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#063「千田栄子さん 帰国スペシャル 後編」 7月5日(日) 午前10:25〜10:55


■内容

南米で活躍するオペラ歌手の千田栄子さん(42)が12年ぶりにウルグアイから帰国、母・時子さん(67)、父・安男さん(67)と感動の再会を果たした。栄子さんは、同じオペラ歌手である夫フェデリコさん、4歳になる息子のダヴィド君と共に懐かしい実家に戻り、12年の空白を埋めるかのように、家族水入らずの濃密な時間を過ごす。両親と食事に出かけたり、母娘で一緒に台所に立ったり…。そんな中での何気ない会話で互いをいたわり合う母と娘。そうして数日間を過ごした母は「娘の性格が変わった。とても優しくなった。人間、苦労したら優しくなるんやねぇ」としみじみつぶやく。栄子さんが日本を離れてから14年。ブラジル人の前夫の暴力、離婚、そして愛する3人の娘たちとの別離…。フェデリコさんと再婚した現在も、娘たちに養育費を送っているため経済的に苦しく、3年前に父が脳梗塞で倒れた時でさえ日本に帰ることはできなかった。そんな両親も知らなかった様々な苦難が栄子さんを変えたのかもしれない。
だが12年ぶりの家族の再会は、再び訪れる別れの始まりでもあった…。

今や南米で知らない者はいないといわれるほど有名なオペラ歌手となった栄子さんは、今回、日本でコンサートを開き、両親に初めて自分のステージを見せる。そこには栄子さんのある覚悟があった。「もし何かあったとしても、すぐに日本に帰れる状態ではない。両親の前で歌うのはこれが最後になるかもしれない」と…。
そして迎えたコンサート当日。ホールには栄子さんの姿をひと目見ようと、大勢のお客さんが詰めかけた。山口智充も会場に駆けつけ、ご両親と対面。「今のお気持ちは?」とたずねると、両親は「言葉にできません。うれしい」と喜びを隠せない様子だ。"一緒に過ごせるのもあとわずか""もう会えないかも知れない"…複雑な想いを胸に栄子さんがいよいよ登場、その歌声を両親に届ける。
1曲目は歌劇「ジュリアス・シーザー」から「この胸に息のある限り」。この曲は「つらい時は泣けばいい。もっとつらい時は笑えばいい」と歌い上げるもので、日本に帰ることが出来なかった12年間、壮絶な苦労を背負って生きてきた栄子さんだからこそ言える、両親へのメッセージが込められていた。そして最後の曲…。栄子さんは「日本で歌うのも、両親に聞いてもらうのも最後になるかもしれない」と挨拶し、南米で成功するきっかけとなった一番大切な曲、「マダム・バタフライ」の「ある晴れた日に」を熱唱。12年ぶりに過ごした家族とのかけがえのない時間を心に刻みながら、また寂しい思いをさせることになる父と母を想い、祈るように歌い上げる。便りのない娘を恨んだこともあったという母は、さまざまな苦しみを乗り越えて磨き上げられた栄子さんの魂の歌声にじっと聞き入り、父は人目もはばからず涙をぬぐう…。 
こうしてコンサートは終わり、栄子さんと両親に再び別れの時がやってくる。惜しむように最後の時間を過ごす家族。近づく飛行機の搭乗時間。「つらい時は泣けばいい。もっとつらい時は笑えばいい…」あの歌に込めたメッセージ通り、栄子さんは最後まで笑顔を崩すことなく、空港内に消えて行く。その姿が見えなくなるまで手を振り続ける両親。「泣いたらアカン」「泣いたらアカンよ」互いに言葉を掛け合いながら、それでも涙がこらえきれない。
そして、栄子さんがいなくなった空港…、最後に父がポツリとつぶやいた。「また、会えるよ…」