第418回 番組審議会議事録
1.開催年月日 |
平成12年12月8日 | |
2.開催場所 | 帝国ホテル大阪「水仙の間」 | |
3.委員の出席 | 委員総数 | 11名 |
出席委員数 | 9名 | |
出席委員の氏名 | 大島 靖、熊谷信昭、金剛育子、林 千代、馬淵かの子、 野村明雄、阪口祐康、佐古和枝、 小谷直道 |
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欠席委員の氏名 | 秋山喜久、尾前照雄 | |
会社側出席者 | 土井共成(代表取締役社長)以下10名 | |
4.審議の概要 | テーマ及び視聴合評対象番組 | |
視聴合評番組 | 放送界を取り巻く今年一年の情勢について |
【議事録】
●(社側)この1年の間に、私どもテレビ業界には「放送の青少年への影響」という問題について具体的にどう対応しているのか、という声が数多く寄せられまして、そういった世論を背景にして、公的規制を求める動きも出てまいりました。こうした中、民放連とNHKが協力して、今年の4月に「放送と青少年に関する委員会」というものを自主的に設置しました。青少年に関して視聴者と放送局の間に立つ第三者機関として既に機能しはじめておりまして、先月末にはバラエティー、2番組について、「青少年への配慮が欠けている」旨の厳しい見解を初めて出しました。
いずれも当社系列の番組ではありませんけれども、すべての放送事業者が共通の問題として、受け止めなければならない内容を含んでおり、私ども読売テレビとしても、今回の委員会見解には「他山の石」として真摯に対応しなければならないというふうに考えております。
これら青少年保護や人権擁護を名目として公的規制へのさまざまな動きが出てきております。これらによって表現・報道の自由が侵害され、また放送の自主自律の精神が脅かされはしないかと民放業界挙げて心配をしております。 青少年保護や健全育成、それに人権擁護には、メディアは常に最大限配慮していかなければならないことは当然でありますが、また同時に人々の知る権利に奉仕していくためには、ちょっと大袈裟さですが、ひいては民主主義が正しく機能していくためには表現・報道の自由が、これまた最大限に保障されていなければならないと改めて考える次第であります。こうしてマスメデイア、特にテレビの放送活動を取り巻く社会環境は非常に厳しくなってきておりますが、読売テレビとしては、ともかくも、これまで以上に自浄自律の努力を、より強めていく所存であります。
●公権力が規制していいのかという意見があるようですけども、公権力といっても国会で法律を制定する、ということになれば、それは国民が決めたということと同じではないか。
●新聞協会でも議論になっているのですが、今、人権保護の立場からマスコミ全体に対する批判が吹き出しています。確かに人権保護、その他自制しなければならない部分というのが、非常に多いのです。ただ、一部で言われているのは、いろいろメディアから批判されたりしたことに対する一種の報復のような形で吹き出しているようなところもありまして、もっと冷静に議論してほしいということを、私どもも言っているのです。つまり、きちんと自分たちで直せるところは直そうと言っている時に、何でもかんでも法規制の網をかぶせていくというのは、いかがなものかというわけです。その辺、かつてのように、単に知る権利の擁護というだけでなくて、直せるところは、とにかく直しましょうということで、それぞれが、自主規制の色々な機関をつくって、やっているのです。けれども、国会とか、弁護士会あるいは一般の消費者団体なども巻き込んで、批判の声が上がっており、ちょっとマスコミが孤立しているみたいになっているような側面もあるのです。
●ただ、出版物とか、ビデオとか、いかがわしいものがあるけれども、そういうものは規制するのもいいけれども、放っておいても自然淘汰される、という議論が一つありますね。しかし、これはなかなか分かりにくい議論で、多数の支持を受け難い。そうすると何らかの規制というか、排除が必要となる。それを今、公権力、要するに政府がやるというのでしょうが、しかし、むしろ放送界あるいは新聞界自体が、何らかのアクションを、具体的なアクションをとらないといけないのではないですか。すなわち、そういう審議会が単に議論しているだけではなしに、出来の悪いものがあれば排除していくというような、具体的なアクションがないと、なかなか説得することは難しいのではないでしょうか。
● 雑誌でも、新聞でも、放送でも、言論の自由とか、表現の自由とか、知る権利という、いわゆる憲法上の大義名分論と、現実に出てくる写真週刊誌とか、あるいは今回、この委員会で指摘された二つの番組の内容を見ていますと、ちょっと隔たりがあり過ぎる感じがします。というのは、この番組が悪いという声に対して、言論の自由、表現の自由、知る権利で対抗できるとは、私には思えないのです。従って、このままであれば、今議論されているように「公権力によってでも規制すべき」という意見とか、あるいはまた「Vチップは必要だ」というような、そういう意見が必ずマジョリティーになってくると思います。
私の意見も、先程のご意見と全く同じで、人権問題の「BRO」とか、あるいはこの「青少年と放送に関する委員会」がもっと活発に活動し、良い悪いというのを自主的に判断して、実績を積み重ねるしか方法がないのではないかと思います。放っておきますと公権力も含めて、規制する圧力がマジョリティーになると思います。ですから今回、11月に二つの番組が指摘されたこととか、それから四国でBRCが人権問題を指摘されたとか、そういうことは非常にいい活動だと思います。
● あまり有害なものは見たくないし、子どもに見せたくないと思います。子どもが、主体に見る番組はドタバタしているものが多く、それを見るな、というのは難しいことです。ですから安心して子どもに見せてあげられるテレビ番組を、子どもたちが起きている時間に放送していただきたいな、と思います。
●テレビが始まったころは、子どもが楽しむ番組がすごく多かったような気がするのです。ドラマにしろ、子どもを主人公にしたアニメにしろ…。それが最近、6時台はニュースに全部独占されていますし、7時台も…。そういう意味から言えば、幼稚園、小学生、中学生が見る番組、その人たちに見せる番組が全体的に少なくなったということだと思うのです。
● 何が悪い、何がいいというのは一概に言えないのではないですか。例えば、最近外国、スペインでしたかしら、で、ある家のお子さんが、ピカチュウと同じように空を飛びたいと、2階か3階のベランダから飛んだことで、アニメ番組「ポケットモンスター」の放送をやめてほしい、ということになったそうです。たまたま、そうした事故が起こったことによって、アニメを楽しみにしている子どもたちを、全部無視して放送をやめる、というようなことになったことを考えたときに、家庭の教育が問題になってくるように思います。放送の中で、飛んではいけないよ、と言ってそれを家庭教育でしっかり伝えれば、子どもたちは、そういうことはしたらいけないということを分かると思います。「飛んじゃいけないよ」と言って済むことだと思うのです。その辺の教育とか、また、大人を教育する番組も、かつて多くあった子ども番組の中にあったのではないかと思うのです。だから、この青少年の環境対策というのも、価値観や受けてきた教育、そういうものをすべて含んでいると思います。
●行政が声を出してこようとしたのは、テレビにそれだけ影響力が大きいということだと思うのですね。今の感覚だと「何でこれが」と思うようなものも以前は規制されていたし、ドラマや映画もそうだと思うのですね。「昔は、この程度でもう駄目だったのか」というのが、だんだん、刺激的になってきて、このままいったらどうなっちゃうのかな、という危惧は確かにあるような気がします。子どもたちがゲーム感覚で殺人を犯したということも、ゲームの影響かもしれないけれど、やはり全体として大人たちの責任というのはあると思います。子どもたちが、どのような人間に育つかは、それぞれの分野の大人たちに責任があると思うのです。だから、行政から指導される、というのではなくて、自主的にちゃんとやっていくというのが、良識ということだと思います。
●青少年の問題、あるいは過激なメディアの問題、放送の問題とかいうのは何かと言うと、要するに嫌悪を感じるものを果たして法律が規制すべきなのかという問題でして、法律理論からしたら「それは違う」いうことになります。嫌悪感が直ちに法律をもって規制すべきものではないのだということですが、しかしそれは、なかなか多数とはなり得ないのだろうと思います。そうだとすると、送り手のメディアの方が、ある程度、自律で規制していかざるを得ないと思います。
●先ほど出た意見の中で、我々が心しなければいけないのは、「よくこれで知る権利なんて言えるね」という番組があるのも事実であるということです。視聴率が高いということで視聴者の賛成を得ているというふうに誤解すると、間違えると思うのです。例えば、かつて野村沙知代さんがワイドショーにしょっちゅう出て、色々なバッシングを受けたことがありましたけれども、あのときに法務関係の者などが集まる会があって、話題になったのですが、野村沙知代さんが唯一法的に問題があるとすれば、学歴を選挙の公報に掲載した点のみである。壺を買って払わないとか、どういう兄弟がいるとかということは、ほとんどはプライバシーの問題です。メディアはプライバシーを侵害している、違反だという話が出たのです。ところが、各局のワイドショーの視聴率を見ますと、野村さんが出るところだけピュッピュッと上がるのです。だからチャカチャカ、チャカチャカ番組を切り替えてでも、野村沙知代さんが出る番組を視聴者は見ているということなのですね。これを誤解して、これだけの支持があるのだから、我々も放送しなくてはならない、とはならないのです。ここのところが、テレビ局としても考えなければならない点かな、と思うのです。
●基本的には自然淘汰が正論だと思います。保護するために規制するだけではなくて、ある程度、自然淘汰という形を入れざるを得ないだろうと考えています。ただ、果たしてそれがマジョリティーになる得るのか、ということになると難しい。現実問題としては、自主的なもので自律して評価を勝ち取るということになるのかなと思います。正論と現実問題とは、どうしても違ってこざるを得ないのかな、というのが私の印象です。
- 平成12年度読売テレビ番組審議会委員
- 委員長 熊谷信昭 兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
- 副委員長 馬淵かの子 兵庫県水泳連盟 顧問 元オリンピック日本代表
- 副委員長 川島康生 国立循環器病研究センター 名誉総長
- 委員 秋山喜久 関西電力株式会社 顧問
- 委員 金剛育子 能楽「金剛流」宗家夫人
- 委員 林 千代 脚本家
- 委員 阪口祐康 弁護士
- 委員 佐古和枝 関西外国語大学教授
- 委員 北前雅人 大阪ガス株式会社 代表取締役副社長執行役員
- 委員 谷 高志 読売新聞大阪本社 専務取締役編集担当