今回の配達先はラグビーの本場・ニュージーランドのウェリントン。ここでラグビー選手として奮闘する赤井大介さん(31)と、奈良に住む父・幸雄さん(62)、母・磨利子さん(58)をつなぐ。大介さんはかつて日本代表にも選ばれ、プロとして日本で活躍していたが、今はハンバーガー店で皿洗いをしながらアマチュア選手として頑張っている。そんな息子を見守ってきた両親は「いつまでラグビーをやっていくつもりか…本音を聞きたい」と心配する。
彼が現在所属するクラブチームはアマチュアの最高峰。ここで活躍した選手がプロとして選ばれていく、まさに登竜門なのだ。だがアマチュアゆえに報酬はなく、メンバー全員が仕事を持っている。日本ではアルバイト経験がなかった大介さんも、今はハンバーガーレストランで週6日、皿洗いや雑用で月10万円の収入を得て生活している。
かつては日本代表にも選ばれ、6年に渡り日本でプロとして活躍した大介さんだが、それはケガに苦しんだラグビー人生でもあった。度重なるケガで試合に出られないつらい日々が続いた。プロを辞め、海外に渡ってまでラグビーを続けているのは、“現役の選手としてピッチに立ちたい”という、ただその想いからだった。「試合に出られない悔しさを、父は分かってくれていた。“ニュージーランドなら毎週試合ができる。試合に出たい。ラグビーがしたい”と訴えると、父は“思うようにしろ”と言ってくれた。うれしかったですね」。そして大介さんは日本でのプロ契約に自ら区切りをつけ、2年前にニュージーランドへ渡ったのだ。
中学からラグビーを始めて18年。今年31才になった大介さんにはある大きな決意があった。「最後の1年にしようというつもりでやっている。“これだけやったからもういい”と思えたら、引退だと思っている」。そんな大介さんの決意を、父は理解しながらも、「もっとやってもらいたいという気持ちもある」と複雑な思いを明かす。
引退を決意してのぞむシーズンの開幕戦が始まった。相手チームの選手は全員が20代前半の若者たち。しかもほとんどが巨漢のサモア人やトンガ人だ。それでも果敢に身を挺してぶつかっていく大介さん。自分のラグビー人生をぶつけるように立ち向かっていっては、何度も何度も立ち上がる…。試合は惨敗だったが、大介さんの顔には満足そうな笑みが浮かんでいた。「あそこまでのぶつかりは日本ではなかなかない。そこが面白いんですよね」と。
現役にこだわり、ニュージーランドに渡ってまで歩み出した最後のラグビー人生。そんな息子を見守ってきた父から届けられたのはラグビーボール。小学5年の時、全国高校ラグビー決勝戦で、父に初めて買ってもらった記念ボールだ。「懐かしい。この試合を見て、ラグビーをやる決心をしたんです。仲間のために頑張るという目的もあったけど、両親に頑張っている姿を見せたかった。それが僕の原動力でもあった。悔いのないように最後までやりきりたい」。両親の想いを胸に、大介さんはそう語る。