第415回 番組審議会議事録

1.開催年月日
平成12年9月8日
2.開催場所 読売テレビ 役員会議室
3.委員の出席 委員総数 11名
出席委員数 8名
出席委員の氏名 大島 靖、熊谷信昭、林 千代、野村明雄、
尾前照雄、阪口祐康、佐古和枝、小谷直道
欠席委員の氏名 秋山喜久、金剛育子、馬淵かの子
会社側出席者 土井共成(代表取締役社長)以下13名
4.審議の概要 テーマ及び視聴合評対象番組
視聴合評番組 連続ドラマ「リミット」
放送日時 7月3日~9月11日 毎週月曜 午後10時00分~10時54分

【議事録】
臓器移植というのは前向きにとらえないと、いろいろな問題があるわけです。このドラマは臓器移植を悪用した極めてネガティブな面を描いているわけで、非常に深刻な最悪の条件、こういうことが起こり得るということを示してもらったということは意味があると思います。しかし、こうして見ると、ちょっと刺激が強過ぎやしないかなという気がしました。それだけ迫力があると一方では思うんですけれどね。

原作そのものに、いろいろ無理があるような印象を持ちます。作り話的な面が多過ぎるような気がします。例えば、臓器移植のために子供をさらうにしても、日本のような警察の制度その他で非常に難しいところで子供をさらうより、もっと簡単に出来るところはいくらでもあるような気がします。あまり現実的でないように思います。

ドラマの書き手は「神の視点」でないといけない、とよく言われます。あの人の気持ちも、この人の気持ちも、犯人側もすべて書き分けていかないといけないと。その中に犯人側の良心、主人公側の良心が描かれ、そこに見ている側の視聴者が共感を得ることができるというわけです。今回このドラマを見たときに、犯人側には何の良心もないように思えました。もしも、犯人側に若い人たちの中の誰かが共感を持った場合には、やはりちょっと責任が問われる。そのように考えると、このドラマには、書き手の良心というものが全くないように思うのです。もう少し優しさ、良心という視点をどこかに持っていただければよかったのにと思います。

サスペンスドラマは見終わった後に、ドキドキしてああ面白かったという場合もありますが、後味の悪い思いをして見なければよかったという場合もあります。今回見せてもらったのは、ちょっと後味が悪いなという印象を持ちました。確かに臓器移植は臓器の売買という危険につながるという可能性があり、それを提示して警鐘を鳴らすという意図がおありだったのかもしれません。しかし、臓器移植というのは、先ほどもおっしゃられたように、すごくデリケートな問題を含んでおり実際にそれにかかわって苦しんでおられる方もたくさんいらっしゃるわけですよね。そういう人たちが、このドラマを一体どういう気持ちでご覧になっているのかな、ということも気になりました。社会性というか、臓器移植とか、母性とかを取り上げられるのなら、もっと違う切り口があるのではないのかな、わざわざこういう設定をすることはなかったのではないのかな、と思いました。また、母性、母性とおっしゃられるけれども、母性にしてもこういう形で母性、母性と言われると何か違うような気がしました。

社会性という点から見るとビビッドな問題を取り上げているという事では非常に面白いと思うのです。けれども、誘拐を描くとしても劇場映画の場合と違って、それをテレビで放映するということに関して今議論になったような問題があるのではなかろうか、と思います。ドラマそのものは、私は大変面白いと思ったのですが、真似する人がいるのではないか、とか様々な問題があり、テレビドラマと劇場映画の違いのようなものは確かにあろうな、と思っております 。

私は大体テレビドラマというのは勧善懲悪であるべきであると、そう基本的に思っているのです。このドラマの筋自体は非常に面白く展開して、思わず引き込まれるような展開があると思います。しかし、社会的に大きなテーマが大盛りに詰め込まれ過ぎて、面白いけれどもこなれていないという印象を受けました。過激すぎて、ある意味では臓器移植というこれからの医学の発展する分野の妨げになるのではないか、とさえ思うぐらいの刺激の強さという点で、面白いけれどもどうなのかな?という印象ですね。

子供を救おうとする母親と母親を信じ抜く子供というところが表現されているかと思うのです。子供がお母さんを信じていくとするとそれは「なんでや」となります。それは恐らくお母さんの育て方なり、いろいろな事が入ってくるものと思います。そういうところがあれば、ドラマの扱っている重たいテーマの救いになったのではないかなと思います。それと、もう一つは、犯人側の田中美佐子さんが非人間的な形で描かれているかと思うのですが、その原因として子供のころの体験があってそういう人物になったというふうに描かれています。しかし、こういう状況だからこうなった、というところで留まるのではなくて、こういう状態であってもそれに加えてこの人はちょっと客観的に見たらおかしな判断しているのでこうなったんだという要素があれば良かったと思います。環境だけではなくて自分自身の責任による部分もあってそうなったんだというところが描かれていれば、それはまた見ている側にとっては反面教師にもなるのかなと、というのが私の印象です。

視聴者センターから7月、8月分、2か月分の報告をいたします。まず7月ですが、全体の総数としましては5,905件といつもの月と大きくは変わりません。その中の意見・苦情ですけれど、先ほどご報告しました『リミット』に関して、7月中に107件の意見・苦情が来ています。ただ、8月に入りまして、意見・苦情は激減しまして、8月中に受けた件数は3件~4件という数になっています。8月は、総数で8,490件と、いつもの月より3,000件ほど増えました。これは通常3,000から4,000件ほどの問い合わせが6,000件と大幅に増えたためです。問い合わせの内容は主に『24時間テレビ』に関するものと、『おもいッきりテレビ』の健康情報「お肌がきれいになる方法」に関するものでした。そして番組に対する主な意見・苦情ですけど、『24時間テレビ』では、恒例のマラソンについて「もっと番組内でトミーズ雅さんが走っている姿をたくさん見せてほしい」という意見・要望が、それからタレント3人によります『オオクワガタを探しに行こう』という企画について「24時間のチャリティーの主旨とは、ちょっとかけ離れている」「少しふざけ過ぎではないか」というふうな指摘を受けました。
  • 平成12年度読売テレビ番組審議会委員
  • 委員長    熊谷信昭   兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
  • 副委員長    馬淵かの子   兵庫県水泳連盟   顧問   元オリンピック日本代表
  • 副委員長    川島康生   国立循環器病研究センター   名誉総長
  • 委員    秋山喜久   関西電力株式会社  顧問
  • 委員    金剛育子   能楽「金剛流」宗家夫人
  • 委員    林  千代   脚本家
  • 委員    阪口祐康   弁護士
  • 委員    佐古和枝   関西外国語大学教授
  • 委員    北前雅人   大阪ガス株式会社   代表取締役副社長執行役員
  • 委員    谷  高志   読売新聞大阪本社   専務取締役編集担当