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#079「マレーシア/ランカウイ島」 11月8日(日) 午前10:25〜10:55


今回のお届け先はマレーシアのランカウイ島。ここでパイロット養成学校の教官として働く野末直揮さん(30)と、愛知県に住む父・幸孝さん(60)をつなぐ。直揮さんが12才でオーストラリアへ留学して以来18年も離れて暮らす父と子。大空を飛び続ける息子を、父は「危険な仕事だけに心配です」といつも案じている。

直揮さんはマレーシアでもトップクラスといわれる名門校「HMエアロスペース」の教官になって2年。現在は実地訓練担当の教官として生徒とコックピットに座り、指導を行っている。校長は「プロフェッショナルな指導者」と直揮さんを高く評価し、生徒たちからも「知的で教えるのが上手。それに面白い」と慕われている。

直揮さんが12歳で単身留学したのは、母・陽子さんの強い勧めがあったから。「母は英語にとても興味があった人で、自分にできなかったことを僕に託したようです。頭がいい人で厳しかったですが、あの母じゃないと自分はダメになっていたと思う。小学生の時はいじめられたりもしていましたから」と母について語る直揮さん。そんなオーストラリアで「旅客機のパイロットになりたい」と夢を抱き、19歳で教官の免許を取得。その夢を一番応援してくれていたのが母だった。その母は7年前、乳ガンで他界。直揮さんは母の気持ちに応えるためにも、1日も早く旅客機のパイロットになりたいという。そのために今は教官としてフライト時間を積み重ね、操縦技術を磨く毎日なのだ。

ある日のフライト中、台風の影響で上空の気流が大きく乱れて機体が風に翻弄され、なんと燃料漏れの非常事態が発生する。「まずい…私が操縦する」と生徒に代わって操縦桿を握る直揮さん。緊張が走る中、冷静な判断でなんとか無事に空港に帰還したが、これまで何度もこのようなトラブルを乗り越えてきたという。

直揮さんはアクシデントに見舞われたときに感じる風のことを語る。「1度、エンジンが止まったことがあるんです。空港には滑空して戻るしかなく、その手前にある山を越えられるのか…と思ったとき、飛行機が風でブワッと浮いて…。僕ら"運も技術のうちだ"っていうんですが、味方にできるものは何でも味方にしたいと思っています」。風は直揮さんの強い味方になってくれているようだ。

そんな常に危険と隣り合わせの直揮さんへ、父から届けられたのはオーストラリアコインのペンダント。12才の直揮さんをオーストラリアへ送り出したお母さんが、息子の代わりだと思って肌身離さずつけていた形見の品だ。「息子は"自分が空を飛ぶときは不思議といい風が吹くんだ"って言うんです。たぶん女房が心配して、操縦するときに風を吹かせているんだな…と思います」と父。ペンダントには「直揮を守って欲しい…」という父の想いが込められていた。そんな父へ直揮さんは「1日も早く一人前になって、お父さんがいつでも引退できるように頑張りたい」とメッセージを語る…。