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#109「アメリカ/ニュージャージー」 6月27日(日) 午前10:55〜11:25


 今回のお届け先はアメリカ・ニュージャージー州。ジャズピアニストとして活躍する信実美穂さんと、大阪市に住む父・洋治郎さん(70)と母・薫子さん(66)をつなぐ。実は美穂さんは、シングルマザーとして10才と7才の子供を育てている。父は「収入の面はずっと心配している」といい、母は「今さえ辛抱したら、子供が大きくなった時に助けてくれる」と娘の苦労を案じている。

 ピアニストとして深夜の仕事が多い美穂さんだが、毎朝7時半に子供たちを学校に送り届けることから1日が始まる。その後、美穂さんは隣町ニューヨークへ。この日の仕事はあるパーティー会場。美穂さんが所属しているソウルバンドが演奏を行うのだ。美穂さんはジャズだけでなく、ポップスからR&Bまで幅広く演奏ができるため、さまざまなオファーが入り、今は20以上のバンドに所属している。こうしたライブが週に2、3回あり、主な収入源になっているのだ。

 4才からピアノを始めた美穂さんは、短大時代に出会ったジャズに魅了され、14年前、単身ジャズの本場ニューヨークへ。そこでセネガル出身のパーカッショニストと出会い結婚。2人の子供を授かったが「当時の生活は苦しかった。彼には仕事がなく、私の方に仕事が多かったのも彼は嫌だったみたいで…」と美穂さんは当時を振り返る。結局7年後に離婚。その後、幼い子供2人を抱えながら、オリジナルCDを発表したり、名門・ブルーノートでソロライブを開催するなど精力的に音楽活動を続けてきた。「子供がもう少し大きくなったら、自分の音楽で成功して世界ツアーがしたい」。美穂さんはそう夢を語る。

 ある朝、世界的にも有名なジャズドラマーから突然、レコーディングの仕事が入った。美穂さんは子供たちに、学校から帰ったら、いつも頼んでいる近所のベビーシッターのところに行くよう置き手紙をして出掛けていく。ところが仕事中、子供たちが下校時間を過ぎてもベビーシッターの元に行っていないことが判り、美穂さんは不安を募らせる。心配なあまり慌ただしく帰宅しようとした時、子供たちから電話があり、美穂さんはホッと胸をなで下ろす。置き手紙も読まず、遊びに飛び出してしまったのだ。

 忙しい毎日の中、育ち盛りの子供たちに手を焼き、トラブルが起っても、いつも明るく前向きに生きる美穂さん。そんな彼女を支えているのは、母に言われたある一言だという。「離婚当時は辛くて、すべてをネガティブに考えていた。でもそんな時に母から『母親は何があっても子供の前では太陽であるべきだ』と言われたんです」。美穂さんはその時の気持ちを思い出して、思わず涙ぐむ

 そんな美穂さんに母から届けられたのは、美穂さんがかつて手書きした譜面。日本でジャズを始めた頃、さまざまなアーティストの演奏を聴きながら、「いつかは自分も世界で活躍したい」と夢を抱いて書き起こしたものだ。「懐かしい。私の原点です」としみじみ譜面を眺める美穂さん。添えられた手紙には、夢を抱いたあの頃の気持ちを忘れず、自分の音楽を追究して輝いて欲しいという、母の想いが綴られていた。