今回の配達先はニューヨーク・マンハッタン。ここでブロードウェイの舞台を目指すタップダンサーの越替由美さん(23)と、大阪に住む父・弘さん(56)、母・満世さん(54)をつなぐ。日本でタップダンスのインストラクターとして活躍していたキャリアを捨て、2年前にタップ修業のためニューヨークに渡った由美さん。両親は「半年の約束だったのに…帰って来なくなってしまって」と、半ば諦め気味だ。
現在はニューヨーク屈指のダンススクールで、タップ界の重鎮・デリック・グラントさんの指導を受けながら、週末はジャズバーでタップを踊る由美さん。「学生として勉強のために来ているので、店で踊ることも勉強。ギャラはもらっていません。でも日本でタップを教えたり、ショーにも出ていたので、プロ意識は持っているつもりです」と話す。今は収入がないため、日本での貯金や家族からの仕送りで生活している状態だ。
幼い頃からダンスが好きで、3歳からクラシックバレエを習っていた由美さん。タップとの出会いは16歳の時、家族旅行で訪れたニューヨークだった。「タップはダサいという、それまでのイメージがくつがえされました。踊りながら音楽もしている…すごい!って」。その時の感動が忘れられず、タップダンスにのめり込んだ由美さんは、わずか3年でインストラクターに。だが教えていた子供たちから「先生みたいなタップダンサーになりたい」と言われ、“まだまだ自分はタップを極められていない”と感じていた由美さんは、それまでのキャリアをすべて捨て、タップの本場ニューヨークへの留学を決意したのだ。
渡米1ヵ月で、タップの神様といわれるセビオン・グローバーの公演に参加する幸運にも恵まれた。舞台で踊る喜びを知り、“もう一度舞台に立ちたい”と、新たな目標も生まれた由美さん。今はタップだけでなく、バレエやジャズダンスも学んでスキルアップに励み、ミュージカルなどのオーディションにも積極的に挑戦している。しかし、まだまだチャンスをつかむまでには至らないようだ。半年の留学の約束が、もう2年。「親には心配をかけているけど、せっかく2年間やってきた。結果を出すまでは日本には帰らない。ショーに出たい。ここで頑張って、絶対に実現してから帰ります」と、由美さんの決意は固い。そんな娘の想いを知った父は、寂しさを覚えながらも「本人の気持ちを考えると、このままでは帰れないんでしょうね」と、理解を見せるが…。
タップの本場で、壁にぶつかりながら修業の日々を送る由美さんに、両親から届けられたのはバレエシューズ。由美さんがバレエを始めたころに履いていたものだ。“あの頃の気持ちを忘れず、これからも頑張ってほしい”という両親の想いが込められていた。由美さんは「今もこうして踊れているのは両親のおかげです。あの頃のように楽しく踊っていきたい」と涙をこぼし、部屋に置いてあるタップシューズの横に、小さなバレエシューズを並べた…。