今回の配達先はデンマークの港町ミゼルファート。ここでプロのバレーボール選手として奮闘する石川亮輔さん(24)と、東京に住む父・英樹さん(52)、母・房子さん(57)をつなぐ。この町のプロチームに所属して2年目の亮輔さんは、身長167㎝。2mを越す大男たちが居並ぶデンマークで一番小柄なバレーボール選手だ。そんな息子を両親は「大きな体じゃないので通用するのか…」と心配しつつ、「やるからには悔いのないバレー人生を送って欲しい」と応援している。
亮輔さんは、サーブやネットの高さを超えるアタックなど、攻撃的な動きが禁止されている「リベロ」と呼ばれる守備専門の選手。小さくても能力がある選手に活躍の機会が与えられるようにと、1998年から国際ルールで採用されたポジションだ。昨年はデンマークリーグで最優秀リベロ賞を受賞。今やデンマークのリベロとして頂点に立つまでになった。
中学では全国大会、高校で県大会ベスト4と大活躍した亮輔さんだが、大学で初めてレギュラー落ちという挫折を味わった。「その頃から海外、まずはヨーロッパのチームでプレーしたいと思い始めた」と亮輔さん。だが強豪国の多くには外国人枠があり、得点を挙げるアタッカーならまだしも、リベロと契約するチームはほとんどないのが現状だ。そこで世界ランキング64位ながら、外国人枠のないデンマークでプロ契約を結んだのだ。
亮輔さんは北欧の強豪国が集まる大きな大会に、ある決意をもって臨もうとしていた。「相手チームのコーチやマネジャーが対戦チームの選手のプレーを見てスカウトすることもある。今後はもう少しレベルの高い国でプレーをしたいと思っている」。亮輔さんにとってこの大会は、海外に自分をアピールできる大きなチャンスだ。実は来シーズン、ヨーロッパ強豪国でプレーできなければ、帰国して引退も覚悟しているのだ。
大会では、スウェーデンとの初戦でナイスレシーブを連発して得点に貢献。翌日の新聞紙面に勇姿を飾った亮輔さんだが、強豪ノルウェーとの2戦目では、チームも亮輔さんの調子も今ひとつで、0対3と完敗。ステップアップを望む亮輔さんにとっては悔いが残る結果となった。ノルウェーチームの監督も「ヨーロッパでは労働許可や外国人の問題もあり、プロとして活躍するのは難しいだろう」と話す。少年時代からバレーボール一筋にやってきた亮輔さんに、厳しい現実が突きつけられる。ずっと支えてくれた両親に対しては「こっちで頑張って結果を出して、親孝行したいと思うが…」と、亮輔さんは複雑な思いを語る。
そんな亮輔さんに両親から届けられたのは、高校時代、県大会でベスト4に進んだ時のユニフォーム。亮輔さんが一番輝いていた頃の思い出の品だ。添えられていた母の手紙には、亮輔さんの活躍を祈願してお参りに行って来たこと、これからもバレーボール選手を続けて欲しいという思いが綴られていた。「こうして僕のことを思ってくれて嬉しい。次のチームが見つからなければ、日本に帰って働かなくてはいけないが…よい結果を出すためにも、1日1日を大切にして、悔いのないように限界までやってみたい」と、亮輔さんは決意を語る。