第435回 番組審議会議事録

1.開催年月日
平成14年9月13日
2.開催場所 読売テレビ本社
3.委員の出席 委員総数 10名
出席委員数 8名
出席委員の氏名 熊谷信昭 、林 千代、馬淵かの子、野村明雄、
阪口祐康、佐古和枝、老川祥一、川島康生
欠席委員の氏名 秋山喜久、金剛育子
会社側出席者 土井共成 (代表取締役会長) 以下10名
4.審議の概要 テーマ及び視聴合評対象番組
視聴合評番組 24時間テレビ25『愛は地球を救う』
読売テレビ制作部分 「ハンディをパワーに変えて」
放送日時 8月18日(日) 午前8時50分~9時50分
放送エリア 関西ローカル
番組審議会では「24時間テレビ25~愛は地球を救う~」について意見を交換した。

委員からは「マスメディアは、一般企業より強く社会的な責任を求められている。この番組は、そのことに応えた意義深いものだ」「通常の番組は、一方通行で終わるが、この番組は募金という形で、見る側も参加することが出来る。そのような形で、社会還元が出来ることは素晴らしい」「障害を持った人たちを支えるボランティア活動に関する情報を伝えることで、さらに番組の意義を増すことが出来たのではないか」など、番組と社会との関わりについて、様々な意見が出された。

また、「出演していたタレントのテンションが非常に高く、ついていけなかった」「崇高な目的を掲げた番組にもかかわらず、ドタバタしたお笑いが目に付いた。もっとスマートな表現が出来ないものか」など、番組の目的と演出方法の間にやや乖離があると指摘する声が上がった。

この後、7月と8月に寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。

【議事録】
本日ご審議いただきますのは『24時間テレビ25 愛は地球を救う』です。恒例の24時間テレビも今年で25回目を迎えまして、今回の審議会では番組の内容とともに、チャリティー事業のあり方やイベントを含めて、さまざまなご意見を聞かせていただきたいと思っております。

(社側)事業展開と番組内容とに分けて、ご説明申し上げます。
まず、事業展開の側面ですが、『24時間テレビ 愛は地球を救う』の第1回目は1978年、昭和53年に行われました。この年は、テレビ誕生25周年で、同時に日本テレビ開局25年、我が社は開局20年に当たる年でした。そうした区切りの年に、テレビが日本の未来の幸せにつながるきっかけとなることを願って、福祉や援助というものの必要性を伝えようということで、全国の系列局29社、現在は31社になっておりますけれども、全国29社が共同制作をして、『24時間テレビ 愛は地球を救う』という番組を放送いたしました。
この初めての試みには、共感をしていただいた視聴者の方々から、約12億円という募金が寄せられました。この募金による福祉活動を実施するために、非営利の「24時間テレビチャリティー委員会」というものを組織しまして、現在に至っております。
募金については、その年によって多少の多い少ないはございますけれども、昨年までの24年間、募金総額が約209億5,000万円に達しております。現在、この24時間テレビキャンペーンは、共同主催の各社が、各地域で自主的に独立して行っております。
一方、番組の方は統一テーマを決めて、それに沿った内容を中心に放送してまいりました。今申し上げました第1回目の78年は「寝たきり老人にお風呂を」「身障者にリフト付きバスを、車いすを」という統一テーマに沿いまして、ドキュメンタリーでありますとか、ボランティア活動を紹介するといったような番組を放送しております。
視聴者の共鳴共感を得まして、第1回は24時間の平均が15.6%という、ちょっと予想もしなかった大反響を呼んだというのが実情でございます。番組の中身は、視聴者の方々に趣旨に対して共鳴共感していただくと同時に、エンターテインメント性も高めて、番組としても24時間楽しんでいただけるような内容に変わってきております。
きょうご審議いただきます番組のように、我々大阪の局も関西ローカル枠で独自に、毎回、障害を乗り越えて力強く生きていく人の姿、あるいは勇気、元気、愛の輪といったような内容の番組を制作して放送しております。
ちなみに今年は8月17日土曜日18時30分から18日日曜日20時54分まで、放送時間は実に1584分、24時間テレビと称しておりますけれども、実質は26時間24分間にわたって放送いたしまして、視聴率も、この26時間24分間の平均が14.8%、関東地区では15.4%という大変高視聴率を獲得いたしました。
特に関西地区のグランドフィナーレ、西村知美さんのマラソンのゴールシーン、これはちょうど時間にしますと20時52分ですけれども38.2%という瞬間最高の視聴率を記録しております。

(社側)今説明させていただきましたような全体的な枠組みの中で、読売テレビでは幾つかの番組を独自に制作しております。今年制作しました番組につきまして、説明いたします。
今年は、関西になじみが深く、親しみやすいキャラクターということで、なるみさん、アナウンサーの三浦隆志に加え、チャリティーを呼びかけるパーソナリティーとして佐藤江梨子さん、ほかのタレントさんに出演をしていただきました。
東京のメーン会場は武道館でしたが、こちらは読売テレビの近くのツイン21というビルの吹き抜けのギャラリーを特設会場としました。そこを中心に本社のスタジオ、中継基地として神戸、京都、奈良に募金基地を配して、生放送を続けながらチャリティーを呼びかけるという形で制作をしております。
ローカル部分では、チャリティーを呼びかける短いコーナーもあるのですが、大きな放送枠としては、日曜日に3つの枠を制作しております。きょう見ていただく枠は、日曜日の8時50分から9時50分までの1時間の番組枠です。
今年の番組全体のテーマが「家族で笑っていますか」というタイトルなのですが、この1時間に関しては「ハンディをパワーに変えて」というタイトルで、障害を持っていながらも、スポーツ等にチャレンジしている関西の人たちを中心に、VTR取材しています。ハンディを乗り越えて活動する姿と、それを支える家族の絆を紹介しております。
その他ローカル部分全体の説明を、簡単にさせていただきます。午後にはツイン21の会場から「家族の笑顔」をテーマに午前11時25分から約1時間放送しました。タレントのロザンナさん、坂東英二さん、久本朋子さんの家族に出演していただいて、家族の絆をクイズで考えるというコーナーなどを織り込んで制作しました。三つ目は、日曜日の夕方に「広がれ近畿の輪」と題して、関西各地でいろいろな募金活動に協力していただいている方の、前日と当日の活動などをVTRに収録し、約20分の放送枠で、その様子を紹介しました。
きょう見ていただく、「ハンディをパワーに変えて」は、三つのケースを取材しております。松本さんという視聴覚障害サッカーをやっておられる方、江田君という、車いす生活を続けながらスキューバダイビングにチャレンジする高校生、最後に同じく17歳ですが、藤永さんというダウン症の少年が家族と一緒にカヌーに挑戦するという物語です。それぞれが一生懸命に取り組んでいる姿と、それを支える家族を紹介しております。

<VTR視聴>
ご意見、ご感想等承りたいと思いますが、今視聴させていただいたのは24時間にわたる長時間テレビのテレビ放送の中のほんの一部でございますので、拝見した内容だけについてのご意見にとどまらず、この24時間テレビという番組そのものについてのご意見、あり方も含めて、ご自由にご意見を承りたいと思います。
私から質問を1、2させていただきたいのですが、番組制作については、スポンサーはついているのでしょうか。そしてコマーシャルは途中に入っているのでしょうか。

コマーシャルは流れていますし、スポンサーのある枠もあります。

そうですか。もう1点は、これはチャリティーイベント番組なので募金を呼びかけるわけですね。それは、どういう方法で呼びかけて、募金をする人はどういう方法で募金をするのでしょうか。

放送の中で、募金の方法についてお知らせする枠があるのです。番組では、海外のドキュメントとか、障害を持った方のドキュメントというものもありますが、募金の方法について24時間の中で15回ほどですが、お知らせをしています。
いくつかの方法がありまして、ひとつは直接会場に来る方法があります。関西ではツイン21、読売テレビ本社、京都、神戸、奈良などの募金基地の会場をご案内しています。その他、現金書留や郵便振替、銀行口座への振り込みなどについては、番組の中で、もっとも身近な方法をお選びいただけるようにご案内しています。

私は、非常に有意義な番組だと思いますし、ぜひ今後も続けていただきたいと思います。理由は2点あります。
第1点は、これはよく世間でも言われていることですが、企業の社会的な責任というのが、10年以上前ぐらいから強調されています。中でも、マスメディアは、通常の営利企業よりも公共性は強いし、しかも、こういうチャリティーということをやった場合のインパクトには強いものがあります。そのために、通常の営利企業よりも、社会貢献に力を入れることが強く求められており、それを果たすことがマスメディアの一つの責務だろうと思います。そういう意味で、この企画は、それを果たしている。特に各民放の中でも多分、御社を含めたNNN系列が、こうした取り組みの先駆けだったと思います。
2番目は、先ほどの番組を見ても、ハンディを持った方を通じて、その視点で見るというだけではなくて、それを通じて、健常者でも、生きるというか、挫折から立ち上がることの大切さ、また自分の生き方を反省させられるというか、そういう意味でも非常に意義のある番組だと思います。
その2点で私は、是が非でもこの番組は継続していただきたいし、もっと、そういう風潮を広めていただきたいというふうに思います。
ただ最後にちょっと苦言というか、ここは直してほしいな、という点を言わせていただきますと、24時間テレビ全体を通じて、押し付けがましいところが、ちょこちょこっと見られました。こういう番組なので、視聴者の方に訴えかけようという気持ちはよく分かりますし、それは必要なことだと思うのですが、気になる点が見受けられまして、なかなかバランスを取るのは難しいですけれども、そこの点をもうちょっと、押さえるというふうにしていただいたら、もっといいのではないかな、と思います。

テレビの影響力がすごく大きいということがあらためて分かりましたし、こういう形で社会に還元されるということは、いいことだと思います。ぜひ、継続してやっていただきたいと思います。
番組を通して、いろいろな情報をビジュアルで見せていただくことで、考えさせられることがたくさんありました。また、通常の番組だと一方通行で、何かしなければいけないなと思いながらも、「あ、そうなのか」と、そのままで終わってしまうのですけれども、この番組では視聴者も募金をすることによって、参加できるという窓口を設けており、そのことの意義は、とても大きいと思います。
ただ、時々感じたのは、ちょっとテンションが高すぎて、すっと入って行けないというか、ずっと見ていらっしゃる方はいいのかもしれないのですけれども、「あっ」と思う時があったのです。それに、もちろん24時間と長い番組なので、お笑いの要素も必要だとは思うのですが、これだけ格調高いタイトルつけて、素晴らしいことをやっていらっしゃるのに、ドタバタのお笑いが入るのには、何かそぐわないものを感じました。視聴者の好みからいうと、仕方がないのかもしれないのですけれども、1年に1日ぐらい、もう少し質のいいというか、ドタバタはちょっと押さえ気味にしてやっていただいてもいいのではないか、というふうに思いました。

まず一つは、番組全体として大変結構な番組だと思います。特にテレビの場合、娯楽の要素が日常、非常に強くて、辟易させられる面もあるのですが、この番組のように善意と言いますか、みんなで力を合わせて助け合おうということを、正面に出して、まともに取り組んでいる、こういう番組は非常に貴重だと思います。
それから、VTRで拝見した部分は、まさに障害者がいろいろな困難を乗り越えて、いこうということで、これは同じような障害を持っている人にとっても、大変勇気づけられる話だと思います。
というのは、私が東京にいた時に、地方の支局の若い一年生記者がトラックに追突されて頸椎を損傷し、全く身体が動かなくなってしまったことがあります。ただ、幸い頭には損傷を受けませんでした。本人は、頭はいいし、意識はしっかりしているのですけれども身体が全く動かない。新聞記者としては絶望的という大変な局面がありました。
社としては、この若い記者をずっと引き受けるということにしました。本人の希望は、記者職以外のことはやりたくないということですが、現実には取材できない。それをどういうふうにやっていくかということで、大変苦労した経験がありました。現実には、その若い記者は気を取り直して、編集局の記者職として明るくやっているという私自身の体験がありますので、同じようなことで絶望的な心境の人がたくさんいると思いますが、そういう人たちも、こういう番組を見て「自分でもできるんだ」ということが実感できると思います。
ただ、こういうテーマは「初めから感動すべき」というとおかしいけれども、感動に値することが約束づけられている番組ですから、そういう意味では「いい番組だな」というのは、当たり前だろうと思うのです。
若干、テクニカルな面も含めて要望を言えば、一つは、ボランティアについてです。この番組は障害者と家族という位置づけになっているけれども、同時に、どのケースもボランティアの方の支援が支えているわけですね。それで、あのボランティアの人たちは、一体どういう人たちなのだろうかという疑問を持ったり、番組を見ていて自分も手伝ってあげたいという気持ちになる人がいっぱいいると思うのです。そういう人に、どうすればお手伝いができるのかとか、仕事を別に持っている中で、どういうふうに時間をやりくりして、こういう手伝いをしているのか、ということも、知りたいと感じる方が多いのではないかと思います。そういう意味で、ボランティアについての情報提供を、もう少しやってもいいのではないか、という感じがしました。
それから、もう一つは、今、お話があったことと同じことなのですが、スタジオの中でタレントが、いろいろ感想を述べ合っている。それはそれでいいのですが、ちょっと声が聞き取れなくて何を言っているのか分からない、グジャグジャグジャッと笑ったりというような部分もある。こうした内容の番組に、ああいうタレントの人たちが壇上に並んで何かベチャクチャしゃべり合うというようなことが、なければいけないのでしょうか。
障害者の方の様子を紹介したビデオを放送するだけではなく、ああいうものを挟むことで息抜きとか、場面転換をする、ということだとは思うのですが、トークショーではないのですから、もうちょっとスマートなやり方があってもいいのではないのか、という感じがします。
それから、冒頭の目の不自由な人のサッカーの紹介で、「ボールに入れた鈴の音が聞こえるでしょうか」と、出演者が言うのですが、聞こえるわけがないのです。なぜなら、その部分に効果音が入っているのです。音楽か、ナレーションが入っていて、ほとんど聞こえません。
あの部分に、変な音を入れる必要は全くないのではないかと思います。番組を盛り上げるために、よくニュースでも、ドカンとか、いろいろな音響を入れますが、それと同じような手法を使っている。それがかえって妨げになっている、という感じを受けました。

私は、この24時間テレビの番組のうち、西村知美さんが走っている後半のところをちょっと見たのですけれども、先ほど、どなたかがおっしゃったとおりテンションがすごく高くて、もう叫んでいるような状態でした。「あれっ!何やっているの!」という感じで、ちょっと入り込めなくて「こらあかんわ」と言ってテレビのスイッチを切りました。
そういうわけで、ほとんどこの番組を見てないのですけれども、24時間テレビがあるということは知っていましたし、少しは興味持って、朝もちょっと見たりしていました。しかし、やはりスタジオが盛り上がり過ぎているように感じました。番組を本格的に始める前から、予告がたくさんありましたものね。「今から始まります。始まります」と、そういう「入れ込み」がすごくあったので、「こんなテンションだったらついていけないわ」と、まず思いまして、その時もテレビを切ってしまったのです。
2、3日前に、「ハンディをパワーに変えて」の部分をVTRで見たところ「あっ、こういう部分もあったんだ」ということを再認識しました。非常に楽しく見せていただきました。
特に、下半身がマヒした少年がドボンと海に飛び込む部分は印象に残りました。私も、あのスポーツ(スキンダイビング)をしておりますので、「ああ、そうか、こういう人でも、このスポーツができるんだなあ」と、思いました。私自身は健常者ですから、あまり不自由なくやっているのですけれども、誰かに助けてもらえると、身体に障害がある人でも、私が感じているような海中の素晴らしさを体験できるのですね。これは、素晴らしいことだと、「いいなあ」ということを、まず感じました。
紹介された3つのエピソードの中では、海に潜ったあの少年の姿に、感動しました。また、介助犬も出てきましたが、それが救いとなってこの番組を楽しく見ることが出来ましたので、一番の助演者は犬かな、などと思いました。全部は付き合いきれないですけれど、来年は興味を持って、「24時間テレビ」を、見たいなと思っています。
また先ほど、莫大なお金が集まったということをお聞きしまして、実は、驚きました。認識がなかったことを反省しながら、今後とも、こういうことがありましたらしっかり見たいなと思っております。

「24時間テレビ」で、あれだけ膨大なお金が集まるということをお聞きしまして、日本の視聴者も捨てたものではない、ということを感じました。それと、テレビの力の大きさに、改めて驚きました。
そのことと大いに関係があるのですが、先ほどから皆さんがおっしゃっていますエンターテインメント性というのを、どこまで出すのかということですが、私はこのように考えています。あのドタバタには私も「とてもついて行けない」という気はいたしますけれども、しかし、そういうドタバタを好んで見られる方が、これだけの募金を寄せておられるのだということを考えますと、やはり視聴率を上げることを前提にしなければ、これだけ大きな規模の募金を集めることは、できないのではないかと思います。制作側は、そのバランスをいろいろお考えになってやっておられると思いますが、そのことの難しさというのを感じました。
それから、先ほど見せていただいた部分につきましては、スポーツを切り口にしていたわけですが、身体障害者ですからスポーツができるということは、確かに非常に大きなトピックスになると思うのです。しかし、その人たちにとって本当に大事なことは、いかにして生計を立てるかということであろうと思います。職業の問題だと思うのです。
番組では、職業をどうするかということについての努力は、描かれていませんでした。このような主旨の番組があれば、それこそドタバタでは描くことができない、そうしたことを訴えることのほうが大事なのではないか、という気が少しいたしました。
また、日本人は、根には家族というものを大事にする気持ちを持った国民ですから、家族のサポートというのを前面に打ち出されると、みんなホロッとします。これはもう当然なことでありますけれども、先ほどもお話がありましたボランティアの存在が、ちょっと消されてしまっているのが寂しいな、と感じました。
それと一番大切なのは、これは政府も障害者雇用ということで、いろいろ努力しておりますけれども、本当に日本の社会全体が、こういった人たちをサポートするということになりますと、先ほど話しました、職業に就けるかどうか、ということが非常に大きな問題ですから、その点の努力というのを、また違ったときにテーマにしていただければいいのではないかと思います。
最後に、ダウン症の少年が紹介された部分について感想を述べさせていただきます。ダウン症は、私の専門の心臓疾患に大いに関係のある領域です。ある種の複雑な心臓奇形が、ダウン症の患者によく起こるのです。そして、ある種の疾患につきましては、その疾患の半分ぐらいはダウン症であるというぐらい、ダウン症と関係のあることがございます。
手術も難しいものですから、私たちが学生のころの教科書、これは英語で書かれた教科書ですけれども、“These children should be killed.” と書いてあるのです。今から考えるとちょっと信じられないことですけれども、つまり、手術をしてもいい結果を得られる手術もできないし、大きくなっていっても社会に受け入れられないので、そういう子どもたちは治療しないというのが、一つの方針のようになっていました。
ここ20年、30年ぐらい前でも、日本のある非常に有名な施設で「手術をしない」という方針をとっていたところもあるのです。それが近年になって、手術の成績がよくなったこともありますし、ダウン症そのものに対する理解が深まったということもあって、随分変わってまいりました。ダウン症のこどもが、こういうふうにして取り上げられているのを見ますと、非常にインプレッシブ(印象的)でありました。世の中、変わったなという気がいたしました。それは医学が進んだということだけではなく、障害者に対する、周囲の目が変わってきたのだなあ、という気がいたしまして、何とも言えぬ感情を抱きました。

「24時間テレビ」が四半世紀続いてきたということの意義は大きいと思います。また、先ほどお聞きしたところによりますと、210億円近い寄付金が寄せられ、リフト付きバスとか、電動車いす、などが多数寄贈されたそうです。現実に関係者から聞いてみたところ、こうした機材は、借りようと思ってもなかなか借りられないということで、その意味からすれば、これはすごいことだと思うのです。
24時間テレビのメインテーマは、「愛は地球を救う」で、毎年メインテーマに沿ったいろいろなテーマがあるようです。けれども、先ほどお話がありましたが、ちょっと押し付けがましいものを感じて、最初から抵抗がありました。やはり、こういう主旨の番組は、押し付けではないものであってほしいと思うのです。
この番組を、時々見ていて、私自身が感動したところは、局側がつくった構成の中では予測もしない、不意の出来事が起こったときなのです。例えば、何もしゃべらなかった子が、突然「アッ」と声をあげたときとか、それからラストのマラソンもそうだと思うのです。予測もしないドラマがあったときに、すごく感動するのですが、先ほど見せていただいたドキュメンタリーに関していえば、「あっそうか」というだけで済んでしまったような気がするのです。
もう一つは、スポーツだけで障害を持った人たちの生き方を問うというやり方は、ちょっと違うのではないかと思うのです。スポーツすることをドキュメントとして描くことが、そのまま前向きな生き方を表現することにはならないと思います。
支える人たち、あるいは介助犬、盲導犬などの側面を描く方が、もっと感動的なものが生まれてくるのではないかと思いますし、この番組では、それが置き去りにされていたような気持ちを、私自身は受けました。
ただ、1年に1回のお祭りみたいな形の中から、一般視聴者、特に普段はそういうものを考えない若い人たちが、この番組を見ることによって、1年間この日のためにお金をためて持って来るとか、福祉、ボランティアというものについて考えるという意味で、こうしたことを実施する意義は非常に深いものがあります。それがテレビの役割のひとつですし、タレントさんの影響力を利用した24時間テレビの意義であるのではないかと思います。
もしかしたら間違っているかも分かりませんけれども、「24時間テレビ」が始まった頃に、ドラマで高齢化社会を描いたものがありました。今まさに、そういう時代になっていると思うのですけれども、そのドラマでは、北海道のあるおばあさんが、日本一の長寿になったということで町を挙げて「よし、長寿の町として売り出そう」と、間違った形のボランティアをするというものでした。
きんさん、ぎんさんの場合のように、高齢者をとりあげて大騒ぎしているのを見ると、何年も前の初期のドラマが描いたものに、時代が変わっても訴えるものがあったように思います。福祉の問題を取り上げる番組を見て、支援、介護、そういうことを考えていまして、あの時代のドラマが今、ふっとよみがえってきました。その時代に比べると、今の「24時間テレビ」は、ちょっとお祭り騒ぎになっている部分があるのではないかと思ったというのが、私の感想です。

実は24時間テレビを、もちろん通しで見たことはないのです。おそらく24時間すべてをを見たのは、限られた方ではないかと思います。時間の推移によって、起承転結があって、いろいろな起伏があるのではないかと想像しておりますが、このたびVTRで番組を見て、24時間テレビというものに対する新しい評価といいますか、改めて素晴らしい番組だということを見直した次第です。
結果的に25回も数えているとか、209億円を超えるチャリティー募金が集まっているとか、すごいことだと思いますし、何よりも平均の視聴率が、この番組で14.1%ということをお聞きしまして驚いております。
制作された方はさぞかし大変だったろうなと、思っております。今回見せていただいた番組について言えば、読売テレビの三浦さんとか、なるみさんなど、出演者に非常にいいキャラクターの方々を選んでいたと思います。それから、ゲストタレントの方々も、あまり嫌味がなくてよかったです。みなさんがおっしゃいましたけれども、この長い番組の中には時々ハイテンションでまるで絶叫しているように話し、とてもついていけないというか、長く見ていられないというタレントも出演していましたが、この番組の場合は、そういうことをあまり思わずに拝見できました。親しみやすいと言いますか、明るいと言いますか、心豊かと言いますか、そういったいい方々を選んでいたと思いました。
それから、画像の間に入っていたナレーションですが、これもあまりでしゃばらずに、かといって控え目過ぎずに、適当だったのではないかと思います。映像を補って、頑張っている障害者を中心に、そのご家族の方々、母親や婚約者、場合によっては介助犬とか、ボランティアの方々、そういう人々の絆をうまく伝えていたのではないかと思います。
障害者の方々の社会参加がスポーツだけか、という疑問を私も持ちましたけれども、しかし、スポーツ競技に参加できるということは象徴的ですし、ポピュラーだと思います。限られた時間の中では、スポーツを通して描く手法は、まあまあいいのではないかと思いました。
いずれにいたしましても、番組全体として勇気、元気、愛と輪というのですか、「家族で笑っていますか」というテーマで伝えたことは、非常に適切だったと、そういうふうに感じました。

確かに209億円を超える募金が集まったというのは、なかなか世の中捨てたものではないな、という印象をもちましたが、一方、前回委員の中から指摘があったように、番組審議会でこういう優良番組といいますか、もともといい番組を見せてもらっても、批判的意見の出しようもありません。この番組審議会というのは、ある意味で現在、日本の社会にとってあまり習熟度が良くない評価の問題につながる性格のものがあると思うのです。
番組審議会の任務は評価だけではないと思いますけれども、評価というのは非常に大事な一つの任務だろうと思うのです。評価の中には事前評価、中間評価、事後評価とございますが、今の我々の場合は一種の事後評価に類するものだと思うのです。今後は、毎回というわけではないのですが、局側で「こういう意図をもって、こういう趣旨で、こういう意義があると思ってつくったのだが、意外に理解されなかったり、視聴者からも随分冷たくあしらわれたり、批判的な意見も多く出た。これは一体どう考えたらいいんだろう。どこが問題だったんだろうか」というような、いわば問題番組とか、視聴者の反応が、どうもよく理解できないというような番組も、意見交換の対象にしていただいたらどうだろうか、という気がいたしました。

<視聴者センター部報告>
(社側)続きまして視聴者センターから、7月と8月に寄せられた視聴者の声を報告します。
まず、7月の対応件数ですが、問い合わせが減ったということもありまして、6月より総数で900件少なくなっております。苦情、意見としては、プロ野球中継に対するものがまた増えてまいりました。特に放送時間が今年は最大1時間の延長ということもありまして「放送時間を延長した場合に、次の番組が一体いつから始まるのだ。もっと丁寧に知らせてほしい」という、ご意見が非常に多く寄せられました。一方で「放送時間の延長はやめてほしい」という声もありました。
また8月ですが、8月は7月に比べまして1000件増えているのですが、これは、8月3日に放送されました「スーパースペシャル・おもいっきりテレビ特別版!15年間に放送した健康法19000の中ですごい効果」という番組がありまして、これに約1000件の問い合わせと再放送の希望がありました。これは8月3日の土曜日の夜の放送だったのですが、月曜日は電話が鳴りっぱなしとなり、その週は大変なことになりました。これで総数がかなり増えています。
意見・苦情ですが、やはりプロ野球中継全般につきまして、8月は少しコマーシャルの入れるタイミングが悪い場面がありまして「試合のいい場面ではコマーシャルを入れないでほしい」「CMのタイミングが悪すぎる」という苦情が非常に多く寄せられました。また、阪神ファンからは「阪神の攻撃の時ばかり、なぜCMを入れるんだ」といった声もありました。
それから『ザ・ワイド』でアザラシの「タマちゃん」が非常に多く取り上げられたのですが、
「騒ぎ過ぎで、もっとほかに大事なニュースがあるんじゃないか」という声とか、「夜中にライトまで照らして撮影するのはやり過ぎだ」「そういうことより保護することを考えろ」と、こういったご意見もありました。
  • 平成14年度読売テレビ番組審議会委員
  • 委員長    熊谷信昭   兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
  • 副委員長    馬淵かの子   兵庫県水泳連盟   顧問   元オリンピック日本代表
  • 副委員長    川島康生   国立循環器病研究センター   名誉総長
  • 委員    秋山喜久   関西電力株式会社  顧問
  • 委員    金剛育子   能楽「金剛流」宗家夫人
  • 委員    林  千代   脚本家
  • 委員    阪口祐康   弁護士
  • 委員    佐古和枝   関西外国語大学教授
  • 委員    北前雅人   大阪ガス株式会社   代表取締役副社長執行役員
  • 委員    谷  高志   読売新聞大阪本社   専務取締役編集担当