#5
九条エレクトロニクスの工場内で、派遣社員が首吊り自殺を図った。臨場した豊島署の巡査・辻恵一(松下洸平)は、遺体を見て愕然とする。中学時代の友人・富永翔太(木村トモアキ)だったのだ。「前向きで明るいやつだったのに…」。遺書には『希望を失い、もう生きている意味がありません』と書かれていた。
一足先に、警察庁特殊防犯課の警視・朝倉草平(伊原剛志)が、従業員たちを聴取していた。「矯正執行の裏取りをしてるんですよね!」と富永の自殺が信じられない辻は、この工場に何らかの問題があるに違いないと睨むが…。
半月ほど前、富永は操作ミスで右腕を機械に巻き込まれる事故を起こし、機械を故障させ大きな損出を出した。その責任を取って自主退職をしたのだという。
「ここはいい会社ですよ、富永くんもそう言ってました」従業員全員が仕事に誇りを持ち、社長の九条茂信(国広富之)を尊敬していた。九条は正社員だろうが派遣社員だろうが、従業員に対して平等で、さらに一人一人の存在価値を見出してくれるのだという。
しかし富永の母親・幸枝(阿部朋子)は、涙ながらに違う事実を明かした。富永は怪我が完治したら工場に復帰し、損出を挽回するためにもっと頑張る気でいたというのだ。「富永が死に場所に工場を選んだのには絶対に意味があるはずです!」従業員と母親の話の相違と重ねて、工場への疑惑を深める辻。
だが朝倉は、九条エレクトロニクスはいい会社と確信できたので矯正執行の必要はないという。富永の自殺については、「彼が単に弱かっただけではないしょうか」と結論付けた。「もういいです!あなたを見損ないました!」と怒りを露わにする辻で…。
翌日。特防課──朝倉は、警視庁の警視・伊達鉄人(川平慈英)から預かったプレゼントの牛タンを叶美由紀(安達祐実)へ渡した。どうやら伊達は叶に惚れているらしい。だが叶は、「嫌がらせ?」と牛タンには目もくれず、九条エレクトロニクスの報告書と資料を確認。「アオスブレイン?」と人材派遣会社のパンフレットに目を留めた。
廊下で、聞き耳を立てていた柏木警視長(宅間孝行)が、ニヤリと笑い去って行く…。
一方、辻はアオスブレインに派遣登録。派遣先の九条エレクトロニクスに潜入し、他の派遣社員たちと共に研修に参加していた。「僕が証拠を見つけてやる」と闘志を燃やす辻の前に、九条が現れた。九条は挨拶を兼ねて『人が生きる意味とは』について、熱く語るのだった。
とある料亭。アオスブレイン社長の青須義郎(升 毅)を前にした九条は、全く別の顔を見せた。派遣はどんどん取換えて安く使い捨てるというのが九条の方針。富永の労災の申請を認めず、うまい具合に言いくるめて自主退職に追い込んだ一件を肴に酒を酌み交わし、お互いの人心掌握の手腕を褒め合う二人だが…。「本当のカリスマは我々の先生だ。先生が人の心をつかむ極意を仕込んでくれたのさ」という青須に、「あの方はこの国を任せるに足る素晴らしい人です」と九条は返した。
辻たち派遣社員のセミナーが、休日返上で行われた。そんな中、九条に “ダメ人間”というレッテルを貼られた辻は、皆の前でこてんぱんに自尊心を傷つけられて、まともな思考判断ができなくなってしまう。かと思うとその翌日には、「自分がいかにダメか気づいた君はえらい。私は君を誇りに思います。君は価値ある存在だ!」と祭り上げられ、すっかり九条に洗脳されるのだった。その一部始終を盗聴していた朝倉は嘆く。「…あー、死にたい」。
そんな朝倉だが、「お宅が労災隠しをやっているという匿名の通報がありまして」と労働基準監督署の職員に成りすまし九条エレクトロニクスへ赴く。九条は言葉巧みに朝倉を交わし、辻たちが懸命に働く工場内へ案内する。
驚く辻をよそに、「皆さん、何か問題はありますか?」と朝倉は問いかけるが…。「問題なんて何もないですよ」「仕事はすごく楽しいです」と従業員は口を揃えるばかりで…。「素晴らしすぎて気持ち悪い」と朝倉は立ち去るのだった。
その後、辻の洗脳を解くことに成功した朝倉は、矯正執行を行うべく再び九条の元へ。「あなたは富永さんに生きる意味を与えておきながら、それを奪ったんです。富永さんと同じ思いを味わってみますか」と…!
その頃、特防課──叶は、九条エレクトロニクスの裏にいるアオスブレインが元警視総監・鶴井浩二の経営するツルイ警備と繋がっていることに気づく。「まずい…!」九条エレクトロニクスへの矯正執行を中止させるべく、朝倉と連絡を取ろうとすると、柏木警視長が現れて…。
時すでに遅く、矯正執行を終えた朝倉が、黒幕のアオスブレインへ裏取りに行こうとした矢先に、叶が監察へ連行されたことを知る。
叶は、九条エレクトロニクスへの内偵の件で、松山警視監(矢島健一)から取り調べを受けたあげく、軟禁されてしまって…。