今回の配達先は、オーストラリア最大の都市、シドニー。脱サラして、ラーメン屋を開店する東田守弘さん(50)と、兵庫県尼崎市に暮らす父・米さん(82)、母・葉子さん(78)をつなぐ。
「守弘さんは、脱サラしてラーメン屋さんを開店するということですが、前職は何をされていたのですか?」と山口が尋ねると、「シドニーで、宝石会社の社長をしていた。」とお父さん。「なぜ、ラーメン屋さんをしようと思われたのかご存知ですか?」と聞くと、「日本に帰った時に、たまたま入って食べた『無鉄砲』というお店のラーメンを食べて衝撃を受けたかららしいです」とお母さん。
シドニーへは、7800キロ、およそ11時間の旅。住所を頼りに、開店を2日後に控えた守弘さんのお店を訪ねた。シドニーのチャイナタウンの一角、中華料理のお店が軒を連ねるフードコートの一番奥の10坪足らずのスペースが守弘さんのお店だ。
守弘さんは、2年前まで400人以上の従業員をかかえるオーストラリア有数の宝石会社の社長だった。家族とともに何不自由ない生活を送っていた。守弘さんの人生を変えたのは、京都を本拠地にする行列の絶えないラーメン屋「無鉄砲」。このお店の超濃厚なとんこつスープに惚れ込んだ守弘さんは、会社を辞めて「無鉄砲」で1年間修行を積み、このラーメン1本でオーストラリアで勝負することを決心した。「あれだけおいしいラーメンをシドニーの皆さんに食べていただきたい」との思いからだ。
シドニーには、日本のラーメン屋は20軒ほどあるが、濃厚なとんこつスープを出す店は無い。しかもラーメン屋では、他の日本食メニューを出すのが当たり前。その上、ラーメンには、豪華なとんかつやカラ揚げなどのトッピングがないと受けないという。しかし守弘さんは、本格的なとんこつラーメン1本で勝負することにこだわっている。
開店前日には日本から、守弘さんの師匠である『無鉄砲』の社長、赤迫さんがかけつけてくれた。味見をした師匠の感想は、「麺とスープの相性が悪い」。すぐに製麺所の社長がかけつけ、明日朝の開店までに改良した麺を届けると約束してくれた。そして、いよいよ開店を迎えた守弘さんのお店。こだわりのとんこつラーメンに対するお客さんの反応は…?
守弘さんへ、両親からの届け物は「お父さんが戦地ラバウルで3年間、肌身離さず持っていた水筒とベルト」。添えられた手紙には、お父さんがかつて、人生の困難にぶつかったときにこの水筒とベルトを見て自分を励ましたこと、これから数々の困難に直面するであろう息子にも、強い気持ちで乗り越えてほしい、そんな想いがこめられていた。