日本と海の向こうをつなぐのは、山口智充。
今回の配達先は、フランスの首都・パリ。創業100年を誇る老舗でパティシエの修行をしている西原裕勝さん(23)と、京都に暮らす父・西原金蔵さん(55)、母・純子さん(61)をつなぐ。実は、お父さんは日本を代表するパティシエで、自身も若い頃にフランスで修行をしていた。
「裕勝さんのことで一番心配なことは?」と山口が聞くと、「海外に出て完全に自由になる分、よほどの意識を持たないと挫折してしまう。そこが心配」とお父さん。
フランス・パリへは、9700キロ、およそ12時間の旅。裕勝さんは、高校卒業後フランスへ渡り、パリの製菓学校で学び、フランスのパティシエ資格を取得した。お父さんは、「厨房のダ・ヴィンチ」、「フランス料理界の巨星」と呼ばれた料理人、故アラン・シャペル氏から絶大な信頼を得て、
三ツ星レストランの製菓長として腕をふるっていた。その父の姿を追って裕勝さんは、パティシエとしての第一歩を踏み出したばかり。
パリの中心部に裕勝さんの働く「アンジェリーナ」がある。創業100年を超える老舗で、休日になると開店前から行列が出来るほどの人気店。朝6時から午後3時まで働き、月給はおよそ4万円。働き始めてまだ1ヶ月の裕勝さんが担当しているのは、飾りつけ。フルーツを乗せたり、クリームを絞ったり単純な作業の繰り返しだ。
午後3時に仕事が終わった後も、修行は終わらない。パリで知り合った日本人パティシエ菊地さんに飴細工を教わる。休日には、パリで知り合った修行中の日本人料理人と料理の勉強会。勉強会の最後を締めるのは裕勝さんのデザート。今日は裕勝さんがパティシエになろうと決意したきっかけとなった、りんごのタルトを作った。「デパートの実演販売で初めて父と一緒に仕事をした。それが楽しかったのでパティシエになろうと思った」と裕勝さん。
仕事終わりの裕勝さんが向かった先は、最高級ホテル「リッツ・パリ」の中にある料理学校「リッツ・エスコフィエ」。リッツ料理学校の校長、ドミニクさんに会うためだ。ドミニクさんは、お父さんがアラン・シャペルで働いていた時の同僚で、20年来の親友。そのドミニクさんに、裕勝さんのデザートの味を見てもらうのだ。裕勝さんの作ったデザートを食べたドミニクさんは「友達に出すなら良いが、レストランでは許されない。基本を大切にしなさい。基本を大切にすれば必ずうまくいく」とアドバイス。
パリに来て4年、早く父に認められたい思いでがむしゃらに頑張ってきた裕勝さん。焦るあまりに、一番大切なものを見失っていたのかもしれない。そんな裕勝さんへの届け物は、「30年近く前にお父さんが初めて手にしたお菓子作りの本」。そこに記されているのは、お菓子作りの基本中の基本。それを手にした裕勝さんは…。