第420回 番組審議会議事録
1.開催年月日 |
平成13年3月9日 | |
2.開催場所 | 読売テレビ 役員会議室 | |
3.委員の出席 | 委員総数 | 11名 |
出席委員数 | 6名 | |
出席委員の氏名 | 大島 靖、林 千代、馬淵かの子、阪口祐康、 佐古和枝、 小谷直道 |
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欠席委員の氏名 | 秋山喜久、熊谷信昭、金剛育子、野村明雄、尾前照雄 | |
会社側出席者 | 土井共成(代表取締役社長)以下11名 | |
4.審議の概要 | テーマ及び視聴合評対象番組 | |
視聴合評番組 | 「相方~芸人その世界~」 | |
放送日時 | 2月17日(土)16時55分~18時00分 放送 |
【議事録】
●面白い。今までこういうタイプの番組を見たことは、あまり記憶になく、面白い視点だなと、思いました。鶴瓶さんは聞き上手だと思うので、その人を中心にいろいろな話を聞く事が出来るというのは、すごく面白かったです。
●相方という切り口が、面白かったなと思いました。相手のことについてしゃべっていることが、そのまま鏡に映すように、ご本人の姿を映し出していたように思います。また、鶴瓶さんは私と同じ世代のせいか私が興味を持ったことを、代わりに質問してくれているような気がして、一層面白いトークに感じました。
● 落語というのは1人で、漫才というのは2人で笑いをつくるものですが、そこから出る笑いというのは、聞いている者に優越感を与えることから生まれるものですね。聞いている者は「何というバカなことをやっているのか」というような優越感から来る笑いですよね。そういうものが、コンビの2人の関係から、どういうふうに生まれるのかということを表現することを狙っているのかと、私は期待していたのですが、この番組ではそういうものは描かれていませんでした。
●芸人の、相方というところに視点を当てて描かれたということは、今までと違う切り口で面白かったと思うのですけれども、ちょっと描き切れてなかったかな、と思うのです。今回、この番組の中では昭和40年代の、いわゆる松竹芸能系が全盛だった時期、角座が、連日大入り満員だった時代の芸人さんが、今なお、色々な分野で活躍していらっしゃるというのを見て「タレント」ではなくて「芸人」といわれる人の、漫才や芸能には品格がある、という事をフッと感じました。
● 私がこどもの時代から、夢路いとし・こいしさんなどを身近で見ておりまして、この2人が子ども漫才というところから出発して、今日に至るまで一貫して家族全員が顔を赤らめないで見られる漫才を基本にやってこられて、第一線に残る事が出来ている。お互いの考え方が、2人のコンビの中で一致しているから出来た事だと思うのです。 いとし・こいしさんの場合には、どんな新人の漫才作家が書いた新作でも、必ずとりあげ、それを演じるという事を実行していますし、ご本人が番組の中で話していましたが、基本的には、その新作漫才を演じながら、実は自分たちのしゃべくり漫才を表現するという形で、やってこられました。今まで漫才をやってこられた長い歴史の中で、相方とどのように関わり合ってきたのか、その辺を、もう少し見せてほしかった、と感じました。
● 最近のこういう芸能番組というのは、ドタバタしていて馴染めないのですが、この番組は落ち着いて、ゆっくりとしたテンポで、じっくりと話が聞け、非常に面白かったです。 こうした芸談というのは、じっくり聞くと非常に面白い。というのは、聞いている方が、自分の人生に置き換えて聞いているからだ、と思うのですね。例えば、相方というような場合は、夫婦関係とか、自分の兄弟ではどうだろうか、という事を連想するのです。人生の真理というか、そういうものを探ろうというようなところが芸談の面白さだと思うのですね。「相方」というテーマも、そういう点ではいろいろ考えさせられるものがあると思うのです。
●読売テレビには演芸のVTRテープとか、そういうものがあると聞いておりますし「平成紅梅亭」などの番組でも、新作落語や古典落語を収録していると思うのですけれども、今回、この番組を見て「あっ、また財産が増えた」と思ったのです。例えば、何年か前の「お笑いネットワーク」など色々な映像について、放送以外にどこかで見せていただけるのですか。
●(社側)何本かは演芸資料館「ワッハ上方」に、ライブラリーとして提供しておりますけれども、全部ではありません。
●落語か漫才かどちらかと聞かれると、私は漫才が好きです。以前、落語家の桂米朝さんの本を読んで面白いなと思ったのは、漫才と落語と講談の違いについて、落語は話が三人称で語られるもので、これを極めていくと、話し手というのが消えてしまうのだ、と言うのです。それに対し、漫才は「俺、お前」の関係で一人称か二人称の世界です。自分の個性を前面に出していくのが、漫才の芸の中心にある、と書かれてありまして、「なるほどな」と思ったのです。私は、自分の個性、個を出していく漫才の方が面白いな、と今は思っています。
●企画の意図が「笑い」か「コンビ」かというような難しいことを言わなくても、とにかく面白ければ結構なことです。ここに説明書きを頂いたけれども、企画の内容とか、そういう説明は要らないのかも知れません。 ところで、坂上二郎という人の芸を見ていると、なるべくお客さんを笑わさないように努力しているような気がするのですよ。だけど、ほかのドタバタ漫才などは、笑わそうと思って努力しているのですけれど、坂上ほど面白くない。坂上は、もう何と言うか、笑わさないように、笑わさないようにと、努力しているような感じがするのですが面白い。 だけれど、どうして私は、坂上二郎の顔を見ると笑えてくるのでしょうか。別に滑稽な顔をしているわけではないのに…。笑いというものが起こるのは、やはり人と人との関係の中で「何かあいつバカなことをやっている」というような優越感から発生するものなのでしょうか。そのほかには、例えば、赤ちゃんが笑っている。それを見て「ああ、可愛いな」と思って自然にほお笑んでくるという、そういう笑いもありますね。坂上の場合は、そちらの方の笑いのような気がします。
●今は昔と違って、漫才などの笑いは、観客に優越感を与えるだけじゃなくて、新しい現代の流行とか風俗を切り口にして、聞く側の共感を誘う笑い「ああそうか、そういうこともあったのか」とか、「えぇ、そういう見方もあったのか」と感じさせる笑いが主流になっているように思うのです。 最近は漫才をする人も、大学を出ていたり、ちょっと教養というか、いろいろなものが身についてきていることもありまして、自分を卑下することでの笑いというのは少なくなってきています。洒落とか、勘違いや同じような話を並べていて、ポーンと落とすといったある種のテクニックで笑わせるパターンを台本の中に練り込んで、優越感を観客に感じさせることで笑いを誘うということは、今はあまりないように思います。
- 平成12年度読売テレビ番組審議会委員
- 委員長 熊谷信昭 兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
- 副委員長 馬淵かの子 兵庫県水泳連盟 顧問 元オリンピック日本代表
- 副委員長 川島康生 国立循環器病研究センター 名誉総長
- 委員 秋山喜久 関西電力株式会社 顧問
- 委員 金剛育子 能楽「金剛流」宗家夫人
- 委員 林 千代 脚本家
- 委員 阪口祐康 弁護士
- 委員 佐古和枝 関西外国語大学教授
- 委員 北前雅人 大阪ガス株式会社 代表取締役副社長執行役員
- 委員 谷 高志 読売新聞大阪本社 専務取締役編集担当