#1
津村愛(多岐川華子)のマンションで、恋人の吉岡努が急死した。豊島署の刑事・辻恵一(松下洸平)と武士沢は、遺体に外傷がないことから病死と推測、事件性はないと見立てるが…。「病死だから事件ではない、とはいえない」と異を唱える男が現れた。「この世は害虫であふれている…」などと終始、虚無感を漂わせるその男は、警視・朝倉草平(伊原剛志)。
吉岡の死因は、大豆を食べたアナフィラキシーショックと判明。普段から決して大豆を口にすることがなく、外食の際は食材の確認を怠らなかった吉岡が、なぜ? 何者かが本人にはわからないように大豆を食べさせたのだろうか…。殺しの可能性が浮上するなか、辻は上司の高清水に、朝倉の捜査を手伝うよう命じられる。なんでも朝倉本人が辻を指名してきたらしい。「豊島署のために、本庁の警視の信頼を勝ち取るんだ!」辻は、高清水や武士沢の期待を一身に背負うのだった。
しかし当の朝倉は──「このグズ、バカ、能無し!」と上司の叶美由紀(安達祐実)に激しく罵倒されていた。食品偽装の疑いのあるレストランの調査が、何ひとつ進展がないことが発覚したからだ。
逃げるように辻の元へやって来た朝倉は、そのレストランへの潜入捜査を辻に命じる。何も知らない辻は、「僕って期待されてる!?」と勘違いしたまま、任務に就くことに…。潜入先は、高級フレンチを格安の値段で食べさせてくれると話題沸騰中の『リストランテ峰岸』。そこは愛と吉岡の二人が、最初で最後となってしまったデートで訪れたレストランだった。
オーナーの峰岸邦夫(名高達男)は、フレンチの革命児と呼ばれ、ワイドショーなどにも出演する有名人。「美味しい料理は人を幸せにする、それは金持ちだけのものじゃない、料理の前では誰もが平等」という信条の持ち主だ。片腕であるシェフの国立健次は、人柄が良く腕前も確か。峰岸いわく、お客様の幸せを作り出す一流の料理人だ。フレンチのシェフを志す青年を装い、下働きをする辻は、国立をシェフとして尊敬してしまう。だが捜査の結果、辻にとって信じ難い事実が明らかになっていく…。
朝倉は『リストランテ峰岸』が食品偽装を行っていることを確信する。さらに吉岡の死の原因にも関わっていると判断し、客を装い峰岸に接触。吉岡の一件を伝える。言葉巧みに朝倉を交わす峰岸だが…。その会話を聞いていた国立の表情が青ざめていく…。
「もう限界です、無理です、人が死んだんですよ!」そう訴える国立に、峰岸は告げる。「死んだ奴は運が悪かっただけ。自分たちは一般庶民には手の届かない超一流のフレンチの味を世間に開放しただけで、何も悪くない」と。
翌日、首を吊った国立の遺体が発見された!「フレンチを汚してしまった自分自身を許すことができない。自らの命をもって償う…」と書かれた遺書には、食品偽装についての明言は避けられていた。
「あー、死にたい」ぼやきながらも朝倉は、徹底的に峰岸の身辺を調べていく。辻の目からは、どれもこれも違法捜査としか見えないのだが…。朝倉は盗聴によって動かぬ証拠を掴む。国立へ食品偽造の指示を行っていたのは、峰岸であった。怒りを募らせ、峰岸を逮捕すると息巻く辻。「峰岸が黒幕でも、殺人罪に問えるわけじゃない」と朝倉。「じゃあどうするんです!?」「こいつらは害虫です…」そう朝倉は告げると、峰岸のもとへ…。そのさなか、朝倉を偽警察官疑惑と疑いだす辻。そうだとしたら、数々の違法捜査にも納得がいく。では朝倉の目的はいったい何なのか…?
朝倉を前にした峰岸は、死人に口無しなのをいいことに、すべての罪を国立に押し付けようとした。そんな峰岸に証拠を突きつける朝倉! ようやく峰岸は食品偽装について認めるが、高級フレンチというブランドを貧乏人に安く提供してやったんだと開き直ったあげく、盗聴は違法捜査だから俺を起訴することはできない、と勝ち誇ったように言い放つ。「起訴なんかしない」と朝倉。「やっぱり、峰岸を恐喝する気か。偽警察官め!」と身構える辻。すると朝倉は、「私、警察庁生活安全局 特殊防犯課指導係 警視 朝倉草平です」と丁寧に名乗ると、「矯正執行入ります!」と突然峰岸をロープで締め上げていく! 「よせ、なんの真似だ!?」慌てふためく峰岸。「警視庁じゃなくてその上の警察庁?矯正執行!?…」想像を遥かに超えた朝倉の言動に驚愕する辻!「お前が二人の人間を死に追いやったんだ。腐れ外道が!」朝倉は、峰岸から業務改善の兆候がみられるまでは、その手を決して緩めようとしない。痛みに喘ぎ、屈辱に身悶える峰岸。ニヤリと笑う朝倉。「笑った、悪魔だ!これが朝倉さんの本性なのか」と凍りつく辻。
そう、特殊防犯課(通称・トクボウ課)における朝倉の使命とは、法では裁けない悪人(害虫)に対して、「矯正執行」の名の下に二度と再犯しないように徹底的にお仕置きを下すことであった。「害虫に噛みつくことで生きている自分も害虫と同じ…」嘆く朝倉。果たしてその結末は──。