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#121「メキシコ/メキシコシティー」 10月3日(日) 午前10:25〜10:55


 今回のお届け先はメキシコの首都メキシコシティー。13年前、日本語教師になるため、この地に渡った室川孝博さん(41)と、東京都に住む父・博さん(74)、母・照恵さん(66)をつなぐ。日本を離れて以来、家族とはとほんど連絡を取ってこなかった孝博さんは、3年前から完全な音信不通状態に。両親は「連絡があった頃も、あまり詳しい話はしてくれなかった。もう40才を過ぎたし、結婚のことや、生活、健康も心配」と、息子の現状が分からず不安そうだ。

 今回、メキシコで会った孝博さんは、ある映画撮影の現場にいた。「ここが僕の職場です。日本語教師はメキシコに来て5年ぐらいで辞め、いろいろあって今は俳優が本職です」と告白する孝博さん。これには父も「えぇっ!」と思わず驚きの声をあげる。ある時、東洋人エキストラを選ぶオーディションを人に勧められ、受けたところ合格。それ以来演技の魅力にはまり、人生が一変した。「別に隠していたわけじゃないけど、昔から親に連絡したところであまり喋ることもなかったし…(笑)。こういう息子だと親も諦めていると思いますよ」と語る孝博さんに、父も思わず「そのとおり!よく分かってる」と苦笑いだ。

 今回の撮影はメキシコの長編映画で、孝博さんはスペイン語をうまく話せない日本人秘書という役どころ。「ちょっとのセリフですが、やっとこれぐらいもらえるようになりました」と孝博さん。俳優の仕事をするようになった当初は養成所にも通い、日本人俳優が少ないメキシコで、CMやテレビドラマを中心に少しずつ活動の場を広げてきた。そして3年前には短編映画の主役に抜擢され、その作品は映画祭で最優秀賞を受賞。それでも「知名度はまだまだ」と孝博さんはいう。

 月の平均収入は20〜30万円ほどだが、支払いが3〜6ヵ月も先ということもザラで、決して安定しているとはいえないメキシコでの俳優業。それでも孝博さんは「僕の人生、行き当たりばったりだけど楽しんでいる。スペイン語を操る日本人俳優として、ラテン映画界で活躍出来れば」と夢を語る。そんな孝博さんには、交際2年になる日本語教師の恋人がいる。将来は結婚も考えているそうで、これも初耳の父は「えぇっ!!」と、またも驚かされる。

 これまで両親に自分の気持ちを伝えることはほとんどなかったという孝博さんだが、「父は釣りが好きで、昔は毎週のように一緒に釣りに行った。僕はいうことを聞かなくて、よく殴られました。でもこの親があって、今の僕があると思っています。殴ってくれたおかげで、まっとうに育ったという気がします」と、父への思いを明かす。父は「初めて知ることばかり、びっくりすることばかりです。参った」といいながらも、息子の言葉には心を打たれた様子だ。

 そんな孝博さんへ父から届けられたのは、子供の頃、父に買ってもらった釣りのリールと竿。孝博さんは「父は料理好きで、週末には釣ってきた魚をその日の夕食に家族皆で食べた。そういう父との思い出があるというだけでも幸せです」と、しみじみ振り返り、好き放題させてくれた両親に感謝する。その釣り竿を手に、さっそく恋人と釣りにでかけた孝博さん。「父とテキーラでも飲みながら、釣りの話や、今まで話せなかった積もる話がしたいですね。次に日本に帰る時には彼女も連れて帰って、両親に紹介したい」と語る。