日本と海の向こうをつなぐのは、山口智充。
今回の配達先は、北欧の国・デンマーク王国。デンマークの国に認められた銀細工職人として頑張っているフェアディナンセン・有紀さん(50)と、京都に暮らす父・酒井正朝さん(80)、母・龍子さん(80)をつなぐ。
「有紀さんのどんなところが心配ですか?」と山口が聞くと、「離婚が決まり一人暮らしをしているがちゃんと生活できているのかどうか」と両親。
デンマークへは、アムステルダムを経由して9800キロ、およそ15時間の旅。有紀さんが暮らすのはデンマークの首都・コペンハーゲン。
有紀さんは、日本でデンマーク人と結婚後、銀の本場デンマークで職人になりたいと海を渡り今年で12年。有紀さんは、コペンハーゲンで5人しかいない、チェイサーという資格を持つ銀細工職人だ。
銀細工職人の仕事は2つにわけられ、ハンマーで形を作るのが「シルバースミス」、それに、繊細な装飾を施すのが「チェイサー」。ダイヤモンドをカットするように、銀の正面に凹凸や輝きを入れていく。有紀さんが扱う銀製品は食器からアクセサリーにいたるまで様々。工具はハンマーと鏨(たがね)の二つだけ。刻み込む装飾によって100種類の鏨を使い分け、手になじむものを用いるために鏨も全て自分で作るそう。
銀細工職人になったきっかけを有紀さんに尋ねると「小さい頃からお父さんの趣味の仏像彫りを横で見るのや手伝うのが好きだった。木からどんどん立体ができていくのがおもしろかった。ごつっとした職人の手は父親譲り。」と。
12年前にデンマーク人の夫と、二人の子供とともにデンマークに渡ってきた有紀さん。しかし1年半前離婚することが決まり、今は子供たちとも離れアパートで一人暮らしをしている。世界的にも離婚率が高い北欧諸国。デンマークの離婚率はおよそ40%。しかし多くの人が離婚後も元の家族と良好な関係を築いているという。料理が得意という有紀さんは、週に2〜3回は子供と一緒に夕食をとりながら過ごす。離婚によって始まった一人暮らしとはいえ、穏やかな日々を送っているという。
有紀さんは、半年後にロンドンで行われる世界的な展示会への出品が決まっており、今はその製作に追われている。有紀さんがこだわるのは「霰(あられ)」という戦国武将の鎧などに使われていた日本の技術。この「霰」を施すことができるのはヨーロッパでは有紀さんただ一人だという。ここ数年有紀さんは、デンマークの銀細工文化と日本の伝統技術の融合という大きなテーマに取り組んでいる。
そんな有紀さんへ、日本の両親からの届け物は「お父さんが彫った仏像」。体を悪くして今は仏像作りが出来なくなったお父さんの最後の作品。遠く離れた娘の幸せを願い続ける父の想いが込められていた。