだんだん増えてくると思いますので、いずれ、デジタルに買い替えていただければいいのです。
●(社側)問題は、どのくらいのスピードで買い替えていただけるかということだと思います。来年の12月にデジタルの放送を開始しますけれども、それを受信できる受像機が出てくるのは、それの数か月前という段階になるかと思います。値段の方は、BSのテレビが出たときと同じように当初は相当高い価格設定になると思います。おそらく30万円、40万円ということになりますから、視聴者の方々は、「今のテレビとは、これだけ違いますよ」という部分がないと、積極的に買い替えるということにはならないと思います。
ですから、「画面のきれいな高精細度のものを50%以上してくださいよ」とか、「データ放送についても、出来るだけ積極的に実施してください」というのは、現在の放送とは差別化できて、それを視聴者の買い替えの動機にしたい、ということだと思います。
●デジタルになると、何となくきれいだけれども、そんなにメリットがあるとは思えません。その辺が難しいところです。
ただ、デジタル化していくというのは電波の有効利用になりますし、いろいろなことが将来できるということは、確実に言えることなのです。メーカーが早く、便利で魅力のある受像機を安くつくれば、早く切り替わるのではないかという声がある一方、いや、放送を始めてくれればメーカーはつくるよという声もあり、いま、両方が様子を見ながらやっているというのが現状ではないでしょうか。
●産業政策というか、国としての方針、そういう立場での考え方は、よく分かるのですけれども、一般の視聴者にとってみると、なぜ、そういうことをいちいち事細かに決めて半ば強制のような格好の"指導"を受けなければならないのかが、分からないのです。この問題については、疑問を持っておられる方は多いと思うのです。
●切り替えの時点だけを考えますと、おっしゃるように、規制をするのはおかしいというふうにも考えられますけれども、やはりデジタル化をしますと、いろいろなことが技術的に可能になります。デジタルテレビになれば、多分テレビジョンの画面を使ったテレビ電話などは当然実現すると思います。いろいろなことが可能になるので、結局、視聴者の利益に将来必ずつながっていくという判断が一つあります。
それと電話も含めてそうなのですけれども、通信、放送というものは、とにかく、ほかとのつながりがあるので、昔から、電話が始まったり、放送が始まったりしたときから、標準化と規制というのは不可避なのです。
周波数の話が先程ございましたけれども、パワーにしても、やたらに大きなパワーを勝手に出されると、近隣の国まで届いてしまうし、小さ過ぎるとサービスエリアが狭くなってしまいます。やはり全体的に政府、国がコントロールしないと、無茶苦茶なことになっていく本来的な性格があると思うのです。
ですから、アナログからデジタルに変わるこういうタンジェントのときだけを考えますと、若干「何でそんなことまで」というような気もしますけれども、やむを得ないことではないかと思います。
●しかし、国が、その説明責任を十分果たしているとは、思えませんね。
●デジタルにしたら音もよくなる。画面もきれいになるというけれども、感覚とか感性とかまで個人々々で言いだすと、これまた話が別になってしまいます。音にしたってアナログの方が懐かしいという人がいるし、時計だってデジタル表示の時計というのは、そんなに使われていないですよね。いまだに長針短針のアナログ式の時計をほとんどの方が使っています。
このように、個人々々の好みをいうと、話は別なのですけれど、全体のことを見渡し、しかもネットワークを組んでいくのが、デジタルの本性だとすると、ますます標準化と規制は不可避ですね。
●テレビ局として、「デジタルになれば、こんなメリットがあるよ」という、デジタル化によるメリットを視聴者に、より分かってもらうという努力をするのですか。
●(社側)その部分が、非常に欠けていると思っています。先ほど、国の説明が不十分であるというお話しがありましたけれども、我々の方も、これからは、視聴者に対する説明責任が非常に重要になってくると思います。そのことが、デジタルへの買い替えにつながっていくと理解しておりますので、その点については我々も十分やっていきたいと、考えています。特に放送という強力なメディアを持っておるわけですから、そういった場を使いまして、やってまいりたいと思っております。
●放送局側にしたって当面は大金だけかかって、経営的にはほとんどマイナスになるのではないですか。読売テレビの場合、切り替えのための費用は、大ざっぱには幾らぐらいのものなのですか。
●(社側)設備投資だけで150億円ぐらいです。
●150億円ぐらい。あまり大したことではないですね。
●(社側)アナログ変更の費用は、国で手当をしていただけるということになりましたので、その分は我々の負担が軽くなりました。
●(社側)読売テレビの年間売り上げが670億円ぐらいですから、150億円の設備投資は売り上げの5分の1強に当たります。ローカル局ですと、年間に50億円とか70億円売り上げても、投資額が50億円ぐらいにのぼると、売り上げに相当する投資額となり、相当厳しいことになります。
●大きいところはいいのですけれど、小さいところは大変ですね。
●放送設備の更新費だけだと、その程度かもしれませんが、受ける側が受信機を全部替えるとなると、トータルすると経済的な効果は相当なものになると思いますね。
●受信機の買い替えの時期に限って買うというのであれば、あまり追加はないのですけれども、全部切り替えるとなると大きな経済効果が生まれます。
●それでは、視聴者の声の報告をお願いします。
●(社側)11月の視聴者対応件数は、総数で6,332件でした。この数字は、この1年で一番低い水準です。
内容的には、引き続き北朝鮮による拉致問題関連へのご意見が多数寄せられた以外は大きな問題はございませんでした。以下、資料にあるような意見・苦情が来ております。
最後に今年の特徴を申し上げますと、6月のワールドカップ、9月以降の北朝鮮による拉致問題への意見が非常に目立ちました。それから、食べ物に関する関心が非常に高く、飲食店あるいは企業に対して、調査してほしいとか、報道してほしいといった、要望も例年以上に多くありました。
それからプロ野球中継に対する苦情ですが、今年は平日の放送時間の延長が1時間と延びましたので、この件に関しての苦情が多く寄せられております。
●特になければ、この番組審議会として、一年の締めくくりをさせていただこうと思います。最後に土井会長お願いします。
●(社側)1年間にわたりまして、鋭いご意見を伺いまして本当にありがとうございました。先ほど、デジタル化のメリットを伝える努力が足りないというご指摘がありましたが、この13日に私も大阪駅の前に立ちまして、デジタル化のPRをやることになっておりますので、我々の努力のほどをご了解いただきたいと思います。
私も、技術のことになりますと頭がこんがらがるものですから、ここへ伺います前に、一体、テレビを買い替える人は、どうすればいいんだと、担当者に聞いてみました。つまり、すぐにデジタルチューナーを内蔵した受像機に買い替えた方がいいのか、あまりよく映らなくても、もうちょっと我慢してから買うべきなのか、「一体どうなんだ」と聞きましたところ、「新しいテレビをどんどん買えば良い」ということでした。2011年まではアナログ放送で見ることができますし、それまでにデジタルを見たければチューナーをつければよろしいということでした。
チューナーは幾らぐらいだと聞くと、今だと10万円ぐらいするのですが、将来は「大体2万円ぐらいになるかな」という話をしていました。いずれにしても、当分皆さま方へのサービスについては、ご心配かけなくていいようです。
我々も、出来るだけ皆さん方に広くサービスして、来年も引き続き業績を上げるように頑張りますので、いろいろご叱正のほどをいただきたいと思います。今年1年間、本当にありがとうございました。
- 平成14年度読売テレビ番組審議会委員
- 委員長 熊谷信昭 兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
- 副委員長 馬淵かの子 兵庫県水泳連盟 顧問 元オリンピック日本代表
- 副委員長 川島康生 国立循環器病研究センター 名誉総長
- 委員 秋山喜久 関西電力株式会社 顧問
- 委員 金剛育子 能楽「金剛流」宗家夫人
- 委員 林 千代 脚本家
- 委員 阪口祐康 弁護士
- 委員 佐古和枝 関西外国語大学教授
- 委員 北前雅人 大阪ガス株式会社 代表取締役副社長執行役員
- 委員 谷 高志 読売新聞大阪本社 専務取締役編集担当