• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民55人目
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  • 2010.08.26

 今週は「名探偵コナン」鈴木次郎吉役の声優・永井一郎さんです。

 アニメ「サザエさん」波平役として、知らない日本人はいないという声優の永井さん。僕は本当に長いお付き合いになります。初めて永井さんにお会いしたのは1989年7月のこと。その年10月スタートしたTVアニメ「YAWARA!」猪熊滋悟郎役としてです。

 まだ当時声優としては少し経験が浅かった主人公猪熊柔役・皆口裕子さんを最初はフォロー気味に、そしてすぐに彼女のキャラを立て、血縁よりも柔道というスポーツ一点を介したじっちゃんと孫娘にしたてあげていく様は、何か良い舞台をみているかのようでした。いつも“んまいっ!”(うまい!じゃない)と何かにつけて食べているじっちゃんは存在感抜群で、永井さんの読みあげる「柔の道は一日にしてならずぢゃ」などの数々の名言は、“ぢゃ!”音(じゃ!じゃない)を発する独特なイントネーションにより、より深く記憶に刻まれることとなります。

 ただ今お騒がせ?中なのが「名探偵コナン」鈴木次郎吉であります。園子のお家・鈴木財閥の相談役という立場を利用して、もうやりたい放題の元気じいさんを永井さんは見事に演じられています。怪盗キッドを目の敵にしてなんとか捕まえる、というより単に出し抜いて新聞の一面に載ってやる、というちょっといそうもない子供じみたやんちゃさを、永井さんは憎めないキャラクターとして見る人に定着させてくれます。この4月の映画「天空の難破船」での巨大飛行船はまさに次郎吉のワガママそのものでしたし、8月28日から3週にわたって放送する“麒麟の角”事件では、マジに少年探偵団までもダシにしてキッドを捕らえようとしています。そのどのシーンの次郎吉も、まるで永井さんが乗り移ったかのように、ブレることなく我が思う道をつき進んでいく感じがとっても気持ち良く感じられませんか。

 永井さんの趣味の一つに“絵描き”がある事は有名で、たまに仲間の人たちと展覧会をひらかれています。ここ10年のテーマは「戦争の残像シリーズ」。永井さんの少年の頃の記憶をもとに描かれてるそうで、言葉では語れないその時代の深みを写し取ったかのような色使いが印象的です。2度お伺いさせていただいたご自宅に飾られた多くの絵画にも、永井さんの人間として役者としての人生を強く語っているような気がして凄みさえ感じます。

 そう言えば「YAWARA!」原作者の浦沢さんが何か賞を取られる度に催されるパーティでよくお会いしました。でも最近YAWARA!スタッフでの食事会を開いていませんね。主に焼酎を片手に満面の笑顔で明るく大声で語る永井さんを、見ているだけで何だか勉強になる気がしたものです。最近は某局のニュースバラエティーでもステキに元気に味のあるナレーションを担当されてます。その仕事はギリギリの厳しい時間の中で大量な原稿をこなさなくちゃいけないやつですよね。永井さんの年齢で声優も含めてその仕事量には本当に頭が下がります。

 「サザエさん」の波平役は41年前のオーディションだったそうで、僕たち後輩につらかったであろう戦争の光景を明るく丁寧に話してくれて、芋焼酎水割りを本当においしそうに飲む、すべてがステキな愛嬌にも包まれて永井さんと言うヒトと語りがそこに存在します。そんな声優・永井さんを代表するキャラクターは波平であることは否定できませんが、(なんとなく読み方も性格も似ている?)滋悟郎と次郎吉が僕にとっての永井さんそのもの。どうかこれからも健康にだけは気をつけて、次郎吉のようなスケールでマイペースに活動されながら、僕たちに滋悟郎のようにカツッ!を入れていってくださいね。