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#103「オーストラリア/フレーザー島」 5月9日(日) 午前10:25〜10:55


 今回のお届け先はオーストラリアにある世界一大きな砂の島・フレーザー島。世界遺産にも登録されているこの島でツアーガイドをする谷萩真樹さん(33)と、東京都に住む父・隆嗣さん(66)、母・礼子さん(61)をつなぐ。ある挫折から、オーストラリアの大自然と共に生きる道を見出した真樹さん。両親は「当時も心配しましたが、今も先が見えない仕事だから心配です」と、挫折から立ち直った息子を見守り、案じ続けている。

 真樹さんがゴールドコーストにツアー会社を立ち上げたのは6年前。自然や野生動物を保護する大切さを訴えながらフレーザー島をめぐる"エコツアー"を実施している。1泊2日で1人およそ3万2000円。お客さんのほとんどが日本人だ。フレーザー島へは片道およそ500km。往復1000㎞以上を真樹さんは一人で運転する。忙しい時期にはひと月に10往復もするという。

 100km以上続く美しいビーチや、内陸部に点在するコバルトブルーの美しい湖、そして亜熱帯雨林のジャングルなど、さまざまな自然の姿を見せるフレーザー島。そこに棲む貴重な動物や珍しい植物との出会いも、このツアーの魅力だ。真樹さんは湖で泳ぐことを希望するお客さんに、顔を水につけるならば、化粧を落とすよう告げる。「湖は一度汚れてしまうと元に戻せない。我々はこの島の10年後、20年後のことを心配しているんです」。そんなエコロジーへの啓蒙も真樹さんの大事な仕事なのだ。

 真樹さんがこのエコツアーの会社を立ち上げたきっかけはある挫折だった。家族が皆教師という家庭に育った真樹さんは、かつて都内でも有名な進学校に通い、家族の期待を背負って一流大学を目指していた。「受験に失敗して自暴自棄になってしまったんです。自分の居場所が分からなくなった」と、真樹さん。初めて経験した大きな挫折。目標を失った真樹さんは、そんな状況を変えたいとオーストラリアへ。そこで出会った大自然に魅せられて、人生が一変した。この自然の素晴らしさを伝える仕事に就きたい…と、オーストラリア国立大学に進学し、専門知識を身につけてこの会社を立ち上げたのだ。

 日本を離れて10年。今では家庭も持ち、仕事もようやく軌道に乗ってきた。受験に失敗して目標を見失ったときも、オーストラリアへ渡る決意をしたときも「自分のやりたいようにやればいい」と、ずっと支えてくれたのは母だった。そんな母から真樹さんに届けられたのは藍染めのTシャツ。胸には真樹さんが立ち上げた「ナチュラ」という会社名が染め抜かれていた。「これからもいろんな困難があるだろうけど、自分の信念を胸に立ち向かっていってほしい」。そんな思いを込めて母が手染めしたものだった。真樹さんは「世界で一つの作品ですね。感謝という言葉を今一番伝えたい…」と、感激の涙をこぼす。