今回のお届け先はイタリア・フィレンツェ。この地でアンティーク家具の修復技術を学ぶ望月貴文さん(29)と、東京に住む父・義宣さん(62)、母・由利子さん(60)をつなぐ。2年前まで家具メーカーの営業マンだった貴文さん。父も祖父も金型職人という家に育ち、「職人として本場で一から学びたい」と、安定した職を捨ててイタリアに渡った。両親には2年の約束で、フィレンツェの職人の元に弟子入りしたが、母は「年齢的にちょっと遅いのではないかなと思った」、父も「食べていけるのか…」と心配している。
30歳を目前にしての新たな挑戦。貴文さんは「元々家具が好きで、作りたいという思いはあった。父と祖父もそうですし、職人という人たちにも興味と憧れがあった」と話す。アンティーク家具修復の"マエストロ"である師匠のレナート・オリヴァストリさん(52)は優れた技術をもち、工房には国内外から100年、200年以上前の貴重な家具の修復依頼が舞い込む。そんな家具の虫食い穴を一つ一つ埋める細かな作業をする貴文さん。机の脚1本を修復するだけで1ヵ月かかることもあるという地味で気の遠くなるような作業だ。「アンティーク家具は、"100年経ったもの"という価値を持っている。傷にも持ち主の思い入れがあるので、できる限り残して直すようにする。そこが修復師の面白いところであり難しいところ」という。そんな貴文さんをレナートさんは「いい腕をしている。器用だし我慢強い」と高く評価している。だが貴文さんは学生ビザで来ているため給料が貰えない。日本で働いていたときの貯金は底を尽き、現在は両親に借りた200万円で生活している状態なのだ。
貴文さんは今、アンティーク家具に多く見られる伝統技法「象眼細工」に魅了されている。色の異なる薄い木をパズルのように組み合わせ、さまざまな模様や絵柄を作り出す技術で、貴文さんが自分の作品のモチーフにしているのは浮世絵。家に帰っても工房から借りた道具を使って制作に取り組む貴文さん。割れやすい木を一つ一つ手で組み合わせながら「本当はピンセットを使うといいんですが…道具も安くないので、工房から借りています」と。
両親と約束した期限は今年11月だが、貴文さんは「今、いろんな可能性を感じている。あと1年いることができれば、…」と、悩んでいた。そんな息子の想いを知った父は「どうせならちゃんとした職人になってほしい」と、援助を続ける決意のようだ。そして今回貴文さんの元に届けられたのは、金型職人の父が息子を応援する気持ちを込めて手作りしたピンセット。象眼細工用に自分の道具を欲しがっていた貴文さんは「最高です。すごく嬉しい」と大感激する。食生活を案じる母からは、貴文さんの大好物だった松茸ご飯とサツマイモの煮付けが届けられる。両親の想いに触れ、貴文さんは「30歳を目の前にした今しかできないことだと思うから、時間を無駄にしないように大切に過したい」と、修行を続ける決意を語る…。