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カスタマーハラスメントに様々な業界から悲鳴

【独自解説】“悪質”付きまとい・SNSで検索も…カスタマーハラスメントに様々な業界から悲鳴 威力業務妨害や脅迫・名誉棄損など犯罪になることも 専門家が解説

 客による著しい迷惑行為いわゆるカスタマーハラスメントに様々な業界から悲鳴が上がっています。お客様は本当に神様なのか?こうしたカスタマーハラスメントに、いま新たな動きも起こっています。日本カスタマーハラスメント対応協会代表理事の島田恭子氏が解説します。

カスタマーハラスメント対策で名札廃止

カスタマーハラスメントは“正当な”クレームではない

 カスタマーハラスメントとは、正当なクレームとは違い、顧客等からの暴行・脅迫・ひどい暴言・不当な要求等の著しい迷惑行為のことをいいます。

日本カスタマーハラスメント対応協会 代表理事 島田恭子氏

Q.正当なクレームとは違うとありますが…
(日本カスタマーハラスメント対応協会 代表理事 島田恭子氏)
「正当なクレームではないものを悪質クレームというのですが、悪質クレームとカスタマーハラスメントにも線引きがあって、カスタマーハラスメントは対応者が多大な苦痛を感じてハラスメント(嫌がらせ)をされたと受け取り、ストレスを感じてしまうものです」

6月下旬より運転手の氏名掲示廃止

 あるタクシー運転手は、「遠回りと勘違いされ、車載の名札の写真を撮られた」と言います。別の女性運転手は「写真を撮って通報すると言われた。怖いです」と語っています。しかし「名札があるから『ちゃんとしなくては』という意識もあるのでは…本来のあるべきプライドも消えるのでは」という声もあります。こうした中で国交省は、SNSなどの誹謗中傷から運転手の安全を守るため、6月下旬をめどにバス・タクシーで義務付けている氏名の掲示の廃止を検討しています。運輸業界にカスタマーハラスメントの被害のアンケートを取ったところ、半数近くが「遭ったことがある」と答えています。

Q.名札が本名である必要はないのでは?
(島田氏)
「私がアドバイザーしているところでは、社員番号や氏名のイニシャルを名札に使っています」

タリーズコーヒーは店員の名札をイニシャルに

 タリーズコーヒーでは、2022年の5月から店員の名札を実名から“イニシャル”にしています。変更した理由は、「従業員の名前を『SNSで検索』されたり、『付きまとい』など迷惑行為があったため」だとしています。タリーズコーヒーの広報担当者は、「名札が実名で不安を抱いていた従業員もいたので、『心して働ける』とポジティブな意見をいただいている」とコメントしています。

Q.今は、名前をSNSで検索されて、特定されて付きまといをされたりする時代ですよね?
(島田氏)
「一般人なのに、不特定多数の人に名前を知られてしまうということと、相手は匿名なのに、自分は実名だとなると本当に怖いと思います」

カスタマーハラスメントが犯罪に

カスタマーハラスメントをする人の年齢・性別は?

 カスタマーハラスメントをしていた人の性別や年齢ですが、40代~60代が約70%で、性別では男性が86.4%を占めています。

Q.中高年の男性が多いのですか?
(島田氏)
「40~50代はそもそもストレスが多い世代といわれています。そして60代は定年後に肩書などがなくなって威張る相手がいなくなり、家庭でも居場所がないという人物像が浮かびます」

様々な業界のカスタマーハラスメント

 様々な業界で悲鳴が上がっています。たとえば、スーパーで、半額の弁当を客が過失で落として販売不能になってしまいました。すると客は「通常価格の他の商品を半額にするか、販売不能になった商品を売れ!」と要求してきました。別の食品販売店では、レジ袋有料に客が納得せず、購入したパンをちぎって投げつけるということがあったそうです。また、家電販売店では、「リモコンが使用できない」という客の電話に説明書の確認と電池交換を提案したところ、「なんで俺がそんなことしないといけないのか!お前はカスだ!今からお前の店に殴り込むぞ」と脅迫めいたことを言ってきたそうです。また百貨店では、洋服のお直ししましたが、客が来店しなかったので、半年後に客の了解を得て配送したところ…「太って着られなくなった服はいらない!」と言われたということです。

犯罪に当たるカスタマーハラスメントの事例

 カスタマーハラスメントが犯罪にあたる恐れもあります。亀井正貴弁護士によると、机を暴力的にたたき、大声でクレームをいう行為は「威力業務妨害罪」を問われ、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金になる場合があります。また、「土下座しろ」など脅して過度な要求をすると、「強要罪」で3年以下の懲役、SNSやほかの客の前で「バカ」「アホ」などの暴言は、侮辱罪で1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料、SNS等で店員の名前を明記して社会的評価を下げる悪口を書き込むと、「名誉棄損罪」として3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金をうけることがあるといいます。

島田氏からの提言「“神様”ではなく“お互い様”が大切」

島田氏からの提言

 島田氏は、「日本型“顧客第一主義”の象徴『お客様は神様』は曲解された商習慣。“金を払っているから偉い”ではなく『顧客』と『店員』が尊重し合える関係になるべき。“神様”ではなく
“おたがい様”が大切」だと語っています。

任天堂のカスタマーハラスメントへの動き

 任天堂は2022年10月、修理サービス規定と保障規定に「威迫・脅迫・威嚇行為・侮辱、人格を否定する発言・プライバシーの侵害行為・SNSやインターネット上での誹謗中傷」など、カスタマーハラスメントに当たる行為を明記して、「これらの行為があったと当社が判断した場合、交換または修理をお断りさせていただきます」という文言が加えられています。任天堂の担当者は「お客さまに笑顔になっていただくために、働く従業員も笑顔でいるためのルール作りが必要と考えました」とコメントしています。

Q.監督官庁がガイドラインを作るべきなのか、各企業で対応するのがいいのかどちらでしょう?
(島田氏)
「両方です。厚生労働省が2022年にマニュアルを作ったのですが、一般的で総合的なものしか作れません。業界や企業に応じたものが必要です。また、個人の力には限界があって「対応者一人一人が力を付けなさい」といっても、企業のトップが従業員を守ってくれないと解決は難しいです」

Q.カスタマーハラスメントをする客に対して従業員が“出入り禁止”にするとか、これ以上の行為があったら自分の判断で警察に通報できるとか、従業員に裁量権を持たせるのがいいということですか?
(島田氏)
「人は、ストレスを感じていても裁量権があるとそのストレスを補完してくれるという研究があります。自分が何かができるというのはとても大事な事です」

Q.その客が落とす金額とスタッフの精神衛生とほかの客に与える影響等の損得勘定で決めるということですか?
(島田氏)
「そういう生産性で考えるのが大事です」

Q.どこまで我慢するのか、どの線を越えたら態度を変えるのかのマニュアルがいりますね
(島田氏)
「必要です。そういうマニュアルを作り始めているところもたくさんあります。トップがカスタマーハラスメントに対峙している業界や企業では、『ここまで行ったらNoと言っていい』となっています。生産性の観点からも従業員が笑顔で接客して、客も笑顔になることが大事だと思います」

(情報ライブミヤネ屋2023年4月19日放送)

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