今回の配達先はイタリア・パラッツオーロ。この町を流れるスッテラ川で、数千年もの間眠り続けた沈没船から、古の謎を解明している水中考古学者の山舩晃太郎さんと、京都に住む父・茂樹さん(57)、母・伸子さん(61)をつなぐ。「男のロマンを感じる仕事ですね」と、水中考古学という仕事に興味津々の山口智充。両親は「子供の頃から映画『インディ・ジョーンズ』が好きな子だった。でもまさか本人が考古学者になると言い出すとは…」と意外だったようで、仕事の内容もよく分からず、心配は尽きないようだ。
晃太郎さんは、水中考古学において世界一の呼び声も高いアメリカの「テキサスA&M大学」に在籍。あのタイタニック号の調査も行った研究機関だ。現在は水中考古学の世界的権威、フィリップ・カストロ博士が率いるチームの一員としてこの町に1ヶ月滞在し、2000年前に沈んだ古代ローマ帝国の木造船の発掘調査をしている。水中に潜って発掘調査を行う晃太郎さんは「水の中は保存状態がいい。最初に遺跡を目にしたときはゾクゾクします」と、その興奮を語る。
調査では、まず船の全体像を掴むために測量を行う。1回の潜水時間は45分。水の流れに逆らいながらミリ単位の精度を求められる測量は、地道で過酷な作業だ。この数値を元に、船を引き上げなくても全体像がわかる3Dプログラムで船の形を浮き彫りにし、歴史の謎を解明するのだ。今回の調査では、晃太郎さんがこの3Dモデルを作る役目を担う。
「インディ・ジョーンズ」がきっかけで考古学に興味を持った晃太郎さんは大学卒業後、長年の夢を叶えるため渡米し、テキサスA&M大学に入学。その頃は英語もまともに話せなかったという。「大学4年の授業と大学院の授業でオールAを取ったらこの研究室に入れてあげるといわれ、朝9時から夜2時まで必死で勉強しました」と晃太郎さん。そうして猛勉強の末、アメリカ人ですら難しい狭き門をくぐりぬけたのだ。晃太郎さんがこの研究チームで経験を積み重ねて博士号を取れば、日本人初の水中考古学博士が誕生することになる。
アメリカにわたって5年。ようやく重要な作業を任されるようになったが、いまだ学生の身。収入がない晃太郎さんを支えているのは日本の両親だ。晃太郎さんは「僕がどんなことをやっているかもよくわからないのに、僕を信頼してくれる両親には、本当に感謝している。そのおかげで頑張れる。僕は一人っ子なので、いずれ日本に帰って教職につき、水中考古学を教えたい。何かあればすぐに両親の元に行ける場所で働きたい」と想いを語る。その言葉に両親は「日本に帰らないと思っていたのでうれしい。最初の子を早産で亡くし、やっと授かった子だった。勉強ができなくても、ただ元気でいてさえくれたらいいと願ってきた」と、晃太郎さんへの思いを語る。
そんな両親から晃太郎さんに届けられたのは、安全な潜水作業には欠かせない精度の高いダイバーウォッチ。晃太郎さんの安全の願う両親の想いが込められていた。晃太郎さんは「ずっと欲しかったけど、高くて手が出ず我慢していたのでうれしい。早く名前が知られるような水中考古学者になって両親を安心させたい」と言って、両親の想いに涙をこぼす。