今回のお届け先はオーストラリア随一のリゾート地のゴールドコースト。ここでプロを目指して単身テニス留学している竹田直樹さん(16)と、大阪市に住む父・清隆さん(47)、母・智江さん(44)をつなぐ。「海外でプロになりたい。少しでも早く海外へテニス留学したい」と、中学2年だった直樹さんの真剣な願いに折れ、両親が直樹さんを見送って1年。留学は3年間の予定だが、その費用は年間なんと400万円にものぼる。両親は「経済的にかなり厳しい」といいながらも、直樹さんの夢をサポートするため、家計を切り詰めて応援している。
直樹さんもそんな両親の期待に応えるべく、この1年ひたすらテニスに打ち込んできた。今年からシニアの試合に本格的に参戦を始め、現在オーストラリア国内ランキングでは287位だ。専属コーチのジェフ・シュナイダーさんは「世界トップ10プレーヤーになれる素質がある」とその才能を高く評価する。実は直樹さんはジェフさんが教えていたスクールを見学し、彼の技術と人柄に惹かれて留学を決意したのだ。2人は生活も共にし、まさに親代わりの存在だった。
そんなジェフさんが仕事の関係で急遽オーストラリアを離れることになった。この1年支えてくれ、大きな心の拠り所でもあったジェフさんを失うことは、直樹さんにとっては大きな痛手で、不安を募らせるが「留学生活はまだ3分の2残っている。立ち止まっている時間はない」と、気持ちを立て直す。
新しいコーチは現役の選手としても活躍する26才の若いブレッド・ハンターさん。直樹さんは不安を断ち切るように、毎日朝から夕方まで厳しい練習に打ち込んだ。一方、私生活でも新しいホストファミリーとの暮らしが始まった。高級住宅地の豪邸で、プールはもちろんクルーザーもある裕福なお宅。一家は息子3人のいる5人家族で、両親は早くも直樹さんを本当の息子のように可愛がってくれているようだ。そんなゴールドコーストはリゾート気分一色。遊びの誘惑も多そうだが、直樹さんは「興味はない」ときっぱり。それは、おこずかいを節約するためでもあった。「ここに来させてもらっているだけでもお金を使っているのに…余計なことには使いたくない。両親に悪い」と、テニス漬けのストイックな日々をおくる。そんな姿に山口智充は「自分の意志をちゃんともっていて素敵な息子さんだ。頼もしい!」としきりに感心する。
小学3年でテニスを始めた直樹さんは、中2の頃、スコアが伸びず、大きな壁にぶつかったことがあった。「そのとき父に手伝ってもらって乗り越えた。父は一緒に朝、走ってくれたりもしました」と振り返る。その結果、見事全国大会で準優勝を果たし、壁を乗り越えることができた。そして今回、ずっと支えてくれたコーチを失うという大きな転機に立った直樹さんに、父から一冊のノートが届けられる。それはかつて直樹さんが壁にぶつかったときに、父の勧めで書き始めたテニスノート。父が"少しでも力になれたら…"と考え、直樹さんの悩みに答えた父子の交換日記だ。最後のページには直樹さんが初めて入賞した試合の写真が貼られ、"直樹の夢はお父さんたちの夢でもあります…"と新しいメッセージが書き加えられていた。それを見た直樹さんは「初心に戻れた。あの時、日本で壁にぶつかったことも、必要なことだったのだと今は思う」と笑顔で語る。1年間の留学生活は、直樹さんの心も大きく成長させたようだ。「目標は世界一のプロテニスプレーヤーになること」。両親の期待を胸に、直樹さんは力強くそう語る…。