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案件4

市川 友宏(会社員)東根作 寿英
モンスター妻との結婚生活に限界を感じ、袴田法律事務所へ相談にくる。
給料の大半は妻のブランド品やエステ代として消えていく。
家事もせずに浪費を続ける妻からのDVとモラハラに怯えている。

妻が個人で浪費した総額とあわせて慰謝料700万円を請求。専業主婦のため、財産分与した際の取り分から差っ引く形で提示する。しかし、離婚成立直前で妻の本心を知った依頼人は離婚請求を撤回、和解した。

第4話「モンスター妻の恐怖…気弱な夫が猛反撃!」

仕事帰りの市川友宏(東根作寿英)。ホッとする我が家のはずが、自宅マンションに近づくにつれて、彼の動悸が激しくなる。その時、友宏の携帯がけたたましく鳴った。妻・美咲(遊井亮子)からで、クリーニング店に寄って美咲の洋服を取って来いという。しかし、時間は午後8時55分。9時で閉店だというのに…。そう主張しても、美咲は聞く耳を持たない。全力で駆け出す友宏。しかし、クリーニング店はちょうど閉店したところで…。

「この役立たず!」帰宅した友宏にティッシュの箱を投げつけ、罵声を浴びせる美咲。彼女の暴力は日常茶飯事。家事もせず、ブランド品を買い漁り、近所のセレブ主婦たちとエステに、豪華ランチと、贅沢三昧。夫である友宏の小遣いは月1万円だというのに…。

友宏はついに離婚を決意し、袴田法律事務所へ。彼の話を聞いた弁護士・袴田幸男(田中直樹)は美咲のことを「モン妻」と称した。アルバイト・篠塚里奈(岩﨑名美)によると、「モン妻」とはモンスター妻の略で、結婚後に豹変して、夫に脅威を与える存在と化してしまった妻を示す。しかし、美咲は浮気をしていなかった。通常、相手に不貞行為がないと、離婚成立には時間がかかる。しかも、法廷の場では女性が弱者とみなされる傾向がいまだ強く、割の合わない案件であることは一目瞭然だ。大家の遠山芳江(美保純)などはこの依頼を断るべきだと反対する。しかし、袴田は強気だ。「慰謝料というのは肉体的・精神的に受けた苦痛に対する損害賠償です。慰謝料はきっちりと請求すべきです」

友宏は袴田の指示に従って、DVの証拠、浪費の証拠を集めていく。途中、美咲に怯え、殴られたこともあったが、友宏はフリー調査員・梅本くるみ(渡辺直美)に借りた海外ドラマ『鋼鉄の女スパイ マリリン』を見て、メンタル面を強くしていく。

調査の結果、一時600万円あった市川家の預金が、美咲の散財で62万円しか残っていないことがわかった。これでは慰謝料が取れないではないか…。友宏は弱気になり、「慰謝料は諦めてもいい」と言い出す始末。ところが、その時だった。美咲が袴田法律事務所に乗り込んできた。最近、夫の様子がおかしいと思って、尾行していたのだ。美咲は新しい女が出来たのではないかと疑い、友宏を締め上げる。また、「夫は金づる、離婚はしない」「もし離婚するなら慰謝料1000万円を支払え」と、モンスターぶりを発揮する。

「市川さん、絶対に離婚、いや! 慰謝料まで勝ち取りましょう!!」 袴田はいつになく感情的になる。美咲が彼の作ったベーグルを「まずい」とけなしたからだ。呆れる野々村香苗(矢田亜希子)。しかし、袴田は真剣だった。いくら今、美咲が専業主婦で手持ちの金がなくても、慰謝料の支払いの時効は10年。離婚後、収入を得た時点で払わせることができる。だが、市川家の場合、マンションという大きな財産があった。

数日後、所有のマンションを査定すると、その評価額は約3500万円。そこからローンの残りを差し引いて1400万円。共有する財産を2分の1ずつ折半する「財産分与」をすれば、美咲に渡る額は700万円。この700万円を慰謝料としていただくのだ。

心を強くする友宏。ところが、携帯を見ると、美咲からしつこく電話がかかっている。先日、袴田の指示で美咲のクレジットカードを止めた友宏。そうとは知らず、セレブ主婦たちと高級カラオケ店に行った美咲。みんなの分も合わせて支払おうとした際、カードが使えなくて恥をかかされたのだ(この窮地、セレブ主婦を装って潜入捜査していたくるみに助けられたが……)。激高して電話をかける美咲。怯える友宏に、袴田は「笑顔で離婚を宣言しましょう」と助言する。一方、香苗は友宏が帰った後、袴田に「無理して慰謝料を取るより、穏便に離婚させてあげる方が大事なんじゃないでしょうか」と意見する。だが、袴田によると、長い間、DVやモラハラの被害に遭った人は、自分が弱い人間だと思い込まされていることが多い。しかも、その相手に依存してしまう傾向もある。今の彼に必要なのは本来の自分を取り戻すこと。そのためにも慰謝料は取るべきだという。そう言われると、香苗も返す言葉もない。ところが、袴田には他にも考えがあるようで…。

その日の夜の市川家。友宏はぎこちないながらも笑顔を作って「離婚してください」と宣言、否、お願いをする。すると、美咲にひっぱたかれる。しかし、この日の彼は強かった。何度ひっぱたかれようとも、美咲の目を見て「別れてください」と訴え続ける…。

翌日、友宏は昨夜のことを袴田たちに報告する。その中で、彼は妻の目を見て言えたことを感慨深く話した。少しずつだが、自分を取り戻しているようだ。袴田は友宏を労う。「よく頑張ったじゃないですか。それが大事なんです。さあ、最後の戦いといきましょうか」

友宏は袴田と香苗を伴い、再び自宅マンションで美咲と話し合いをもった。袴田はこれまで友宏が集めた証拠をもとに、離婚事由をあげて慰謝料700万円を請求する。しかし、美咲は決して離婚に応じない。袴田に裁判も辞さないと言われても、頑なだった。なぜ、こんなにも固辞するのか…。袴田にはわかっていた。美咲が夫を愛していることを…。

くるみに潜入捜査をさせていた袴田。それによると、このマンションに引っ越してきた当初、美咲は孤独だった。友宏は毎晩遅くまで残業、周囲には友人もいない。そんな時、出会ったのが近所のセレブ主婦たちだった。しかし、彼女たちとの付き合いにはお金がかかる。でも、やっと出来た友達を手放したくない…。美咲は無理して彼女たちに合わせ、気づくと浪費家となっていた。それは自分でも止めることが出来ないほど深刻化して…。

「あなた、話を聞いて欲しかったんでしょ? だからご主人への態度がどんどん冷たく、エスカレートしていった」

美咲は笑って否定するが、友宏に「なんで言ってくれなかったんだ!」と問い詰められると、ついに「私は何度も言ったわよ」と本心を爆発させる。友宏はすっかり忘れていたが、確かに美咲は何度も夫に助けを求めていた。だが、仕事が忙しくて余裕のない彼は妻の訴えを相手にせず、煩わしいとさえ思っていた。しかし、袴田は「どんな理由があったとしても、あなたがご主人を長年追い詰め、苦痛を与えたことは許される訳じゃない」と徹底的に断罪する。美咲はそんな袴田に嫌気が差し、ついに離婚に応じる。ところが…

「美咲、やり直そう」自ら作成した離婚協議書を破り捨てる友宏。「俺、目が覚めたよ。お前をモンスターにしたのは俺だった…」夫の予期せぬ言葉に驚く美咲。そして彼女の瞳からは大粒の涙がこぼれ、嗚咽する。「ごめんなさい、ごめんなさい」と詫びて…。 こうして和解する友宏と美咲。袴田は黙って、市川家を後にする。この時、香苗は気づいた。袴田が2人の和解を見越して、動いていたことを…。

数日後のカフェ。香苗は今回のことをネタにした漫画を編集の田畑美里(高嶋香帆)に見せていた。専業主婦から慰謝料を取る方法もあるんだと感心する美里だが、ふと冷静になって「袴田先生、今回は慰謝料取れなかったってことですか」と尋ねる。ハッとする香苗。その頃、袴田法律事務所でパンを作っていた袴田もくしゃみをして…。