今回の配達先は、アジアとヨーロッパの文化が融合する国、トルコ共和国。その南部の町、アンタルヤでキリムと呼ばれるトルコの伝統織物を販売している斎藤幾美さん(45)と、千葉県に暮らす母・野中英子さん(70)とをつなぐ。幾美さんは15年前、突然仕事を辞め、女手一つで育ててくれた母に何の相談もなくトルコで店を開いた。
「幾美さんがトルコに行くとことに、反対はしなかったのですか?」と山口が聞くと、「何でも自分で決めて行動するので、反対するもしないも無かった。仲が悪いわけじゃないけれど、ベタベタしない親子関係で、あんまり連絡もしない。」とお母さん。
トルコへは、8500キロ、およそ13時間の旅。
穏やかな地中海と険しい山に囲まれたトルコ南部の町、アンタルヤ。幾美さんはトルコへ来て15年、路地裏の地下にある10坪ほどのお店で伝統織物のキリムを販売している。
キリムとは、羊やラクダの毛で織られた布で、かつては遊牧民が袋や敷物として使っていたもの。その歴史は紀元前500年にも遡り、中でも100年以上昔のものは、アンティークとしての価値がつき、高値で取引されることもある。
幾美さんがキリムに魅了されたのは、18年前に母と来たトルコ旅行がきっかけだった。キリムには織り手である農村の女性たちの気持ちが織り込まれていることを知った幾美さんは、「もっとキリムについて知りたい」と、帰国後すぐに仕事を辞めてトルコに留学。そのさなか、留学資金を全てはたき、キリムの店を構えた。たった5枚のキリムから始めたお店。幾美さんが外国人ということもあり、当初、全く売れなかったそうだ。そんな苦労はもちろん、お店を始めたことすら日本のお母さんには連絡しなかったという。
幾美さんが車を6時間走らせて向かったのは、エシメ村。200軒ほどの家が点在する小さな村。ここでは、今でも女性たちが昔ながらの伝統を守り、キリムを織っている。幾美さんは度々この村を訪れ、古いキリムの買い付けや、キリムの知識をより深めるために織り方を教わったりしている。
幾美さんがトルコにキリムの店を構えて15年。最近、幾美さんは、日本に暮らすお母さんのことを思い出す日が増えたという。「最近、母が退職したと聞き、なぜ母の近くにいれないのだろう。なぜ私のそばに母がいないのだろう。そう考えると辛くなる」と。今、幾美さんをトルコに留まらせているのは、キリムだけではないという。それは、幾美さんの胸に残るのは、楽しかった小学校時代のこと。その頃と同じ気持ちにさせてくれるのが、人情味あふれるトルコの環境なのだという。そのトルコに何か恩返しがしたい、と幾美さんは無料でキリムの織り方をトルコの若者に教えている。
幾美さんへお母さんからの届け物は、「幾美さんが小学生のときにお母さんと読んだ一冊の童話」。親子の思い出がいっぱい詰まった本を楽しそうに読み返す幾美さんの目には涙があふれて…