• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民67人目
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  • 2010.11.18

 今週はコアミックス代表取締役社長 堀江信彦さんです。

 10月25日創刊された月刊誌「コミックゼノン」編集長でもある堀江さんは元集英社「少年ジャンプ」の編集長。そんな堀江さんと初めて出会ったのは僕が「シティーハンター」の企画をしている1986年11月のことでした。

 当時「シティーハンター」の編集担当だった堀江さんと何度かお話させてもらったアニメ企画で1987年4月からの放送スタートが決まったものの、ちょっとしたトラブルにより12月にその企画が危ぶまれる事態になりました。当時の日本サンライズ・植田益朗さんと一緒に、アニメ化のためのさまざまな準備をすると共に、企画内容など編集部を説得する材料を作り出し集める時間を重ねていた年末。若さも手伝って前向きばっかりの自分も、放送が決まった企画が頓挫しかねない現実に、さすがに背中が寒く感じる日々が続いていたのです。

 1987年1月3日午後2時ごろ、当時京王線仙川に住んでいた僕は違う路線の吉祥寺にいました。いろいろ思いつめてなぜか駅前の本屋をウロウロしていたのです。そこで偶然出会ったのが堀江さんでした。本屋隣の2階の喫茶店に僕を連れて行ってくれた堀江さんはそこで2時間、北条さんが「シティーハンター」連載を始めた頃の話をしてくれました。北条さんも担当の堀江さんと共に創作する苦しみを、ぶつかるべき壁を経験していたのです。

 手触りの良いハードなストーリーより、楽しく笑い飛ばせる軽妙なキャラクター。普通一面だけでもちゃんとできないのに、二枚目と三枚目両方の面を持つ稀なるキャラクター・冴羽リョウを従えているんだから、彼に楽しく自由に動いてもらおうよ。モノつくりの基本と言えるようなそんなスピリッツを伝えてもらったような気がします。そのおかげで北条先生が生み出した“もっこりパワー”はその時からアニメにしっかり根付いてくれました。

 ジャンプ編集長のあと「メンズノンノ」とか集英社でもハードな雑誌「BART」の編集長を経て独立されたのが2000年。株式会社コアミックスを設立します。そこで創刊したのが週刊「コミックバンチ」でした。創刊号から連載した「シティーハンター」のパラレルワールドとした「エンジェル・ハート」スタートには驚きました。なんにせ香がヒロインが死んじゃうんですから。北条先生の堀江さんもすごいハードルを越えたものですね。

 吉祥寺の高架下にできた「CAFE ZENON」はキャラクターの楽園のようなお店です。広い店内に北条先生や原哲夫先生のキャラクターが豊富に展示されて、と言うよりはお店の空気とじんわりなじんでいます。トイレの壁なども編集者的な遊びが施されて、いたるところでやんちゃな堀江さんの素顔が見えるようです。いつお会いしてもその余裕の雰囲気の中に、なんとなく前向きな攻撃的なオーラを感じさせる堀江さん。前田慶次など数々の歴史の偉人も描いてきて、それらの志を引き継いだかのようなエネルギーは僕ごときに出せるものではありません。これからも何かと堀江さんの背中を見ていれば大丈夫、そんな存在でいて下さいね。