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#089「スウェーデン/ヨーテボリ」 1月24日(日) 午前10:25〜10:55


今回のお届け先はスウェーデンのヨーテボリ。この地で、今は失われつつある中世の伝統技術を駆使してパイプオルガンを手作りする横田宗隆さん(57)と、東京に住む母・雅子さん(81)をつなぐ。宗隆さんが日本を離れて33年。その卓越した技術で、世界が尊敬する日本人100人に選ばれるまでになった。息子を遠く日本から応援し続けた母は、そんな宗隆さんが57才にして授かった2人目の孫に「ひと目会いたい」と願っている。

 宗隆さんは大学卒業後、パイプオルガン建造家を志し、アメリカをはじめ世界中でその伝統技術を研究し、職人としての腕を磨いてきた。現在は世界で唯一パイプオルガン専門の研究室があるヨーテボリ大学に招かれ、オルガン製作を続けている。宗隆さんが6年を費やして完成させたという教会のパイプオルガンは、電気制御だけではなく、昔ながらのふいごで空気を送る仕組みも使われている。教会の建物と一体となったパイプオルガンの内部には4500本ものパイプが並ぶ。すべて宗隆さんが一つ一つ手作業で仕上げており、中世の伝統技法が守られている。それは木工、金属加工、建築などの技術の粋を集めたまさに芸術品。「今でいえば宇宙開発技術レベルと同じようなものだったと思う」と宗隆さんはいう。

  宗隆さんとパイプオルガンの出会いは14才のとき。音楽好きな両親からクリスマスにプレゼントされた1枚のレコードがきっかけだった。「慰められるような、夢の中の世界のような不思議な感じだった」と宗隆さん。それはシャルロッテンブルグ宮殿のアルブ・シュニットガー・オルガンによるものだった。現在、宗隆さんがアメリカの教会に設置するために制作中のパイプオルガンは、このオルガンを模して作られているという。「子供の頃から夢のように思ってきた楽器を、まさか自分が研究して複製を作るようになるとは思わなかった。その仕事が決まったときは震えました」と宗隆さんは語る。

 家庭では2才と6ヵ月の2児の父。率先して家事や育児も手伝い、今は家族と過す時間が一番大切だという。だが気がかりなのは81才になる母のこと。3年前に他界した父は寡黙な仕事一筋の人で、父子で語り合うこともなかったという。「両親は僕が幸せにやっているならそれでいいという考えでした。でもいつまでもそういう訳にはいかない。日本に帰ることも考えている」と宗隆さんは年老いた母を案じるている。

 日本を離れ、パイプオルガン一筋に邁進してきた宗隆さん。そんな息子へ母から届けられたのは、父が晩酌に使っていた切子の焼酎グラス。互いに酒が好きだったにも関わらず、父と一緒に飲む機会がなかった息子に、父のグラスで酒を酌み交わす時間を作って欲しいという母の粋な計らいだった。父が大好きだった焼酎のそば湯割りを味わいながら、亡き父を偲ぶ宗隆さん。そして「母にはたくさんの愛をもらった。楽器を通じて多くの人に母からもらった愛を届けたい」としみじみと語る。