今回のお届け先はカナダ・ブリティッシュコロンビア州のスキーリゾート地、レベルストークマウンテン。ここでスキーパトロールとして働く雪崩予報官の藤村知明さん(34)と、大阪に住む父・敏男さん(62)と母・陽子さん(61)をつなぐ。1年に6ヶ月しか仕事がない知明さんを、両親は「季節労働者のよう。ちゃんと食べていけているのか心配。どういう生活をしているのか知りたい」と、あまり連絡をしてこない息子を心配する。
スキーパトロールの中でも、特殊な知識と技術が求められる雪崩予報官。日本では聞き慣れない職業だが、スキー場のパトロールはもちろん、スキー客の立ち入らない森の中に分け入り、雪を掘って積もった状況を詳しく調べ、雪崩が次にどこで起こるのかを予測するのが大きな仕事だ。雪崩が起こると予想される場所には、知明さんたち自らダイナマイトを背負って雪山に入り、小規模な雪崩を人為的に起こして雪崩の発生を未然に防ぐ。大自然の脅威を相手にする、とても危険な仕事なのだ。
18歳のとき語学留学でカナダにやってきた知明さんは、やがて"この雄大な自然の中で人生を送りたい"と、スキーパトロールの職を得た。だが2年目、知明さんは雪崩に巻き込まれ、その恐怖を身をもって知ることに。それを機に、雪崩についての専門的な勉強を始めたが、そんな中で、友人たちが雪崩で亡くなるつらい経験もした。「苦しく悲しかった。少しでもそういうことが減ってくれれば…」。そんな思いで知明さんは雪山と向き合う毎日を送っている。スキーパトロールとはいいながらも、スキー場だけでなく山全体、そしてふもとで暮らす人たちの命も預かる…それが雪崩予報官の仕事なのだ。「裏方の仕事です。お金のためにやっているのではありません。それだけのパッション(情熱)があるからです」と、知明さんは自負する。
家族は結婚2年目の妻と、生後8ヶ月の長男。笑顔の絶えない家庭だが、生活は決して楽ではないという。「苦しいですね。1年に6ヶ月しか働かない"季節労働者"ですから。プロとして冬だけで生きていける立場を作りたい。夏の間は、日本で雪崩の講習会とかが出来ればいいのですが…」と知明さんは夢を語るが、現状はなかなか難しいようだ。
日本を離れて16年。カナダの大自然の中で、夢と理想を懸命に追い続ける知明さんは「いままで自由奔放にさせてもらったのは本当にありがたい」と、両親に感謝する。そんな知明さんに届けられたのは、母お手製のパッチワークのベッドカバー。知明さんが子供のころ愛用していたものだ。そこには「理想を追いかける人生の中でも、温かい家庭をしっかり築いていってほしい」という母の想いが込められていた。「昔から、こうして一針一針縫って作ってくれていた。それが今の僕に通じている。一つ一つ進んでいく…そんな育て方をしてもらって感謝しています」と、見守り続けてくれた母の想いに、知明さんは思わず涙する。