今回のお届け先はアメリカ・ジョージア州の湖・レイク・レーニア。ここで開催されるバスフィッシングのチャンピオン大会に挑むプロのアングラー(ルアーやフライを使う釣り人)・深江真一さん(38)と、大阪・摂津市に住む父・頼幸さん(71)、母・涼代さん(65)をつなぐ。
幼稚園の頃に父から釣りを教わり、中学の頃からバスフィッシングの大会で何度も優勝を飾ってきた真一さん。「高校を卒業して一度は就職したけど、釣りの夢を諦めきれず、"プロになって飯を食う"と、毎日琵琶湖に通って練習ばかりしていました」と両親は振り返る。年間300日も琵琶湖に通う姿を黙って見守り続けた両親は、7年前にアメリカに渡り、活躍するようになった息子の様子を気にかけながら、「大きな大会に出ている姿を見てみたい」という。
現在はトッププロとして数々の大会で賞金を稼ぎ、生活している真一さん。今回挑むのは、優勝賞金がなんと6000万円という大会だ。真一さんは5日前から現地入りし、探知機で湖の形状や魚がいそうな場所を徹底的にチェック。他のどの選手よりも緻密な下調べと丹念なデータ収集、それが真一さんの強さの秘密だ。「一般の人は、釣りは運次第と思っていると思うが、より大きな魚をより効率よく釣れるようにするのがバスフィッシング」と真一さんはいう。
大会期間は4日間。参加選手は全米のトップランカー78人。1日に釣ったバスのうち、大きいものから5尾を計量し、総重量で競う。アメリカではゴルフより人気の高い釣りだけに、期間中は町を挙げてお祭りムードだ。初日は好調にバスを釣り上げた真一さん。1日を終えた結果は、19位というまずまずの順位で2日目に駒を進めた。
真一さんは妻・美幸さんと、大型バスを住居に改造した"モーターハウス"で生活しながら全米を回り、年間19試合に参戦している。トッププロといえど、将来に何の保証もない賞金暮らしだが、美幸さんは「それを分かって嫁に来ていますから。不安に思ったら、本人も試合に集中できませんし」と、腹は据わっている。さらに「彼は運が強い。50位までが賞金をもらえるとすると、彼は最終的に51位ではなく50位になってくれるんです」といい、真一さんには絶大な信頼を置いている。
だがそんな真一さんも、2日目の釣果は1尾のみ。上位30位までが翌日の出場権を得られるが、残念ながら真一さんは3日目に進出することはできなかった。それでも「ダメだったか〜。でもよく頑張った!」と明るく夫を迎える美幸さん。しかし大会を終えてみれば、50位以内なら賞金が1万ドルもらえる中、真一さんはちゃんと49位で賞金をゲット。美幸さんは「さすが旦那様です!」と笑顔を見せ、2人は次なる大会開催地へと向かった。
そんな厳しいプロの世界で、腕一本で勝負してきた真一さんに、両親から届けられたのは、真一さんがまだ20才の頃、釣り新聞の一面を大きく飾った記事。父はこの時まで内心「釣りで食えるのか?」と思っていたそうだが、この記事を見て安心したという。添えられた手紙には「釣りで飯が食えるまでになったこと、本当に嬉しく思います」と綴られていた。真一さんは「30才手前まで独り立ちもできず親に甘えていた。これからいい形で恩返ししたい…」と、見守り続けてくれた両親に感謝する。