• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民179人目
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  • 2013.03.21

今週のアニ民はケイファクトリー社長・鈴木聡さんです。

鈴木さんと初めて会ったのは1988年夏だったでしょうか。「うる星やつら」「らんま1/2」などの名物プロデューサー、キティフィルムの故落合茂一さんに新橋の第一ホテルで紹介されました。第一印象はとにかく背が高い!195㎝という業界屈指の長身とそれゆえな大きなこぼれそうな笑顔が今も記憶に残ってます。

紹介されたのは実はその後一緒に「YAWARA!」を手掛けることになるから、でした。企画成立に紆余曲折あったものの、鈴木さんとマッドのマルさん(当時のマッドハウス・丸山さんとの「YAWARA!」プロデューサートリオスタートの瞬間でした。実際始まってしまうと現場はスケジュール含めて壮絶なものになります。お互いにかなり胃の痛い思いもされたでしょうが、まあアニメーション作りにおいてそれはそう珍しいことではないのですが。

結局番組は1989年10月にスタートするのですが、その半年前のスタートのスケジュールも見据えていて1988年秋にはいろいろな作業に突入していました。…その時期は昭和が終焉を迎えつつあるころで、当時東京編成部員だった僕は有事の際にすぐに対応できるように交代制でYTV東京支社に寝泊まりしているメンバーに組み込まれていました。なので会社にいる限り終わりの時間気にせずに打ち合わせができ、それ幸いとばかり鈴木さんも会社にやってきてずっと打ち合わせを重ねます。

あれはプロ野球パリーグの近鉄-ロッテ戦でしたか、この日のダブルヘッダーに連勝すれば首位西武を逆転で優勝できるという第2試合が中継されてました。あまりに有名な試合なので日付もはっきりしていて10月19日、その日に僕と鈴木さんはずっとYTV東京支社ですごし、野球の結果も気にしながら仕事をし、最後は会社の宿泊施設で仮眠をとることになります。

浦沢直樹先生の原作が面白いのに加えてキティさんマッドさんスタッフのがんばりもあり、「YAWARA!」は異例のヒットとなりそれからバルセロナオリンピック終了後まで丸3年放送されることになります。まさに世の中はバブル時代、年に数回されたスタッフたちとのパーティもにぎやかで、僕らは「YAWARA!」のおかげでいくつものバブル気分を味わうことが出来た気がします。

もうひとつ鈴木さんとのお仕事で絶対にお伝えしたいのがドラマ制作。YTVドラマ新時代の幕開けとなった快作「悪女-わる-」であります。これも「YAWARA!」の関係から起きた話でそのあとの「お茶の間」も含めて1992年からのドラマ快進撃へとつながります。実は書きたいことばかりのドラマ現場だったんですがそれはまたの機会に。

今書かなければいけないのがこの4月からのYTV新ドラマ「でたらめヒーロー」これはどうしようもないダメな男がひょんなことから10分間だけ10倍の能力を得てヒーローになる(というよりならざるをえない)というストーリーの新ドラマ。その主役をあの佐藤隆太が演じ、制作協力にケイファクトリーが入ってくれます。

今回から放送枠が拡大するして55分枠になるというタイミングでのこのドラマ、そういえば「YAWARA!」も「悪女-わる-」も後で思えば何らかの大きなスタートとなった作品でしたよね。このドラマも大きな新風を吹き込んでくれる気がします。写真はその番組ポスターです。

その昔一緒に地下鉄丸ノ内線に乗る時に、その背の高さから少しお辞儀をするように乗り込む鈴木さんを今でもよく思い出します。師匠の伊地知啓さんを受け継いで、社長業ももうずいぶん長くなりましたよね。その背の大きさが視野の大きさにつながっている独特の判断で、これからもTV業界を引っ張っていってくださいね。
スワッチのアニメここだけの話