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【毎週更新】森川教授の明日話せる恋愛学のススメ 早稲田大学国際教養学部の森川教授がドラマ「恋愛時代」の登場人物の行動や心理などを分析し皆さまにアドバイスします!【毎週更新】森川教授の明日話せる恋愛学のススメ 早稲田大学国際教養学部の森川教授がドラマ「恋愛時代」の登場人物の行動や心理などを分析し皆さまにアドバイスします!
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「浮気」の科学

● 究極の選択

選択肢(A)既婚者の喜多嶋のはるに対する気持ちは正当化できる。
選択肢(B)既婚者の喜多嶋のはるに対する気持ちは正当化できない。


喜多嶋竜一は衛藤はるが大好きです。しかし喜多嶋は貴子と結婚しています。彼が主張するように、結婚は事実上破綻していて「書類上だけの夫婦」にしても、戸籍上は既婚者です。


ですから、はるとしては、それはちょっと筋が違うよね、離婚して戸籍をきれいにしてから好きになってよ、ということになります。


他方、喜多嶋としては、現実問題としてたいへん辛い。離婚したいのは山々ですが、奥さんが離婚届にハンコを押してくれないのです。そのために離婚が成立していません。その間、恋愛は一切禁止というのはなんともやり切れないです。


公平に見ると、どうも喜多嶋に分が悪いようです。はるの主張は正論。喜多嶋は現実的には理解できないわけではありませんが、間違っています。しかし、第8話の最後のシーンで、なんとか離婚が成立しそうな感じではあります。離婚によって喜多嶋ははるを堂々と好きになることができます。


というわけでは、今週は、みなさんに「浮気」・「不倫」の実態についてのデータを披露します。(既婚者の喜多嶋は事実上はると「不倫」をしようとしたたわけですから。)


(1) 「身体的浮気」と「精神的浮気」、どっちが嫌?


まず、「浮気」には2種類あります。法律的に問題のある「身体的浮気」(肉体関係をもつこと)と法律的には問題のない「精神的浮気」です。

みなさんが結婚していると仮定して(実際に結婚している方もいるでしょうが)、配偶者にはどちらをしてほしくないですか? あえて二者択一だったらどっちの方が嫌かという問いです。


心理学者のさまざまな調査を総合すれば、妻は夫の精神的浮気の方が嫌で(だいたい6対4の割合)、夫は妻の身体的浮気の方が嫌(2対1の割合)との結果が出ています。


理由は、妻は、夫が精神的浮気をして家族を捨ててしまい、その結果夫からの経済的資源の安定供給が損なわれてしまうことを危惧するためです。身体的浮気もお金を持っていかれる可能性はありますが、精神的浮気によって逃げられるよりは軽微で済みます。


他方、夫が妻の身体的浮気を嫌う理由は、夫婦間の子どもが、自分の子どもであるという確証を男性は持てないので(これを西洋では “Mama’s Baby, Papa’s Maybe”と言います)、他の男性と肉体関係を持たれると一生の間、自分の遺伝子を共有しない子どもをそうとは知らずに育てなければならない可能性があるからです。男性にとっては、相手の女性が他の男性と手をつなぐことも、キスをすることも生理的に嫌悪感をいだくようにプログラムされているようです。


(2) 浮気の実態


第二に、「浮気・不倫の実態はどうなっているのか?」知りたいところです。


小学館発行「週刊ポスト」と厚生労働科学研究所研究班が大掛かりなアンケート調査を2006年に実施しています。そのデータによれば、既婚男性2,000人のうち、不倫経験者は全体の74%。そのうち、3分の1あまり(36.5%)の不倫相手は「会社の同僚・部下、仕事相手」でした。


他方、妻の不倫経験率は29.6%。10人中3人が不倫経験者です。意外に多い。一人だけというのが全体の約半数(48.3%)、続いて2人(25.0%)、3人(11.8%)と続きますが、10人以上も3.5%います。



NHKが集計した『日本人の性行動・性意識』は、全国無作為抽出で統計的に信憑性の高いものですが、この調査でも同じような傾向が見られます。


年齢別では、10代の男子の半数近く、女子は3人に1人が、過去1年以内に浮気を経験しています。20代から減少するのですが、各年代でも男性が20%以上、女性では10%あまりが確実に浮気経験者です。一生の間には非常に多く(ほとんど?)の男女が浮気・不倫を経験している計算になります。

なお、最近の英国の調査によれば、不倫相手の平均人数は男性が1.8人に対し、女性は2.3人で男性を上回っているとの報告があります。



また、心理学者D. ホームズ博士の研究によれば、夫の不倫の83%、妻の不倫の95%は、顕在化していません。

10 %あまりの差は、夫の方がうそをつくのが下手なのと、妻の方が浮気の発覚で被害がより大きいからです。つまり、妻の方が秘匿上手で、自分から浮気していると言わない限り、見つからないのが現状です。

これが、浮気の現実です。怖いですね。喜多嶋のはるに対する恋心なんて、実にかわいいものとは思いませんか?


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