「別れて幸せになる」
まずは以下の質問からお訊きします。
●(質問)1人で映画を観にいきました。2時間の映画で、1,800円支払いました。前評判が良かったのですが、最初の30分を観たところで、たいへんつまらないと思うようになりました。さてみなさんならどうしますか?
選択肢(A)すぐに退出する。
選択肢(B)最後まで観る。
しばしば起こる光景ですね。決断が難しいです。もし途中で退出したら、せっかくの1,800円がもったいないと思いますよね。もうしばらく我慢すればそのうちにおもしろくなるかもしれないし。でも30分つまらなかったのだから、その後おもしろくなる可能性は低い…。いったい、どうしたら良いのでしょう。
これと同じ状況が私たちの恋人同士の「別れ」、夫婦の「離婚」という場面です。たとえば以下の選択です。
※ 究極の選択
選択肢(A) 付き合っていても、好きでなくなったら、さっさと別れるべき。
選択肢(B) せっかく付き合ったのだから、好きでなくなっても、将来「愛が復活する」ことがあるかもしれないので、急いで別れることはしない。
どちらを選びますか?
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今週のテーマは「別れ」です。
上記の質問のように、別れや離婚のタイミングはたいへん難しいです。ドラマ中のはるみたいに竹を割ったような性格なら、きっぱりと別れることが可能ですが、人情に厚い人には難しいです。たとえば永冨は別れるのを躊躇するタイプです。なにしろ、はるを結婚式で見初めてその後もずっと好きだったわけですから。
別れたいと思っても、思い切って別れられないのは、「サンクコスト」(埋没費用)という経済学用語で説明できます。「サンクコスト」とは、「すでに支払ってしまって戻ってこない時間や労力やお金のこと」を言います。
恋愛の別れが難しいのはこのコストのためです。交際している間に使った時間や労力やお金を考えると、「別れ」を切り出すのには勇気がいるものです。盛大な披露宴を行った結婚も同じですし、あこがれて入社した会社も同じです。
このような別れ、離婚、退社といった「別れ」の決断は難しいのです。いまはけんかしているけれど、そのうち仲良しになるかもしれない、いまの仕事はつまらないけれど、そのうち配置転換でおもしろくなるかもしれない…。
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ただし、経済学では選択肢(A)を選ぶべきと説いています。その理由は、過ぎ去った時間や労力に引きずられては、将来の時間や労力がもったいないからです。私たちが使える時間や労力は有限です。一人の人に時間を使うということは、他の人には使えません。別れを決断して、その時間を恋人探しに使い、将来もっと素敵な相手と交際することができるかもしれませんので、「損切り」するのが正解です。
しかし、別れたあとのことを考えなければなりません。第7話の理一郎のように「さびしい」と感じると、別れたことを後悔してしまいます。
そこで、大胆な提案です。
① みなさんの時間は限られている
② 好きでなくなったら別れるべき
③ 別れたあとにさびしいと感じたくない
という3つの前提条件を満たす方法としては、
※好きでなくなったら(あるいは恋愛の終わりが近づいていると感じたら)、
次の恋愛相手を見つける努力をする
というのはどうでしょうか? とりあえずいまの相手をキープしつつ、素敵な新しい相手が見つかった時点で別れる決断をすれば良いのです。会社がつまらないと感じたら、すぐ退職するのではなくて、次の再就職先が見つかった時点で辞職願を出すのと同じです。
恋愛は別? 二股なんていけないことと思いますか? みなさんの倫理観に反しますか? だったら、別れてさびしい思いをするのは我慢しなければなりません。
理論的には、みなさんの倫理観のレベルと新しい恋が見つかる可能性のトレードオフのような気がしますが、どうでしょうか?