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【毎週更新】森川教授の明日話せる恋愛学のススメ 早稲田大学国際教養学部の森川教授がドラマ「恋愛時代」の登場人物の行動や心理などを分析し皆さまにアドバイスします!【毎週更新】森川教授の明日話せる恋愛学のススメ 早稲田大学国際教養学部の森川教授がドラマ「恋愛時代」の登場人物の行動や心理などを分析し皆さまにアドバイスします!
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「子ども」という資産

「究極の選択」
選択肢(A)恋愛はしたいが、結婚はしたくない
選択肢(B)結婚はしたいが、子どもはほしくない
選択肢(C)結婚して、子どもがほしい


ついに最終回目前の第11話になってしまいました。こちらの連載も今週を含め、あと2回のみです。


いままで恋愛や結婚に関するプチ知識について書いてきましたが、一度くらい真面目な(?)わが国のマクロの話をしておいた方が、ドラマの全体像を理解する上で役立つはずですので、今週は、はると理一郎の関係を理解する上でキーになる夫婦における子どもという資産の話をします。


● わが国の少子化問題

たぶんご存じないでしょうが、私、政治学者です。「恋愛学」の授業は早稲田大学で行っている講義のうち、たった1科目に過ぎません。それ以外はすべて政治学の授業です。なぜ政治学者が恋愛学を教えているかというと、両者には接点があるからです。

その接点とは、少子化問題というわが国特有の問題です。わが国の出生率はおおよそ1.4。人口を維持するためには2.0が必要ですから、現在は人口が減っている時期に突入したということになります。数年後にはジェットコースターの落下なみに急激に人口が減少してゆきます。

今後50年間に5千万人が減るというふうに考えてください。現在の人口が1億2千7百万人ですから、現在の人口の40%が日本から消えてなくなるということです。このままのペースでいくと1千年後には日本に住む日本人は地球上から完全に消えてなくなります。

それでは、なぜこのような事態になっているのかというと、結婚しない男女が増加しているからです。上記の選択肢でいうと(A)を選択肢する男女が増えた(増えてしまった)のです。

いったん結婚すれば、平均して1.9人の子どもを持つというデータがあるので、出生率1.4の原因は結婚しない男女の増加です。

では、なぜ結婚しないのか?

もっと独身生活を楽しみたいから、仕事が非正規で金銭的に養ってゆけないから、いい結婚相手に出会わないから等々、理由があるとは思いますが、その中でも「子どもの資産価値の減少」という点も大きいです。


● 子どもという資産

「子ども」というのは夫婦にとって最大の資産の一つです。ただ、その資産価値が昔と今では様変わりしているのが問題なのです。

結論を言うと、資産目減りしています。資産価値が減少しているから、わが国の少子化問題が発生していると言えるかもしれません。

話を明確にするために江戸時代における子どもという資産と、現在における子どもを対比させて考えてみます。

江戸時代における、子どもの資産には主に2種類ありました。一つは、自分の遺伝子を50%共有して、自分の遺伝子を子孫へバトンタッチするための子どもです。もう一つの子どもを持つ利点は、家の相続と家庭内労働力です。

士農工商という身分制度があって、そう簡単には身分が変更できない時代では、子どもは貴重な資産でした。当時は「家」という単位が存在していましたから、家を継ぐ人が必要だったわけです。原則として長男が継いで、一子相伝して、残りの子どもは、女子は嫁に出て、男子は商家では丁稚に出る、農家では小作人になる、武家では養子に出されるといった形で家督争いを回避してきました。

しかしながら、現在では、「家」というものはほとんどの家族で存在していません。一部の上流社会ではかろうじて存在していますが、相続税がバカ高い日本では、家督を相続して「家」を守るということができなくなってしまいました。このような状況では、子どもは家を継ぐ者でも、家庭内労働者でもありません。将来、子どもが一緒に住み、自分の老後の世話や介護をしてくれることもないのです。

おそらく、子どもへの教育費が低かった時代なら問題がありませんでした。無料の母乳で育て、子どもが学校に行かない時代であれば、最小コストで子どもを育てることが可能でした。

しかし、現在では、義務教育があり、高校進学も当たり前となり、大学でさえ全入時代が到来したことで、小学校~大学間で考えると22歳まで教育コストが大幅にかさむことになり、家庭にとっては大きな負担です。

これでは、上記の(A)や(B)のように子どもを持たない選択をしたとしても、責められるものではありません。

むしろ、子どもは「負債」として考える人がいるかもしれません。教育途上で、不登校になったり、中退したり、犯罪を犯したり、いじめられたり(いじめたり)、ひきこもったり、さらには結婚しなかったりといった問題をかかえると、子どもを持たない人生の方が費用対効果から良いかなと思える時代になってしまったということです。



しかし、最後に、一言、あえて言わせてもらえば、人生の中で自分の子どもが生まれてくる瞬間は、この世の幸せの最高の瞬間です。これは、経験した者にしか判りませんが、みなさんのご両親に訊いてもらえば、「その通り」と即答してくれるでしょう。

ご両親は、その幸せをみなさんにも味わってほしいと心の底では願っているのです。言葉にしていないかもしれませんが…。孫の顔を見るのが親の幸せなのですが、それよりも、みなさんが結婚して子どもをもうけたときに味わう幸せが親にとっての幸せでもあるのです。

(A)あるいは(B)を選んだ方、選択肢(C)も考えてみませんか?

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