• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民99人目
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  • 2011.07.14

 今週は「まじっく快斗」監督・平野俊貴さんです。

 平野さんと初めて出会ったのは1994年5月ごろですか。実は僕のアニメ制作の歴史においてこの年の4月から9月が唯一アニメを放送していなかった時期なんです。そんな時期に「魔法騎士レイアース」に携わることになり、その監督として一緒に歩むことになったのです。 それ以前の平野さんに関してはほとんど知らなかったのですが、人気アニメーターなこともあり、絵についてはかなりこだわると聞いていました。

 第一印象はちょっと無骨な感じ。いかにもクリエイター然としていて物静かなところがあるのですが、ひとたび絵作りや映像の話になると強い主張とエネルギーを発します。平野さんの作品に対する理解ベクトルを聞いた上でだからでしょうか、「レイアース」では主人公女の子3人の色分けされたキャラクターや動きがすごく良くてわかりやすい。僕がちょっと苦手としていた少女マンガの世界にすんなり入れたのも、CLAMP原作の力とそれを動かした平野さんのおかげでした。中でもやはり注目すべきは番組OP曲・田村直美さん「ゆずれない願い」の幕開け映像でしょうか。かの「ジャングル大帝」OPのスケールに負けない広大なイメージが表現され、その年の紅白にも登場することになる楽曲のよさと番組ストーリーのエッセンスを見事に表現したものになっていたのです。

 「エンジェル・ハート」も面白いお仕事でしたよね。大ヒットした「シティーハンター」とはパラレルワールド、と位置づけられたこの作品に、いかに軸はぶれずに新時代性を加味していくかが課題のひとつでした。犯罪がはびこる裏社会の大人の世界を、「シティーハンター」よりドライにクールに描きつつ、冴羽僚(ホントはけものへん)を「パーパ」と呼ぶ香瑩(シャンイン)を中心に、最後には心も温まる名作アニメに仕上げていきましたね。

 その後もいろいろ手がけている平野監督、映画「真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 激闘の章」と「真救世主伝説 北斗の拳ZERO ケンシロウ伝」は印象的でした。絵や画角にこだわり、ああこう来るんだ、と妙に納得するシーンの記憶がたくさんあります。

 で、今回の「まじっく快斗」であります。もう昨年の4月24日に第1話を放送してるし、「名探偵コナン」の中でも1,2を競う大人気キャラクター・怪盗キッドのお話であります。実は原作者青山剛昌先生はコナンよりも先にこの作品を描いていて、いわばコナンのルーツ的なキャラ。この作品にほれ込んだのが平野さん。コナン以上に荒唐無稽な世界観でありながら、そのスタイリッシュなキャラクターは最強アニメーター平野さんをして絶対描きたいと思わしめたものだそうです。

 これまで何度もこの作品に関しては平野監督らと打ち合わせを重ねていますが、明らかにコナンとは別のベクトルが伸びてゆく感覚が楽しくて仕方ありません。元来寡黙な平野さんが原作の一コマを見せて「こーゆー絵をアニメで面白く動かしちゃいたいね」なんてニヤリとされるとすごく期待感が盛り上がります。

 とにかく僕にとっては異常に縁ある監督であります。キッドのマジックの面白さを超えて、この作品ではいろいろととんがったやんちゃをいっぱいしていきましょうね。