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【独自解説】感染拡大“オミクロン株”に感染症専門医 岩田教授が大胆提言 「あえて抑え込みをしないのも手」「2類か5類かは問題ではない」
2022年1月14日 UP
“抑え込みをしない”こともプランの1つ
爆発的な感染拡大が続く中、いま日本はどのような対策を取るべきなのか?感染症専門医、神戸大学医学部付属病院 感染症内科の岩田教授が大胆提言です。
Q岩田教授はオミクロン封じ込め対策は、労多くして功少なし。「抑え込みをしない」こともプランの1つ。とおっしゃっていますが、これはイギリス方式なんでしょうか?
(岩田教授)
「そうですね、イギリスの目指している方向性に近い、と思います。イギリスは1日20万人ぐらい感染者が出た時も、ある程度の人流抑制などはしていましたが、ロックダウンのようなことはしないと表明し続けてきました。オミクロン株でも重症者が出るので、毎日300人近くが死ぬという、相当痛みを伴う作戦でしたが、流行のピークは越えたようで、このまま下がっていくといわれています。非常に多くの感染者が出るのが、オミクロン株の特徴ですが、これを今までのデルタ株までのやり方だと、労力に対して得られる利益が小さいので、ちょっと方向性を変えるのはありだと思います。」
Q岩田教授は、医療逼迫を防ぐため、診断は重症化リスクが高い層に特化し、リスクが低い層は診断を目指さない、医療資源は限られているので、今すぐにでも対応すべきだ。とおっしゃっていますが、詳しくはどういうことでしょうか?
(岩田教授)
「沖縄などのデータでわかってきていますが、若くて健康な方は、オミクロン株に感染しても、ほとんど風邪のような症状で、自然によくなっています。こういう方が大勢殺到することで、保健所や病院が機能不全に陥ってしまう。そうしているうちに、重症化リスクの高い方の受診が遅れたり、疎外されたりするのは本末転倒なわけです。感染者数がものすごく多いのが今回のオミクロン株の特徴で、これからも感染者は増えると思うのですが、そうなると、若くて健康なリスクの低い人は、病院を受診したりせず、家でじっとしてほかの人に感染させないようにする、糖尿病や非常に肥満があったり、高齢など、リスクの高い人が早期に受診をするといった、ある程度メリハリをつけた対策をしないと、医療の人的資源などを有効利用できない、というのがこの考えの根拠です。ただリスクの低いかどうかの判断は、デリケートな問題なので今後考えなければいけないです。」
Qこの方法は日本でできるのでしょうか?
(岩田教授)
「実は日本が一番苦手なところで、全部一律平等でしかも、失態が一切ないようにっていうを目指しがちなので、例えば濃厚接触者の隔離期間を短くすると、エッセンシャルワーカーの労働力は上がるので、全体として得しますが、時々は、職場や病院とかでクラスターが起きてしまう、そのリスクをあえて増やすことは覚悟しなければいけない。だから、そういうことが起きたときに、メディアなどがバッシングしたりして、役人を攻撃したりすると、全体としての利益の最大化っていう目標がそがれてしまって。細かいたまに起きる不祥事によって全体的に損をするっていうのが、日本が取りがちな失敗だったんで、そこは冷静に論理的にやるっていうことがより重要だと思います。」
ここが日本の問題“3回目ワクチン接種・薬の提供体制”
Qイギリスはオミクロン株の拡大は許容すると言いながら、3回目のワクチン接種をものすごいスピードでやっているので、日本と同列に比べられない、というのはあるのでしょうか?
(岩田教授)
「イギリスがこういう、オミクロン株の感染者増大は許容している、というのは、3回目のワクチン接種などで、もっと怖いリスク、死亡者が非常に増えるとか、そういったところを予防することを同時進行でやっている。好きなようにしろと言っているわけじゃない。日本は2回目までのワクチン接種で非常にスピーディーにやったのに、なぜか3回目の接種から非常にブレーキがかかってスピードがダウンしてしまいました。ここが最大のネックで、ここをちゃんと克服しない限りは、私がさっき申し上げた抑え込みをしない、というような大胆な策っていうのはなかなかしづらい」
Q経口薬「モヌルピラビル」ですが、一刻も早く飲まないといけないのに、患者の手に入るまでに時間がかかる、というのはなぜですか?
(岩田教授)
「扱える医療機関のハードルも高い、大量の患者に対応するために、迅速にたくさん提供するというのには、事務的なハードルが高すぎる。ここを撤廃しないと現場が疲れてしまうし、供給のスピードも落ちてしまう。ここを上手にしないと、重症者を減らせない。逆に言えば、こういう薬をうまく活用できれば、重症者を減らすことができるとも言えます。」
“2類”か“5類”か というのはさしたる問題ではない
Q岩田教授は新型コロナが感染症の2類か5類かという問題についてどうお考えですか?
(岩田教授)
「微細な問題だと思います。すでに2類相当だと言いながら、自宅や宿泊施設での療養をしていますし、入院されない方もたくさんいます。指定医療機関ももう存在しない。もうなし崩しになっている。5類にしたら保健所の負担が減るのかというと、おそらく新型コロナは、全例報告になると思われるので、手間がかかることは同じ。問題の本質は、保健所で言えばデータマネージメントが遅れている。ここを改善するのが先で、感染症法の分類は、ど真ん中の問題ではないと思います。」
Qオミクロン株に対しては、社会全体がどうシフトチェンジできるかどうかに、かかっているんでしょうか?
(岩田教授)
「オミクロン株というのはメリットとデメリットがある。感染力が強いというデメリットと、重症化リスクが低いというメリットがあって、微妙なんです。だから一方向に舵を動かすというのは難しく、バランスが重要。ただ、前例踏襲もよくないので、これまで言ってきたようなポイントを議論して、いい方向に着地できればいいな、と思います。」
(情報ライブ ミヤネ屋 2022年1月14日放送)