次回予告 バックナンバー 地球便マップ ディレクターの取材こぼれ話 募集
今回の放送今回の放送

#161「スペイン/グランカナリア島」 8月14(日)午前10:25〜10:55


 今回の配達先はスペイン・カナリア諸島のグランカナリア島。この地で日本料理の板前として奮闘する櫻岡友和さん(33)と、千葉県に住む妻・明美さん(31)、息子の颯太君(9)、友和さんの父・清一さん(60)、母・恵美子さん(63)をつなぐ。2年前、本物の日本料理を伝えようと、妻子を連れてこの島に渡ったが、昨年、彼の父が脳出血で倒れて緊急入院。父の世話をするために、妻と子供だけが日本に戻った。妻は「本当は3人で日本に戻りたかった。夫は無理をする人なので心配」と、一人現地に残って頑張る夫を案じる。

 グランカナリア島は日本のマグロ漁船の中継基地として昔から多くの日本の漁船が立ち寄るなど、マグロ漁が盛んなところ。友和さんは毎朝市場を訪れては、その日揚がった新鮮な魚を自らの目で確かめ、仕入れている。最近、日本食はヘルシーでオシャレと、スペインでも大人気だそうで、友和さんが働く「弁慶」も、ランチと夜の営業でいつも大忙し。仕事に追われて昼食を取る時間もないほどだという。

 共に飲食関係の仕事をしていた両親に影響を受け、高校卒業後、東京の老舗寿司屋に就職した友和さん。寿司を中心に日本料理を9年間学び、その後、さまざまな店で修業を積んでいたとき、スペインで店を出さないかという誘いを受けた。そして店を立ち上げるため、日本で共に寿司職人として修業をしていた妻と息子を連れて、2年前にこの島へ。店の板場には妻も一緒に立っていたという。

 当初はスペイン語もまったく話せず、食文化の違いに苦労したという友和さん。今まで学んできた伝統的な日本料理だけではお客さんに満足してもらえず、調理法や盛り付けに過度の演出を加えて提供することに、葛藤する日々が続いたという。「これは日本料理じゃないという人もいるでしょう。でも僕は日本人であり、日本人の板前という気持ちは忘れていない。お客さんが喜んでくれたら、それでありがたい」。“大事なのは料理に込められたもてなしの心”と、今ではそう言い切れるまでになったという。

 だが、店を軌道に乗せようと夫婦で頑張っている中、父が倒れた。「本当は私が父の介護のために戻りたかった。だけど仕事を任されていたし、店のオーナーには恩もあるし義理もある。店はまだ途中の段階。投げ出すわけにはいかなかった」と友和さん。妻に対しては「自分の両親のためなら分かるが、夫の実家に入るわけですし、大変だと思う。妻には感謝してもしきれない。今、仕事に専念できるのも妻のおかげ」と感謝する。まだ9歳の颯太君については「成長を見られないのは寂しいし、心配」と、離れ離れに暮らす辛さを語る。そんな友和さんに颯太君から、家族を描いた絵が届けられる。“頑張って。パパへ”と添えられた言葉に、友和さんは「うれしい」と涙を見せながら、「今は仕事が忙しいから、自分を奮い立たせて頑張ろうとしているけど…離れているのは苦しい」と胸の内を明かす。そんな父の姿を見た颯太君も思わず涙をぬぐい、明美さんも「そばにいてあげたい…」と、切なくつぶやく。

 ハードなスケジュールに加え、店を任されている重圧の中で前向きに仕事に取り組む友和さんへ、妻から届けられたのは柳刃包丁。寿司職人として友和さんと共に働いてきた妻が、自ら選んだ一本だ。友和さんは「うれしい。ずっと欲しかったのを覚えてくれてたんだ。本当は僕の方がしてあげないといけないのに、こうして支えてもらって…」と、妻へ感謝の気持ちを語る。