日本と海の向こうをつなぐのは、山口智充。
今回は、大阪府堺市に住む母・三宅洋子さん(66)、と、パリに住む息子・
直也さん(33)をつなぐ。
直也さんは、金管楽器製造の人間国宝、フィリップ・ロウさん(58)の元に弟子入りした。
しかしその名誉の裏には大きな代償があるという。
人間国宝の技術を完全に継承し、さらに次の世代に伝えるまで日本には帰れないのだ。
日本から飛行機で12時間、9700キロ離れたフランスに到着。
パリから地下鉄に乗り1時間、直也さんの働く工房に到着。
直也さんの仕事内容はナチュラル管というシンプルな構造の管楽器の製造。
トロンボーンやチューバの修理も手掛けている。しかし年々修理は減ってきており
国からの援助がないと工房の持続も難しいという。
フィリップさんが引退すると何百年と引き継がれてきた管楽器製造の技術を伝えるのは
直也さん一人になる。
スタッフからのお土産でフランスの人間国宝全員が掲載されている書籍には
弟子として直也さんの名前も記されていた。
「これは本当にすごいことらしいですよ!」という山口の言葉にお母さんも嬉しそう。
直也さんは「内気で引きこもりがちで何をやっても長続きしない子供」で両親はとても心配したという。直也さんを変えたのはトロンボーンとの出会いだった。大学のブラスバンド部に入りトロンボーンを始め、「努力の意味がやっとわかったよ」と話したという。
直也さんの夢は、トロンボーンを作ること。
シンプルなナチュラル管の楽器しか作ったことしかない直也さん。
今はまだ複雑な構造を持つトロンボーンを作る技術や知識がないのだ。
8年前に亡くなった直也さんの父、毅さん。直也さんは「今の自分の姿を父に見てほしかった」と語る。日本からのお届けものは、その父が使っていた設計の道具。
一つでも楽器製造の役に立てば、という母の気持ちが込められていた。